フラーレンの基本情報・配合目的・安全性

フラーレン

化粧品表示名 フラーレン
INCI名 Fullerenes
配合目的 抗酸化バリア機能修復美白、毛髪保護 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される60個の炭素原子のみで構成される炭素の同素体(∗1)であり、12個の五員環と20個の六員環で構成されたイコソヘドロン(正二十面体)構造をもつ球状カゴ型の炭素分子です[1][2a]

∗1 同素体とは、同一元素から成るもののその原子の配列や結合が異なることにより性質が異なる単体のことをいい、炭素の同素体としては、フラーレンのほかダイヤモンドや鉛筆の芯の材料であるグラファイト(graphite:黒鉛)などがあります。

フラーレン

1.2. 物性・性状

フラーレンの物性・性状は、

状態 粉体
溶解性 水、エタノールに難溶

このように報告されています[2b]

フラーレンは疎水性かつ凝集性を有していることから、直接化粧品に配合することは非常に難しく、また活性酸素消去活性によって様々な効果を発揮するものの、化粧品においてはそのまま配合すると自身の強い酸化力によって製品中で還元性を発揮し、急速に酸化され、その結果として抗酸化力を失ってしまうことから、誘導体化、包接化、リポソーム化など安定化技術を用いた上で配合されます[3][4]

2022年7月時点では、安定化剤(分散剤)として以下の表のように、

分散剤 性質
PVP 水溶性
スクワラン 油溶性
リポソーム 水溶性
シリカ 不溶性
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 油溶性
非イオン界面活性剤、多価アルコール、ミネラルオイルなど 水溶性

これらの分散剤が用いられており、製品の種類や用途に合わせて最適な原料が配合されています。

1.3. 分布

C60フラーレンは、自然界において非常に少ないものの、陽石の衝突や雷撃などで生成されたものが岩石や化石から検出されているほか、宇宙空間にも存在することが確認されています[5][6]

1.4. 皮膚における浸透性

2010年に県立広島大学生命環境学部細胞機能制御学研究室によって報告されたフラーレン(C60の皮膚浸透性検証によると、

3次元ヒト皮膚組織モデルの表面にC60フラーレン(12ppm)を組み込んだ水添レシチンおよびダイズステロールから成るリポソームを投与し、フラーレンの皮膚浸透を評価したところ、24時間後で表皮から1.34ppmが検出され、真皮からは検出されなかった。

このような検証結果が明らかにされており[7]、フラーレン(C60に表皮までの浸透性が認められています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • スーパーオキシド消去による抗酸化作用
  • CE量減少抑制によるバリア機能修復作用
  • メラニン産生抑制による美白作用
  • キューティクル損傷抑制による毛髪保護作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、マスク製品、洗顔料、ボディケア製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、メイクアップ製品、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. スーパーオキシド消去による抗酸化作用

スーパーオキシド消去による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として皮膚における活性酸素種、活性酸素種の酸化還元反応およびSODの役割について解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O2が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり[8][9]、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O2が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O2を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H2O2、ヒドロキシルラジカル(HO)を経て、最終的に水(H2O)になるというものです[10a]

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O2は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます[10b]

一方で、紫外線の曝露など(∗2)によりスーパーオキシド(superoxide:O2を含む活性酸素種の過剰な産生が知られており[11]、過剰に産生されたスーパーオキシドはスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によってはヒドロキシルラジカル(HO)まで変化することが知られています。

∗2 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

発生したヒドロキシルラジカル(HO)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します[10c][12][13]

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後にスーパーオキシドを消去することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要なアプローチのひとつであると考えられます。

2004年にビタミンC60バイオリサーチによって報告されたスーパーオキシドに対するフラーレンの影響検証によると、

– in vitro : スーパーオキシド消去作用 –

各試料1.5mLにキサンチンオキシダーゼを添加後、30秒反応させ、ESRスピントラップ法によりスーパーオキシド量を測定したところ、以下のグラフのように、

PVP包接フラーレンのスーパーオキシド消去効果

PVP包接フラーレンは、顕著なスーパーオキシド消去活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており[14]、フラーレンにスーパーオキシド消去作用が認められています。

次に、2011年にビタミンC60バイオリサーチによって報告されたフラーレンのヒト皮膚シワに対する有効性検証によると、

– ヒト使用試験 –

両目尻に主としてグレード2(明瞭な浅いシワ[わずか])からグレード3(明瞭な浅いシワ)を有した23名の女性被検者(平均年齢39.2歳)の半顔に0.0003%フラーレン配合クリームを、残りの半顔にフラーレン未配合クリーム(プラセボ)を二重盲検法を用いて1日2回8週にわたって塗布してもらった。

評価は、日本香粧品学会が定めた抗シワ評価ガイドラインに基づき、4および8週目に医師によるシワグレード目視評価および写真評価、目尻より採取したレプリカ解析によりシワ面積率および最大シワ最大深さを算出したところ、目視および写真評価においては有意差がなかったものの、以下のグラフのように、

 フラーレンのシワ改善効果[機器評価]

フラーレン配合クリーム塗布側で、プラセボと比較して塗布8週目に有意(p<0.021)なシワ面積率の減少が認められた。

また、総シワ平均深さにおいてもプラセボと比較して有意ではない(p<0.078)ものの、改善傾向がみられた。

このような検証結果が明らかにされており[15a]、フラーレンに抗酸化作用(抗シワ作用)が認められています。

シワの形成には紫外線および活性酸素が関わっていることから、このフラーレンのシワ面積改善効果は、抗酸化作用によるものであると考えられた[15b]

2.2. CE量減少抑制によるバリア機能修復作用

CE量減少抑制によるバリア機能修復作用に関しては、まず前提知識として角質層における細胞間脂質の構造およびCEについて解説します。

以下の表皮最外層である角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような脂質組成で構成されており[16]、その約50%をセラミドが占めています。

これら細胞間脂質は以下の図のように、

細胞間脂質におけるラメラ液晶構造の仕組み(詳細版)

疎水層(脂質)と親水層(水分)を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗3)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

∗3 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています[17]

次に、CEについては以下の表皮角質層における角質細胞の拡大図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

皮膚における角質細胞の構造図

角質細胞の一番外側には細胞膜が存在しており、細胞膜の内側には周辺帯(cornified cell envelope:CE)と呼ばれる極めて強靭な裏打ち構造の不溶性タンパクの膜が形成されていることが知られています[18]

この周辺帯(CE)が細胞間脂質の主要構成成分であるセラミドと結合することによって強固なバリア機能が形成されています。

一方で、皮膚が乾燥寒冷下に長時間曝露されるような外的要因やアトピー性皮膚炎のような内的要因により乾皮症(ドライスキン)が生じた場合は、角質層の機能低下により、角質層の水分保持能の低下およびバリア機能低下による経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss:TEWL)の上昇が起こり[19]、その結果として角質細胞や細胞間脂質が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下していくことが知られています[20]

このような背景から、CE量の減少を抑制し強固なバリア機能の形成を維持することは、ドライスキンの改善や皮膚の健常性を維持するために重要であると考えられます。

次に、2021年にビタミンC60バイオリサーチによって報告されたフラーレンのヒト皮膚シワに対する有効性検証によると、

– in vitro : CE量減少抑制作用 –

培養ヒト表皮角化細胞にPVP、PVP包接フラーレンを添加した後にUVBを照射し、培養後にCEを産生する細胞の割合を無添加のヒト表皮角化細胞と比較したところ、以下のグラフのように、

UVB照射におけるPVP包接フラーレンのCE量減少抑制効果

PVP包接フラーレンは、無添加と比較してUVB照射に対するCE量がUVBを照射しない細胞と同等のレベルまで回復した。

– ヒト使用試験 –

人工的に肌荒れをつくった10名の被検者の前腕内側部2箇所の一方に1%PVP包接フラーレン水溶液、他方に精製水のみを1日2回4日間にわたって塗布してもらい、毎日の表皮水分蒸散量を測定し、バリア回復率を算出したところ、以下のグラフのように、

肌荒れに対するPVP包接フラーレンのバリア機能修復効果

PVP包接フラーレン水溶液塗布部位は、肌荒れをつくってから2日後に精製水のみを塗布した部位と比較して有意(2日目・3日目:p<0.05)にバリア回復率が増加した。

この結果から、PVP包接フラーレンは紫外線照射後の肌荒れだけでなく、人工的に作成した肌荒れに対しても有効にバリア機能を回復させることが明らかとなった。

このような検証結果が明らかにされており[21]、フラーレンにCE量減少抑制によるバリア機能修復作用が認められています。

2.3. メラニン産生抑制による美白作用

メラニン産生抑制による美白作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています[22a][23][24a]

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます[22b][24b]

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています[22c][24c]

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します[22d]

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています[22e]

このような背景から、メラニン産生を抑制することは色素沈着の抑制において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2017年にビタミンC60バイオリサーチによって報告されたPVP包接フラーレンのメラニンに対する影響検証およびヒト皮膚色素沈着に対する有用性検証によると、

– in vitro : メラニン生成抑制作用 –

培養ヒトメラノーマ細胞に各濃度のPVP包接フラーレンを添加し、メラニン量を測定したところ、以下のグラフのように、

PVP包接フラーレンのメラニン産生抑制作用

PVP包接フラーレンは濃度依存的にメラニン産生量を抑制し、その濃度は1%以上で有意(1-2%:p<0.05、5%:p<0.01)であった。

– ヒト使用試験 –

18名の女性被検者の左腕上腕内側にUVBおよびUVAを照射して人工的にシミを形成した2箇所のうち1箇所に1%PVP包接フラーレン配合クリームを、他方に未配合クリームをそれぞれ1日2回8週間にわたって塗布してもらい、肌の明るさを示す指標として分光色差計でメラニンインデックス(∗4)を測定したところ、以下のグラフのように、

∗4 メラニンインデックスは、その値が高いほど肌が暗く、値が低いほど肌が明るい。

紫外線照射による色素沈着に対するPVP包接フラーレンの改善効果

PVP包接フラーレン配合クリーム塗布部は、未配合クリーム塗布部よりメラニンインデックスの低減が有意(8週目:p<0.05)に早かった。

このような検証結果が明らかにされており[25]、フラーレンにメラニン産生抑制による美白作用が認められています。

2.4. キューティクル損傷抑制による毛髪保護作用

キューティクル損傷抑制による毛髪保護作用に関しては、まず前提知識として毛髪の構造と毛髪ダメージとその原因について解説します。

毛髪の構造については、以下の毛髪構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

キューティクル(毛小皮)とよばれる5-10層で重なり合った平らかつうろこ状の構造からなる厚い保護外膜が表面を覆い、キューティクル内部は紡錘状細胞から成り繊維体質の大部分を占めるコルテックス(毛皮質)およびメデュラ(毛髄質)とよばれる多孔質部分で構成されています[26a]

また、細胞膜複合体(CMC:Cell Membrane Complex)がこの3つの構造を接着・結合しており、毛髪内部の水分保持や成分の浸透・拡散の主要通路としての役割を担っています[26b]

これら毛髪構造の中でキューティクルは、摩擦、引っ張り、曲げ、紫外線への曝露などの影響による物理的かつ化学的劣化に耐性をもち、その配列が見た目の美しさや感触特性となります[27a]

一方で、キューティクルはシャンプーや毎日の手入れなどの物理的要因、あるいはヘアアイロン、染毛・脱色、パーマなど化学的要因あるいは紫外線などの環境要因によるダメージに対して優れた耐性を有しているものの、以下の図をみてもらうとわかるように、

毛髪状態の違い

これらのダメージが重なり合い繰り返されるうちに劣化していき、最終的にキューティクルのめくれ上がりや毛髪繊維の弱化につながることが知られています[27b][28]

このような背景から、キューティクルの損傷を抑制することは、毛髪の外観や感触の維持・保持において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2016年にビタミンC60バイオリサーチによって報告されたPVP包接フラーレンのメラニンに対する影響検証およびヒト皮膚色素沈着に対する有用性検証によると、

– 紫外線曝露試験 –

毛髪(人毛)に0.026%フラーレンを含むスクワランまたはフラーレンを含まないスクワランを塗布し、その後でUVBを2-4J/c㎡の強度で照射し、毛髪を走査型電子顕微鏡で観察した。

その結果、スクワランのみを塗布した毛髪では毛髪表面のキューティクルの剥離が生じていたが、0.026%フラーレンを含むスクワランを塗布した毛髪ではキューティクルの剥離は生じず、フラーレンが紫外線によるキューティクルの損傷を抑制することがわかった。

– パーマ剤処理試験 –

フラーレンを溶解させたスクワランまたはフラーレンを含まないスクワランを塗布した毛髪に50倍量のパーマ剤による処理を2時間実施した後、水で洗浄後に中和し、室温で乾かして毛髪を走査型電子顕微鏡で観察した。

その結果、スクワランのみを塗布した毛髪では毛髪表面のキューティクルの剥離が生じていたが、フラーレンを溶解させたスクワランを塗布した毛髪ではキューティクルの剥離は生じず、フラーレンがパーマ剤によるキューティクルダメージを抑制することがわかった。

このような検証結果が明らかにされており[29]、フラーレンにキューティクル損傷抑制による毛髪保護作用が認められています。

3. 混合原料としての配合目的

フラーレンは混合原料が開発されており、フラーレンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Radical SpongeN
構成成分 フラーレンPVPBG
特徴 水溶性高分子PVPを用いて水溶化(水中分散化)したフラーレン
原料名 LipoFullereneN
構成成分 フラーレンスクワラン
特徴 フラーレンを油中分散した植物性スクワラン
原料名 Moist FullereneN
構成成分 フラーレン水添レシチンフィトステロールズBG
特徴 フラーレン配合リポソーム
原料名 Veil FullereneN
構成成分 フラーレンシリカ
特徴 フラーレン内包シリカゲル
原料名 Sun Guard FullereneN
構成成分 フラーレンメトキシケイヒ酸エチルヘキシル
特徴 フラーレンを分散した紫外線吸収剤
原料名 Hair Shiny FullereneN
構成成分 フラーレン、γ-ドコサラクトン、ミネラルオイル
特徴 ヘアカラー後の退色抑制効果を発揮する毛髪用フラーレン原料
原料名 Hair Shiny FullereneN-MO
構成成分 フラーレン、γ-ドコサラクトン
特徴 ヘアカラー後の退色抑制効果を発揮する毛髪用フラーレン原料(ミネラルオイル不使用)

4. 安全性評価

フラーレンの現時点での安全性は、

  • 2005年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

産業技術総合研究所のリスク評価書[2c]によると、

  • [ヒト試験] 30名の被検者に0,0.6および14.8%フラーレン(C60)水中分散液をパッチテストし、96時間後まで皮膚反応を観察したところ、いずれの被検者においても有害な皮膚反応はみられず、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Huczko et al,1999)
  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)にフラーレン(C₆₀)100mgを対象に24時間皮膚パッチテストを実施し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、フラーレンによる皮膚への影響は観察されなかった(Aoshima et al,2009)
  • [動物試験] ウサギの剃毛した皮膚にフラーレン(C₆₀,C₇₀)を含むポリプロピレングリコール0.5gを24時間閉塞パッチ適用し、適用24および48時間後に皮膚反応を評価したところ、フラーレンによる皮膚への影響は観察されなかった(Aoshima et al,2009)

このように記載されており、試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

産業技術総合研究所のリスク評価書[2d]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼にフラーレン水中分散液0.2mLを点眼し、改変Draize法に基づいて点眼24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、眼刺激の兆候は観察されなかった(Huczko et al,1999)

このように記載されており、試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

産業技術総合研究所のリスク評価書[2e]によると、

  • [動物試験] モルモットにフラーレン(C60)7.5mgを塗布した後にUVライト(11.2J/㎡)を50分間照射し、照射後に光刺激性を評価したところ、この試験物質は光刺激剤ではなかった(Aoshima et al,2009)
  • [動物試験] モルモットにフラーレン(C60)を対象に光感作性試験を実施したところ、この試験物質は光感作剤ではなかった(Aoshima et al,2009)

このように記載されており、試験データをみるかぎり、光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

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