ポリクオタニウム-7の基本情報・配合目的・安全性

ポリクオタニウム-7

化粧品表示名 ポリクオタニウム-7
医薬部外品表示名 塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液
INCI名 Polyquaternium-7
配合目的 帯電防止ヘアコンディショニング起泡補助感触改良 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるアクリルアミドと第四級アンモニウム塩であるジメチルジアリルアンモニウムクロリドを重合して得られる第四級アンモニウム塩の共重合体(∗1)(カチオン性高分子)(∗2)です[1]

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)とよびます。

∗2 カチオン性高分子とは、陽イオン界面活性能(カチオン性)を有した高分子化合物(ポリマー:polymer)のことです。

ポリクオタニウム-7

1.2. 物性・性状

ポリクオタニウム-7の物性・性状は、

状態 無色透明の粘性液体

このように報告されています[2a][3a][4a][5a]

また、このカチオン性高分子は非イオン性のアクリルアミドを任意に共重合させることにより目的に応じたカチオン性の性質を調整することが可能であり、アクリルアミドの重量比が50wt%以上において陰イオン性界面活性剤との溶解性が向上することから、陰イオン性界面活性剤との溶解性を改善できるといった特徴を有しています[6a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 帯電防止効果
  • 柔軟性およびなめらかな感触付与によるヘアコンディショニング作用
  • 泡密度および泡持続性の増強
  • 潤滑性および展延性向上による感触改良

主にこれらの目的で、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ヘアパック製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品、ハンドソープ製品、ヘアカラートリートメント製品、スキンケア製品、化粧下地製品、日焼け止め製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 帯電防止効果

帯電防止効果に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪状態の違い

パーマやブリーチ処理、紫外線などによってダメージを受けた毛髪やシャンプーをすすいだ毛髪は負(-:マイナス)に帯電し、キューティクルの鱗片が開いていますが、帯電防止成分は正(+:プラス)の電荷をもつことから負に帯電した毛髪に吸着し、キューティクル表面に溜まった負(-:マイナス)の電荷を中和することにより隣接するキューティクル同士の静電反発を低減する(静電気の発生を抑制する)ことが知られています[7a][8][9]

そして、その結果としてキューティクルが平に寝るようになり、きしみやキューティクルの摩擦抵抗が抑えられ、シャンプー後の毛髪の滑り性が改善するとともにもつれや絡まりを防ぐことが知られています[7b]

ポリクオタニウム-7はカチオン性高分子であり、毛髪の表面に吸着し静電気を抑制してパサつきを抑え、濡れた毛髪および乾燥した毛髪に対して良好な櫛通り性を付与することから[2b][3b][4b]、主にシャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ヘアパック製品、ヘアカラートリートメント製品などに汎用されています。

2.2. 柔軟性およびなめらかな感触付与によるヘアコンディショニング作用

柔軟性およびなめらかな感触付与によるヘアコンディショニング作用に関しては、まず前提知識として毛髪の構造と毛髪のダメージと柔軟性の関係について解説します。

毛髪の構造については、以下の毛髪構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

キューティクル(毛小皮)とよばれる5-10層で重なり合った平らかつうろこ状の構造からなる厚い保護外膜が表面を覆い、キューティクル内部は紡錘状細胞から成り繊維体質の大部分を占めるコルテックス(毛皮質)およびメデュラ(毛髄質)とよばれる多孔質部分で構成されています[10a]

また、細胞膜複合体(CMC:Cell Membrane Complex)がこの3つの構造を接着・結合しており、毛髪内部の水分保持や成分の浸透・拡散の主要通路としての役割を担っています[10b]

これら毛髪構造の中でキューティクルは、摩擦、引っ張り、曲げ、日光への曝露などの影響による物理的かつ化学的劣化に耐性をもち、その配列が見た目の美しさや感触特性となります[11]

一方で、日光曝露におけるキューティクルの柔軟性劣化の進行は穏やかではあるものの(∗3)、UVBの曝露は比較的少ない照射量でキューティクルにダメージを与えることが明らかにされており、長時間の日光(紫外線)曝露においては、以下の図をみてもらうとわかるように、

∗3 UVAは比較的影響が少ないのに対してUVBは比較的少ない照射量でキューティクルにダメージを与えますが、日光曝露によるキューティクルの柔軟性劣化は比較的穏やかに進行します。これは日光の分光分布におけるUVBの割合が低いことによると考えられています。

毛髪状態の違い

ダメージの増大によりキューティクルのめくれ上がりにつながり、この結果として毛髪を曲げたり引っ張ったりするといった物理的な変形に対するキューティクルの抵抗性が減少することが知られています[12a]

そして、さらに日光の曝露が続いたり、曲げたり引っ張ったりなど物理的な力が加わると、下層のキューティクルも剥がれていき、比較的柔軟性のある最下層のキューティクル(エンドキューティクル)の柔軟性が低下し、毛髪のしなやかさが失われていきます[12b]

このような背景から、損傷したキューティクルを平らに寝かせてなめらかにすることやダメージを受けた毛髪の柔軟性を向上させることは、毛髪の外観、ダメージおよび感触のリカバリーにおいて重要なアプローチのひとつであると考えられています。

ポリクオタニウム-7はカチオン性高分子であり、パサつきを抑えて柔軟な髪に仕上げることとなめらかな感触を付与することから[2c][3c][4c]、主にシャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ヘアパック製品、ヘアカラートリートメント製品などに汎用されています。

シャンプー製品においてカチオン性高分子は、可溶化あるいは分散状態で存在しており、洗髪やすすぎ時に水で希釈されることで陰イオン界面活性剤と複合体を形成し、この複合体が毛髪に吸着することにより優れたコンディションニング性を発揮すると考えられています[6b][13]

2.3. 泡密度および泡持続性の増強

泡密度および泡持続性の増強に関しては、ポリクオタニウム-7はカチオン性高分子であり、皮膚や眼に対して刺激性が低く、洗浄剤の泡密度を増強(よりクリーミィな泡を生成)するとともに泡立ちを安定させることから[2d][4d][5b]、主にシャンプー製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品、ハンドソープ製品などに汎用されています。

2.4. 潤滑性および展延性向上による感触改良

潤滑性および展延性向上による感触改良に関しては、ポリクオタニウム-7はカチオン性高分子であり、皮膚や眼に対して刺激性が低く、基剤になめらかでしっとりした感触を付与し、塗布の際に皮膚上での良好な広がりを促進することから[2e][4e]、主にクリーム系スキンケア製品、化粧下地製品、日焼け止め製品等に使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ポリクオタニウム-7は混合原料が開発されており、ポリクオタニウム-7と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 コスモートC-7S2
構成成分 ポリクオタニウム-7水添ポリイソブテン、トリデセス-7、トリオレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸ポリグリセリル-6
特徴 デンプン系よりも曵糸性(糸引くような粘性)が低く、高いチキソトロピー性を示し、ヘアトリートメントに配合する事で櫛通り性を向上させ、なめらかでまとまりのある質感を付与するW/Oエマルジョン型のカチオン系増粘剤
原料名 NIKKOL フレッシュカラーベースAQUA
構成成分 酸化チタンBG酸化鉄アルミナシリカポリクオタニウム-7
特徴 顔料分散剤不要の肌色ベース調製用混合原料

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2009-2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ポリクオタニウム-7の配合製品数と配合量の比較調査結果(2009-2010年)

5. 安全性評価

ポリクオタニウム-7の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:濃度5%以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし
  • 発がん性:なし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14a]およびジェノバ大学皮膚科およびサンマルティーノ病院アレルギー科による医療データ[15]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 106名の被検者に8%ポリクオタニウム-7水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において3名にわずかな累積刺激がみられ、チャレンジ期間においては5名の被検者に感作反応がみられた。感作反応を示した5名のうち4名は非常に弱い反応であり、残りの1名は中程度の反応であった。中程度の感作反応を示した1名に再チャレンジパッチを適用したところ、非常に弱い反応であった。この試験物質は実質的に非常にわずかな累積刺激剤であると結論付けられた(Product Investigations Inc,1981)
  • [ヒト試験] 150名の被検者に8%ポリクオタニウム-7水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において2名はわずかな紅斑を示したが、他に有害な皮膚反応は示されず、この試験条件下においてこの試験物質は実質的に皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Product Investigations Inc,1994)
  • [動物試験] 6匹のウサギの剃毛した無傷および擦過した皮膚に8%ポリクオタニウム-7溶液0.5mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後2週間にわたって皮膚刺激性を評価したところ、皮膚刺激の兆候はみられなかった(Merck, Sharp & Dohme Research Laboratories,1978)

– アレルギーを有する場合 –

  • [個別事例] ニッケルおよび香料にアレルギーを有する32歳の看護師(アトピー性皮膚炎ではない)は様々なブランドの使い捨て手袋が多く使用されている救急病棟で働いており、仕事に関連した手の湿疹が1年ほど続いていることから、天然ゴムラテックスアレルギーのパッチテストを行ったところ皮膚感作反応を示さなかった。またイタリアの標準シリーズでのパッチテストでは、明らかに無関係であるニッケルと香料に対する感作が確認されただけだった。患者は無香料の保湿ローションを1日に数回使用しており、保湿ローションの使用を停止したところ、湿疹は3週間以内に治まった。この保湿ローションの個々の成分をパッチテストする中で3%ラウレス-9水溶液およびポリクオタニウム-7で陽性反応を示した。0.3,3および10%ラウレス-9水溶液および0.1,0.5および1%ポリクオタニウム-7水溶液を患者および対照の20名にパッチテストしたところ、患者は両方の物質のすべての希釈液に++の陽性反応を示したが、対照の20名は皮膚反応を示さなかった。患者には無香料、ラウレス-9およびポリクオタニウム-7を含まないスキンケア製品が処方され、それ以来症状はみられなかった(R. Gallo et al,2002)

このように、試験データをみるかぎり個別事例を除いて共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、皮膚刺激性は非刺激-わずかな累積刺激が報告されているため、一般に非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、海外の調査報告によるポリクオタニウム-7の配合製品数が1994年の138であるのに対して2010年には975と大幅に増加する中で、化粧品配合量および現在の使用法において安全に使用できることが改めて報告されています[16a]

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%ポリクオタニウム-7を点眼し、1分間まぶたを閉じたまま維持し、眼はすすがず、点眼15分および2時間後で点眼したすべての眼にわずかな目やにがみられ、また3匹の眼にはわずかな結膜充血がみられたが、24時間ですべての眼は正常に戻り、2週間の間にそれ以上の眼刺激はみられなかった(Merck, Sharp & Dohme Research Laboratories,1978)

このように報告されており、試験データをみるかぎり濃度100%においてわずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は濃度100%においてわずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、実際の製品における配合量は5%以下であり、化粧品配合量および現在の使用法において安全に使用できることが改めて報告されていることから[16b]、化粧品配合量および現在の使用法において安全に使用できると考えられます。

5.3. 光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14c]によると、

  • [ヒト試験] 29名の被検者に8%ポリクオタニウム-7水溶液を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚刺激、皮膚感作および光感作反応を示さなかった(Hill Top Research Inc,1982)

このように、試験データをみるかぎり光感作なしと報告されているため、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

5.4. 発がん性

ポリクオタニウム-7は、アクリルアミドと第四級アンモニウム塩であるジメチルジアリルアンモニウムクロリドを重合して得られる共重合体ですが、このうちアクリルアミドは大量に食べたり、吸ったり、触れたりした場合に神経障害を起こすことが確認されているほか、IARC(International Agency for Research on Cancer:国際がん研究機関)ではグループ2A(動物実験の結果からヒトにおそらく発がん性がある物質)に分類されています[17a][18a]

また、スウェーデン食品庁とストックホルム大学が、揚げたり、焼いたりした馬鈴薯加工品(ポテトチップスやフライドポテトなど)などに、おそらく発がん性があるアクリルアミドが高濃度に含まれる可能性があることを2002年に世界で初めて発表し、これを機に欧米諸国を中心として食品に関するアクリルアミドの調査研究やアクリルアミドを低減するための取組みが進められている実態があります[17b][18b]

こういった情報を背景に、ポリクオタニウム-7にも発がん性リスクの懸念が推測されるかもしれませんが、健康への影響および発がん性が問題となるのはあくまでも単量体(分子1個)のアクリルアミドのみです。

高分子であるポリクオタニウム-7は構造的に有意に吸収されないこと、アクリルアミドが不純物として存在することはあるが最大で10ppmと非常に少なく毒性学的意義がないこと、動物試験においてポリクオタニウム-7が吸収されても影響がないことから、1994年に安全に使用できるとの結論が報告されています[14d]

また、2010年においてもその結論は変わらず[16c]、現在まで20年以上の使用実績がある中で発がん性リスクの報告もないことから安全に使用できると考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ポリクオタニウム-7」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,908.
  2. abcdeLubrizol Advanced Materials, Inc.(2012)「Merquat 550 Polymer」Technical Data Sheet.
  3. abcセンカ株式会社(2021)「コスモートVシリーズ」製品データシート.
  4. abcdeBASF SE(2013)「Salcare Super 7 AT1」Technical Information.
  5. abCroda Inc(2010)「Conditioning Polymers」Personal Care Product Guide,37.
  6. ab別府 耕次・小宮 薫(1995)「毛髪コンディショニング剤用ポリマー」油化学(44)(4),283-290. DOI:10.5650/jos1956.44.283.
  7. abデール・H・ジョンソン(2011)「コンディショニング剤」ヘアケアサイエンス入門,81-99.
  8. 佐藤 直紀(2006)「シャンプー・リンスの機能と最新の技術」機能性化粧品の開発Ⅱ,109-122.
  9. 田村 健夫・廣田 博(2001)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  10. abクラーレンス・R・ロビンス(2006)「毛形態学的構造および高次構造」毛髪の科学,1-68.
  11. デール・H・ジョンソン(2011)「毛髪のコンディショニング」ヘアケアサイエンス入門,77-122.
  12. ab新條 善太郎, 他(1994)「キューティクルの柔軟性に与える紫外線の影響」日本化粧品技術者会誌(28)(1),66-76. DOI:10.5107/sccj.28.66.
  13. 柿澤 恭史(2018)「洗浄料とその作用」日本香粧品学会誌(42)(4),270-279. DOI:10.11469/koshohin.42.270.
  14. abcdF.A. Andersen(1995)「Final Report on the Safety Assessment of Polyquaternium-7」Journal of the American College of Toxicology(14)(6),476-484. DOI:10.3109/10915819509010307.
  15. R. Gallo, et al(2002)「Allergic contact dermatitis from laureth-9 and polyquaternium-7 in a skin-care product」Contact Dermatitis(45)(6),356-357. DOI:10.1034/j.1600-0536.2001.450608.x.
  16. abcF.A. Andersen(2010)「Polyquatemium-7」International Journal of Toxicology(30)(5_suppl),119S-120S. DOI:10.1177/1091581811412618.
  17. ab農林水産省(2018)「アクリルアミドとは何か」,2023年3月18日アクセス.
  18. ab農林水産省(2018)「アクリルアミドの健康影響」,2023年3月18日アクセス.

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