カキタンニンとは…成分効果と毒性を解説





・カキタンニン
[医薬部外品表示名称]
・カキタンニン
カキノキ科植物カキノキ(学名:Diospyros kaki 英名:Persimmon)の果実から得られる縮合型タンニンであり、有機酸です。
カキノキは中国を原産とし、現在は中国、韓国および日本の東アジアを中心に栽培されており、日本では和歌山県および奈良県が生産の⅓を占め、柿はこれらの地域での特産品となっています。
学名であるDiospyrosのdiosは神を、pyrosは穀物を意味し、「神様の食べ物」という意味を表しています。
柿の渋味は、豊富に含まれているポリフェノールの一種であるタンニン、縮合型タンニンに起因しており、渋柿や未熟な甘柿にはポリフェノールが含まれているため、口に含むと舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して強い渋味(収斂味)を呈します(文献3:2016)。
一方で成熟した甘柿あるいは渋抜きした渋柿(干し柿)では、ポリフェノールが不溶化されており、舌や口腔粘膜のタンパク質と結合せず、渋味を感じないため、美味しく食することができます(文献3:2016)。
縮合型タンニンとは、茶の渋味成分である4種のカテキン類(エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレート)が化学構造的にC-C結合によって縮合した化合物で、水に不溶ですが、カキタンニンには加水分解性タンニンである没食子酸がエステル結合しており、その部分で加水分解されるため、水溶性となっています(文献4:2016)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、制汗剤、デオドラント製品、消臭製品などに使用されています(文献1:2012)。
収れん作用
収れん作用に関しては、カキタンニンは口に入れると強い渋味を感じますが、これはカキタンニンが舌や口腔粘膜のタンパク質と結合し、タンパク質を収縮・凝固させることに起因しており、このタンパク質収縮・凝固作用こそが収れん作用となっています(文献3:2016)。
またカキタンニンは、タンニンの中でも平均分子量が11,000Daと最も分子量が大きい部類であり、収れん作用も特に強いと考えられ(文献4:2016)、主に毛穴を引き締める目的で頭皮ケア製品、シャンプー、制汗剤などに配合されます。
抗菌作用
抗菌作用に関しては、2015年にリリース科学工業によって公開されたカキタンニンにおける抗菌性物質の最小発育阻止濃度の検証によると、
抗菌性の強さを表す最小発育阻止濃度(MIC:minimum inhibitory concentration)(∗1)を基準として、カキタンニンの抗菌性を下記5菌種を使用して検討したところ、以下の表のように、
∗1 MICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さい(濃度が低い)ほど抗菌力が高いことを意味します。
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
- 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
- 大腸菌(Escherichia coli)
- 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
- アクネ菌(Propionibacterium acnes)
菌種 | MIC(%) |
---|---|
黄色ブドウ球菌 | 5.00 |
緑膿菌 | 5.00 |
大腸菌 | 5.00 |
表皮ブドウ球菌 | 1.50-2.00 |
アクネ菌 | 3.00 |
カキタンニンは、これら5種類の菌種に優れた抗菌性を有することが確認された。
このような検証結果が明らかにされており(文献1:2015)、カキタンニンに抗菌作用が認められています。
タール色素の変色・退色防止における紫外線吸収剤の耐光性促進作用
タール色素の変色・退色防止における紫外線吸収剤の耐光性促進作用に関しては、まず前提知識としてタール色素と紫外線吸収剤の関係を解説します。
化粧品またはヘアケア製品において赤色102号など●色●号といったタール色素が配合されている場合、通常はその色素が光による変色や退色を防止する目的で紫外線吸収剤が併用されていますが、透明容器など遮光性の低い容器が使用されている場合は、紫外線吸収剤の耐光性効果だけでは十分とはいえない場合があります。
カキタンニンには、有機系紫外線吸収剤の耐光性を著しく向上する作用が認められており(文献6:2006)、そういった場合に紫外線吸収剤と併用し、紫外線吸収剤の耐光性を向上させるために配合されます。
ノネナールの消臭作用
ノネナールの消臭作用に関しては、まず前提知識としてノネナール酸について解説します。
ノネナールは不飽和アルデヒドの一種であり、いわゆる加齢臭に深く関わっている物質です。
そのため、ノネナールを抑制・除去することは、加齢臭の消臭に重要であると考えられます。
2001年に日本メナード化粧品によって公開されたカキタンニンの加齢臭消臭検証によると、
0.0001%-5%濃度のカキタンニンを用いて不飽和アルデヒドであるノネナールの消臭効果を検討したところ、以下の表のように、
カキタンニン濃度(%) | ノネナール消臭率(%) | 評価 |
---|---|---|
0 | 0 | ☓ |
0.0001 | 80 | ○ |
0.001 | 95 | ○ |
0.01 | 100 | ◎ |
1 | 100 | ◎ |
3 | 100 | ◎ |
5 | 100 | ◎ |
カキタンニンは、0.01%濃度以上で100%不飽和アルデヒドを消臭することが示された。
次に、加齢臭に悩む被検者10名の症状が気になる部位に各濃度のカキタンニン配合製剤または対照として未配合製剤を2週間連用したうえで、5段階評価(5:著効、4:かなりの効果、3:わずかな効果、2:ほとんど効果なし、1:効果なし)してもらったところ、以下の表のように、
製品の種類 | カキタンニン濃度(%) | ノネナールの官能評価 |
---|---|---|
ミスト | 0 | 2.6 |
0.05 | 4.8 | |
ジェル | 0 | 2.2 |
0.10 | 5.0 | |
化粧水 | 0 | 2.8 |
0.5 | 5.0 | |
エアゾール | 0 | 2.0 |
0.05 | 4.6 | |
乳液 | 0 | 1.4 |
0.001 | 4.1 |
カキタンニン配合製品は消臭効果に優れた評価であった。
このような検証結果が明らかにされており(文献5:2001)、カキタンニンにノネナールの消臭作用が認められています。
カキタンニンの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性:ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
- [ヒト試験] 5%濃度以下のカキタンニン(pH4.5以上)を対象とした皮膚刺激性試験において皮膚刺激性なし
と記載されています。
試験データをみるかぎり、5%濃度以下およびpH4.5以上において皮膚刺激性なしと報告されているため、5%濃度以下およびpH4.5以上において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
∗∗∗
カキタンニンは収れん成分、抗菌成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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参考文献:
- リリース科学工業株式会社(2015)「PANCIL」技術資料.
- 鈴木 一成(2012)「カキタンニン」化粧品成分用語事典2012,432.
- 米谷 俊, 他(2016)「柿ポリフェノールの機能性」日本食品科学工学会誌(63)(7),331-337.
- 島本 整(2016)「日本文化に根付いた柿渋の化学」化学と教育(64)(7),348-349.
- 日本メナード化粧品株式会社(2001)「体臭消臭剤」特開2001-302483.
- 日本メナード化粧品株式会社(2006)「化粧料」特開2006-169144.