クオタニウム-18の基本情報・配合目的・安全性

クオタニウム-18

化粧品表示名 クオタニウム-18
医薬部外品表示名 塩化ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム
INCI名 Quaternium-18
配合目的 帯電防止ヘアコンディショニング

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるアルキルアンモニウム塩であり、第四級アンモニウム塩のジアルキル型に分類される陽イオン性界面活性剤(カチオン性界面活性剤)です[1]

クオタニウム-18

1.2. 性状

クオタニウム-18の性状は、

状態 白-淡黄色の液体、ペーストまたは粉末

このように報告されています[2a][3][4a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 帯電防止効果
  • 柔軟性付与によるヘアコンディショニング作用

主にこれらの目的で、コンディショナー製品、トリートメント製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品、プレスタイリング製品、カラートリートメント製品、カラーシャンプー製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 帯電防止効果

帯電防止効果に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪状態の違い

パーマやブリーチ処理、紫外線などによってダメージを受けた毛髪やシャンプーをすすいだ毛髪は負(-:マイナス)に帯電し、キューティクルの鱗片が開いていますが、帯電防止成分は正(+:プラス)の電荷をもつことから負に帯電した毛髪に吸着し、キューティクル表面に溜まった負(-:マイナス)の電荷を中和することにより隣接するキューティクル同士の静電反発を低減する(静電気の発生を抑制する)ことが知られています[5a][6][7]

そして、その結果としてキューティクルが平に寝るようになり、きしみやキューティクルの摩擦抵抗が抑えられ、シャンプー後の毛髪の滑り性が改善するとともにもつれや絡まりを防ぐことが知られています[5b]

クオタニウム-18はモノアルキル型四級アンモニウム塩であり、毛髪の表面に吸着し静電気を抑制してパサつきを抑え、濡れた状態の毛髪に対して良好な櫛通り性を付与することから[2b][4b]、主にコンディショナー製品、トリートメント製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品、カラートリートメント製品、カラーシャンプー製品などに使用されています。

一般にクオタニウム-18はイソプロパノールに溶かし込んだものが使用されるため、クオタニウム-18が配合されている場合は、成分表示名にイソプロパノールが一緒に記載されている可能性が考えられます。

2.2. 柔軟性付与によるヘアコンディショニング作用

柔軟性付与によるヘアコンディショニング作用に関しては、まず前提知識として毛髪の構造と毛髪のダメージと柔軟性の関係について解説します。

毛髪の構造については、以下の毛髪構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

キューティクル(毛小皮)とよばれる5-10層で重なり合った平らかつうろこ状の構造からなる厚い保護外膜が表面を覆い、キューティクル内部は紡錘状細胞から成り繊維体質の大部分を占めるコルテックス(毛皮質)およびメデュラ(毛髄質)とよばれる多孔質部分で構成されています[8a]

また、細胞膜複合体(CMC:Cell Membrane Complex)がこの3つの構造を接着・結合しており、毛髪内部の水分保持や成分の浸透・拡散の主要通路としての役割を担っています[8b]

これら毛髪構造の中でキューティクルは、摩擦、引っ張り、曲げ、日光への曝露などの影響による物理的かつ化学的劣化に耐性をもち、その配列が見た目の美しさや感触特性となります[9]

一方で、日光曝露におけるキューティクルの柔軟性劣化の進行は穏やかではあるものの(∗1)、UVBの曝露は比較的少ない照射量でキューティクルにダメージを与えることが明らかにされており、長時間の日光(紫外線)曝露においては、以下の図をみてもらうとわかるように、

∗1 UVAは比較的影響が少ないのに対してUVBは比較的少ない照射量でキューティクルにダメージを与えますが、日光曝露によるキューティクルの柔軟性劣化は比較的穏やかに進行します。これは日光の分光分布におけるUVBの割合が低いことによると考えられています。

毛髪状態の違い

ダメージの増大によりキューティクルのめくれ上がりにつながり、この結果として毛髪を曲げたり引っ張ったりするといった物理的な変形に対するキューティクルの抵抗性が減少することが知られています[10a]

そして、さらに日光の曝露が続いたり、曲げたり引っ張ったりなど物理的な力が加わると、下層のキューティクルも剥がれていき、比較的柔軟性のある最下層のキューティクル(エンドキューティクル)の柔軟性が低下し、毛髪のしなやかさが失われていきます[10b]

このような背景から、ダメージを受けた毛髪の柔軟性を向上させることは、毛髪のダメージやしなやかさのリカバリーにおいて重要なアプローチのひとつであると考えられています。

クオタニウム-18はジアルキル型四級アンモニウム塩であり、パサつきを抑えて柔軟でなめらかな髪に仕上げることから[2c]、主にコンディショナー製品、トリートメント製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品、カラートリートメント製品、カラーシャンプー製品などに使用されています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2001年および2018-2020年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

クオタニウム-18の配合製品数と配合量の比較調査結果(2001年および2018-2020年)

4. 安全性評価

クオタニウム-18の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[11a]によると、

  • [ヒト試験] 50名の被検者に7.5%クオタニウム-18溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は0.0-8.0のスケールで0.26であり、皮膚感作スコアは0.0-8.0のスケールで0.08であった。皮膚感作性のデータとして試験人数が最適とはいえませんが(準最適)、この試験条件下においてこの試験物質は実質的に皮膚に対して刺激および感作を示さないと結論付けられた(Armak Co,1973)

このように、試験データをみるかぎり濃度7.5%以下において実質的に皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、クオタニウム-18は濃度1%以下の範囲で使用されていることからも安全に使用できると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[11b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に5%クオタニウム-18水溶液0.1mLを点眼し、点眼72時間後まで眼刺激性を評価したところ、点眼72時間までに眼刺激はみられなかった(Ashland Chemical Co,1969)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に4%クオタニウム-18水溶液0.1mLを点眼し、点眼72時間後まで眼刺激性を評価したところ、いくつかの結膜刺激がみられたが、それらは時間とともに消失した(Ashland Chemical Co,1973)
  • [動物試験] ウサギの片眼に7.5%クオタニウム-18を含む製品希釈液を点眼し、点眼24および48時間後に眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアは11.7であり、この試験物質は最小限の眼刺激に分類された(Armak Co,1973)

このように報告されており、試験データをみるかぎり非刺激-最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「クオタニウム-18」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,352.
  2. abEvonik Industries AG(2008)「VARISOFT BTMS Pellets」Technical Data Sheet.
  3. ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社(2021)「リポカード、リポソカードシリーズ」製品カタログ.
  4. ab日光ケミカルズ株式会社, 他(1991)「塩化ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム」化粧品原料辞典,69.
  5. abデール・H・ジョンソン(2011)「コンディショニング剤」ヘアケアサイエンス入門,81-99.
  6. 佐藤 直紀(2006)「シャンプー・リンスの機能と最新の技術」機能性化粧品の開発Ⅱ,109-122.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  8. abクラーレンス・R・ロビンス(2006)「毛形態学的構造および高次構造」毛髪の科学,1-68.
  9. デール・H・ジョンソン(2011)「毛髪のコンディショニング」ヘアケアサイエンス入門,77-122.
  10. ab新條 善太郎, 他(1994)「キューティクルの柔軟性に与える紫外線の影響」日本化粧品技術者会誌(28)(1),66-76. DOI:10.5107/sccj.28.66.
  11. abR.L. Elder(1982)「Final Report on the Safety Assessment of Quaternium-18, Quaternium-18 Hectorite, and Quaternium-18 Bentonite」Journal of the American College of Toxicology(1)(2),71-83. DOI:10.3109/10915818209013148.

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