ビタミンC誘導体の解説と成分一覧

ビタミンC誘導体(アスコルビン酸誘導体)

慣用名 ビタミンC誘導体、アスコルビン酸誘導体
配合目的 美白抗酸化抗シワ抗菌抗炎症酸化防止、毛髪補修 など

ビタミンC誘導体の解説

誘導体とは、ある化合物の効能効果を高めるために分子の一部を変化させてできる化合物のことをいいます[1]

アスコルビン酸(ビタミンC)は、皮膚においてコラーゲンやムコ多糖類の合成、抗酸化、酸化物の還元による色素沈着抑制などの活性を発揮することが知られていますが、一方で水溶液では熱および光に不安定であり、ラジカルと反応して自らが酸化型アスコルビン酸となることから、一般に製品に長期間安定して配合することは困難であり、そのうえ水溶性であることから皮膚浸透性が低く、皮膚に浸透して効果を発揮しにくいことが知られています。

このような背景から、皮膚に対する機能発揮を目的としてアスコルビン酸をそのまま化粧品に配合することはほとんどなく、国内においては1960年代からアスコルビン酸の一部を化学修飾して安定性、皮膚浸透性、効果性を改良したビタミンC誘導体が次々と開発されてきた歴史があり、現在では皮膚に対してアスコルビン酸の効果を発揮させる目的で様々な種類のビタミンC誘導体が汎用されています[2]

ビタミンC誘導体の多くは、皮膚に浸透し、皮膚に存在する酵素による分解・代謝を通じてアスコルビン酸となり、アスコルビン酸としての効果を発揮するため、ビタミンCの前駆体という意味で「プロビタミンC(∗1)」ともよばれます[3]

∗1 近年のビタミンC誘導体の中には、酵素的分解を必要とせずビタミンC誘導体そのままで、ビタミンC誘導体としての作用・効果を発揮するように開発されたものもあり、厳密にはプロビタミンCとよべないものもありますが、便宜上、ビタミンC誘導体はまとめてプロビタミンCとよばれます。

種類と特徴

化粧品におけるビタミンC誘導体の歴史を紐解くと、初期において最も重要な課題はビタミンCの水溶液中での安定化および皮膚内への浸透性であり、1980年代にはそれらが改善されたビタミンC誘導体が医薬部外品の美白有効成分としてはじめて承認されました。

1990年代以降では、安定性や浸透性は前提として持続性、さらなる浸透性の向上、皮膚内での即効性、保湿性の付加など個性的なビタミンC誘導体が開発され、現在では製剤や用途に合わせて様々なビタミンC誘導体が使用されています。

以下は、皮膚に対する効果を目的とした代表的なビタミンC誘導体の種類と特徴です。

化粧品表示名 愛称 医薬部外品
有効成分
リン酸アスコルビルMg APM 承認
アスコルビルリン酸Na APS 承認
アスコルビルグルコシド AA-2G 承認
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル VC-IP 承認
パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na APPS
3-O-エチルアスコルビン酸 VCエチル 承認
イソステアリルアスコルビルリン酸2Na APIS
カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸 GO-VC
愛称 溶解性 安定性 作用物質 特徴
APM 水溶性 ビタミンC 安定型
APS 水溶性 ビタミンC 安定型
AA-2G 水溶性 ビタミンC 安定型
持続型
VC-IP 油溶性 ビタミンC 安定型
浸透型
APPS 両親媒性 ビタミンC 高浸透型
VCエチル 水溶性 VCエチル
ビタミンC
即効型
APIS 両親媒性 ビタミンC 高浸透型
GO-VC 両親媒性 不明(∗2) 保湿型

∗2 現時点では化合物としての作用なのかビタミンC自体の作用なのか明らかになって(みつけられて)いないという意味です。

化粧品および医薬部外品としての配合目的

化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)に配合される場合は、

  • チロシナーゼ活性阻害およびメラニン生成抑制による美白作用
  • 過酸化脂質抑制による抗酸化作用
  • コラーゲン合成促進による抗シワ作用
  • IL-1αおよびプロスタグランジンE2産生抑制による抗炎症作用
  • 毛髪補修作用
  • アクネ菌増殖抑制による抗菌作用
  • 製品の酸化防止

これらのいずれかまたは複数の目的で様々な製品に汎用されています。

詳細は各ビタミンC誘導体のレポートページを参照してください。

参考文献

  1. 霜川 忠正(2001)「誘導体」BEAUTY WORD 製品科学用語編,560-561.
  2. 伊東 忍, 他(2014)「美白ケア」プロビタミンC – 分子デザインされたビタミンCの知られざる働き,57-73.
  3. 伊東 忍(2015)「百花斉放, プロビタミンCの時代」Fragrance Journal(43)(9),14-19.

ビタミンC誘導体一覧

数字(1) / A-Z(1) / α-ω(0) / ア(2) / イ(1) / ウ(0) / エ(0) / オ(0) / カ(1) / キ(0) / ク(0) / ケ(0) / コ(0) / サ(0) / シ(1) / ス(0) / セ(0) / ソ(0) / タ(0) / チ(0) / ツ(0) / テ(3) / ト(0) / ナ(0) / ニ(0) / ヌ(0) / ネ(0) / ノ(0) / ハ(2) / ヒ(0) / フ(0) / ヘ(0) / ホ(0) / マ(0) / ミ(0) / ム(0) / メ(0) / モ(0) / ヤ(0) / ユ(0) / ヨ(0) / ラ(0) / リ(3) / ル(0) / レ(0) / ロ(0) / ワ(0)

化粧品成分表示名
医薬部外品表示名
3-O-エチルアスコルビン酸
配合目的 チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による美白作用
化学式 3-O-エチルアスコルビン酸
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
医薬部外品表示名 L-アスコルビン酸 2-グルコシド
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用 など
化学式 L-アスコルビン酸 2-グルコシド
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品成分表示名 アスコルビルグルコシド
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用 など
化学式 アスコルビルグルコシド
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品成分表示名 アスコルビルリン酸Na
配合目的 メラニン産生抑制による美白作用、過酸化脂質抑制による抗酸化作用 など
化学式 アスコルビルリン酸Na
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品成分表示名 イソステアリルアスコルビルリン酸2Na
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用 など
化学式 イソステアリルアスコルビルリン酸2Na
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品成分表示名 カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸
配合目的 メラニン産生抑制による美白作用、アクネ菌増殖抑制による抗菌作用、コラーゲン合成促進による抗シワ作用 など
化学式 カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品表示名
医薬部外品表示名
ジパルミチン酸アスコルビル
配合目的 酸化防止 など
化学式 ジパルミチン酸アスコルビル
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
医薬部外品表示名 テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用、IL-1αおよびプロスタグランジンE2産生抑制による抗炎症作用、毛髪修復作用 など
化学式 テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
医薬部外品表示名 テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルEX
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用
化学式 テトラヘキシルデカン酸アスコルビルEX
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品成分表示名 テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用、IL-1αおよびプロスタグランジンE2産生抑制による抗炎症作用、毛髪修復作用 など
化学式 テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品表示名
医薬部外品表示名
パルミチン酸アスコルビル
配合目的 酸化防止 など
化学式 パルミチン酸アスコルビル
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品成分表示名 パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用、コラーゲン合成促進による抗シワ作用 など
化学式 パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
医薬部外品表示名 リン酸L-アスコルビルナトリウム
配合目的 メラニン産生抑制による美白作用、過酸化脂質抑制による抗酸化作用 など
化学式 リン酸L-アスコルビルナトリウム
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
医薬部外品表示名 リン酸L-アスコルビルマグネシウム
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用
化学式 リン酸L-アスコルビルマグネシウム
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ
化粧品表示名 リン酸アスコルビルMg
配合目的 チロシナーゼ活性阻害による美白作用
化学式 リン酸アスコルビルMg
レポート → 基本情報・配合目的・安全性ページ

TOPへ