マヨラナ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化
マヨラナ葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・マヨラナ葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・マヨラナエキス

シソ科植物マジョラム(∗1)(学名:Origanum majorana 和名:マヨラナ)の葉からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

∗1 オレガノ(学名:Origanum vulgare)は別名ワイルドマジョラムと呼ばれ、オレガノと区別するために、マジョラム(marjoram)は別名としてスイートマジョラム(sweet marjoram)とも呼ばれています。

マジョラム(marjoram)は、地中海東部を原産とし、古代ギリシャ時代には遺族を慰め、死者が安らかに眠れるように墓地に植えられ、中世の修道院では育てたマジョラムを性欲抑制や精神的な治療に用いてきた歴史があり、ヨーロッパでは最も広く知られるハーブのひとつです(文献1:2018;文献2:2017)

マヨラナ葉エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
テルペノイド モノテルペン テルピネン-4-オール、サビネン、シメン、γ-テルピネン など
フラボノイド フラボン 詳細不明
フラバノール

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献3:2012;文献4:2016)

マジョラム葉の化粧品以外の主な用途としては、タイムとオレガノをミックスしたような芳香を有していることから食品分野においてサラダをはじめ、肉・魚料理、ソース、スープなどの風味付け、肉製品や乳製品の香味付けなどに用いられています(文献2:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、トリートメント製品、頭皮ケア製品、ボディケア製品、ボディソープ製品など様々な製品に使用されています。

スーパーオキシド生成阻害による抗酸化作用

スーパーオキシド生成阻害による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として皮膚における活性酸素種、活性酸素種の酸化還元反応およびSODの役割について解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O₂)が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり(文献5:2002;文献6:2019)、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O₂)が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(HO・)を経て、最終的に水(H₂O)になるというものです(文献7:2019)

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます(文献7:2019)

一方で、紫外線の曝露など(∗2)によりスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を含む活性酸素種の過剰な産生が知られており(文献8:1998)、過剰に産生されたスーパーオキシドはスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によってはヒドロキシルラジカル(HO・)まで変化することが知られています。

∗2 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

発生したヒドロキシルラジカル(HO・)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します(文献7:2019;文献9:1996;文献10:2013)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後にスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)の活性を増強することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要なアプローチのひとつであると考えられます。

1996年に御木本製薬によって報告されたマヨラナ葉エキスのスーパーオキシドおよびヒト皮膚に対する影響検証によると、

in vitro試験において発色試薬1mL、0.1%マヨラナ葉エキス(50%エタノール抽出)溶液0.1mLを37℃で恒温にした後に酵素液1mLを加えて撹拌し、20分放置した後に反応停止液を加えて吸光度を測定し、スーパーオキシド阻害率を算出したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) スーパーオキシド生成阻害率(%)
マヨラナ葉エキス 0.1 36.2

マヨラナ葉エキスは、スーパーオキシド阻害作用を示すことが確認された。

次に、4人の女性被検者に0.5%マヨラナ葉エキス配合ローションを半顔に、対照としてマヨラナ葉エキス未配合ローションを残りの半顔にそれぞれ1日1回3ヶ月間連続使用してもらった。

3ヶ月後に肌荒れ防止、肌のツヤ、肌のハリを「3:試料配合ローションのほうが非常によい」「2:試料配合ローションのほうがかなり非常によい」「1:試料配合ローションのほうがややよい」「0:差がない」「-1:試料未配合ローションのほうがややよい」「-2:試料未配合ローションのほうがかなりよい」「-3:試料未配合ローションのほうが非常によい」の7段階で評点したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) 評価
肌荒れ 肌のツヤ 肌のハリ
マヨラナ葉エキス配合ローション 0.5 9 8 9

0.5%マヨラナ葉エキス配合ローションの塗布は、未配合ローションと比較して肌荒れ防止効果および肌のツヤ・ハリを保持することが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献11:1996)、マヨラナ葉エキスにスーパーオキシド生成阻害による抗酸化作用が認められています。

複合植物エキスとしてのマヨラナ葉エキス

マヨラナ葉エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、マヨラナ葉エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 プランテージ<モイスト>
構成成分 ワイルドタイムエキスオタネニンジン根エキスマヨラナ葉エキスBG
特徴 代謝後にアミノ酸となるフィラグリンの発現促進作用を有するワイルドタイムエキス、16種類のアミノ酸をバランスよく含有したオタネニンジン根エキス、表皮ヒアルロン酸産生促進作用を有するマヨラナ葉エキスを混合することによって多角的に角質層の潤いをケアする混合植物抽出液であり、1%濃度製剤をヒト皮膚に1日3回15日間塗布することにより角層アミノ酸量および角層水分量の増加作用が認められています

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マヨラナ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

マヨラナ葉エキスの現時点での安全性は、

  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

マヨラナ葉エキスは抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分

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文献一覧:

  1. ジャパンハーブソサエティー(2018)「マジョラム」ハーブのすべてがわかる事典,48.
  2. 杉田 浩一, 他(2017)「マジョラム」新版 日本食品大事典,749-750.
  3. A.P. Raina, et al(2012)「Essential oil composition of Origanum majorana and Origanum vulgare ssp. hirtum growing in India」Chemistry of Natural Compounds(47),1015-1017.
  4. H. Hajlaoui, et al(2016)「Chemical composition and in vitro evaluation of antioxidant, antimicrobial, cytotoxicity and anti-acetylcholinesterase properties of Tunisian Origanum majorana L. essential oil」Microbial Pathogenesis(95),86-94.
  5. 朝田 康夫(2002)「活性酸素とは何か」美容皮膚科学事典,153-154.
  6. 河野 雅弘, 他(2019)「活性酸素種とは」抗酸化の科学,XⅢ-XⅣ.
  7. 小澤 俊彦(2019)「活性酸素種および活性窒素種の発生系」抗酸化の科学,123-138.
  8. 荒金 久美(1998)「光と皮膚」ファルマシア(34)(1),30-33.
  9. 花田 勝美(1996)「活性酸素・フリーラジカルは皮膚でどのようにつくられるか」皮膚の老化と活性酸素・フリーラジカル,15-35.
  10. 小林 枝里, 他(2013)「表皮の酸化ストレスとその防御機構」Fragrance Journal(41)(2),16-21.
  11. 御木本製薬株式会社(1996)「活性酸素抑制剤」特開平08-119869.

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