セレブロシドとは…成分効果と毒性を解説

バリア改善
セレブロシド
[化粧品成分表示名称]
・セレブロシド

[医薬部外品表示名称]
・セレブロシド、ウマスフィンゴ脂質

[慣用名]
・馬セラミド

主にウマ科動物ウマ(学名:Equus caballus 英名:Horse)など動物(∗1)の脳および脊髄から得られる、化学構造的にスフィンゴ脂質の一種であるセラミドのスフィンゴイド塩基末端のヒドロキシ基(水酸基:-OH)に中性糖の一種であるガラクトースを結合したスフィンゴ糖脂質です(文献1:1981)

∗1 2000年以前はウシの脳に含まれるセレブロシドが主流でしたが、ウシ伝達性海綿状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)いわゆる狂牛病の発生動向をふまえ、2000年12月12日の厚生省医薬安全局長通知(医薬発第1226号)により(文献2:2010)、ウシ由来原料に代わってウマ由来が主流となっています。

セレブロシドは、化粧品成分においては動物の筋肉や神経 細胞膜における重要な構成要素として知られていますが、セレブロシドの定義はセラミドのスフィンゴイド塩基末端のヒドロキシ基に単糖を結合したスフィンゴ糖脂質の一種とされており(文献1:1981;文献3:1991)、広義においては、

セレブロシドの種類 結合単糖 生体における主な分布
ガラクトセレブロシド(ガラクトシルセラミド) ガラクトース 脳組織のミエリン、腎臓
グルコセレブロシド(グルコシルセラミド) グルコース すべての組織・細胞

これら2種類が分類されています(文献1:1981;文献4:2011)

広義ではこれら2種類がセレブロシドに分類されますが、19世紀にヒト大脳(セレブラム:cerebrum)から単離されたガラクトセレブロシドが最初に発見された経緯から、狭義においてはガラクトセレブロシドのみを指します(文献1:1981)

こういった背景があり、化粧品成分表示名称においては、

セレブロシドの種類 化粧品成分表示名称
ガラクトセレブロシド セレブロシド
グルコセレブロシド スフィンゴ糖脂質
グルコシルセラミド
コメヌカスフィンゴ糖脂質
コーンスフィンゴ糖脂質

このように区別されています(∗2)

∗2 化粧品成分表示名称「スフィンゴ糖脂質」の定義は、”各種糖類がグリコシド結合した糖脂質”とされており、ガラクトセレブロシドも含みますが、ガラクトセレブロシドであればセレブロシドと表示されると推測されます。

次に、セレブロシドの医薬部外品表示名称のひとつに「ウマスフィンゴ脂質」がありますが、スフィンゴ脂質の一般的な定義は、”スフィンゴイドを含む脂質の総称”とされており(文献5:1994)、スフィンゴイドを含む脂質に糖が結合したスフィンゴ糖脂質もスフィンゴ脂質に含まれるため、広義ではセレブロシドもスフィンゴ脂質の一種です。

ただし、正確には「ウマスフィンゴ脂質」はウマ由来のスフィンゴ糖脂質であるため、皮膚においてはスフィンゴ脂質そのもの(セラミドそのもの)ではないことに留意する必要があります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、洗顔料、シャンプー製品、トリートメント製品、クレンジング製品など様々な製品に使用されています。

また、セラミドをコンセプトとした製品にも配合されています。

グルコセレブロシダーゼ活性増加によるバリア改善作用

グルコセレブロシダーゼ活性増加によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚バリア機能と細胞間脂質の関係およびセラミドの合成メカニズムについて解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような脂質組成で構成されています(文献6:1995)

また、細胞間脂質は以下の図のように、

細胞間脂質におけるラメラ構造

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗3)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

∗3 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献7:1991)。

次に、細胞間脂質の産生・合成メカニズムに関しては、以下の表皮におけるセラミド産生プロセス図をみてもらえるとわかりやすいと思いますが、

表皮におけるセラミド産生プロセス

表皮細胞は、角化細胞(ケラチノサイト)とも呼ばれ、表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞は、その次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられていき、各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化し、最後にはケラチンから成る角質細胞となり、角質層にとどまったのち、角片(∗4)として剥がれ落ちます(文献8:2002)

∗4 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。

この表皮の新陳代謝は一般的にターンオーバーと呼ばれ、正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持しています(文献9:2002)

皮膚にガラクトセレブロシドの存在は認められていませんが、スフィンゴ糖脂質の一種であるグルコセレブロシドが基底層で産生され、有棘層から顆粒層へと分化を経て産生量を増やし、角質層において分解酵素であるグルコセレブロシダーゼを介してセラミドに分化されることが知られています(文献10:2008)

ただし、一般的にバリア機能は肌荒れや皮膚炎をはじめ、年齢を重ねることでも低下傾向にあり、その結果として角層水分蒸散量が増え、角層水分蒸散量が増えることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下することが知られています(文献11:2002)

とくにアトピー性皮膚炎ではセラミドEOP(セラミドⅠ)の減少が報告されており(文献12:1991)、セラミドEOPはグルコセレブロシドの一種であるアシルグルコシルセラミドから直接代謝産生されることから(文献13:1993)、アトピー性皮膚炎などバリア機能が低下した皮膚においてはスフィンゴ糖脂質からセラミドへの代謝促進が重要であると考えられます。

1995年に山口労災病院皮膚科および鐘紡化粧品研究所によって報告されたセレブロシド(ガラクトセレブロシド)の検証によると、

皮膚炎を有する54人の患者(アトピー性皮膚炎21人、皮脂欠乏性湿疹28人、他5人)に1%セレブロシド(ガラクトセレブロシド)配合クリームを、対照には基剤クリームのみを4週にわたって1日1-2回塗布した。

評価方法として、開始日より2および4週間目に、皮膚の乾燥状態、鱗屑、瘙痒について5段階(高度、中程度、軽度、軽微、なし)で評価し、開始日と比較した全般改善度を6段階(治癒、著効、かなり軽快、やや軽快、不変、憎悪)で評価した。

結果に関しては、

– アトピー性皮膚炎21例 –

1%セレブロシド配合クリームは、皮膚の乾燥に対して2および4週間後ともに基剤と比較して有意に改善を示したが、鱗屑および瘙痒に対しては基剤との有意差は認められず、総合評価として、

試料 評価(例)
極めて有用 かなり有用 やや有用
1%セレブロシド配合クリーム 11 5 5
クリームのみ 4 12 5

このように判定された。

– 皮脂欠乏性湿疹28例 –

1%セレブロシド配合クリームは、基剤と比較して皮膚の乾燥、鱗屑に対して経時的に有意な改善を示したが、瘙痒に対しては基剤との有意差は認められず、総合評価として、

試料 評価(例)
極めて有用 かなり有用 やや有用
1%セレブロシド配合クリーム 13 15 0
クリームのみ 4 24 0

このように判定された。

1%セレブロシド配合クリームは、アトピー性皮膚炎および皮脂欠乏性湿疹の乾燥皮膚の全例に対してやや有効以上の効果を示し、そのうち極めて有効はアトピー性皮膚の14例(66.7%)、皮脂欠乏性皮膚の13例(46.4%)に判定された。

皮脂欠乏性湿疹よりもアトピー性皮膚炎に有効であったのは、セレブロシド配合クリームのアトピー性皮膚炎に対する作用は単なる脂質の補充ではなく、正常な角化を促す効果であったためと考えられる。

このような検証結果が明らかにされており(文献14:1995)、セレブロシド(ガラクトセレブロシド)にバリア改善作用が認められています。

次に、培養表皮細胞を用いた試験においてガラクトセレブロシドの添加によってグルコセレブロシド分解酵素であるグルコセレブロシダーゼの活性が高まること(文献10:2008)、またガラクトセレブロシドの皮膚塗布によってグルコセレブロシダーゼの活性増加とそれに伴う角質層セラミド量の増加が明らかにされており(文献10:2008)、この作用はセラミドやグルコセレブロシドには見られないガラクトシルセラミド特有のものであると報告されています(文献15:1996)

これらの試験結果から、バリア機能に対するセレブロシド(ガラクトセレブロシド)の作用メカニズムは、グルコセレブロシド(グルコシルセラミド)分解酵素であるグルコセレブロシダーゼの活性を高めることによるグルコセレブロシドの分化促進であると考えられます。

ウマスフィンゴ脂質は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 上限なし
育毛剤 上限なし
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 上限なし
薬用口唇類 上限なし
薬用歯みがき類 上限なし
浴用剤 1.0

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セレブロシドの安全性(刺激性・アレルギー)について

セレブロシドの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載(∗5)
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

∗5 医薬部外品原料規格2006に収載されているのは、ウマスフィンゴ脂質です。

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

– 皮膚炎を有する場合 –

山口労災病院皮膚科の症例報告(文献13:1995)によると、

  • [ヒト試験] 54人の患者(アトピー性皮膚炎21人、皮脂欠乏性湿疹28人、その他の皮膚疾患5人)に1%セレブロシド(ガラクトセレブロシド)配合クリームを、対照には基剤クリームのみを1日1-2回塗布し、試験期間中の副作用を評価したところ、いずれの患者も副作用を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、副作用なしと報告されているため、皮膚炎を有する場合において皮膚刺激性および皮膚感作はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

セレブロシドはバリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:バリア改善成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 大塚 英昭, 他(1981)「糖脂質の構造と生理活性」ファルマシア(17)(8),711-717.
  2. 厚生省(2000)「ウシ等由来物を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保について」医薬発第1226号.
  3. 日野 亨, 他(1991)「スフィンゴ糖脂質の合成」ファルマシア(27)(11),1164-1169.
  4. 平林 義雄(2011)「スフィンゴ脂質とセラミド概論」セラミド―基礎と応用-,4-13.
  5. 大木 道則, 他(1994)「スフィンゴ脂質」化学辞典,729.
  6. 芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.
  7. G Imokawa, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  8. 朝田 康夫(2002)「表皮を構成する細胞は」美容皮膚科学事典,18.
  9. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  10. 杉山 義宣(2008)「皮膚の機能制御とスキンケア」化学と生物(46)(2),6135-141.
  11. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  12. G Imokawa, et al(1991)「Decreased Level of Ceramides in Stratum Corneum of Atopic Dermatitis: An Etiologic Factor in Atopic Dry Skin?」Journal of Investigate Dermatology(96)(4),523-526.
  13. 浜中 すみ子(1993)「皮膚の糖脂質」Cosmetology(1),72-79.
  14. 浜中 すみ子, 他(1995)「アトピー性皮膚, 皮脂欠乏性皮膚などに対するセレブロシド含有クリーム外用の試み」皮膚(37)(5),619-625.
  15. 原 真理子, 他(1996)「表皮のスフィンゴ糖脂質について」Fragrance Journal臨時増刊(15),109-116.

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