レモン果実エキスとは…成分効果と毒性を解説



・レモン果実エキス
[医薬部外品表示名]
・レモンエキス
ミカン科植物レモン(学名:Citrus limon 英名:lemon)の果実を圧搾・ろ過し得られたレモン果汁を濃縮し、グリセリンなどを添加することにより得られる、またはレモン果実からBGまたはPGで抽出して得られる抽出物(植物エキス)です。
レモン(檸檬)は、インドヒマラヤ地方を原産とし、10世紀にイタリアのシチリア島、フランスのコルシカ島、スペインなどヨーロッパに伝わり、現在は主にインド、中国、メキシコ、米国、アルゼンチン、ブラジル、米国、スペインなどで栽培されています(文献1:2017;文献2:2019)。
日本においては1875年にレモンの苗が輸入され、大正初期に広島県や和歌山県で栽培されたことからレモン栽培が広がり、現在は主に広島県の呉市、尾道市、大崎上島町や愛媛県、和歌山県などで栽培されています(文献1:2017;文献3:2012)。
レモン果実エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、
分類 | 成分名称 | |
---|---|---|
有機酸 | クエン酸、リンゴ酸 | |
ビタミン | アスコルビン酸 | |
アミノ酸 | アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、プロリン など | |
テルペノイド | モノテルペン | シトラール など |
これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2017)。
レモン果実の化粧品以外の主な用途としては、酸味が強くさっぱりとした爽やかな芳香があることから、料理に添えて香りや酸味を楽しむ卓上酸味料的に用いられ、ほかにも香り付けとして菓子類に、香りと酸味を活かす目的で酒類、ジュース類、紅茶などに用いられています(文献1:2017)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、アウトバストリートメント製品など様々な製品に汎用されています。
また、フルーツ(果物)、シトラス(柑橘類)またはレモンをコンセプトにした製品にも配合されています。
収れん作用
収れん作用に関しては、レモン果実エキスは有機酸の一種であり収れん作用を有することで知られるクエン酸の含有量が多く(文献1:2017)、皮膚を引き締める目的で夏用の肌引き締め系スキンケア製品をはじめ、ボディケア製品、洗顔料、メイクアップ製品などに用いられています(文献4:2012;文献5:2020)。
2000年に資生堂によって報告されたレモン果実エキスのヒト皮膚に対する影響検証によると、
このような試験結果が明らかにされており(文献6:2000)、レモン果実エキスに収れん作用が認められています。
糖類の感触改良
糖類の感触改良に関しては、糖類は保湿剤として化粧品に汎用されている成分であり、処方において糖類の配合量をを増やすとべたついた使用感をともなう傾向にあることが知られていますが、糖類にレモン果実エキスを併用することで糖類のべたついた感触を緩和することが明らかにされています(文献6:2000)。
複合植物エキスとしてのレモン果実エキス
レモン果実エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、レモン果実エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | ファルコレックスBX46 |
---|---|
構成成分 | BG、水、レモン果実エキス、スギナエキス、ホップエキス、セイヨウアカマツ球果エキス、ローズマリー葉エキス |
特徴 | 角質層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用、エラスチン保護による抗老化作用、SOD様作用および過酸化脂質抑制による抗酸化作用など、紫外線による皮膚障害から多角的に皮膚を保護する5種類の混合植物抽出液 |
原料名 | ファルコレックスBX47 |
---|---|
構成成分 | BG、水、ゴボウ根エキス、レモン果実エキス、セイヨウキズタ葉/茎エキス、オランダガラシ葉/茎エキス、セージ葉エキス、サボンソウ葉エキス |
特徴 | リパーゼ活性阻害によるオムツかぶれ改善目的で設計された6種類の混合植物抽出液 |
原料名 | ファルコレックスBX52 |
---|---|
構成成分 | BG、水、ゴボウ根エキス、トウキンセンカ花エキス、レモン果実エキス、ホップエキス、セイヨウオトギリソウ花/葉/茎エキス、セージ葉エキス、サボンソウ葉エキス |
特徴 | 抗菌およびリパーゼ活性阻害によるオムツかぶれ改善目的で設計された6種類の混合植物抽出液 |
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
レモン果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
∗∗∗
レモン果実エキスは収れん成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:収れん成分
∗∗∗
参考文献:
- 杉田 浩一, 他(2017)「レモン」新版 日本食品大事典,848-849.
- 中央果実協会(2019)「レモン・ライム」, <http://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_138.pdf> 2021年2月7日アクセス.
- 広島県(2012)「瀬戸内 広島レモンとは」, <https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kazyuyasaikaki/setoushihiroshimalemon.html> 2020年1月30日アクセス.
- 鈴木 一成(2012)「レモンエキス」化粧品成分用語事典2012,355-356.
- 宇山 侊男, 他(2020)「レモン果実エキス」化粧品成分ガイド 第7版,155.
- 株式会社資生堂(2000)「皮膚外用剤」特開2000-007550.