トコフェリルリン酸Naの基本情報・配合目的・安全性

トコフェリルリン酸Na

化粧品表示名 トコフェリルリン酸Na
医薬部外品表示名 dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウム
愛称 TPNa
慣用名 VEP
INCI名 Sodium Tocopheryl Phosphate
配合目的 抗酸化バリア機能修復抗菌 など

dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムは、日本メナード化粧品の申請によって2004年に医薬部外品肌荒れ防止有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるトコフェロールの6位のヒドロキシ基(-OH)がリン酸エステル化されたトコフェロールリン酸エステルのモノナトリウム塩とジナトリウム塩の混合物(ビタミンE誘導体)です[1][2a][3]

トコフェリルリン酸Na

1.2. ビタミンE誘導体としての特徴

トコフェロール(ビタミンE)は、皮膚において抗酸化作用、血行促進作用など優れた機能を発揮することが知られており、酸化還元力が強いものの、6位のヒドロキシ基(-OH)が空気、光、紫外線により酸化されやすいことから、皮膚に対して抗酸化作用を発揮させる目的の場合は6位をエステル化して酸化安定性を高めたビタミンE誘導体の形で用いられることが知られています[4][5]

トコフェリルリン酸Naは、油溶性であるトコフェロールの6位のヒドロキシ基(-OH)を水溶性であるリン酸(H3PO4でエステル化することにより、安定性と水溶性を獲得した両親媒性のビタミンE誘導体です。

リン酸エステル化することにより酸化安定性が高くなる代わりに酸化還元力がなくなり、その結果として製剤中で安定に存在することが可能になり、皮膚に浸透すると表皮に存在する酵素によってトコフェロールに変換され、皮膚内でトコフェロールとして抗酸化力を発揮することを特徴としていることから、「安定型ビタミンE誘導体」とよばれています[2b][6a]

また、皮膚吸収性においては、酢酸トコフェロールと同等のトコフェロール量が確認されていることから[7a]、トコフェロールと同様に表皮から真皮にかけて浸透すると考えられます。

2. 化粧品および医薬部外品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 過酸化脂質抑制による抗酸化作用
  • クローディン-1発現低下抑制によるバリア機能修復作用
  • アクネ菌増殖抑制による抗菌作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、クレンジング製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 過酸化脂質抑制による抗酸化作用

過酸化脂質抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として過酸化脂質の発生メカニズムと過酸化脂質の皮膚への影響について解説します。

皮膚に対する紫外線曝露によって産生される活性酸素種である一重項酸素(¹O₂)やヒドロキシルラジカル(HO)は、細胞膜と反応して過酸化脂質(lipid peroxide)を生成することが知られています[8a]

過酸化脂質の発生メカニズムについては、以下の図をみるとわかりやすいと思いますが、

過酸化脂質発生メカニズム(脂質過酸化反応)

発生したヒドロキシルラジカル(HO)が脂質(LH)から電子を奪い、水素原子と結合して水(H₂O)と脂質ラジカル(L・)を生成することからはじまり、生成された脂質ラジカルは酸素分子(O₂)と速やかに反応して脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)となります[8b]

脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)は、他の脂質(LH)と反応して水素を引き抜き、自らは過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド)となり、同時に新たに脂質ラジカル(L・)が生成され、脂質過酸化反応が連鎖的に繰り返されます[8c]

このような連鎖的反応によって生成された過酸化脂質は、皮膚に対して炎症、浮腫、壊死、色素沈着などを起こすことが知られています[9]

また、皮膚表面に存在する皮表脂質(∗1)においても紫外線などの曝露によって発生する一重項酸素により過酸化脂質が増加することが知られており[10]、皮表脂質の過酸化脂質量は20代を最小としそれ以降は年齢とともに増加することも明らかにされています[11a]

∗1 皮表脂質とは、表皮細胞(角化細胞)の分化過程で産生されるコレステロール、コレステロールエステルなどの表皮脂質と皮脂腺由来の皮脂が皮膚表面で混ざったもののことをいいます。

皮表脂質の成分組成は、ヒトによって含有量が異なり、また同じヒトであっても日によって変動がありますが、

由来 成分 含量範囲(%)
表皮細胞 コレステロールエステル 1.5 – 2.6
コレステロール 1.2 – 2.3
皮脂腺 スクワレン 10.1 – 13.9
ワックス 22.6 – 29.5
トリグリセリド 19.5 – 49.4
ジグリセリド 2.3 – 4.3
遊離脂肪酸 7.9 – 39.0

このように報告されており[12]、皮脂腺由来の脂肪が約90%を占めることから、広義には皮表脂質も皮脂とよばれています。

皮表脂質では、スクアレンが酸化の第一標的となることが明らかにされており、ヒト皮膚再構築モデルを用いてこのスクアレン過酸化物の皮膚刺激性を検討したところ、皮表接触4時間後では障害反応は起こりませんが、接触24時間後では特異的に障害反応を示し、その障害範囲は表皮ケラチノサイトだけでなく真皮線維芽細胞にも及んでいることが報告されています[11b]

スクアレン過酸化物が皮表接触24時間後で線維芽細胞まで障害を起こすメカニズムとしては、スクアレン過酸化物由来の脂質過酸化反応の連鎖により真皮まで伝播していき、線維芽細胞の細胞膜構成脂質を酸化し破壊するという反応系であると考えられています[11c]

アトピー性皮膚炎においては、健常皮膚と比較して皮表の抗酸化能が劣っている(過酸化脂質産生量が多い)ことが明らかにされており、皮膚の状態と皮表脂質過酸化の進行度合いは相関することが示唆されています[11d]

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後に生成される過酸化脂質を抑制することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2010年に日本メナード化粧品総合研究所によって報告されたトコフェリルリン酸Naの過酸化脂質に対する影響検証によると、

– in vitro : 過酸化脂質抑制作用 –

ヒト皮膚由来線維芽細胞にトコフェリルリン酸Naを添加後、紫外線を照射し肌荒れの発生要因のひとつとされている過酸化脂質の生成をチオバルビツール酸(TBA)を用いて生じるマロンジアルデヒド(MDA)換算として無添加と比較したところ、以下のグラフのように、

トコフェリルリン酸Naの過酸化脂質抑制作用

トコフェリルリン酸Naにより、過酸化脂質の生成を有意(p<0.05)に抑制する作用が確認された。

このような検証結果が明らかにされており[6b]、トコフェリルリン酸Naに過酸化脂質抑制作用が認められています。

トコフェリルリン酸Naは、外用剤として皮脂の酸化を防ぐことが認められている医薬品成分である酢酸トコフェロールと同様の皮内トコフェロール量および作用メカニズムを示し、ヒト皮膚における肌あれを防ぐ効果についても同等であることが確認されていることから、ヒト使用試験については省略されています[7b]

2.2. クローディン-1発現低下抑制によるバリア機能修復作用

クローディン-1発現低下抑制によるバリア機能修復作用に関しては、まず前提知識としてタイトジャンクションおよびクローディン-1について解説します。

以下の表皮角質層-顆粒層の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮顆粒層の構造図

角質層は、角質細胞の間を細胞間脂質で満たすことで角質細胞同士を接着しバリア機能を発揮しますが、角質層直下に存在する3層で構成された顆粒層(stratum granulosum:SG)(∗2)においては、2層目(SG2)において隣接する細胞同士の隙間を密着結合するタイトジャンクション(tight junction)という細胞間結合が二次バリア機能を形成することで、外界からの異物の生体内侵入あるいは細胞間隙からの水分子やイオンの漏れを防ぐ障壁としての役割を果たしています[13][14]

∗2 顆粒層(stratum granulosum:SG)は3層で構成されており、表面からそれぞれSG1,SG2,SG3細胞として解説されます。

タイトジャンクションは、以下のタイトジャンクション構造図をみてもらうとわかるように、

顆粒層のタイトジャンクション構造図

クローディン(claudin)、オクルディン(occludin)およびZO-1などで構成されていますが[15][16][17]、これらのタイトジャンクション構成成分は紫外線の曝露によってそのmRNA発現が低下し、その結果としてタイトジャンクションの構造が乱れ、表皮バリア機能の低下を引き起こすと考えられています[2c]

また、アトピー性皮膚炎を有する場合は角層および顆粒層のバリア機能の低下からハウスダストなどに対する免疫感受性が高まることが報告されており[18]、その結果としてアレルギー反応を起こしやすくなり、症状の悪化を招きやすくなります。

このような背景から、肌荒れやアトピー性皮膚炎を有する場合など顆粒層のバリア機能が低下している場合は、クローディン-1やオクルディンの発現を高めることでバリア機能を修復させるアプローチが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品総合研究所によって報告されたトコフェリルリン酸Na(VEP)のクローディン-1に対する影響検証および人工肌荒れ皮膚における有用性検証によると、

– in vitro : クローディン-1発現低下抑制作用 –

表皮細胞にUVBを照射し濃度30μMのVEPを添加した場合と未添加の場合のクローディン-1の発現量を比較したところ、以下のグラフのように、

紫外線によるクローディン-1発現低下に対するトコフェリルリン酸Naの抑制作用

VEPを添加した表皮細胞は未添加と比較して有意(p<0.05)にクローディン-1の発現低下を抑制することが確認された。

– ヒト使用試験 –

健常な皮膚を有する11名の被検者の前腕内側部に肌荒れを人工的に引き起こすためにドデシル硫酸ナトリウムを単独もしくはVEPと混合原料_したものを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24時間後の経表皮水分蒸散量を比較した。

その結果、肌荒れを引き起こしたことによる経表皮の水分蒸散量の上昇はVEPの適用によって抑制されたことが確認され、VEPに肌荒れ防止作用が認められた。

このような検証結果が明らかにされており[2d]、トコフェリルリン酸Naにクローディン-1発現低下抑制によるバリア機能修復作用(肌荒れ防止作用)が認められています。

2.3. アクネ菌増殖抑制による抗菌作用

アクネ菌増殖抑制による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌およびアクネ菌について解説します。

皮膚表面および皮脂腺開口部には多数の微生物が存在しており、その中でも健康なヒトの皮膚に高頻度で検出される病原菌をもたない微生物を皮膚常在菌と呼んでいます[19a][20a]

健常な皮膚表面およびの主な皮膚常在菌の種類としては、20-69歳までの健常女性84名の頬より菌を採取し分離同定したところ、以下の表のように(∗3)

∗3 好気性とは、酸素を利用した代謝機構を備えていること、嫌気性とは増殖に酸素を必要としない性質のことです。

分類 名称 性質 検出率(%)
グラム陽性
桿菌
アクネ菌
(cutibacterium acnes)
嫌気性 100.0
グラム陽性
球菌
表皮ブドウ球菌
(staphylococcus epidermidis)
好気性 79.1
グラム陽性
細菌
ミクロコッカス属
(micrococcus)
好気性 41.2
グラム陽性
球菌
黄色ブドウ球菌
(staphylococcus aureus)
好気性 8.7
グラム陽性
細菌
枯草菌
(bacillus subtilis)
好気性 6.1

すべての人からアクネ菌が検出され、次いで表皮ブドウ球菌が79.1%の人から検出されたことから、これらが主要な皮膚常在菌であると考えられます[20b]

皮膚常在菌の平均的な菌数については、被検者の頬1c㎡あたりの平均菌数を検討したところ、以下のグラフのように、

健常皮膚における皮膚常在菌の平均数

最も多く検出されたのはアクネ菌、次いで表皮ブドウ球菌であり[10c]、この試験結果は従来の試験データ[19b]とも同様であることから、一般に健常な皮膚状態かつこれらの皮膚常在菌が存在する場合はこれらの皮膚常在菌が大部分を占めていると考えられます。

皮膚常在菌は、皮膚上の皮表脂質やアミノ酸などを生育のための栄養源とし、1000種もの菌がお互いに競合と調和関係を構築しながら安定した叢(フローラ)を形成することで、通常は病原性を示すことなく、むしろ外部からの病原菌の侵入を防ぐ一種のバリア機能を発揮していると考えられています[19c][21]

アクネ菌は嫌気性菌であり、酸素のある環境ではほとんど増殖できないため、毛穴や皮脂腺に存在しており、皮脂分解酵素であるリパーゼ(lipase)を産生・分泌し、皮脂の構成成分であるトリグリセリドを脂肪酸とグリセリンに分解することによって皮膚を弱酸性に保ち、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)など病原性の強い細菌の増殖を抑制する役割を担っています[22]

一方で、以下のニキビの種類・重症度図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

ニキビの種類・重症度

様々な要因から皮脂の分泌量が過剰に増えることにより、毛穴開口部の角層が硬くなって毛穴を塞ぐことや角質細胞と脂質の混合物が毛穴に詰まり狭められて皮脂が溜まることなど、酸素が少なく栄養が多いアクネ菌にとって理想的な環境となった場合に、アクネ菌が過剰に増殖することが知られています。

アクネ菌が増殖するメカニズムとしては、アクネ菌がリパーゼを分泌しトリグリセリドを分解することによって生じる脂肪酸の一種であるオレイン酸が毛穴開口部の角層を硬くし、アクネ菌の生育を促進することから[23a]、アクネ菌がリパーゼを分泌することでオレイン酸を産生し、閉塞環境を強化しながら増殖していくというものになります[20d]

アクネ菌は、過剰に増殖しなければニキビの原因菌になりませんが、皮脂の分泌量が増えて何かの理由で毛穴が塞がり過剰に増殖すると、増殖したアクネ菌の数に比例して分泌されるリパーゼによって産生された過剰な脂肪酸や増殖した菌体の成分が毛穴に炎症を引き起こすことから[23b][24][25]、ニキビの発生から悪化の要因であると考えられています。

このような背景から、皮膚常在菌がバランスした健常な皮膚状態であればアクネ菌の存在は問題ではありませんが、毛穴開口部の閉塞などによりアクネ菌が増殖し皮膚常在菌バランスが崩れた場合は、増殖したアクネ菌を抑制するアプローチが皮膚常在菌バランスの改善、ひいては皮膚状態の改善に重要であると考えられます。

2007年に日本メナード化粧品総合研究所によって報告されたトコフェリルリン酸Na(VEP)のアクネ菌への影響検証によると、

– in vitro : アクネ菌に対する抗菌作用 –

変法GAM寒天培地を用いた寒天平板法に基づいてアクネ菌(P. acnes JCM 6425)を培養し、アクネ菌に対する各種ビタミンおよびその誘導体のMIC(Minimum Inhibitory Concentrations:最小発育阻止濃度)を測定したところ、以下の表のように、

ビタミン ビタミンおよび誘導体の種類 MIC(mM)
ビタミンB2 リボフラビン > 10
リボフラビンリン酸Na > 10
ビタミンB6 ピリドキシン > 10
ビタミンC アスコルビン酸 > 10
アスコルビルリン酸Na > 10
ビタミンE トコフェリルリン酸Na 1
トコフェロール > 10
酢酸トコフェロール > 10
ニコチン酸トコフェロール > 10
対照物質 メチルパラベン 17

トコフェリルリン酸Naのみがアクネ菌に対して高い抗菌性を示した。

トコフェリルリン酸Na以外のビタミンE類が抗菌性を示さなかったことから、トコフェリルリン酸Naの抗菌性はビタミンEとしての効果ではないと考えられた。

次に、他の皮膚常在菌に対するトコフェリルリン酸Naの抗菌性を同様の方法で測定したところ、以下の表のように、

菌分類 菌種 MIC(mM)
グラム陽性
桿菌
アクネ菌
(Propionibacterium acnes)
1
グラム陽性
球菌
黄色ブドウ球菌
(Staphylococcus aureus)
40
表皮ブドウ球菌
(Staphylococcus epidermidis)
> 40
真菌 マラセチア菌
(Malassezia furfur)
> 40

トコフェリルリン酸Naは、皮膚常在菌に存在するグラム陽性球菌や真菌に対して抗菌性を示さなかった。

つまり、トコフェリルリン酸Naを皮膚に塗布した場合、これらの皮膚常在菌のうちグラム陽性桿菌であるアクネ菌に対して、選択的な抗菌性を示すと考えられた。

また、トコフェリルリン酸Naはアクネ菌の中でもニキビに最も深く関与していると考えられているD3に対して、とくに高い抗菌性を示すことも示された。

– ヒト使用試験 –

ニキビの症状を有するまたはニキビができやすい10名の被検者の半顔に2%トコフェリルリン酸Na配合ローションを、のこりの半顔に未配合ローションを1日2回1ヶ月にわたって連用した。

ニキビに対する効果は、2週間および4週間後に左右の額からアクネ菌を採取し変法GAM寒天培地による塗抹培養法にて単位面積あたりの平均菌数を求めたところ、以下のグラフのように、

トコフェリルリン酸Na配合ローションによるアクネ菌への影響

トコフェリルリン酸Na配合ローションの使用により、4週間後でアクネ菌数は有意(p<0.05)に減少した。

このような検証結果が明らかにされており[26a]、トコフェリルリン酸Naにアクネ菌増殖抑制による抗菌作用が認められています。

また、トコフェリルリン酸Naの抗菌作用メカニズムは、菌体の膜破壊であることが明らかにされています[26b]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗4)

∗4 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

トコフェリルリン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2013年)

4. 安全性評価

トコフェリルリン酸Naの現時点での安全性は、

  • 2004年に医薬部外品有効成分に承認
  • 2004年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品および医薬部外品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

日本メナード化粧品の安全性データ[7c]によると、

  • [ヒト試験] 40名の被検者にトコフェリルリン酸Naを含む美容液を対象にヒトパッチ試験を実施したところ、2名の被検者に軽度の刺激反応がみられたが、他の被検者はいずれも皮膚反応はみられず、この試験製剤は皮膚感作剤ではなかった
  • [ヒト試験] 40名の被検者にトコフェリルリン酸Naを含む美容液を対象に閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、陽性反応はみられず、この試験製剤は皮膚刺激剤ではなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、皮膚刺激性については、非刺激-わずかな皮膚刺激が報告されているため、一般に非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

日本メナード化粧品の安全性データ[7d]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼にトコフェリルリン酸Naを点眼し、眼はすすがず、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は最小限の眼刺激剤でに分類された

このように記載されており、試験データをみるかぎり最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

日本メナード化粧品の安全性データ[7e]によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてトコフェリルリン酸Naを対象とした光毒性試験を実施したところ、この試験物質は光刺激剤ではなかった
  • [動物試験] モルモットを用いてトコフェリルリン酸Naを対象とした光感作性試験をAdjuvant-Strip法に基づいて実施したところ、この試験物質は光感作剤ではなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

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