酢酸トコフェロールとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化成分
酢酸トコフェロール
[化粧品成分表示名称]
・酢酸トコフェロール

[医薬部外品表示名称]
・酢酸DL-α-トコフェロール

トコフェロール(ビタミンE)と酢酸のエステルであり、化学構造的にdl-α-トコフェロールの6位の水酸基をアセチル化して得られる油溶性のビタミンE誘導体です。

トコフェロールは酸化しやすい性質のため、製品自体の酸化防止剤としても汎用されていますが、アセチル化することで空気中で酸化を受けず、製品中では酸化防止作用を発揮しないため、皮膚へのビタミンE供給目的で使用されます(文献3:2006)

酢酸トコフェロールの作用は、主に酢酸トコフェロールが表皮に存在する酵素であるエスラーゼによってトコフェロールに加水分解されることによる、トコフェロールまたはトコフェロール類似作用です(文献3:2006;文献5:1998)

皮膚への浸透率に関しては、1998年にアメリカのカリフォルニア大学分子細胞生物学科によって報告された酢酸トコフェロールの皮膚浸透性検証によると、

ラットの背部に酢酸トコフェロールまたはトコフェロールのエタノール溶液を塗布し、皮膚への浸透性を検討した。

その結果、塗布1日目で両者とも10%が皮膚に浸透し、皮膚吸収性に差は見られなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1998)、酢酸トコフェロールはトコフェロールと同等の皮膚浸透率であると考えられます。

また、皮膚内でのトコフェロール変換率に関しては、1998年にアメリカのアリゾナ大学薬学部薬理毒物学科によって報告された酢酸トコフェロールの変換率検証によると、

マウスの表皮に酢酸トコフェロール配合バニシングクリームを塗布すると、塗布24時間で皮膚中のトコフェロールは本来皮膚中に存在しているトコフェロールの10倍になるが、塗布された酢酸トコフェロールの1%未満しかトコフェロールに変換されていない。

ただし、UV照射1時間後に酢酸トコフェロールを塗布すると、表皮中の非特異的エスラーゼ活性が上昇し、トコフェロールへの変換が亢進(∗1)し、皮膚中に存在しているトコフェロールが40倍になった。

∗1 亢進(こうしん)とは、高い状態まで進むことをいいます。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1998)、感覚的に変換率が低いと感じるかもしれませんが、1%変換であっても皮膚に存在しているトコフェロール量として10倍に増加すること、また医薬品でも外用剤として使用され、医薬部外品(薬用化粧品)としても配合上限があることから、適切に皮膚内トコフェロールの増加に貢献すると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ハンド&ボディケア製品、リップケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、シート&マスク製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています(文献1:2002)

過酸化脂質抑制による抗酸化作用

過酸化脂質抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として過酸化脂質について解説します。

以下の細胞膜の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

細胞膜の構造図

皮脂や細胞間脂質、細胞膜を構成しているリン脂質などの酸化が進んだ脂質のことで、皮膚に過酸化脂質が増えると様々な物質の変性・損傷が起こり、肌はくすみ、ハリはなくなり、色素沈着は濃くなり、老化が促進されます(文献7:2002)

皮膚において過酸化脂質が生成される主な原因のひとつが紫外線であり、紫外線により発生した活性酸素のひとつである一重項酸素が脂質と結合することで過酸化脂質の生成が促進されます(文献7:2002)

このような背景から、紫外線照射をうけた場合に過酸化脂質を抑制することが重要であると考えられます。

1989年に日光ケミカルズおよび日本サーファクタント工業によって報告された皮膚における酢酸トコフェロールの抗酸化検証によると、

剃毛したラットの背部皮膚から皮下脂肪組織を除去し、ホモジネートした10%皮膚ホモジネートに酢酸dl-α-トコフェロールを0,0.2,2および20mMとなるよう添加し、30分間室温に放置後に10cmの距離から30分間UVAを照射し、過酸化脂質を測定したところ、以下の表のように(∗2)

∗2 MDA(malonyl dialdehyde)とは脂質酸化物を意味し、MDA値とは脂質酸化物量を意味します。

用量(mM) MDA値(nannomole/mg)
0.0 10.49 ± 0.38
0.2 9.39 ± 0.48
2.0 8.08 ± 0.97
20.0 3.15 ± 0.21

酢酸dl-α-トコフェロールを0.2mM添加した場合、0.0と比較して10.5%低下し、2.0mM添加した場合、23%低下、20mM添加した場合、70%低下した。

この結果から酢酸dl-α-トコフェロールは、濃度依存的に紫外線照射による皮膚の過酸化脂質を抑制することが示された。

また、酢酸dl-α-トコフェロールとビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルMgを併用し、MDA還元相互作用を検討したところ、以下のグラフのように(∗3)

∗3 VE:酢酸dl-α-トコフェロール、VC-PMG:リン酸アスコルビルMgの意味です。

VE用量(mM) VC-PMG用量(mM) MDA値(nannomole/mg)
0.0 0.0 10.70 ± 2.20
0.2 0.0 10.04 ± 0.74
0.2 0.2 9.30 ± 0.60
0.2 2.0 6.73 ± 0.36
0.2 20.0 0.69 ± 0

酢酸dl-α-トコフェロールは、リン酸アスコルビルMgと併用した場合、著しくMDA値が低下した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1989)、酢酸トコフェロールに過酸化脂質抑制による抗酸化作用が認められています。

また、酢酸トコフェロールはリン酸アスコルビルMgをはじめとするビタミンC誘導体と併用することで、過酸化脂質抑制の相乗効果が明らかになっています(文献6:1989)

この相乗効果は、トコフェロールの抗酸化作用のメカニズムが、脂質過酸化を防ぐために自分自身が代わりに酸化し、酸化したトコフェロールは生体内でアスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオンおよびシステインのような水溶性抗酸化物質により還元され、再び抗酸化作用を示すという報告と一致していると考えられます(文献8:1998;文献9:1982)

酢酸トコフェロールは医薬品成分であり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 3.03
粘膜に使用されることがある化粧品 3.03

また、酢酸dl-α-トコフェロールは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 すべてのdl-α-トコフェロール誘導体をdl-α-トコフェロールに換算してdl-α-トコフェロールとして合計
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 1.0
薬用歯みがき類 1.0
浴用剤 1.0

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

酢酸トコフェロールの配合比較調査(1998-2014年)

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酢酸トコフェロールの安全性(刺激性・アレルギー)について

酢酸トコフェロールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 110人の被検者(男性18人、女性92人)の背中に0.1%酢酸トコフェロールを含むローション0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの期間においても皮膚反応は観察されなかったため、0.1%酢酸トコフェロールを含むローションは皮膚刺激剤および増感剤ではなかった(AMA Laboratories Inc,1996)
  • [ヒト試験] 8人の被検者の肩甲骨間領域に100%酢酸トコフェロールおよび50%,20%,5%および1%酢酸トコフェロールを含むワセリン0.5mLを21日間にわたって24時間閉塞パッチ適用し、各パッチ除去10分後に試験部位を0-4のスケールでスコアリングしたところ、平均刺激スコアは100%において0であり、50%,20%,5%,1%においてはそれぞれ0.312,1.0,0.312,0.875であった。また対照としてのワセリンのみの刺激スコアは0.125であった(Roche,1999)
  • [ヒト試験] 203人の被検者に酢酸トコフェロール(濃度不明)を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、総刺激スコアは15.5であり、平均刺激強度指数は0.076であった。感作値はすべて陰性であった。酢酸トコフェロールは一次刺激剤ではなく、遅延過敏症を引き起こさないと結論付けられた(Roche,1999)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2014)によると、

  • [ヒト試験] 19人の被検者に36%酢酸トコフェロールを含むキューティクル軟化剤を24時間単一閉塞パッチ適用したところ、1人の被検者は+反応を有し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は0.03であった(Anonymous,1996)
  • [ヒト試験] 203人の被検者に酢酸DL-α-トコフェロールを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間のそれぞれの被検者のPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は0.076であり、いずれの被検者も高い刺激性を示さず、またチャレンジパッチ後に陽性反応は報告されなかった(European Chemicals Agency,2013)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激および皮膚感作が起こる可能性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] 酢酸トコフェロールはウサギの眼を刺激しないと述べられている(BASF,1993;Hoffmann-LaRoche,1995;1996)
  • [動物試験] 酢酸トコフェロールはウサギの眼に刺激を与えなかった(BASF,1996)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2014)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの結膜嚢に100%酢酸トコフェロールを注入し、眼はすすがず、点眼1,24,48および72時間後に眼をスコアリングしたところ、1-48時間でわずかな刺激が観察されたが、72時間では正常であった(European Chemicals Agency,2013)
  • [動物試験] 6匹のウサギに100%dl-α-トコフェロールを注入し、眼はすすがず、Draize法に準じてスコアリングしたところ、軽度の刺激(発赤)が観察されたが、7日目までには落ち着いた。角膜の変化は報告されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ほとんどなし-軽度の眼刺激性が報告されているため、眼刺激性はほとんどなしまたは一過性の軽度の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 11人の被検者の腰背部2箇所に酢酸トコフェロール0.2mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に処置部位のひとつおよび未処置部位にUVAを5-8分照射した。試験および対照部位は照射の15分後および24および48時間後にスコアリングしたところ、照射部位および非照射部位で皮膚反応は観察されず、酢酸トコフェロールは光毒性ではなかった(Consumer Product Testing Co,1992)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2014)によると、

  • [動物試験] 20匹のモルモットの8c㎡領域に酢酸トコフェロールを皮内注射し、試験部位にUVB(1.8J/c㎡)およびUVA(10J/c㎡)を照射する手順を2週間以内に4回繰り返し、10匹の対照群は酢酸トコフェロールのみで処置した。1週間の無処置期間をおいて100%,75%,50%,25%酢酸トコフェロールを含むエタノールを側面に適用し、処置部位にUVAを照射または照射せず、24,48および72時間後にスコアリングしたところ、チャレンジ後に20匹のモルモットのうち2匹でわずかな紅斑が観察されたが、照射した試験部位と照射されていない試験部位との間に一貫した有意な差異が認められず、反応は試験物質の濃度に依存しなかった。反応は皮膚過敏症の可能性が最も高いと述べられており、対照群では反応は観察されなかった(European Chemicals Agency,2013)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

∗∗∗

酢酸トコフェロールは抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2002)「Final Report on the Safety Assessment of Tocopherol,Tocopheryl Acetate, Tocopheryl Linoleate, Tocopheryl Linoleate/Oleate, Tocopheryl Nicotinate, Tocopheryl Succinate, Dioleyl Tocopheryl Methylsilanol, Potassium Ascorbyl Tocopheryl Phosphate, and Tocophersolan」International Journal of Toxicology(21)(3),51-116.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Tocopherols and Tocotrienols as Used in Cosmetics」Final Amended Report.
  3. 厚生労働省(2006)「d-α-トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロール酢酸エステルの食品添加物の指定に関する添加物部会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0928-5d.pdf> 2019年4月21日アクセス.
  4. M G Traber, et al(1998)「Penetration and distribution of α-tocopherol, α- or γ-tocotrienols applied individually onto murine skin.」Lipids(33)(1),87-91.
  5. K Kramer-Stickland, et al(1998)「Effect of UVB on hydrolysis of alpha-tocopherol acetate to alpha-tocopherol in mouse skin.」The Journal of Investigative Dermatology(111)(2),302-307.
  6. 田川 正人, 他(1989)「リン酸L-アスコルビルマグネシウムの化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(23)(3),200-206.
  7. 朝田 康夫(2002)「過酸化脂質の害は」美容皮膚科学事典,163-165.
  8. N Noguchi, et al(1998)「Dynamics of Vitamin E Action against LDL Oxidation」Free Radical Research(28)(6),561-572.
  9. E Niki, et al(1982)「Regeneration of vitamin E from .ALPHA.-chromanoxyl radical by glutathione and vitamin C.」Chemistry Letters(11)(6),789-792.

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