ポリクオタニウム-61とは…成分効果と毒性を解説

バリア改善 表面処理 刺激緩和 帯電防止 毛髪修復
ポリクオタニウム-61
[化粧品成分表示名称]
・ポリクオタニウム-61

[医薬部外品表示名称]
・2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体

化学構造的に細胞膜を構成するリン脂質の一種であるホスファチジルコリンの極性基をもつ2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ステアリルを重合した平均分子量約10万の疎水性重合体(∗1)です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、一般的に高分子化合物です。

∗2 疎水性とは、水との親和性が低い、水に溶解しにくい、水と混ざりにくい性質のことをいい、本来の意味では疎水性物質が全て親油性であるとは限りませんが、一般的に親油性と同義で用いられることが多いです。

リン脂質とは、以下の図のように、

細胞膜の構造

脂肪酸鎖(疎水基)とリン酸基(親水基)で構成された両親媒性の脂質であり、生体細胞膜では図のように脂質二重層を形成し、主要な構成要素となります。

ポリクオタニウム-61を構成している2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC:2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)は、リン脂質と類似した構造のリン脂質極性基を側鎖にもつ重合体であり、保湿剤として皮膚に塗布することで透明の水和ゲル膜を形成し、皮膚刺激緩和、水分蒸散抑制およびバリア機能の低下した角層の角層細胞面積増加によるバリア機能改善など角層に複合的な効果を付与することが報告されています(文献1:1996;文献2:1999)

この2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの角層に対する効果のメカニズムは、水和ゲル膜が物理的なバリア代替物として水分蒸散量や物質の透過を抑制することで、角層に水分が保持され、皮膚トラブルの原因となりうる物質との接触が減少し、その結果として角層状態が改善されたためと考えられており、このような背景から擬似角層として機能する生体適合性リン脂質ポリマーとも呼ばれています(文献2:1999)

高い親水性をもつ2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンと重合する疎水性のアルキルアルキルメタクリエートは、アルキルメタクリエートのアルキル鎖長がが長くなるほどまた比率が大きくなるほど細胞毒性緩和効果が高くなることが報告されており(文献4:2003)、最適な細胞毒性緩和効果の観点から、炭素数18の疎水性のメタクリル酸ステアリル(ステアリルメタクリレート)が選択されています。

このような組成のポリクオタニウム-61は、分子が両親媒性であり、界面活性能を有していますが、化粧品への配合目的としては2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンに起因する皮膚や毛髪への複合的な保湿効果が主であり、界面活性能は皮膚や毛髪への吸着効果として保湿能やコンディショニング作用の向上効果として機能するため、一般的には界面活性能を有する保湿剤として知られています。

また、界面活性能を有していますが、医療機器分野においてはコンタクトレンズの保存液およびケア用品に、医療分野においては生体適合性を応用し体内に使用する人工医療機器に用いられていることから(文献3:2010)、生体に対する安全性の高さが知られています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、ヘアトリートメント製品、アウトバストリートメント製品、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されています。

バリア機能改善作用

バリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚バリア機能の構造と役割について解説します。

以下の皮膚最外層である角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ液晶構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造

角質層は天然保湿因子を含む角質と細胞間脂質によって構成されており、細胞間脂質は主にセラミドコレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

角質層のバリア機能は、これら細胞間脂質が角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することで発揮されると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

一般的にバリア機能は肌荒れや皮膚炎をはじめ、年齢を重ねることでも低下傾向にあり、その結果として角層水分蒸散量が増え、角層水分蒸散量が増えることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下することが知られています(文献6:2002)

このような背景から、健常なバリア機能を保持することは非常に重要であると考えられます。

2005年に日油によって報告されたポリクオタニウム-61の角層への影検証によると、

室温20℃、湿度40%の環境下で前腕内側部の水分蒸散量(TEWL)および角層水分量をあらかじめ測定し、次に各試験物質10μLを塗布し、その2時間後に再度水分蒸散量および角層水分量を測定し、測定値を塗布前の値を100とした相対値としたところ、以下のグラフのように、

ポリクオタニウム-61の経表皮水分蒸散量抑制効果

ポリクオタニウム-61の角層水分量への影響

ヒアルロン酸および多価アルコール溶液の塗布による経表皮水分蒸散量はほとんど変化がなかったが、一方でポリクオタニウム-61は、塗布することで有意に経表皮水分蒸散量が減少した。

また、いずれの試験物質も塗布により角層水分量が上昇したが、その増加率はポリクオタニウム-61塗布部位が最も高かった。

これらの結果から、ポリクオタニウム-61は角層のバリア機能と水分保持能の双方に作用し、その機能を強化することがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2005)、ポリクオタニウム-61にバリア機能改善作用が認められています。

刺激物質の刺激緩和作用

刺激物質の刺激緩和作用に関しては、一般に刺激を伴うリスクのあるラウリル硫酸Na(界面活性剤)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(紫外線吸収剤)、ミリスチン酸イソプロピル(油性基剤:エステル油)、ヘキシルデカノール(高級アルコール)にポリクオタニウム-61を添加すると、濃度依存的に細胞の生存率が向上することから細胞毒性緩和効果があることが認められています(文献4:2003)

このような背景から、刺激リスクのある界面活性剤を含む洗浄系製品、紫外線吸収剤を含む日焼け止め製品、油性基剤を含む製品などに使用されています。

また、ポリクオタニウム-51も同様の刺激緩和作用を有していますが、炭素数4のアルキル基を重合して得られるポリクオタニウム-51よりも炭素数18のアルキル基を重合して得られるポリクオタニウム-61のほうが細胞毒性緩和作用が高いことが確認されています(文献4:2003)

表面処理

表面処理に関しては、ポリクオタニウム-61は疎水性の重合体であることから、被覆処理した粉体表面に撥水性(∗3)が付与され、また高い生体適合性をもつことから被覆処理した顔料の肌への密着性が増すことが認められています(文献4:2003)

∗3 撥水性とは水をはじく性質のことです。

さらに、ポリクオタニウム-61を構成する2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンは、低湿度(乾燥)環境下で再配列し、保水性を維持することが知られており、かつポリクオタニウム-61は固体上ではラメラ構造を形成することが明らかになっていることから、ポリクオタニウム-61を用いた表面処理粉体においても高い保湿性が認められています(文献4:2003)

これらの背景から、ポリクオタニウム-61で処理した粉体をファンデーションに用いた場合、メチコンで処理した粉体と比較して塗布直後のキメ、透明感、しっとり感を付与し、2-3時間後においてもベタつきがないといった官能評価が報告されています(文献4:2003)

帯電防止

帯電防止に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

水道水やシャンプーは一般的に弱酸性(pH5-6)であることから、ぬれた毛髪の表面はマイナスに帯電しており、一方で陽イオン界面活性剤は以下の図のように、

陽イオン界面活性剤の構造図

親水基部分がプラスの荷電をもっている構造であることから、親水基部分がマイナスに帯電した毛髪表面に静電的に吸着します。

そして、疎水基(親油基)部分は外側を向くため、毛髪表面が親油基で覆われることでなめらかになり、その結果として静電気の発生をおさえ(帯電防止)、すすぎや乾燥後の摩擦を低減し、毛髪のくし通りがよくなります(文献7:1990;文献8:2010)

ポリクオタニウム-61は、分子中に親水部分と疎水部分が存在することから界面活性能を有しており、有効濃度0.04-0.05%希釈液でも優れた帯電防止性が付与され、毛髪の静電気発生を防止することが明らかにされています(文献5:2005)

このような背景から、帯電防止目的でアウトバスヘアトリートメント・ヘアケア製品などに使用されています。

毛髪修復作用

毛髪修復作用に関しては、まず前提知識として毛髪の最表面であるF層について解説します。

以下の図は毛髪の断面図ですが、

毛髪の断面図

毛髪の表面には、キューティクルと呼ばれる毛髪の内部を保護する役割をもつ毛表皮があり、キューティクルはさらに3層に分かれ、外側からエピキューティクル(表小皮)、エキゾキューティクル(外小皮)、エンドキューティクル(内小皮)の順になります。

さらに、キューティクルの最表面はF層と呼ばれる脂質層があることが知られており(文献9:1993;文献10:1994)、F層は分岐脂肪酸である18-MEA(18-メチルエイコサン酸)と毛髪タンパク質がチオエステル結合やエステル結合により強固に結合した状態で存在していることで(文献11:2001)、外界と接しているエピキューティクルの表面を脂質で硬く覆い、毛髪表面の疎水性を保持しています。

そして、健康な毛髪はF層の構造により疎水性を保つことで、水をはじき、ツヤ感を演出するとともにシャンプー成分で溶けたり、変質しないことが知られています。

一方でブリーチ処理やカラーリング処理により損傷した毛髪では、F層のチオエステル結合やエステル結合で結合されている18-MEAが加水分解によって部分的に剥離し、その下層に存在する親水性の高いA層が露出していることから、毛髪表面が親水的になっていることが報告されています(文献12:1997)

ポリクオタニウム-61は、ダメージ毛髪に塗布することによって健康毛髪に近い高い撥水性を示すことが明らかにされており(文献5:2005)、このポリクオタニウム-61のダメージ毛髪に対するメカニズムは、ポリクオタニウム-61を適用することで毛髪表面にラメラ構造が形成され、毛髪表面が再疎水化されるためであると考えられています。

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ポリクオタニウム-61の安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリクオタニウム-61の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 2000年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

日油の安全性データ(文献4:2003)によると、

  • [ヒト試験] 被検者に5%ポリクオタニウム-61水溶液をパッチテストしたところ、いずれの被検者も陰性であった
  • [動物試験] ウサギの皮膚に5%ポリクオタニウム-61水溶液をパッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれのウサギも皮膚刺激性を示さなかった
  • [動物試験] モルモットに5%ポリクオタニウム-61水溶液を対象に皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットも皮膚感作を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されていることから、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日油の安全性データ(文献4:2003)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に5%ポリクオタニウム-61水溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は実質的に非刺激剤であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、実質的に眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ポリクオタニウム-61はバリア改善成分、表面処理剤、帯電防止剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:バリア改善成分 表面処理剤 帯電防止剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. 大場 愛, 他(1996)「複機能性リン脂質ポリマーpoly (MPC) の角層結合水増加作用と乾燥性荒肌および乾燥性皮膚疾患に対する効果」日本化粧品技術者会誌(30)(4),428-440.
  2. 神保 和子, 他(1999)「リン脂質ポリマー水和ゲル膜のバリアー効果と角層機能改善効果」日本化粧品技術者会誌(33)(2),113-119.
  3. “LIPIDURE(リピジュア)”(2010)「リピジュアの活用」, <http://www.lipidure.com/use/> 2019年12月16日アクセス.
  4. 猪又 潔, 他(2003)「リン脂質共重合体”リピジュア-S(Lipidure-S)”の特性及び処理粉体への応用」Fragrance Journal(31)(8),97-104.
  5. 福井 洋樹, 他(2005)「ラメラ層を形成するリン脂質ポリマーナノスフィア”Lipidure-NR,NA(リピジュア-NR,NA)”」Fragrance Journal(33)(1),97-102.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. 田村 健夫, 他(1990)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  8. 鐵 真希男(2010)「コンディショナーの配合成分と製剤」化学と教育(58)(11),536-537.
  9. AP. Negri, et al(1993)「A Model for the Surface of Keratin Fibers」Textile Research Journal(63)(2),109-115.
  10. H. Zahn, et al(1994)「Covalently Linked Fatty Acids at the Surface of Wool: Part of the “Cuticle Cell Envelope”」Textile Research Journal(64)(9),554-555.
  11. JA Swift, et al(2001)「Microscopical investigations on the epicuticle of mammalian keratin fibres」Journal of Microscopy(204)(3),203-211.
  12. DJ Evans, et al(1997)「Cleavage of Integral Surface Lipids of Wool by Aminolysis」Textile Research Journal(67)(6),435-444.

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