セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドとは…成分効果と毒性を解説

バリア改善 保湿
セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド
[化粧品成分表示名称]
・セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド

[医薬部外品表示名称]
・N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
・ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド(簡略名)

化学構造的にアミド基の存在する平面に対し平行かつ垂直に2本の長鎖アルキル基をもつ、スフィンゴ脂質の一種であるセラミドNG(セラミド2)に類似した構造をもつアミド誘導体(∗1)です(文献1:1993)

∗1 アミド(酸アミド)とは、脱水縮合した構造のことを指し、脱水縮合とは化学構造的に分子と分子から水(H₂O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応(縮合反応)のことです。

セラミドについては、以下の皮膚最外層である角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような脂質組成で構成されています(文献2:1995)

また、細胞間脂質は以下の図のように、

細胞間脂質におけるラメラ構造

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗2)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

∗2 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献3:1991)。

一般的にバリア機能は肌荒れや皮膚炎をはじめ、年齢を重ねることでも低下傾向にあり、その結果として角層水分蒸散量が増え、角層水分蒸散量が増えることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下することが知られています(文献4:2002)

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドは、セラミドの分子構造を解析し最適化した上で1987年に開発され、セラミドと類似した構造をもつことから「疑似セラミド(合成セラミド)」とも呼ばれます。

セラミドは、天然および合成のどちらにおいても長期間にわたり結晶化せず安定に化粧品に配合することは難しく、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの単独配合においても、経時的にラメラ構造形成の安定性が失われ再結晶へと変化することが報告されています(文献1:1993)

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドのラメラ構造形成の安定性に関しては、細胞間脂質の構成成分であるステアリン酸でラメラ構造安定性を高め、コレステロールで結合水分量を向上させることが明らかにされており(文献1:1993)、ステアリン酸およびコレステロールと組み合わせて配合されている場合は、ラメラ構造安定化および結合水分量の向上目的である可能性が考えられます。

また、セラミドは天然および合成のどちらにおいても長期間にわたり結晶化せず安定に化粧品に配合することは難しく、結晶化を防ぐためには界面活性剤の多量配合やセラミドを溶解する油剤の配合を必要とします。

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの安定配合(乳化安定化)に関しては、スフィンゴシン(∗3)の一種であり両親媒性物質(∗4)であるフィトスフィンゴシンまたはヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミンが乳化剤として用いられます(文献5:2004)

∗3 スフィンゴシン類(スフィンゴイド塩基)は化学構造においてセラミドの骨格であり、フィトスフィンゴシンは天然に存在するスフィンゴシンの一種です。ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミンは、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドのスフィンゴシン(スフィンゴイド塩基)であり、合成スフィンゴシンです。

∗4 両親媒性物質とは、分子内に親水基と疎水基をもつ物質のことであり、乳化能を有しています。

ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン/水系は微量しか乳化しないものの、酸(∗5)と中和して塩を形成したヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩/水系では広い領域で安定にラメラ構造を形成し乳化することが報告されており(文献5:2004)、ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミンまたはそれらに酸を組み合わせて配合されている場合は、乳化安定化目的である可能性が考えられます。

∗5 ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミンの塩を形成する酸としては、有機酸の一種であるコハク酸や酸性アミノ酸の一種であるグルタミン酸などがよく使用されます。

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド/ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩/水の3成分系のみに安定なラメラ液晶相を示すことが明らかにされていますが、このことはスフィンゴシン塩がセラミドを規則正しく並ばせることを意味しており、実際の検証においては、スフィンゴシン塩を含む複合細胞間脂質系ではラメラ構造の配列規則性が回復し、スフィンゴシン塩を含まない場合には複合細胞間脂質系でも配列規則性の回復は認められなかったと報告されています(文献6:2005)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、入浴剤、クレンジング製品などに使用されています。

バリア機能改善作用

バリア機能改善作用に関しては、2004年に花王によって報告されたセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドのバリア機能に対する影響検証よると、

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド、ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミンに細胞間脂質構成成分である脂肪酸コレステロール、コレステロールエステルを加えて酸および水とともに加熱冷却処理することで安定したラメラ構造をもつ疑似細胞間脂質エマルションが形成される。

この疑似細胞間脂質エマルションは、細胞間脂質を中心とする生体成分のみで構成されており、ラメラ構造を形成することから、生体の細胞間脂質が形成するラメラ型エマルションと類似のモデル細胞間脂質エマルションであると考えられる。

被検者の前腕部からアセトン/エーテル処理により細胞間脂質を除去して誘発した乾燥荒れ肌に、それぞれ3%セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドを含有した、モデル細胞間脂質エマルションおよび界面活性剤エマルションを1日2回4日間塗布し、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの角層への浸透量および経表皮水分蒸散量について測定した。

浸透量については、各製剤を4日間塗布し塗布後にテープストリッピングにより角層20枚を採取し、この角層からセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドを抽出し含有量を定量したところ、以下のグラフのように、

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの角層浸透量

モデル細胞間脂質エマルションによる浸透量は、界面活性剤エマルションと比較して角層への浸透量が有意に多かった。

次に、同様にモデル荒れ肌に4日間製剤を適用し、経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定したところ、以下のグラフのように、

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド塗布によるバリア機能改善効果

モデル細胞間脂質エマルションによる浸透量は、界面活性剤エマルションと比較して経表皮水分蒸散量(TEWL)を減少させ、高いバリア機能の改善効果が確認された。

最後に実使用によるバリア機能改善効果を測定するために、10人の女性(25-39歳)の顔を対象に4%セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドを配合しヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩で乳化した乳液を1日2回2週間にわたって適用し、2週間後の洗顔後に頬の落屑(∗6)を目視で1-4の4段階(1:全くない, 2:わずかにある, 3:ややある, 4:ある)で評価したところ、以下のグラフのように、

∗6 落屑(らくせつ)とは角層の最外層が皮膚から剥がれていく現象を指します。健康な皮膚ではターンオーバーに従って角質細胞が角層から個々に剥離するため、その現象を肉眼で気づくことはありませんが、肌荒れなどの皮膚疾患では角質細胞が塊となって剥離し、一部は皮膚表面に剥がれかかった状態で残っているため、肉眼でも形態的に認められるようになります。

4%セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド配合乳液塗布による落屑改善効果

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドをヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩で乳化した乳液の使用により落屑の改善が認められた。

これらの結果から、モデル細胞間脂質エマルションは界面活性剤エマルションと比較して、より多くのセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドが角層内に浸透し、細胞間脂質機能を補い、バリア機能の改善効果を発現していることが示唆された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2004)、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドにバリア機能改善作用が認められています。

モデル細胞間脂質エマルション処方は、乾燥荒れ肌に対して皮膚浸透度が比較的高く、その結果として高いバリア機能改善効果が認められたため、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドにヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン、脂肪酸、コレステロール、コレステロールエステル、酸および水が併用されている場合はバリア機能改善効果を重視した処方であると考えられます。

また、単にセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドをヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩で乳化した乳液においても実使用レベルで効果が確認されたため、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド、スフィンゴシンおよび酸のみの処方も考えられます。

水分保持による保湿作用

水分保持による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献4:2002;文献7:1990)

2004年に花王によって報告されたセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの角層の水分量に対する影響検証よると、

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド、ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミンに細胞間脂質構成成分である脂肪酸コレステロール、コレステロールエステルを加えて酸および水とともに加熱冷却処理することで安定したラメラ構造をもつ疑似細胞間脂質エマルションが形成される。

この疑似細胞間脂質エマルションは、細胞間脂質を中心とする生体成分のみで構成されており、ラメラ構造を形成することから、生体の細胞間脂質が形成するラメラ型エマルションと類似のモデル細胞間脂質エマルションであると考えられる。

被検者の前腕部からアセトン/エーテル処理により細胞間脂質を除去して誘発した乾燥荒れ肌に、それぞれ3%セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドを含有した、モデル細胞間脂質エマルションおよび界面活性剤エマルションを1日2回4日間塗布し、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの角層水分保持量についてコンダクタンス値(∗7)を測定したところ、以下のグラフのように、

∗7 コンダクタンスとは、皮膚に電気を流した場合の抵抗(電気伝導度:電流の流れやすさ)を表し、角層水分量が多いと電気が流れやすくなり、コンダクタンス値が高値になることから、角層水分量を調べる方法として角層コンダクタンスを経時的に観測する方法が定着しています。

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド塗布による水分保持機能改善効果

モデル細胞間脂質エマルションは、界面活性剤エマルションと比較してコンダクタンス値が上昇し、水分保持機能の改善効果が高い傾向になった。

次に実使用によるバリア機能改善効果を測定するために、10人の女性(25-39歳)の顔を対象に4%セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドを配合しヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩で乳化した乳液を1日2回2週間にわたって適用し、2週間後の洗顔後に角層コンダクタンスを測定したところ、以下のグラフのように、

4%セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド配合乳液塗布による水分保持機能改善効果

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドをヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩で乳化した乳液の使用により有意にコンダクタンス値の上昇が確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2004)、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドに水分保持による保湿作用が認められています。

モデル細胞間脂質エマルション処方は、乾燥荒れ肌に対して皮膚浸透度が比較的高く、その結果として高い角層水分保持効果が認められたため、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドにヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン、脂肪酸、コレステロール、コレステロールエステル、酸および水が併用されている場合は角層水分保持効果を重視した処方であると考えられます。

また、単にセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドをヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン塩で乳化した乳液においても実使用レベルで層水分保持効果が確認されたため、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド、スフィンゴシンおよび酸のみの処方も考えられます。

また、1989年に花王によって報告されたセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの角層の水分量に対する影響検証よると、

13人の被検者の前腕部からアセトン/エーテル処理により細胞間脂質を除去して誘発した乾燥荒れ肌に、1%セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド配合クリーム、1%セラミドNG配合クリームおよび未配合クリームを1日2回3日間適用し、3日間適用後に角層コンダクタンスを測定したところ、以下のグラフのように、

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドおよびセラミド配合クリームの水分保持機能改善効果

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド配合クリームは、天然セラミドの一種であるセラミドNG(セラミド2)と同等以上の水分保持機能を有することが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1989)、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドに水分保持による保湿作用が認められています。

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドは、天然のセラミドと同様に結合水として水分を維持することが確認されていることから(文献6:2005)、これが水分保持のメカニズムであると考えられます。

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セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの安全性(刺激性・アレルギー)について

セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1980年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

– 皮膚炎を有する場合 –

神戸大学大学院医学系研究科応用分子医学講座皮膚科学分野および花王株式会社ヘルスケア第2研究所の臨床試験データ(文献9:2004)によると、

  • [ヒト試験] アトピー性皮膚炎、光線過敏症およびケミカルピーリング治療中の患者47人にセチルPGヒドロキシエチルパルミタミド配合の乳液とUVクリームを4週間使用してもらい、有用性を評価したところ、使用期間において1人の患者に刺激感が報告されたが、本製剤使用との因果関係は不明であり、他の患者には副作用はなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されており、また30年以上の使用実績の中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドはバリア機能改善成分、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:バリア改善成分 保湿成分

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文献一覧:

  1. 鈴木 敏幸, 他(1993)「合成セラミドを主成分とする生体脂質類似皮膚化粧料の開発」日本化学会誌(1993)(10),1107-1117.
  2. 芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.
  3. G Imokawa, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  4. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  5. 岡田 譲二, 他(2004)「セラミド類似の構造をもつ合成セラミドの開発と化粧品への応用」Fragrance Journal(32)(11),35-41.
  6. 高木 豊, 他(2005)「セラミドの保湿能と製品への応用」Fragrance Journal(33)(10),42-50.
  7. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  8. G. Imogawa, et al(1989)「Water-retaining function in the stratum corneum and its recovery prorerties」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(40),273-285.
  9. 船坂 陽子, 他(2004)「キュレルUVミルクおよびキュレルUVクリームの低バリア機能皮膚に対する使用経験」皮膚の科学(3)(1),62-72.

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