スフィンゴ糖脂質とは…成分効果と毒性を解説

バリア改善 保湿
スフィンゴ糖脂質
[化粧品成分表示名称]
・スフィンゴ糖脂質、コメヌカスフィンゴ糖脂質、グルコシルセラミド、スフィンゴモナスエキス

[医薬部外品表示名称]
・スフィンゴ糖脂質、コメヌカスフィンゴ糖脂質

スフィンゴ脂質の一種であり、化学構造的に疎水性であるセラミドを骨格構造として親水性の糖鎖が結合した油溶性のセラミド様物質です(文献1:1995)

スフィンゴ糖脂質の成分表示は、以下の表のように、

抽出物 化粧品成分表示名称 医薬部外品表示名称
スフィンゴモナス属の菌類 スフィンゴ糖脂質
スフィンゴモナスエキス
スフィンゴ糖脂質
コメ由来 スフィンゴ糖脂質
コメヌカスフィンゴ糖脂質
グルコシルセラミド
スフィンゴ糖脂質
コメヌカスフィンゴ糖脂質

様々な表示名称で記載されます。

植物由来のものは植物セラミドと呼ばれることもありますが、これらはセラミドそのものではなく、スフィンゴ糖脂質であるため、誤解しないよう注意が必要です。

スフィンゴ糖脂質は、生体膜中に1割前後存在していることが古くから知られており、またスフィンゴ糖脂質には、

  • グルコシルセラミド:セラミド骨格にグルコースが結合
  • ガラクトシルセラミド:セラミド骨格にガラクトースが結合

これら2種類が存在します。

グルコシルセラミドは、すべての組織・細胞に存在し、400種類以上の糖脂質の共通した前駆体糖脂質として重要であり、これに対しガラクトシルセラミドは、脳組織のミエリン、腎臓などの組織に特異的に存在しています(文献2:2011)

生体内におけるスフィンゴ糖脂質の機能は、スフィンゴ脂質を除去・阻害した細胞では細胞基質間の接着が阻害され、スフィンゴ糖脂質の発現を回復させた細胞ではこの阻害はみられないことから、細胞期質間接着にはスフィンゴ糖脂質が必要であることが示されています(文献3:1996)

細胞基質間接着に働いている主要な接着分子は、細胞と細胞外マトリックスの結合に関与する糖タンパク質であるインテグリンであることから、スフィンゴ糖脂質はインテグリンが働くための環境づくりに必要である可能性が示唆されています(文献3:1996)

また、以下の肌図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮におけるセラミド産生プロセス

グルコシルセラミドは、表皮基底層から顆粒層まで増加し、角質層ではほとんど消失しますが、セラミドはグルコシルセラミドを前駆体として生成され、角質層に蓄積し、角質細胞間脂質の主成分として存在しています(文献4:2004)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、洗顔料、シート&マスク製品などに使用されています。

セラミド産生増加によるバリア機能改善作用

セラミド産生増加によるバリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚バリア機能と細胞間脂質の関係について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数のアミノ酸が存在しており、またセメントとしての細胞間脂質はセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

そしてこれら角質層の構成物がバランスよく存在することで健常なバリア機能が維持されます。

また角質細胞の一番外側には以下の画像のように、

皮膚における角質の構造図

細胞膜が存在し、細胞膜の内側には周辺帯(cornified Sell envelope:CE)と呼ばれる極めて強靭な裏打ち構造の不溶性タンパクの膜が角質細胞を包んでいます(文献5:2011)が、セラミドはインボルクリンやロリクリンなどCE構成タンパクと共有結合することで、角質と細胞間脂質を強固に接着し、健常なバリア機能を形成しています。

さらに皮膚表面から水分が蒸散されることを経皮水分蒸散(TEWL:Transepidermal Water Loss)といいますが、経皮水分蒸散が大きくなるということは、バリア機能が低下していることを意味しており、経皮水分蒸散は、角質層のバリア機能低下のバロメーターでもあります(文献6:2002)

一般的に経皮水分蒸散量は、年齢を重ねるごとに大きくなる傾向にあり、また表皮の新陳代謝異常が起こると、角質層の細胞間脂質に形状異常がみられるようになり、経皮水分蒸散が大きくなることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下する結果となります(文献6:2002)

経皮水分蒸散の増大は、角質層の保湿機能の低下につながり、この2つは逆相関関係にあると考えられます。

1995年にPaulyらによって報告されたスフィンゴ糖脂質の化粧品素材としての有用性検証によると、

表皮の角質層にはセラミドがあり、糖が結合したものは化粧品素材として有効なのか検討した結果、スフィンゴ糖脂質が角質層と明らかな親和性を示すこと、角質層底部の緻密層からグリコシダーゼが分泌され、セラミドに分解すること、約3週間塗布後に表皮バリア機能が35%向上したことが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:1995)、スフィンゴ糖脂質にセラミド産生増加によるバリア機能改善作用が認められています。

水分保持能による保湿作用

水分保持能による保湿作用に関しては、スフィンゴ糖脂質そのものは優れたバリア効果を示すものの、他の油性基剤との相溶性が高くないために安定な製剤化が難しく、さらに角質細胞間に滞留・存在させ、その状態で水分保持効果を期待することはできません(文献9:2012)

一方で、この課題を解決するためにグルコシルセラミドであるスフィンゴ糖脂質をリポソームに内包したり、またはナノ化した上で水溶液に分散させる技術によって、角質層に効率的に滞留・存在させることが可能になっており、スフィンゴ糖脂質を角質層に浸透させることで、角質層のセラミドが生成・増加されることが明らかになっています(文献9:2012)

このような背景から、スフィンゴ糖脂質によってバリア機能改善効果だけでなく、水分保持効果およびセラミドの増加効果も兼ねるにはスフィンゴ糖脂質のナノ化またはリポソーム化が必要です。

2004年にキッコーマンバイオケミファによって報告されたスフィンゴ糖脂質の角層水分量への影響検証によると、

スフィンゴ糖脂質およびナノ化スフィンゴ糖脂質の保湿性を比較検討するために、室温20-22℃、湿度45-47%の環境下で、ヒト前腕部内側に1%スフィンゴ糖脂質および1%ナノ化スフィンゴ糖脂質配合溶液を一定量塗布し、経時的に皮膚の電気伝導度を測定し、塗布前後の比率で保湿性を評価したところ、以下のグラフのように、

スフィンゴ糖脂質およびナノ化スフィンゴ糖脂質塗布による角層水分量変化の比較

ナノ化スフィンゴ糖脂質溶液は、スフィンゴ糖脂質溶液と比較して有意に電気伝導度が高く、それはとくに60分以降で顕著であり、保湿性に優れていることが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2004)、ナノ化スフィンゴ糖脂質に水分保持能による保湿作用が認められています。

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スフィンゴ糖脂質の安全性(刺激性・アレルギー)について

スフィンゴ糖脂質の現時点での安全性は、

  • 生体内に存在するスフィンゴ脂質の一種
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

生体内に存在するスフィンゴ脂質の一種であり、また10年以上の使用実績の中で皮膚感作の報告がないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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スフィンゴ糖脂質はバリア改善成分、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:バリア改善成分 保湿成分

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文献一覧:

  1. 橋本 康弘, 他(1995)「スフィンゴ糖脂質の構造と機能」油化学(44)(10),730-737.
  2. 平林 義雄(2011)「スフィンゴ脂質とセラミド概論」セラミド―基礎と応用-,4-13.
  3. 市川 進一, 他(1996)「スフィンゴ糖脂質の機能解析と医薬品開発」ファルマシア(32)(11),1365-1368.
  4. 張 慧利, 他(2004)「米由来スフィンゴ糖脂質の機能性とその応用」Fragrance Journal(32)(11),46-53.
  5. 清水 宏(2011)「周辺帯」あたらしい皮膚科学第2版,9.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. M Pauly, et al(1995)「GlycoCERAMIDES: epidermal physiological role interest in care cosmetics. Objectivation of their mode of action/functional efficacy on man.」SOFW-Journal(121)(8),566-.
  8. 佐藤 稔秀(2004)「スフィンゴ糖脂質の化粧品への応用」Fragrance Journal(32)(11),41-45.
  9. 岡安 武蔵, 他(2012)「内因性セラミドの生成・増加方法」特開2012-184166.

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