ポリクオタニウム-10とは…成分効果と毒性を解説

帯電防止 ヘアコンディショニング
ポリクオタニウム-10
[化粧品成分表示名称]
・ポリクオタニウム-10

[医薬部外品表示名称]
・塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース

化学構造的にヒドロキシエチルセルロースに第四級アンモニウム塩型に分類される陽イオン界面活性剤の一種であるグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドを付加して得られる重合体(∗1)であり、水溶性のカチオン化セルロース(カチオン性高分子)(∗2)です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、2種類の単量体を用いて生成された重合体は共重合体(コポリマー:copolymer)と呼びます。

∗2 カチオン性高分子とは、陽イオン界面活性能(カチオン性)を有した高分子化合物のことです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗浄製品、ヘアケア製品、ヘアスタイリング製品、入浴剤などに使用されています(文献1:1988)

帯電防止

帯電防止に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

水道水やシャンプーは一般的に弱酸性(pH5-6)であることから、ぬれた毛髪の表面はマイナスに帯電しており、一方で陽イオン界面活性剤は以下の図のように、

陽イオン界面活性剤の構造図

親水基部分がプラスの荷電をもっている構造であることから、親水基部分がマイナスに帯電した毛髪表面に静電的に吸着します。

そして、疎水基(親油基)部分は外側を向くため、毛髪表面が親油基で覆われることでなめらかになり、その結果として静電気の発生をおさえ(帯電防止)、すすぎや乾燥後の摩擦を低減し、毛髪のくし通りがよくなります(文献2:1990;文献3:2010)

ポリクオタニウム-10は、陽イオン界面活性剤を部分的に付加することによりカチオン性を有しているため、洗髪後のブラッシングまたは櫛の使用によって生じる静電気の発生の抑制、毛髪の柔軟化および滑りやすさの改善目的で主にヘアリンス製品、ヘアコンディショナー製品などに配合されます。

また、リンスインシャンプー製品にも配合されますが、同じ製品内でシャンプー(陰イオン界面活性剤)とリンス(陽イオン界面活性剤)が適切に機能するメカニズムは、製品内ではこれらの成分は結合しているものの、水と接触することで最初に陰イオン界面活性剤が水に溶解して洗浄力を発揮し、さらに水を加えていくことでジワジワと時間差で陽イオン界面活性剤が溶けていき、洗浄後に毛髪表面に被膜を形成するというものになります。

リンスインシャンプー製品に処方される陽イオン界面活性成分は、一般的な陽イオン界面活性剤ではなく、陽イオン界面活性能を有した水溶性のカチオン化高分子が使用されますが、これは高分子が水溶性でありながら水に溶けるまで時間を要するために、陰イオン界面活性剤が洗浄力を発揮する前ではなく、発揮した後に被膜効果を発揮する特性であることから使用されており、このカチオン化高分子の性質がリンスインシャンプ-のコンセプトを可能にしています。

コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用

コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用に関しては、まず前提知識としてコアセルベートについて解説します。

シャンプーの主剤である陰イオン界面活性剤は、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドなどのカチオン化高分子との相互作用により、シャンプー希釈時にある濃度領域においてコアセルベーションと呼ばれる、溶質が均一に分散した状態から部分的に溶質が集合し溶質の多い領域と極めて少ない領域に分離する現象を起こすことが知られています(文献6:2015)

コアセルベーションおよびコアセルベート

このコアセルベーションによって分離した溶質の多い領域は、洗浄機能とコンディショニング機能をもつ複合体でコアセルベートと呼ばれており、コアセルベートはシリコーンや油性成分を取り込み、それらが毛髪表面に吸着することで、すすぎ時に毛髪へ滑らかさを付与し、コンディショニング効果を発現することが報告されています(文献4:2004;文献6:2015)

また、シャンプーには香料が配合されていますが、香料もコアセルベート中に取り込まれる傾向にあり、シャンプーの香り立ちや毛髪の残香はコアセルベートによって向上することが報告されています(文献5:2017)

実際のシャンプー剤においては、シャンプー塗布後の泡立て時には洗浄作用が発現し、その後、汚れをすすぎ流す過程で陰イオン界面活性剤の濃度が低下し希釈されることでコアセルベートが生成され、生成されたコアセルベートが毛髪に吸着し、コンディショニング効果が発現するように設計されています(文献7:2018;文献8:1989)

コアセルベートは陰イオン界面活性剤およびカチオン化高分子の相互作用のみで生成されますが、コカミドプロピルベタインココアンホ酢酸Naなどの両性界面活性剤を加えた3分子の相互作用とすることでコアセルベート生成量が増えることが広く知られており、製品においてはこの3種類を併用することが一般的です(∗3)

∗3 両性界面活性剤は、1種類よりも2種類を併用することでコアセルベートの生成量が増加することが明らかになっており、2種類が併用されている場合も多いです。

このような背景から、陰イオン界面活性剤、カチオン化高分子、またはそれに加えてアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤およびグリシン型両性界面活性剤が併用されている場合は、コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用や残香性の向上を目的とした処方の可能性が考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1981-1988年および2002-2005年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ポリクオタニウム-10の配合製品数と配合量の比較調査結果(1981-1988年および2002-2005年)

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ポリクオタニウム-10の安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリクオタニウム-10の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:5%以下濃度においてほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [ヒト試験] 106人の被検者に5%ポリクオタニウム-10水溶液を48時間閉塞パッチ下で適用したところ、適用後48時間および72時間で皮膚刺激は観察されなかった(Union Carbide Corporation,1985)
  • [ヒト試験] 27人の被検者に5%ポリクオタニウム-10溶液を21日間閉塞パッチ下で毎日適用したところ、刺激は観察されなかった(Union Carbide Corporation,1985)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に3つの異なるメーカーの2%ポリクオタニウム-10溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作は観察されなかった(Product Investigations Inc,1976)
  • [ヒト試験] 203人の被検者に5%ポリクオタニウム-10溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作は観察されなかった(Union Carbide Corporation,1985)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.5%ポリクオタニウム-10溶液を含むシャンプーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1972)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.5%ポリクオタニウム-10溶液を含むシャンプーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)
  • [ヒト試験] 46人の被検者に1%ポリクオタニウム-10を含むコンディショナー0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者は9回目で最小の紅斑を示し、もうひとりは10回目で最小限の紅斑反応を示した。またチャレンジ期間において2人の被検者が最小限の皮膚反応を示したため、チャレンジ期間に反応を示した被検者に改めてチャレンジ試験を行ったところ、皮膚反応は観察されなかったため、このコンディショナーは刺激剤および感作剤ではなかった(Food and Drug Research Laboratories,1980)
  • [ヒト試験] 83人の被検者に0.5%ポリクオタニウム-10を含むシャンプーを対象に4週間使用試験を実施し、各被検者の頭皮、顔および毛髪の刺激性を評価したところ、この試験条件下で試験製品は非刺激性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、5%以下濃度において共通して皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されていることから、5%以下濃度において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼にポリクオタニウム-10粉末を単回適用したところ、非刺激性であった(Carnegie-Mellon University,1973)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に2%ポリクオタニウム-10水溶液0.5mLを単回適用したところ、非刺激性であった(Carnegie-Mellon University,1973)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に5%ポリクオタニウム-10水溶液0.5mLを単回適用したところ、非刺激性であった(Carnegie-Mellon University,1973)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に10%ポリクオタニウム-10水溶液0.5mLを単回適用したところ、1匹に最小限の眼刺激が観察された。他の4匹では刺激は観察されなかった(Carnegie-Mellon University,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.5%ポリクオタニウム-10溶液を含むシャンプーを対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても光感作反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1972)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.5%ポリクオタニウム-10溶液を含むシャンプーを対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光感作なしと報告されていることから、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ポリクオタニウム-10は帯電防止剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:帯電防止剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1988)「Final Report on the Safety Assessment of Poiyquaternium-10」Journal of the American College of Toxicology(7)(3),335-351.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  3. 鐵 真希男(2010)「コンディショナーの配合成分と製剤」化学と教育(58)(11),536-537.
  4. 樋渡 佳子, 他(2004)「カチオン性高分子と界面活性剤のコアセルベートに関する研究」日本化粧品技術者会誌(38)(3),211-219.
  5. 兼井 典子, 他(2017)「毛髪への香料の付着に及ぼすカチオン性高分子と界面活性剤のコアセルベートの影響」日本化粧品技術者会誌(51)(4),311-316.
  6. 日油株式会社(2015)「毛髪洗浄剤組成物」特開2015-205834.
  7. 江連 美佳子(2018)「美しい髪をめざして-香粧品ができること-」日本香粧品学会誌(42)(1),15-20.
  8. 奥村 丈夫, 他(1989)「頭髪化粧品と毛髪」色材協会誌(62)(10),615-623.

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