タチジャコウソウ花/葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

収れん成分 抗菌成分 抗老化成分 保湿成分
タチジャコウソウ花/葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・タチジャコウソウ花/葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・タイムエキス(2)

シソ科植物タチジャコウソウ(学名:Thymus vulgaris 英名:Thyme)の花・葉からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

同じタチジャコウソウの成分としてタチジャコウソウ花/葉/茎エキスがありますが、どちらも主要な成分組成はほとんど同じです。

そのため、開発メーカーまたは研究されている効果が異なっていることで公開されている作用も異なっていますが、どちらも程度の違いこそあれ、類似した効果を有している可能性も十分に考えられます。

タチジャコウソウ花/葉エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 精油:チモール
  • タンニン
  • フラボノイド:アピゲニン、ルテオリン
  • モノテルペン:α-ピネン、p-シメン、l-リナロール
  • トリテルペン:ウルソール酸、オレアノール酸

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2016)

タチジャコウソウは一般的にはタイムと呼ばれ、その歴史は古く、初めて用いたのは紀元前3500年ごろのシュメール人とされており、メソポタミアの粘土板医学書に薫香に用いたと記載されているといいます。

古代エジプトでは、防腐効果の高さからミイラの防腐剤に使用し、空気の浄化や疾病蔓延の予防に使用されました。

数あるハーブの中でも最も抗菌力の強いハーブであることから「勇気の象徴」とされ、タイムの匂いを嗅ぐだけで勇気と強さが得られると信じられており、中世の貴婦人の間では1枚のタイムとミツバチを刺繍したスカーフを戦に出陣する恋人や夫に贈る習わしがありました(文献3:2018)

タイムに含まれるアピゲニンやチモニンなどのフラボノイド類やサポニンは、鎮痙作用、鎮咳・去痰作用が報告されており、気管支炎、喘息、百日咳などの呼吸器系疾患や食あたり、吐き気、消化不良による口臭などの消化器系疾患に用いられます(文献2:2016)

また、タイムの強力な抗菌力は、チモールなどのフェノール系精油成分によるものです(文献2:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、洗顔料、洗浄製品、ヘアケア製品、日焼け止め製品など幅広く様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献4:2018;文献5:2002)

エコサート認証原料もあるため、オーガニック化粧品にも配合されます。

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とエラスチンおよびエラスターゼについて解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献6:2002)

エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素であり、通常はエラスチンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとエラスターゼが活性化し、エラスチンの分解が促進されることでエラスチンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。

このような背景から、皮膚のハリ・弾力を維持するエラスチンの変性を防止をするためにエラスターゼの活性を抑制することは重要であると考えられます。

2002年に一丸ファルコスによって公開された技術情報によると、

エラスターゼ活性阻害作用がある有用な植物の開発をテーマとし、探索したところ、ウコンセイヨウノコギリソウゼニアオイ、タイム、ヤーコン、ローズヒップにエラスターゼの活性抑制効果を見出した。

invitro試験において膵臓由来エラスターゼおよび合成基質N-succinyl-ala-ala-ala-p-nitroanildeを用いて各植物抽出物を0.01%濃度で添加し、また比較対照としてグリチルリチン酸ジカリウムを用いて評価したところ、以下のグラフのように、

各植物抽出物のエラスターゼ活性阻害作用

0.01%タイム抽出物は、有意にエラスターゼ活性を抑制することが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2002)、タチジャコウソウ花/葉エキスにエラスターゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

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タチジャコウソウ花/葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

タチジャコウソウ花/葉エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献5:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの除毛した背部に0.5%タイム抽出物水溶液を塗布し、塗布24、48および72時間後に一次刺激性を紅斑および浮腫を指標として評価したところ、すべてのウサギにおいて紅斑および浮腫を認めず、陰性と判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの除毛した側腹部に0.5%タイム抽出物水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週間にわたって適用し、各週の最終日の翌日に紅斑および浮腫を指標として刺激性を評価したところ、すべてのウサギにおいて塗布後2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、累積刺激性に関しては問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激がないため、0.5%濃度において皮膚一次刺激性および累積刺激性刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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タチジャコウソウ花/葉エキスは収れん成分、抗菌成分、抗老化成分、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:収れん成分 抗菌成分 抗老化成分 保湿成分

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文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,376.
  2. 林真一郎(2016)「タイム」メディカルハーブの事典 改定新版,90-91.
  3. ジャパンハーブソサエティー(2018)「タイム」ハーブのすべてがわかる事典,126-127.
  4. 一丸ファルコス株式会社(2018)「ファルコレックス タイム B」技術資料.
  5. 一丸ファルコス株式会社(2002)「エラスターゼ活性阻害剤及び化粧料組成物」特開2002-205950.
  6. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

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