クオタニウム-33の基本情報・配合目的・安全性

クオタニウム-33

化粧品表示名 クオタニウム-33
医薬部外品表示名 エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム液(1)、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム(2)
INCI名 Quaternium-33
配合目的 帯電防止ヘアコンディショニング

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるラノリン酸第四級アンモニウム塩誘導体陽イオン性界面活性剤:カチオン性界面活性剤)です[1][2a]

クオタニウム-33

医薬部外品表示名については、

医薬部外品表示名 本質
エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム液(1) エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムの2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、「プロピレングリコール」または「ジプロピレングリコール」の溶液で、定量するとき、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム(平均分子量:520)として、表示量の90-110%を含む
エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム(2) エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムと「1,3-ブチレングリコール」の2:1 混合物で、定量するとき、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム(平均分子量:533)として 62-68%を含む

このように区別され、化粧品表示名としてはいずれも「クオタニウム-33」とそれぞれの溶媒が表示されます。

1.2. 性状

クオタニウム-33の性状は、

状態 黄-黄褐色の粘性液体またはペースト

このように報告されています[3a][4]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 帯電防止効果
  • 柔軟性付与によるヘアコンディショニング作用

主にこれらの目的で、コンディショナー製品、トリートメント製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品、カラートリートメント製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 帯電防止効果

帯電防止効果に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪状態の違い

パーマやブリーチ処理、紫外線などによってダメージを受けた毛髪やシャンプーをすすいだ毛髪は負(-:マイナス)に帯電し、キューティクルの鱗片が開いていますが、帯電防止成分は正(+:プラス)の電荷をもつことから負に帯電した毛髪に吸着し、キューティクル表面に溜まった負(-:マイナス)の電荷を中和することにより隣接するキューティクル同士の静電反発を低減する(静電気の発生を抑制する)ことが知られています[5a][6][7]

そして、その結果としてキューティクルが平に寝るようになり、きしみやキューティクルの摩擦抵抗が抑えられ、シャンプー後の毛髪の滑り性が改善するとともにもつれや絡まりを防ぐことが知られています[5b]

クオタニウム-33はラノリン酸第四級アンモニウム塩誘導体であり、毛髪の表面に吸着し静電気を抑制してパサつきを抑え、濡れた状態の毛髪に対して良好な櫛通り性を付与することから[2b][3b]、主にコンディショナー製品、トリートメント製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品、カラートリートメント製品などに使用されています。

一般にクオタニウム-33はDPGまたはBGに溶かし込んだものが使用されるため、クオタニウム-18が配合されている場合は、成分表示名にDPGまたはBGが一緒に記載されている可能性が考えられます。

2.2. 柔軟性付与によるヘアコンディショニング作用

柔軟性付与によるヘアコンディショニング作用に関しては、まず前提知識として毛髪の構造と毛髪のダメージと柔軟性の関係について解説します。

毛髪の構造については、以下の毛髪構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

キューティクル(毛小皮)とよばれる5-10層で重なり合った平らかつうろこ状の構造からなる厚い保護外膜が表面を覆い、キューティクル内部は紡錘状細胞から成り繊維体質の大部分を占めるコルテックス(毛皮質)およびメデュラ(毛髄質)とよばれる多孔質部分で構成されています[8a]

また、細胞膜複合体(CMC:Cell Membrane Complex)がこの3つの構造を接着・結合しており、毛髪内部の水分保持や成分の浸透・拡散の主要通路としての役割を担っています[8b]

これら毛髪構造の中でキューティクルは、摩擦、引っ張り、曲げ、日光への曝露などの影響による物理的かつ化学的劣化に耐性をもち、その配列が見た目の美しさや感触特性となります[9]

一方で、日光曝露におけるキューティクルの柔軟性劣化の進行は穏やかではあるものの(∗1)、UVBの曝露は比較的少ない照射量でキューティクルにダメージを与えることが明らかにされており、長時間の日光(紫外線)曝露においては、以下の図をみてもらうとわかるように、

∗1 UVAは比較的影響が少ないのに対してUVBは比較的少ない照射量でキューティクルにダメージを与えますが、日光曝露によるキューティクルの柔軟性劣化は比較的穏やかに進行します。これは日光の分光分布におけるUVBの割合が低いことによると考えられています。

毛髪状態の違い

ダメージの増大によりキューティクルのめくれ上がりにつながり、この結果として毛髪を曲げたり引っ張ったりするといった物理的な変形に対するキューティクルの抵抗性が減少することが知られています[10a]

そして、さらに日光の曝露が続いたり、曲げたり引っ張ったりなど物理的な力が加わると、下層のキューティクルも剥がれていき、比較的柔軟性のある最下層のキューティクル(エンドキューティクル)の柔軟性が低下し、毛髪のしなやかさが失われていきます[10b]

このような背景から、ダメージを受けた毛髪の柔軟性を向上させることは、毛髪のダメージやしなやかさのリカバリーにおいて重要なアプローチのひとつであると考えられています。

クオタニウム-33はラノリン酸第四級アンモニウム塩誘導体であり、乾燥後の毛髪においてパサつきを抑えて柔軟でまとまりのあるふんわりした髪に仕上げることから[2c]、主にコンディショナー製品、トリートメント製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品、カラートリートメント製品、カラーシャンプー製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

クオタニウム-33は混合原料が開発されており、クオタニウム-33と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 EMACOL CD-8111
構成成分 ステアリルアルコールベヘントリモニウムメトサルフェートクオタニウム-33テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル
特徴 クセ毛ケア用トリートメント基剤
原料名 EMACOL NE-LARG
構成成分 グリセリンペンチレングリコールクオタニウム-33、ラウロイルアルギニン
特徴 クセ毛ケア用トリートメント基剤
原料名 NanoRepair-C
構成成分 コレステロールクオタニウム-33
特徴 18-MEAなどのアンテイソ脂肪酸やコレステロールなどの毛髪結合脂質成分を含み、ダメージを受けた毛髪を補修するとともにしっとりとした軽い感触を付与するナノカプセル溶液
原料名 NanoRepair-CMC
構成成分 コレステロールクオタニウム-33セラミドNGセラミドNP、セラミドAP
特徴 18-MEAなどのアンテイソ脂肪酸、3種のセラミドおよびコレステロールなどの毛髪結合脂質成分を含み、ダメージを受けた毛髪を補修するとともに柔軟性やつるつる感を付与するナノカプセル溶液
原料名 NanoRepair-CMC5
構成成分 コレステロールクオタニウム-33、セラミドEOP、セラミドNGセラミドNP、セラミドAG、セラミドAP
特徴 18-MEAなどのアンテイソ脂肪酸、5種のセラミドおよびコレステロールなどの毛髪結合脂質成分を含み、ダメージを受けた毛髪を補修するとともに柔軟性やつるつる感を付与するナノカプセル溶液

4. 安全性評価

クオタニウム-33の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

ヒト試験データにおいて濃度1%で皮膚刺激性および皮膚感作性がほとんどない第四級アンモニウム塩であるステアラルコニウムクロリドよりも毒性が低いと報告されており[11][12]、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

Malmstrom Chemicalsの安全性データ[2d]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギを3匹×2群とし、各群の片眼に0.5および2.5%クオタニウム-33溶液0.1mLを点眼し、一方の群は眼をすすぎ、残りの一方の群は眼をすすがず、Draize法に基づいて点眼96時間後まで眼刺激性を評価したところ、洗眼群において濃度にかかわらず眼刺激はみられず、非洗眼群においては濃度0.5%で眼刺激はみられず、濃度2.5%でわずかな眼刺激がみられたが点眼72時間までにすべての刺激は消失した

このように報告されており、試験データをみるかぎり非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、眼をすすいだ場合において濃度にかかわらず眼刺激がみられないことから、洗浄系製品に使用される場合は眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「クオタニウム-33」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,353.
  2. abcdJ.P. McCarthy, et al(1976)「New Lanolin Acid Quaternary Salts for the Use in Hair Treatment Preparations」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(27)(11),559-570.
  3. ab日光ケミカルズ株式会社(2021)「アミドアミン他」製品カタログ,55-56.
  4. 三洋化成工業株式会社(2019)「コンディショニング剤・スタイリング剤」香粧品用商品リスト,19-22.
  5. abデール・H・ジョンソン(2011)「コンディショニング剤」ヘアケアサイエンス入門,81-99.
  6. 佐藤 直紀(2006)「シャンプー・リンスの機能と最新の技術」機能性化粧品の開発Ⅱ,109-122.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  8. abクラーレンス・R・ロビンス(2006)「毛形態学的構造および高次構造」毛髪の科学,1-68.
  9. デール・H・ジョンソン(2011)「毛髪のコンディショニング」ヘアケアサイエンス入門,77-122.
  10. ab新條 善太郎, 他(1994)「キューティクルの柔軟性に与える紫外線の影響」日本化粧品技術者会誌(28)(1),66-76. DOI:10.5107/sccj.28.66.
  11. R.L. Elder(1982)「Final report on the safety assessment of stearalkonium
    chloride」Journal of the American College of Toxicology(1)(2),57-69. DOI:10.3109/10915818209013147.
  12. M.L. Schlossman & J.P. McCarthy(1979)「Lanolin and derivatives chemistry: relationship to allergic contact dermatitis」Contact Dermatitis(5)(2),65-72. DOI:10.1111/j.1600-0536.1979.tb04801.x.

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