HEMAの基本情報・配合目的・安全性

HEMA

化粧品表示名 HEMA
INCI名 HEMA
配合目的 人工爪剤

化粧品表示名「HEMA」は、「ヒドロキシエチルメタクリレート(2-Hydroxyethyl methacrylate)」の頭文字をとった略称です(∗1)

∗1 「ヒドロキシエチルメタクリレート」は「メタクリル酸ヒドロキシエチル」ともいいます。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるメタクリル酸のカルボキシ基(-COOH)にエチレングリコールのヒドロキシ基(-OH)を脱水縮合(∗1)したエステル(アクリル樹脂)(∗2)です[1a][2a]

∗1 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。

∗2 モノマー(monomer)とは、単量体のことをいい、複数のモノマーが繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能するものをポリマー(polymer:多量体)とよびます。

HEMA

1.2. 性状

HEMAの性状は、

状態 無色透明の液体
溶解性 水に易溶

このように報告されています[2b]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 人工爪形成

主にこれらの目的で、ネイル製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 人工爪形成

人工爪形成に関しては、HEMAはアクリルモノマー樹脂であり、UVライトを照射することにより硬化しジェルネイルを形成することから、ジェルネイルを形成する目的でジェルネイル製品に使用されています[1b][2c][3a]

3. 安全性評価

HEMAの現時点での安全性は、

  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):皮膚感作を引き起こす可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に注意が必要な成分であると考えられます。

ただし、ネイル製品のみに用いられることから、爪のみに使用し皮膚に付着しない場合は安全に使用できると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4a]によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットに10および25%HEMAを適用し、適用後に皮膚刺激性を評価したところ、濃度10%においては皮膚刺激はみられなかったが、濃度25%において軽度の紅斑がみられた(Haskell Laboratories,1969)
  • [動物試験] ウサギの剃毛した擦過および未擦過の背部にHEMAとメタクリル酸ヒドロキシプロピルの混合物0.25mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24および72時間後に皮膚刺激性を評価したところ、HEMAの刺激スコアは0.7-1.2の範囲で、メタクリル酸ヒドロキシプロピルの刺激スコアは1.0であった。HEMAおよびメタクリル酸ヒドロキシプロピルの両方ともヒト皮膚上で軽度の刺激物である可能性が高いと結論付けられた(The British Petroleum Company,1981)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、ネイル製品のみに使用されるため、爪だけに塗布して皮膚につかない場合は皮膚刺激に対して過度に注意する必要がないと考えられますが、皮膚につかないように注意する必要があります。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

3.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient ReviewおよびBritish Association of Dermatologistsの安全性データ[4b][5]によると、

  • [ヒト試験] イギリスおよびアイルランドにある13の皮膚科施設で4,931名の患者のメタクリレートアレルギーについて検査した結果、最も一般的なメタアクリレートであるHEMAに対して74名(1.5%)が陽性反応を示した。同協会が別で実施した皮膚科に通う742名の患者を対象にした調査では、141名(19%)の回答者がサロンでアクリルネイルを利用した経験があると回答しており、119名(16%)がサロンでジェルネイルを利用した、193名(26%)が爪の損傷およびアレルギー性皮膚炎の症状があらわれたと回答した(British Association of Dermatologists,2018)
  • [動物試験] 6匹のモルモットに10および25%HEMAを対象に皮膚感作性試験を実施したところ、濃度10%においてすべてのモルモットで陽性反応がみられたため、濃度5%で同様の試験を実施したところ、陽性反応を有した6匹のうち4匹で陽性反応がみられた。これらの結果からHEMAは強力な感作物質であると結論づけられた(The British Petroleum Company,1981)
  • [動物試験] 10匹のモルモットにHEMA50μLを皮内注射し、6日目に10%ラウリル硫酸ナトリウムで前処理した。7日目に誘導期間として剃毛した背部に0.2、1.0または5.0%HEMA0.2mLを48時間パッチ適用し、21日目に100%HEMAを含むチャレンジパッチを24時間適用したところ、HEMAに感作された10匹のうち6匹は24時間で陽性反応を示し、また10匹のうち5匹は48時間でも強い発赤作用とともに陽性反応を示した。次にメタクリル酸またはメチルメタクリレートを用いて交差反応性を調べたところ、試験した12匹のモルモットはすべて陰性であった。これらの結果からHEMAは遅延型アレルギー反応を引き起こしたが、ヒトとモルモットで異なるアレルギー反応を有することを示唆した(Katsuno et al,1995)

このように記載されており、試験データをみるかぎり多くの皮膚感作が報告されており、一般に皮膚感作性は皮膚感作(アレルギー反応)を引き起こす可能性があり、注意が必要な成分であると考えられます。

ただし、ネイル製品のみに使用されるため、ネイリストに施術してもらう場合など爪だけに塗布して皮膚につかない場合は皮膚感作に対して過度に注意する必要がないと考えられますが、使用者が自宅で施行するタイプのネイル製品を使用する場合は皮膚につかないように細心の注意が必要です[3b]

4. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「HEMA」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,20-21.
  2. ab加藤 正明(1992)「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」有機合成化学協会誌(50)(10),926-927. DOI:10.5059/yukigoseikyokaishi.50.926.
  3. ab矢上 晶子(2020)「化粧品が原因の皮膚トラブルの見分け方」日本香粧品学会誌(44)(1),36-45. DOI:10.11469/koshohin.44.36.
  4. abF.A. Andersen(2005)「Final Report of the Safety Assessment of Methacrylate Ester Monomers Used in Nail Enhancement Products」International Journal of Toxicology(24)(5_suppl),53-100. DOI:10.1080/10915810500434209.
  5. British Association of Dermatologists(2018)「Dermatologists issue warning about UK artificial nail allergy epidemic」, 2022年11月15日アクセス.

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