セトリモニウムメトサルフェートの基本情報・配合目的・安全性

公開日:2023年3月4日  最終更新日:2023年03月06日

セトリモニウムメトサルフェート

化粧品表示名 セトリモニウムメトサルフェート
INCI名 Cetrimonium Methosulfate
配合目的 帯電防止
  1. 基本情報
    1. 定義
    2. 性状
  2. 化粧品としての配合目的
    1. 帯電防止効果
  3. 混合原料としての配合目的
  4. 配合製品数および配合量範囲
  5. 安全性評価
    1. 皮膚刺激性
    2. 眼刺激性
    3. 皮膚感作性（アレルギー性）
  6. 参考文献

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるアルキルアンモニウム塩であり、第四級アンモニウム塩のモノアルキル型に分類される陽イオン性界面活性剤（カチオン性界面活性剤）です[1]。

セトリモニウムメトサルフェート

1.2. 性状

セトリモニウムメトサルフェートの性状は、

状態 淡黄色の液体

このように報告されています[2a]。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 帯電防止効果

主にこれらの目的で、トリートメント製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、カラートリートメント製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 帯電防止効果

帯電防止効果に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪状態の違い

パーマやブリーチ処理、紫外線などによってダメージを受けた毛髪やシャンプーをすすいだ毛髪は負（-：マイナス）に帯電し、キューティクルの鱗片が開いていますが、帯電防止成分は正（+：プラス）の電荷をもつことから負に帯電した毛髪に吸着し、キューティクル表面に溜まった負（-：マイナス）の電荷を中和することにより隣接するキューティクル同士の静電反発を低減する（静電気の発生を抑制する）ことが知られています[3a][4][5]。

そして、その結果としてキューティクルが平に寝るようになり、きしみやキューティクルの摩擦抵抗が抑えられ、シャンプー後の毛髪の滑り性が改善するとともにもつれや絡まりを防ぐことが知られています[3b]。

セトリモニウムメトサルフェートはモノアルキル型四級アンモニウム塩であり、毛髪の表面に吸着して静電気を抑制し、良好な櫛通り性を付与することから[2b]、主にトリートメント製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、カラートリートメント製品などに使用されています。

一般にセトリモニウムメトサルフェートはセタノールと水に溶かし込んだものが使用されるため、ベヘントリモニウムメトサルフェートが配合されている場合は、成分表示名にこれらのいずれかが一緒に記載されている可能性が考えられます。

3. 混合原料としての配合目的

セトリモニウムメトサルフェートは混合原料が開発されており、セトリモニウムメトサルフェートと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Crodazosoft DBQ MBAL
構成成分 クオタニウム-91、セトリモニウムメトサルフェート、セテアリルアルコール
特徴 自己乳化型ヘアコンディショニング剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

セトリモニウムメトサルフェートの配合製品数と配合量の比較調査結果（2010年）

5. 安全性評価

セトリモニウムメトサルフェートの現時点での安全性は、

  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性：濃度2%以下において安全に使用可能（データなし）（詳細は解説を参照のこと）
  • 眼刺激性：濃度5%以下においてほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性（アレルギー性）：ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性

試験データはみあたりませんが、濃度2%以下および現在の使用法で安全に使用できると報告されており[6a]、15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激の報告がみあたらないため、セトリモニウムメトサルフェートは安全に使用できると考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient ReviewおよびCrodaの安全性データ[6b][7a]によると、

  • [in vitro試験] 畜牛の眼球から摘出した角膜を用いて、角膜表面に0.09%セトリモニウムメトサルフェートを含むヘアコンディショニング剤を処理した後、角膜の濁度ならびに透過性の変化量を定量的に測定したところ（BCOP法）、この試験製剤は軽度の眼刺激剤であると予測された（Anonymous,2008）
  • [in vitro試験] 5%セトリモニウムメトサルフェート溶液を対象にin vitro試験（試験法不明）を実施したところ、この試験製剤は眼刺激剤ではなかった（Croda,2016）

このように報告されており、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.3. 皮膚感作性（アレルギー性）

Crodaの安全性データ[7b]によると、

  • [ヒト試験] 被検者（人数不明）に5%セトリモニウムメトサルフェート溶液をパッチテストし、パッチ除去後に皮膚感作性を評価したところ、この試験製剤は皮膚感作剤ではなかった

このように試験データをみるかぎり皮膚感作なしと報告されており、また15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. ⌃日本化粧品工業連合会（2013）「セトリモニウムメトサルフェート」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,613.
  2. ⌃abMiwon Commercial Co., Ltd.（2015）「MICONIUM」Personal Care Ingredients,7.
  3. ⌃abデール・H・ジョンソン（2011）「コンディショニング剤」ヘアケアサイエンス入門,81-99.
  4. ⌃佐藤 直紀（2006）「シャンプー・リンスの機能と最新の技術」機能性化粧品の開発Ⅱ,109-122.
  5. ⌃田村 健夫・廣田 博（2001）「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  6. ⌃abL.C. Becker（2012）「Safety Assessment of Trimoniums as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(31)(6_suppl),296S-341S. DOI:10.1177/1091581812467378.
  7. ⌃abCroda Inc.（2021）「Crodazosoft DBQ」Safety Data Sheet.

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