コメヌカスフィンゴ糖脂質とは…成分効果と毒性を解説

バリア改善 保湿 美白
コメヌカスフィンゴ糖脂質
[化粧品成分表示名称]
・コメヌカスフィンゴ糖脂質

[慣用名]
・米セラミド

イネ科植物イネ(学名:Oryza sativa 英名:Rice)の種子から生じる米糠および米胚芽より得られるスフィンゴ脂質の一種であり、化学構造的に疎水性であるセラミドを骨格構造として親水性の単糖であるグルコースが結合した油溶性のセラミド配糖体であるスフィンゴ糖脂質(β-グルコシルセラミド)です(文献1:2007)

コメ由来であることから慣用的に「米セラミド」または「植物セラミド」と呼ばれることがありますが、コメヌカスフィンゴ糖脂質はセラミドそのものではなく、セラミドに糖が結合したスフィンゴ糖脂質であるため、誤解しないよう注意が必要です。

スフィンゴ糖脂質には、以下の2種類が存在し、

  • グルコシルセラミド:セラミド骨格にグルコースが結合
  • ガラクトシルセラミド:セラミド骨格にガラクトースが結合

グルコシルセラミドは、すべての組織・細胞に存在し、400種類以上の糖脂質の共通した前駆体糖脂質として重要であり、これに対しガラクトシルセラミドは、脳組織のミエリン、腎臓などの組織に特異的に存在していることから(文献2:2011)、コメヌカスフィンゴ糖脂質はグルコシルセラミドを指します。

生体内におけるスフィンゴ糖脂質の機能は、スフィンゴ脂質を除去・阻害した細胞では細胞基質間の接着が阻害され、スフィンゴ糖脂質の発現を回復させた細胞ではこの阻害はみられないことから、細胞期質間接着にはスフィンゴ糖脂質が必要であることが示されています(文献3:1996)

細胞基質間接着に働いている主要な接着分子は、細胞と細胞外マトリックスの結合に関与する糖タンパク質であるインテグリンであることから、スフィンゴ糖脂質はインテグリンが働くための環境づくりに必要である可能性が示唆されています(文献3:1996)

また、以下の肌図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮におけるセラミド産生プロセス

グルコシルセラミドは、表皮基底層から顆粒層まで増加し、角質層ではほとんど消失しますが、セラミドはグルコシルセラミドを前駆体として生成され、角質層に蓄積し、角質細胞間脂質の主成分として存在しています(文献4:2004)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、米をコンセプトにした製品、スキンケア化粧品、洗顔料、洗浄製品、シート&マスク製品などに使用されています(文献4:2004)

スフィンゴ糖脂質の効果を発揮させるにはナノ化および/またはリポソーム化が必要ですが、ほとんどのコメヌカスフィンゴ糖脂質は、ナノ化および/またはリポソーム化した状態で原料提供されているため、各社の乳化技術によって程度の差はありますが、以下の作用・効果は有していると考えられます。

セラミド産生増加によるバリア機能改善作用

セラミド産生増加によるバリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚バリア機能と細胞間脂質の関係について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数のアミノ酸が存在しており、またセメントとしての細胞間脂質はセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

そしてこれら角質層の構成物がバランスよく存在することで健常なバリア機能が維持されます。

また角質細胞の一番外側には以下の画像のように、

皮膚における角質の構造図

細胞膜が存在し、細胞膜の内側には周辺帯(cornified Sell envelope:CE)と呼ばれる極めて強靭な裏打ち構造の不溶性タンパクの膜が角質細胞を包んでいます(文献5:2011)が、セラミドはインボルクリンやロリクリンなどCE構成タンパクと共有結合することで、角質と細胞間脂質を強固に接着し、健常なバリア機能を形成しています。

さらに皮膚表面から水分が蒸散されることを経皮水分蒸散(TEWL:Transepidermal Water Loss)といいますが、経皮水分蒸散が大きくなるということは、バリア機能が低下していることを意味しており、経皮水分蒸散は、角質層のバリア機能低下のバロメーターでもあります(文献6:2002)

一般的に経皮水分蒸散量は、年齢を重ねるごとに大きくなる傾向にあり、また表皮の新陳代謝異常が起こると、角質層の細胞間脂質に形状異常がみられるようになり、経皮水分蒸散が大きくなることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下する結果となります(文献6:2002)

経皮水分蒸散の増大は、角質層の保湿機能の低下につながり、この2つは逆相関関係にあると考えられます。

2012年にオカヤスによって報告された技術資料によると、

ヒト3次元培養表皮モデルを用いてコメヌカスフィンゴ糖脂質のナノリポソームおよび対照として合成グルコシルセラミドのナノリポソームを7日間培養し、セラミド2、セラミド5およびセラミド6を定量した。

その結果、ともに内因性セラミド量を生成・増加させていることが明らかとなった。

内因性セラミドとしてセラミド2については大きな変動はなかったが、セラミド5およびセラミド6については有意に増加した。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2012)、スフィンゴ糖脂質にセラミド産生増加によるバリア機能改善作用が認められています。

また2013年にオリザ油化によって公開された技術資料によると、

13人の被検者(男性7人、女性5人)の左右の手の甲に1%コメヌカスフィンゴ糖脂質配合クリームおよび未配合クリームをそれぞれ4週間塗布し、塗布前後にTEWL(経表皮水分蒸散量)およびキメの粗さを測定した。

その結果、男女ともにTEWLが改善し、キメも細かくなることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2013)、スフィンゴ糖脂質にセラミド産生増加によるバリア機能改善作用が認められています。

水分保持能による保湿作用

水分保持能による保湿作用に関しては、スフィンゴ糖脂質そのものは優れたバリア効果を示すものの、他の油性基剤との相溶性が高くないために安定な製剤化が難しく、さらに角質細胞間に滞留・存在させ、その状態で水分保持効果を期待することはできません(文献7:2012)

一方で、この課題を解決するためにグルコシルセラミドであるスフィンゴ糖脂質をリポソームに内包したり、またはナノ化した上で水溶液に分散させる技術によって、角質層に効率的に滞留・存在させることが可能になっており、スフィンゴ糖脂質を皮内に浸透させることで、角質層のセラミドが生成・増加されることが明らかになっています(文献7:2012)

2004年にキッコーマンバイオケミファによって報告されたコメヌカスフィンゴ糖脂質の角層水分量への影響検証によると、

コメ由来のスフィンゴ糖脂質およびナノ化スフィンゴ糖脂質の保湿性を比較検討するために、室温20-22℃、湿度45-47%の環境下で、ヒト前腕部内側に1%スフィンゴ糖脂質および1%ナノ化スフィンゴ糖脂質配合溶液を一定量塗布し、経時的に皮膚の電気伝導度を測定し、塗布前後の比率で保湿性を評価したところ、以下のグラフのように、

スフィンゴ糖脂質およびナノ化スフィンゴ糖脂質塗布による角層水分量変化の比較

ナノ化スフィンゴ糖脂質溶液は、スフィンゴ糖脂質溶液と比較して有意に電気伝導度が高く、それはとくに60分以降で顕著であり、保湿性に優れていることが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:2004)、コメヌカスフィンゴ糖脂質に水分保持能による保湿作用が認められています。

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

2004年にオリザ油化によって報告されたコメヌカスフィンゴ糖脂質のメラニン生成への影響検証によると、

マウスB16メラノーマ細胞を24時間培養し、95%以上コメヌカスフィンゴ糖脂質を最終濃度が1、10、30および100μg/mL(∗1)になるように添加し、比較として既存の美白剤であるコウジ酸、ビタミンC、エラグ酸およびアルブチンを同様に添加した上で、6日間培養した後にメラニン生成量を測定したところ、以下のグラフのように(∗2)

∗1 1mg/mLは0.1%です。
∗2 最初の棒グラフは、すべて100μg/mLの結果です。

コメヌカスフィンゴ糖脂質のメラニン生成抑制効果

コメヌカスフィンゴ糖脂質のメラニン生成抑制効果

コメヌカスフィンゴ糖脂質は、濃度依存的にメラニンの生成を抑制し、コウジ酸の活性には及ばないまでも、ほかの既存美白剤よりも強いメラニン生成抑制作用を有することが示唆された。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2004)、コメヌカスフィンゴ糖脂質にメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

ただし、この検証結果のみで考えた場合、10μg/mL以下濃度ではほとんどメラニン生成抑制効果を示さないため、化粧品ではメラニン生成抑制効果ほとんど期待できない可能性が高いと考えられます。

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コメヌカスフィンゴ糖脂質の安全性(刺激性・アレルギー)について

コメヌカスフィンゴ糖脂質の現時点での安全性は、

  • 生体内に存在するスフィンゴ脂質の一種
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

生体内に存在するスフィンゴ脂質の一種であり、また10年以上の使用実績の中で皮膚感作の報告がないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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スフィンゴ糖脂質はバリア改善成分、保湿成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:バリア改善成分 保湿成分 美白成分

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文献一覧:

  1. 菊池 光倫, 他(2007)「米由来機能性油脂の特徴とその化粧品への応用」Fragrance Journal 臨時増刊号(20),142-149.
  2. 平林 義雄(2011)「スフィンゴ脂質とセラミド概論」セラミド―基礎と応用-,4-13.
  3. 市川 進一, 他(1996)「スフィンゴ糖脂質の機能解析と医薬品開発」ファルマシア(32)(11),1365-1368.
  4. 張 慧利, 他(2004)「米由来スフィンゴ糖脂質の機能性とその応用」Fragrance Journal(32)(11),46-53.
  5. 清水 宏(2011)「周辺帯」あたらしい皮膚科学第2版,9.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. 岡安 武蔵, 他(2012)「内因性セラミドの生成・増加方法」特開2012-184166.
  8. オリザ油化株式会社(2013)「オリザセラミド」技術資料.
  9. 佐藤 稔秀(2004)「スフィンゴ糖脂質の化粧品への応用」Fragrance Journal(32)(11),41-45.

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