クロルヒドロキシAlの基本情報・配合目的・安全性

クロルヒドロキシAl

化粧品表示名 クロルヒドロキシAl
医薬部外品表示名 クロルヒドロキシアルミニウム
部外品表示簡略名 クロルヒドロキシAl
INCI名 Aluminum Chlorohydrate
配合目的 収れん制汗 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される塩化Alを部分中和した塩基性塩化アルミニウム錯体(∗1)です[1][2]

∗1 錯体(さくたい)とは、金属と非金属の原子が結合した構造を持つ化合物(金属錯体)を指します。

クロルヒドロキシAl

1.2. 物性・性状

クロルヒドロキシAlの物性・性状は、

状態 結晶性粉末または固体
溶解性 水に可溶、エタノールに不溶

このように報告されています[3a][4]

1.3. 化粧品以外の主な用途

クロルヒドロキシAlの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 2015年に日本皮膚科学会が作成・改訂した原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版の中で「推奨度B:行うよう勧められる」として腋窩、手掌多汗症の外用療法に、「推奨度C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない」として足底多汗症の外用療法に、「推奨度B-C1」として頭部顔面多汗症の外用療法にそれぞれ推奨されており、選択的に原発性局所多汗症の院内製剤(外用製剤)として処方されています[5]。また、基剤目的の医薬品添加剤として外用剤に用いられます[3b]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品およびに配合される場合は、

  • 収れん作用
  • 制汗作用
  • 配合目的についての補足

主にこれらの目的で、スキンケア製品、制汗剤、ヘアカラー製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、ボディケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 収れん作用

収れん作用に関しては、クロルヒドロキシAlは金属塩の一種であり、皮膚のタンパク質を凝固・収縮させることによる強力な収れん作用を有していることから、皮脂腺や汗腺の開口部を収縮させて皮脂や発汗を抑制し、メイクアップ製品による化粧崩れを抑える目的や肌をひきしめる目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品などに使用されています[6][7][8]

2.2. 制汗作用

制汗作用に関しては、まず塩化Alの制汗作用メカニズムについて解説します。

塩化Alは、表皮内の導管(汗管)にアルミニウムを含む水酸化物のゲルが形成され、このゲルにより表皮内汗管が物理的に閉塞することによって汗が皮膚表面に到達するのをブロックし、発汗の減少が起こるという説が複数の実証を経て支持されていますが[9][10]、このゲルは角層より下層に形成され、皮膚刺激を引き起こすことから塩化Alは制汗成分としては使用されていない状況があります。

一方で、クロルヒドロキシAlは塩化Alと同様の作用メカニズムで制汗作用を発揮しますが、そのゲルは塩化Alよりも上層である角層で形成されることが立証されており[11][12]、皮膚刺激性の点からも塩化Alよりずっと低いことから[13a]、実用的な制汗成分として現在でも使用されています。

2.3. 配合目的についての補足

クロルヒドロキシAlは金属塩であり、金属イオンと反応して発色する染毛剤(発色剤)の染毛性を向上させる濃染効果を発揮することが報告されており[14]、染毛剤の濃染効果目的でヘアカラー製品に使用されています。

3. 配合量範囲

クロルヒドロキシアルミニウムは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 2.0
育毛剤 2.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 2.0
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 配合不可
染毛剤 1.0
パーマネント・ウェーブ用剤 1.0

4. 安全性評価

クロルヒドロキシAlの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
  • 発がん性:明確な証拠なし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

British Industrial Biological Research Associationの安全性データ[15]によると、

  • [動物試験] マウス、ウサギおよびブタの皮膚に10%および25%クロルヒドロキシAl水溶液を5日間にわたって毎日開放塗布し、皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は濃度10%および25%濃度において皮膚刺激を示さず、またケラチン中にアルミニウムもみられなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度25%以下においてアルミニウムの皮膚内浸透および皮膚刺激なしと報告されていること、医薬部外品として配合上限が濃度2%に定められていること、塩化Alと比較して腋窩皮膚に対する刺激性もずっと低いと報告されていることなどから[13b]、濃度2%以下において一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.4. 発がん性

クロルヒドロキシAlの発がん性については、まず前提知識として女性ホルモンの一種であるエストロゲンと乳がんの関係について解説します。

エストロゲンは乳房の発達を直接的に関わっており、一般にその分泌量は30歳前にピークを迎え30代で次第に低下していき、40代で急速に低下することが知られています[16a]

一方で、40代では分泌量が低下したエストロゲンを受け止めるために乳管上皮細胞にエストロゲン受容体(ER)が増えてくることがわかっていますが、エストロゲン受容体(ER)と結びついたエストロゲンは、細胞分化や細胞増殖を促進する働きがあることから乳がんの発症につながると考えられています[16b]

アルミニウム化合物を含む脇用制汗スプレーは乳房の近くで使用されることから、頻繁に使用することでアルミニウムが乳房の皮膚に吸収され、エストロゲン様効果をもたらす可能性があり、その結果として乳がんの発生に寄与する可能性が指摘されていましたが[17]、2016年に公開されたNCI(National Cancer Institute:アメリカ国立がん研究所)の制汗剤/デオドラント剤と乳がんに関するレビューによると、

インターネットを中心に、制汗剤の使用が乳がんを引き起こすという噂が広まり続けていますが、今日まで発表されているいくつかの制汗剤と乳がんに関する研究報告では、アルミニウム化合物を含む制汗剤またはデオドラント剤の使用による実質的な悪影響が確認されておらず、乳がんのリスクを増加させるという仮説を裏付ける証拠はない。

このように報告されており[18]、現段階の結論としては、アルミニウム含有脇用制汗剤または化粧品の使用が乳がんのリスクを高めることを示す明確な証拠はないと結論付けています。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「クロルヒドロキシAl」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,382.
  2. 近 亮・田端 勇仁(2003)「制汗剤」化粧品事典,554-555.
  3. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「クロルヒドロキシアルミニウム」医薬品添加物事典2021,205-206.
  4. 宇山 侊男, 他(2020)「クロルヒドロキシAl」化粧品成分ガイド 第7版,110.
  5. 藤本 智子, 他(2015)「原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版」日本皮膚科学会雑誌(125)(7),1379-1400. DOI:10.14924/dermatol.125.1379.
  6. 鈴木 一成(2012)「クロルヒドロキシアルミニウム」化粧品成分用語事典2012,423-424.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「皮膚収れん剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,246-248.
  8. 西山 聖二・熊野 可丸(1989)「基礎化粧品と皮膚(Ⅱ)」色材協会誌(62)(8),487-496. DOI:10.4011/shikizai1937.62.487.
  9. H.H. Reller, et al(1977)「Pharmacologic and toxicologic effects of topically applied agents on the eccrine sweat glands」Advances in Modern Toxicology(4),18-54.
  10. E. Holzle & A.M. Kligman(1979)「Mechanism of antiperspirant action of aluminum Salts」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(30)(5),279-295.
  11. R.P. Quatrale, et al(1981)「The Mechanism of Antiperspirant Action by Aluminum Salts. I. The Effect of Cellophane Tape Stripping on Aluminum Salt-Inhibited Eccrine Sweat Glands」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(32)(2),67-73.
  12. R.P. Quatrale, et al(1985)「The Site of Antiperspirant Action by Aluminum Salts in the Eccrine Sweat Glands of the Axilla」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(36)(6),435-440.
  13. abR.P. Quatrale(1995)「アルミニウムクロルハイドレート」制汗剤とデオドラント,96-97.
  14. 資生ケミカル株式会社(2010)「染毛方法」特開2010-248103.
  15. A.B.G. Lansdown(1973)「Production of epidermal damage in mammalian skins by some simple aluminium compounds」British Journal of Dermatology(89)(1),67-76. DOI:10.1111/j.1365-2133.1973.tb01919.x.
  16. ab“All About 乳がん.Info”(-)「女性ホルモンは乳がんにどのような影響を及ぼしますか?」, 2022年8月8日アクセス.
  17. P.D. Darbre(2005)「Aluminium, antiperspirants and breast cancer」Journal of Inorganic Biochemistry(99)(9),1912-1919. DOI:10.1016/j.jinorgbio.2005.06.001.
  18. National Cancer Institute(2016)「Antiperspirants/Deodorants and Breast Cancer」, 2022年8月28日アクセス.

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