べヘニルアルコールとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 乳化 感触改良
べヘニルアルコール
[化粧品成分表示名称]
・べヘニルアルコール

[医薬部外品表示名称]
・べヘニルアルコール

ナタネ油を高圧水素還元して得られる炭素数22の一価アルコールである高級アルコール(脂肪族アルコール)です。

一価アルコールとは、化学的に-OH(水酸基:ヒドロキシ基)が一つ結合したアルコールで、2つ以上結合したものは多価アルコールと呼ばれ(n個結合したものはn価アルコールとも呼ばれる)、高い吸湿性と保水性を有しているため化粧品に汎用されている保湿剤です。

化学的に水酸基(ヒドロキシ基:-OH)を1つだけもったアルコール(一価アルコール)の中で、炭素が6個以下のアルコールは低級アルコールに分類され、炭素数が少ないほど親水性が強まり(親油性が弱まり)ます。一方で炭素が8個以上のアルコールは高級アルコール(脂肪族アルコール)に分類され、炭素数が多いほど親油性が強まり(親水性が弱まり)ます。

高級アルコールという分類なので誤解されやすいですが、一般にアルコールと呼ばれる物質は炭素数2の一価アルコールで低級アルコールであるエタノール(エチルアルコール)のみを指し、高級アルコールは物質として別物です。

べヘニルアルコールの物性(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

炭素数 分子量 融点(℃) 比重(20℃) 屈折率(20℃)
22 326.67 70.5

このように報告されています(文献3:1990)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、ヘアケア製品などに幅広く使用されています(文献1:1988;文献4:2016)

乳化補助

乳化補助に関しては、化学構造的にC22(炭素数22)の直鎖構造であり、その末端にある水酸基(OH)が親水活性を与え、油相と水相の界面においてその界面膜を強靭なものとし、乳化安定助剤として働くため、乳化物の乳化を安定化する目的でクリームや乳液に使用されます(文献6:1997)

とくにO/W型エマルションの粘度調整および安定化において重要とされています。

エマルションとは、通常は均一に混ざり合わない2種類の液体を混ぜる130nm~180nmほどの物質のことで、以下の画像のような構造を形成しています。

エマルションの構造

一方が他の液体中に微粒子分散している状態であり、上図は水の中に油が分散した状態のO/W型エマルション(∗2)であり、代表的なO/W型エマルションとしては水中に油滴分散している牛乳があります。

∗2 O/W型とはOil in Water型の略で、水中油型ともいい、水の中に油が分散した(水が多く油が少ない)状態のことです。

化粧品におけるO/W型エマルションとしては、ジェルをはじめジェル寄りのみずみずしい質感の乳液やクリームがあり、これらに多用されています。

また非イオン界面活性剤-油-水のエマルションを形成する場合、べヘニルアルコールを添加することで界面活性剤の配合量が減らせることが報告されています(文献7:1980)

感触改良

感触改良に関しては、温度変化の影響を受けにくく、適度にエモリエント性があるため、古くからクリームや乳液に使用され続けています(文献4:2016)

ステアリルアルコールと類似していますが、融点が高いため粘度の温度耐性に優れており、粘稠度(∗3)を高める目的で用いられます。

∗3 稠度(ちょうど)とは、ペースト状物質の硬さ・軟らかさ・流動性などを意味します。

またエマルションの大きさは通常0.001-0.1mmですが、べヘニルアルコールは乳化安定性が高く0.5-2mmの巨大なエマルションの形成を可能としており、べヘニルアルコールで巨大粒子化したO/W型エマルションは、塗布初期はみずみずしく、また塗布の過程でしっとり感を感じられ、みずみずしさとしっとり感を兼ね備えた感触を付与することが可能です(文献8:2005)

これは、べヘニルアルコールによって粒子サイズを大きくすることが可能になったことで、粒子の破壊や油性成分の皮膚への付着が遅れるため、塗布初期は水相が皮膚に長く接して肌にみずみずしい感触を与え、その後に塗布過程で粒子が壊れ、油分が皮膚になじみ処方本来のしっとりした感触に変化すると考えられています(文献8:2005)

さらに稠度、油ぎった感触の抑制およびロウの粘着性の調整剤として口紅に使用されます(文献4:2016;文献6:1997)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1982年および2005-2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

べヘニルアルコールの配合製品数と配合量の調査結果(1982年および2005-2006年)

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べヘニルアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

べヘニルアルコールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

日光ケミカルズの安全性データ(文献3:2018)によると、

  • [ヒト試験] 51人の被検者に10%ベヘニルアルコールを含むスクワラン溶液を対象に48時間単回閉塞パッチ試験を実施したところ、実質的に非刺激性であった

JETOC 日本化学物質安全・情報センターの初期評価プロファイル(文献2:2006)によると、

  • C18以上脂肪族アルコール類は皮膚刺激性がない
  • 脂肪族アルコール類は皮膚感作性がない

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [動物試験] 5匹のウサギの右眼に1%ベヘニルアルコールを含むオイル50μLを点眼し、Draize法に基づいて2,6,24および48時間後に結膜刺激スコア(0-20)を評価したところ、点眼2および6時間後の平均結膜刺激スコアはそれぞれ18および10であった。24および48時間で結膜刺激の兆候はみられなかった(Henkel and Cie GMBH,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の眼刺激性が報告されているため、軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

∗∗∗

べヘニルアルコールはベース成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1988)「Final Report on the Safety Assessment of Cetearyl Alcohol, Cetyl Alcohol, lsostearyl Alcohol, Myristyl Alcohol, and Behenyl Alcohol」International Journal of Toxicology(7)(3),359-413.
  2. JETOC 日本化学物質安全・情報センター(2006)「長鎖アルコール類」初期評価プロファイル.
  3. 日光ケミカルズ株式会社(2018)「NIKKOL ベヘニルアルコール 65」安全データシート.
  4. 日光ケミカルズ(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブック,48.
  5. 日本油化学協会(1990)「アルコール,グリコール,エーテル」油脂化学便覧 改訂3版,176-184.
  6. 広田 博(1997)「一価アルコール」化粧品用油脂の科学,75-79.
  7. 次田 章, 他(1980)「界面活性剤-油-水系及び界面活性剤-油-水-長鎖アルコール系における安定エマルション領域」油化学(29)(4),227-234.
  8. 岡本 亨, 他(2005)「巨大なエマルションの調製と化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(39)(4),290-297.

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