アルムKとは…成分効果と毒性を解説




・アルムK(改正名称)
・硫酸(Al/K)(旧称)
[医薬部外品表示名称]
・硫酸アルミニウムカリウム、乾燥硫酸アルミニウムカリウム
[慣用名]
・ミョウバン、カリウムミョウバン、カリミョウバン、焼ミョウバン
化学構造的に無機酸の一種である硫酸(H2SO4)のアルミニウム塩と硫酸(H2SO4)のカリウム塩を合成した硫酸アルミニウムカリウム塩であり、分子量474.39のミョウバン(∗1)(金属塩)です(文献1:1994)。
∗1 ミョウバン(明礬 英名:Alum)とは、化学構造的に一価イオン(カリウム、アンモニウム、ナトリウムなど)の硫酸塩と三価イオン(アルミニウム、クロム、鉄)の硫酸塩とが化合した複塩の総称であり、アルムK(硫酸アルミニウムカリウム)は一価イオンの一種であるカリウムと三価イオンの一種であるアルミニウムの硫酸塩が化合した複塩です。一般的に単に「ミョウバン」といえば、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物(化粧品成分表示名称:アルムK 医薬部外品表示名称:硫酸アルミニウムカリウム)を指しますが、他のミョウバンと混同を避ける意図を含む場合は「カリミョウバン」「カリウムミョウバン」と呼びます。
化粧品成分表示名称としての「アルムK」は、無水物と水和物の両方が含まれており、医薬部外品表示名称および慣用名はそれぞれ以下のように分けられます。
種類 | 化粧品表示名称 | 医薬部外品表示名称 | 慣用名 |
---|---|---|---|
水和物 | アルムK(改正名称) 硫酸(Al/K)(旧称) |
硫酸アルミニウムカリウム | カリウムミョウバン カリミョウバン |
無水物 | 乾燥硫酸アルミニウムカリウム | 焼ミョウバン |
硫酸のアルミニウム塩であるミョウバンは、温泉の一種である明礬泉の主要成分であり、古くから慢性皮膚疾患や手足多汗症、慢性婦人疾患などに対する温泉療法に用いられてきた歴史があります(文献2:1948)。
一般的な用途としては、食品分野においてはふくらし粉、ベーキングパウダーなどに、医薬品分野においては口腔粘膜・皮膚の炎症または潰瘍の収れん薬に、他にも染料の媒染剤(∗2)、革のなめし剤などに使用されています(文献1:1994)。
∗2 染料に用いられる植物色素の多くはポリフェノールであり、植物色素に鉄、銅、アルミニウムなどの金属イオンが配位することによって本来の染色効果(色が濃くなったり、酸や塩基に対する耐久性が上がることによる染色持続性の向上など)を最大限発揮させることができることから、この効果目的で染料を媒介する金属イオンを含む物質を媒染剤と呼んでいます。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、ボディソープ製品、ボディ石鹸、デオドラント製品、制汗製品、ボディケア製品、シャンプー製品、メイクアップ製品、入浴剤などに使用されています。
収れん作用
収れん作用に関しては、アルムKは陽イオン型収れん剤であり、タンパク質を凝固・収縮させることにより強力な収れん作用を発揮することから(文献3:1990)、アストリンゼントローション、アフターシェービングローションなどに使用されています。
また、収れん作用によって肌をひきしめ、汗を抑えて化粧崩れを防止する目的で、ファンデーションなどに配合されることがあります。
制汗
制汗に関しては、アルムK(ミョウバン)は1910年代以前より使用されている最も使用歴の長い制汗剤のひとつですが、その制汗メカニズムは汗腺付近のタンパク質を凝固・収縮させることによる収れん作用そのものであり、制汗という点では現在化粧品に汎用されているクロルヒドロキシAlや塩化Alなどと比較すると僅かな作用であるといえます(文献4:1995)。
消臭
消臭に関しては、アルムK(ミョウバン)は弱酸性であり、アルカリとの中和反応によってアルカリ性臭気物質をもとの分子骨格とは異なる無臭物質あるいはより臭気レベルの低い物質に変化させることから、アンモニアなどアルカリ性臭気に対して消臭効果を発揮することが知られています(文献5:2000;文献6:2014)。
このような背景から、デオドラント、ボディソープ、ボディ石鹸、ボディパウダーなどに使用されています。
硫酸アルミニウムカリウムは配合上限がありませんが、乾燥硫酸アルミニウムカリウムは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。
種類 | 配合量 |
---|---|
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 | 上限なし |
育毛剤 | 上限なし |
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 | 上限なし |
薬用口唇類 | 0.10 |
薬用歯みがき類 | 0.10 |
浴用剤 | 上限なし |
アルムKの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載(∗3)
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 80年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度(データなし)
- 眼刺激性:注意が必要(データなし)
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
∗3 硫酸アルミニウムカリウム水和物および乾燥硫酸アルミニウムカリウムとして収載されています。
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
安全性データはみあたりませんが、制汗剤・収れん剤として古くからの使用実績があること、食品添加物および医薬品としても収載されていること、医薬部外品として皮膚に塗布する場合の配合上限がないことなどから、一般に化粧品配合範囲において皮膚刺激性はほとんどなく(あっても軽度以下)、また皮膚感作性はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないことから、現時点ではデータ不足により詳細は不明ですが、強い収れん作用があるため、注意が必要であると考えられます。
∗∗∗
アルムKは収れん成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:収れん成分
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参考文献:
- 大木 道則, 他(1994)「硫酸カリウムアルミニウム」化学辞典,1520-1521.
- 三沢 敬義(1948)温泉療法,180-189.
- 田村 健夫, 他(1990)「陽イオン型収れん剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,247-248
- Karl Laden(1995)「塩化アルミニウム」制汗剤とデオドラント,94-95.
- 土橋 直樹(2000)「芳香・消臭剤の作用」化学と教育(48)(6),380-381.
- 佐々木 智司(2014)「火力発電所における海生生物の臭気対策」火力原子力発電大会論文集(10),27-33.