アーモンド油とは…成分効果と毒性を解説



・アーモンド油
[医薬部外品表示名称]
・アルモンド油
バラ科植物アーモンド(学名:Prunus amygdalus dulcis 英名:Almond)の種子から採取して得られる植物油(植物オイル)です。
アーモンドは、西アジアを原産とし、約4000年以上前からヨルダン地方で栽培され、近年は主に米国のカリフォルニア州や地中海沿岸などで栽培されています。
また日本では扁桃(へんとう)と呼ばれ、明治に渡来したものの風土が適さなかったために普及しておらず、現在は小豆島や鹿児島で栽培されています。
化粧料として用いられるスイートアーモンドは、食用として広く知られています(文献6:2011)。
アーモンド油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、
脂肪酸名 | 脂肪酸の種類 | 炭素数:二重結合数 | 比率(%) |
---|---|---|---|
パルミトレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C16:1 | 0.5 |
オレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:1 | 66.3 |
リノール酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:2 | 22.3 |
パルミチン酸 | 飽和脂肪酸 | C16:0 | 6.7 |
ステアリン酸 | 飽和脂肪酸 | C18:0 | 1.2 |
このような種類と比率で構成されています(文献3:1990)。
オレイン酸が約65%、リノール酸が約20%を占めており、オリーブ果実油よりは不飽和度がやや大きいですが、酸化安定性は比較的高いと考えられます。
またヨウ素価は、
ヨウ素価 | ヨウ素価による分類 |
---|---|
92-114 | 半乾性油 |
一例としてこのように記載されており(文献4:1990)、100を越えることがある半乾性油のため、いくらかの乾燥性は有しますが、乾油性よりは劣ります。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、サンオイル、ヘアオイル、リップ製品などの製品に使用されます(文献5:2016)。
皮膚柔軟によるエモリエント作用
皮膚柔軟によるエモリエント作用に関しては、肌と親和性が高く、角層からの水分蒸散を防止し、肌を柔軟にする作用を有しています(文献5:2016)。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002年と2010年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
アーモンド油の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
- 光感作性:ほとんどなし
これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、
- [ヒト試験] 103人の被検者に7%アーモンド油を含むオイル200μLを対象にHRIPT(皮膚累積刺激性&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、誘導段階において4人の被検者の1つまたは2つのパッチに軽度の紅斑が観察され、別の被検者では48時間チャレンジパッチで軽度の紅斑が観察されたが、この反応は臨床的に重要ではなく、アーモンド油は皮膚刺激および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(TKL Research,2009)
- [ヒト試験] 108人の被検者に10%アーモンド油を含むフェイスセラムの一次皮膚刺激試験を実施し、皮膚反応を評価したところ、一次皮膚刺激性はなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
- [ヒト試験] 108人の被検者に10%アーモンド油を含むフェイスセラムを対象にHRIPT(皮膚累積刺激性&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激性または皮膚感作性はなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
- [ヒト試験] 107人の被検者に15%アーモンド油を含むマッサージオイル0.2mLを対象にHRIPT(皮膚累積刺激性&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、1人の被検者は7回目の誘導パッチ適用で一時的でわずかな紅斑が観察されたが、他の被検者に皮膚反応はみられず、皮膚刺激性または皮膚感作性ではないと結論付けられた(Institut D’Expertise Clinique,2008)
- [ヒト試験] 222人の被検者に25%アーモンド油を含むリップバーム0.2gを対象にHRIPT(皮膚累積刺激性&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、2人の被検者が誘導期間において弱い感作反応を示したが、他に反応は観察されなかったため、この製品は皮膚感作剤ではないと結論づけられた(Harrison Research Laboratories,2007)
- [ヒト試験] 108人の被検者に31%アーモンド油を含むフェイシャルオイルを対象にHRIPT(皮膚累積刺激性&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激性および皮膚感作性はなかった(Clinical Research Laboratories,2010)
- [ヒト試験] 109人の被検者に45.25%アーモンド油を含むフェイシャルオイルを対象にHRIPT(皮膚累積刺激性&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激性および皮膚感作性はなかった(Consumer Product Testing Co,2007)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、
- [動物試験] ウサギを用いて未希釈または25%までのアーモンド油を含む化粧品製剤の眼刺激性を評価したところ、ほとんどの反応は結膜刺激に限られており、実質的に非刺激または最小限の眼刺激性であった(Elder R, et al,1983)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、一般的に眼刺激性はほとんどないと考えられます。
光感作性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:1983)によると、
- [ヒト試験] 764人の被検者の背中に0.1%-2%のアーモンド油を含む製剤を閉塞パッチ下で24時間適用し、パッチ除去後にその部位を評価し、150Wキセノンアークソーラーシミュレーター(290~400nm)でMED(個人の最小紅斑線量)の3倍の線量で照射した。この部位を72時間後に再び評価し、同じ手順を繰り返したところ、0.1-2%アーモンド油を含む製剤はいずれの被検者においても光感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。
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アーモンド油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
- Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sweet Almond Oil and Almond Meal」Journal of The American College of Toxicology(2)(5),85-99.
- 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
- 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油脂化学便覧 改訂3版,99-101.
- 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,4.
- 鈴木 洋(2011)「扁桃(へんとう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,423
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