塩化レボカルニチンとは…成分効果と毒性を解説

バリア改善
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[医薬部外品表示名称]
・塩化レボカルニチン

2005年に肌荒れ・荒れ症の予防・改善有効成分として承認された、生体内でアミノ酸(∗1)から生合成されるアミノ酸誘導体の一種であるL-カルニチン(∗1)の塩化物です。

∗1 アミノ酸の一種であるリシンとメチオニンから生合成されます。

塩化レボカルニチンは物理化学的に安定であり、皮膚内に浸透すると塩が解離しL-カルニチンとして作用します。

L-カルニチンの生体における役割については、まず前提知識として生体細胞のエネルギー代謝のメカニズムについて解説した後に解説します。

生体細胞のエネルギー代謝経路は、

  • 糖をエネルギー源とした解糖系:ごはんやパンなど炭水化物がエネルギーに変換される経路
  • 脂質をエネルギー源とするβ酸化系:脂肪酸など脂肪を燃焼することでエネルギーに変換する経路

これらの2つの経路が知られています。

この2つの経路のうち、脂肪を燃焼してエネルギーに変換するβ酸化反応はミトコンドリア内で行われますが、脂肪酸などの脂質それ自身はミトコンドリア内に入ることができず、脂肪酸はL-カルニチンと結合しアシルカルニチンとなることで初めてミトコンドリア内に入ることができ、ミトコンドリアに輸送されたアシルカルニチンがβ酸化によってエネルギーに変換されます(文献2:1997;文献3:2001)

このような背景から、L-カルニチンはβ酸化の律速物質(∗2)であり、β酸化反応はL-カルニチン量で調節されていることが明らかになっています。

∗2 律速とは速度を律するという意味であり、律速物質とは反応速度を規定する物質を指します。つまり、いくら脂肪酸量が多くてもエネルギー変換率はL-カルニチンの量に左右されるということです。

塩化レボカルニチンの主な用途として、医療用医薬品において有機酸代謝異常症であるプロピオン酸血症やメチルマロン酸血症におけるカルニチン欠乏を改善する医薬品(ミトコンドリア機能賦活剤)として用いられ、健康食品分野において脂肪燃焼目的でサプリメントなどに用いられています(文献1:2005;文献4:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品などに使用されています。

表皮細胞のβ酸化促進によるバリア機能改善作用

表皮細胞のβ酸化促進によるバリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として表皮細胞におけるβ酸化反応の役割および角質層のバリア機能について解説します。

以下の皮膚の最外層である表皮の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮の構造と表皮の主要成分

表皮細胞は、角化細胞(ケラチノサイト)とも呼ばれ、表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞は、その次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられていき、各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化し、最後にはケラチンから成る角質細胞となり、角質層にとどまったのち、角片(∗3)として剥がれ落ちます(文献5:2002)

∗3 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。

この表皮の新陳代謝は一般的にターンオーバーと呼ばれ、正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持しています(文献6:2002)

また、表皮のターンオーバーの過程は多くのエネルギーを必要としますが、構造の特性から真皮に近い基底層および有棘層の細胞では主に糖をエネルギー源とする解糖系で、表面に近い顆粒層の細胞では主に脂肪酸をエネルギー源とするβ酸化系でエネルギーが産生されると考えられており(文献7:1978)、実際に表皮細胞でヒトカルニチンが生合成されていることが確認されています(文献8:2003)

一方で、皮膚の新陳代謝は加齢によって低下していくことが知られており、皮膚代謝の低下によって皮膚内部での各化合物の生合成量の減少やダメージを受けた後の回復の遅延などが起こり、その結果として例えばハリやツヤの低下、シワの増加、乾燥の進行など好ましくない変化が現れてくることがわかっています。

表皮中のβ酸化の律速物質であるカルニチン量も例外ではなく、老化とともに著しく減少することが明らかとなっていますが(文献9:2005)、表皮機能の大部分は表皮の最外層である角質層が担っており、角質層の機能を担う多くの物質が基底層からの分化(角化)過程で産生され、とくに顆粒層は最終角化に向けた重要な段階であることから、表皮機能にはβ酸化とその律速物質であるカルニチンが重要であると考えられます。

次に表皮角質層のバリア機能については、以下の皮膚最外層である角質層の構造の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような脂質組成で構成されています(文献10:1995)

角質層のバリア機能は、これら細胞間脂質が角質細胞間を満たすことで発揮されると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

一般的にバリア機能は肌荒れや皮膚炎をはじめ、年齢を重ねることでも低下傾向にあり、その結果として角層水分蒸散量が増え、角層水分蒸散量が増えることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下することが知られています(文献11:2002)

このような背景から、健常なバリア機能を保持することは非常に重要であると考えられます。

2005年にカネボウによって報告された塩化レボカルニチンのバリア機能に対する影響検証よると、

培養ヒト表皮細胞に塩化レボカルニチンを添加し培養後に脂肪酸の一種であるパルミチン酸を基質としてβ酸化能を測定したところ、以下のグラフのように、

表皮細胞のβ酸化促進作用

塩化レボカルニチンを添加したところ、表皮細胞のβ酸化能の有意な増加が認められた。

次に皮膚角質細胞間脂質に与える影響を評価するために、3次元培養皮膚モデルを用いて塩化レボカルニチンの脂質合成を測定したところ、セラミドの前駆体であるグルコシルセラミドの合成促進が認められ、また角質層中の細胞間脂質量を測定したところ、以下のグラフのように、

塩化レボカルニチンの角質細胞間脂質への作用

角質層中の細胞間脂質であるセラミド、コレステロールおよび脂肪酸量の増加が確認された。

これらの結果から、塩化レボカルニチンは表皮のβ酸化を促進することで角質細胞間脂質合成を促進し、表皮バリア機能の形成を促している可能性が示唆された。

最後に乾燥肌の被検者に塩化レボカルニチン配合製剤およびプラセボ製剤をそれぞれ6週間連用してもらい、角層水分量および経表皮水分蒸散量を測定したところ、以下のグラフのように、

塩化レボカルニチンの角層水分量への作用

塩化レボカルニチンの経表皮水分蒸散量への作用

塩化レボカルニチン配合製剤は、プラセボ製剤と比較して連用後に角層水分量の有意な増加および経表皮水分蒸散量の有意な低下が認められた。

これらの結果は、塩化レボカルニチン配合製剤の連用によって表皮バリア機能が著しく改善したためであると考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:2004)、塩化レボカルニチンに表皮細胞のβ酸化促進によるバリア機能改善作用が認められています。

塩化レボカルニチンの塗布は結果的に角層水分量の増加が認められていますが、これは保湿剤としての効果ではなく、皮膚の生理機能自体が改善された結果であると考えられています(文献12:2009)

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塩化レボカルニチンの安全性(刺激性・アレルギー)について

塩化レボカルニチンの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 2005年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

なお、塩化レボカルニチンの製品への配合量は非公開のため、安全性試験でも濃度は非公開となっており、伏せ字として●で記載しています。

皮膚刺激性について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] 健康成人40人に●%,●%,●%塩化レボカルニチン0.015mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後の皮膚反応を評価したところ、●%の適用群では除去1時間後4人の被検者に軽度の紅斑(±)、24時間後に1人の被検者に軽度の紅斑(±)が認められた。●%および●%適用群ではいずれも皮膚反応は認められなかった
  • [ヒト試験] 上記ヒトパッチ試験において●%適用群で刺激がみられ、これは溶媒である蒸留水の影響が考えられたことから、溶媒を精製水に変更し、生理食塩水を対照試料として上記と同様の方法で追加試験したところ、●%適用群ではパッチ除去1時間後1人の被検者に軽度の紅斑(±)、●%適用群では除去1時間後2人の被検者に軽度の紅斑(±)、●%適用群では除去1時間後1人に軽度の紅斑が認められ、いずれも24時間で消失した。●%で軽度の紅斑を示した4人のうち3人は対照の蒸留水にも同様に反応していること、溶媒対照の蒸留水群では明らかな紅斑を含め5人に皮膚反応が観察されること、2回目の試験では精製水群にも同様に軽度の紅斑が観察されたこと、生理食塩水には一切の皮膚反応がみられなかったことなどの理由により観察された軽度の紅斑については蒸留水および精製水によるものと考えられ、いずれの紅斑もごく軽微であることから、安全性に問題はないと考えられた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、一過性のごく軽微な紅斑が起こる可能性があるものの安全性に問題ないと報告されているため、皮膚刺激性については、非刺激-一過性のわずかな紅斑を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた塩化レボカルニチンの眼粘膜刺激性試験の結果、いずれのウサギも刺激反応は認められず、この物質は眼刺激性を有しないと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] モルモットに●%および●%塩化レボカルニチンを対象にMaximization皮膚感作性試験を、陽性対照試料に0.1%2,4-ジニトロクロロベンゼンを含むエタノール溶液を用いて実施したところ、いずれの濃度の試験物質も皮膚感作反応は認められず、陽性対照の溶液感作群では、明らかに陽性反応の皮膚反応が認められた。したがって、この試験物質に皮膚感作性はないと考えられた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

カネボウの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • 紫外線領域(290-400nm)に吸収がないため、試験は省略されています

と記載されています。

試験データをみるかぎり、塩化レボカルニチンは紫外線領域に吸収がないため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

∗∗∗

塩化レボカルニチンはバリア機能改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:バリア改善成分

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文献一覧:

  1. カネボウ株式会社(2005)「カネボウ トリートメントC」審査報告書.
  2. J.D. McGarry, et al(1997)「The Mitochondrial Carnitine Palmitoyltransferase System – From Concept to Molecular Analysis」European Journal of Biochemistry(244)(1),1-14.
  3. R.R. Ramsay, et al(2001)「Molecular enzymology of carnitine transfer and transport」Biochimica et Biophysica Acta (BBA) – Protein Structure and Molecular Enzymology(1546)(1),21-43.
  4. 鈴木 洋(2011)「カルニチン」カラー版健康食品・サプリメントの事典,246-247.
  5. 朝田 康夫(2002)「表皮を構成する細胞は」美容皮膚科学事典,18.
  6. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  7. 大城戸 宗男(1978)「角化の生化学;脂質の代謝(2)」皮膚臨床(20)(4),265-269.
  8. 丹野 修, 他(2003)「表皮にカルニチン生合成系は存在するか?」日本皮膚科学会雑誌(113)(5),845.
  9. 丹野 修, 他(2005)「カルニチンの肌への効果 -塩化レボカルニチンの開発とその作用-」Fragrance Journal (33)(8),82-85.
  10. 芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.
  11. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  12. 杉山 義宣(2009)「表皮エネルギー代謝に着目した肌荒れ改善アプローチ – 塩化レボカルニチンの作用メカニズムとその有用性 -」機能性化粧品開発と医薬部外品専用化粧品承認取得アプローチ.

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