イソステアリン酸とは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 感触改良 表面処理
イソステアリン酸
[化粧品成分表示名称]
・イソステアリン酸

[医薬部外品表示名称]
・イソステアリン酸

炭化水素から合成し、ステアリン酸を異性化してつくられる化学構造的に炭素数:二重結合数がC18:0で構成された高級脂肪酸(飽和脂肪酸:合成脂肪酸)です(∗1)

∗1 石油化学の進歩にともない、天然油脂からの脂肪酸にはみられない側鎖脂肪酸や奇数の炭素数を有する脂肪酸が開発されており、イソステアリン酸はその代表的なもののひとつで、ステアリン酸の異性体です。

高級脂肪酸とは、化学構造的に炭素数12以上の脂肪酸のことをいい、炭素数が多いとそれだけ炭素鎖が長くなるため、長鎖脂肪酸とも呼ばれます。

高級脂肪酸は、以下の表のように大きく2種類に分類され、

  飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸
化学結合 すべて単結合(飽和結合) 二重結合や三重結合を含む(不飽和結合)
含有油脂 動物性油脂に多い 植物性油脂に多い
常温での状態 固体(脂) 液体(油)
融点 高い 低い
酸化安定性 高い 比較的低い

化学構造的に二重結合(不飽和結合)の数が多いほど酸化安定性が低くなりますが(文献2:1997)、イソステアリン酸は化学構造的にすべて単結合(飽和結合)で構成された飽和脂肪酸であり、酸化安定性の高い脂肪酸です。

炭素数:二重結合数がC18:0で構成されているという点では同じ飽和脂肪酸であるステアリン酸と同じですが、ステアリン酸が固体なのに対してイソステアリン酸は液体という点で異なります。

また性状においては、炭素数:二重結合数がC18:1で構成されている不飽和脂肪酸であるオレイン酸に類似していますが、オレイン酸が1つの二重結合を有しているのに対して、イソステアリン酸は二重結合がなく非常に安定しているため、オレイン酸より優れた原料として同様に用いられています(文献3:2012)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗浄製品、ネイル製品など様々な製品に使用されます(文献1:1983)

乳化物の感触改良

乳化物の感触改良に関しては、酸化安定性が高く、使用感が良好であり、また皮膚上での水蒸気通気性がよく、流動性エマルションに使用した場合に温度差による粘稠度変化(∗2)が少ないという特性があることから、乳化系スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品など乳化物に広く使用されています(文献2:1997)

∗2 稠度(ちょうど)とは、ペースト状物質の硬さ・軟らかさ・流動性などを意味します。

表面処理

表面処理に関しては、代表的な紫外線散乱剤である酸化チタン酸化亜鉛が直接皮膚に接触しないようにコーティング・表面処理することで分散性が向上します。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2005年および2016-2019年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

イソステアリン酸の配合製品数と配合量の調査結果(2005および2016-2019年)

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イソステアリン酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

イソステアリン酸の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:アクネ菌を増殖する可能性あり

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 19人の被検者に4%イソステアリン酸を含むフェイスカラーを24時間単一パッチ適用したところ、皮膚刺激の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 18人の被検者に4%イソステアリン酸を含むマスカラを24時間単一パッチ適用したところ、皮膚刺激の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 104人の被検者に0.2%イソステアリン酸を含むファンデーションを24時間単一パッチ適用したところ、皮膚反応の兆候はなく、陰性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 168人の被検者に35%イソステアリン酸を含むミネラルオイルを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Food and Drug Research Labs,1980)
  • [ヒト試験] 103人の被検者に10%イソステアリン酸を含むミネラルオイルを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 98人の被検者に2.85%イソステアリン酸を含むマスカラを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、1人の被検者はいくらかの刺激性を示したが、他の被検者はいずれも皮膚刺激性および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 235人の被検者に2.5%イソステアリン酸を含む日焼け止め製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激性および皮膚感作を示さなかった(Concordia Research Labs,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に100%イソステアリン酸を適用し、適用24,48および72時間後および4および7日目に眼刺激スコア(0-110)を評価したところ、いずれの眼刺激スコアも0であり、眼刺激性は示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%イソステアリン酸を適用し、適用24,48および72時間後および4および7日目に眼刺激スコア(0-110)を評価したところ、24時間で眼刺激スコアは0.3でしたが、48時間以後はいずれも0であり、眼刺激性は示さなかった(Bioresearch,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 28人の被検者に35%イソステアリン酸を含むミネラルオイルを対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施した。試験は28人の被検者を2グループに分け、19人はUVAのみ照射し、9人はUVAとUVBの両方を照射した。試験の結果、一時的な反応は観察されたが、この試験物質は光増感剤ではなかった(Food and Drug Research Labs,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

コメドジェニシティ(ニキビの原因となるアクネ菌の増殖促進性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 9匹のうさぎの片耳に2.5%イソステアリン酸を含む日焼け止め製剤1mLを週5回4週間にわたって合計20回適用し、肉眼的に角質増殖症の観察を対照部位との比較において毎日実施したところ、この試験条件下においてイソステアリン酸塗布部位で有意にコメドジェニックであった。イソステアリン酸を含まない日焼け止め製剤で同様の試験を実施したところ、コメドジェニックではなかった(Consumer Product Testing,1980;D A Willigan,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、アクネ菌増殖性ありと報告されているため、アクネ菌増殖を起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

イソステアリン酸はベース成分、表面処理成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 表面処理剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Isostearic Acid」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),61-74.
  2. 広田 博(1997)「脂肪酸の組成と分類」化粧品用油脂の科学,60-64.
  3. 鈴木 一成(2012)「イソステアリン酸」化粧品成分用語事典2012,37.

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