ビルベリー葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化 細胞賦活
ビルベリー葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・ビルベリー葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・ビルベリー葉エキス

ツツジ科植物セイヨウスノキ(学名:Vaccinium myrtillus 英名:Common Bilberry)の葉からエタノールBGなどで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

セイヨウスノキは、一般的にビルベリーの名称で知られており、ヨーロッパおよび北アジアの高山低木樹地帯にかけて広く自生しているブルーベリーの近縁種です(文献1:2010)

ビルベリー葉エキスは天然成分であることから地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フェニルプロパノイド クロロゲン酸
フラボノイド フラボノール ケルセチン
フラボノイド カテキン、プロアントシアニジン、アントシアニン など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2010;文献2;1953;文献3:2003;文献4:2004)

ビルベリー葉の化粧品以外の主な用途としては、ビルベリー葉の調合剤が血糖値を下げることから、ヨーロッパにおいて糖尿病患者に対し民間療法として用いられており、ほかにも胃酸分泌異常、関節炎、痛風、皮膚病、血流不全などの予防および改善、さらには新陳代謝の促進などの目的で伝統的に用いられています(文献5:2006)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア化粧品、洗顔料、洗顔石鹸、シャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ボディソープ製品、クレンジング製品、シート&マスク製品など様々な製品に汎用されています。

SOD様活性とカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼ産生促進による抗酸化作用

SOD様活性とカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼ産生促進による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として皮膚における活性酸素種、活性酸素種の酸化還元反応および活性酸素消去酵素(SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ)の役割について解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O₂)が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり(文献7:2002;文献8:2019)、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O₂)が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(HO)を経て、最終的に水(H₂O)になるというものです(文献9:2019)

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます(文献9:2019)

一方で、紫外線の曝露など(∗1)により活性酸素種の過剰な産生が知られており(文献10:1998)、過剰に産生されたスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)はスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、過酸化水素に変化した場合は過酸化水素分解酵素であるカタラーゼ(catalase)およびグルタチオンの存在下でグルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase)により分解されますが、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によってはヒドロキシルラジカル(HO)まで変化することが知られています(文献11:1996;文献12:2019)

∗1 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

発生したヒドロキシルラジカル(HO)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します(文献9:2019;文献13:1996;文献14:2013)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後にスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)の活性を補強することやカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼの産生を促進することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、しいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2006年に一丸ファルコスによって報告されたビルベリー葉エキスの肌荒れへの影響検証によると、

in vitro試験において100%SOD阻害率を測定できるSOD Assay Kit-WSTを用いてビルベリー葉エキスの活性酸素消去率(SOD活性率)を評価したところ、以下のグラフのように、

ビルベリー葉エキスのSOD様活性

ビルベリー葉エキスには活性酸素消去作用(SOD様作用)が観察された。

このことから、ビルベリー葉エキスは活性酸素消去剤として有用であると考えられた。

次に、乾燥肌やツヤ・ハリのない肌で悩む10人の被検者(25-50歳)の顔面に5%ビルベリー葉エキスを含む乳液を1日2回(朝晩)洗顔後に3ヶ月にわたって塗布してもらい、対照としてビルベリー葉エキス未配合乳液を同様に用いた。

評価方法として「有効:肌のツヤ・ハリが増し、乾燥肌・肌荒れが改善された」「やや有効:肌のツヤ・ハリがやや増し、乾燥肌・肌荒れが改善された」「無効:使用前と変化なし」の基準で行い、3ヶ月後に被検者に評価してもらったところ、以下の表のように、

試料 皮膚感触に対する影響(人数)
有効 やや有効 無効
5%ビルベリー葉エキス配合乳液 5 4 1
ビルベリー葉エキス未配合乳液(対照) 0 2 8

ビルベリー葉エキス配合乳液は、未配合乳液と比較して有意に乾燥肌を改善し、肌にツヤ・ハリを付与することを確認した。

このような試験結果が明らかにされており(文献5:2006;文献6:2006)、ビルベリー葉エキスにSOD様活性による抗酸化作用が認められています。

次に、2016年にロート製薬および一丸ファルコスの共同研究によって報告されたビルベリー葉エキスの抗酸化メカニズムの検証によると、

in vitro試験においてヒト表皮細胞にビルベリー葉エキスを添加し遺伝子発現を解析したところ、以下のグラフのように、

ヒト表皮細胞に対するビルベリー葉エキス添加による過酸化水素分解酵素への影響

ビルベリー葉エキスの添加により、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼとグルタチオンペルオキシダーゼの遺伝子発現量の増加が確認されました。

このような試験結果が明らかにされており(文献15:2016)、ビルベリー葉エキスにカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼの産生促進による抗酸化作用が認められています。

カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼの産生促進による抗酸化作用のヒト有用性データはみあたりませんが、ビルベリー葉エキスにカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼの産生促進作用が認められたことから、SOD様活性に関するヒト有用性試験の結果はカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼ産生促進を含む総合的な抗酸化作用によるものであると考えられます。

BMAL1発現量増加による細胞賦活作用

BMAL1発現量増加による細胞賦活作用に関しては、まず前提知識として概日リズムおよび時計遺伝子について解説します。

概日リズム(サーカディアン・リズム:circadian rhythm)とは、一般的には「体内時計」と呼ばれており、ヒトにおいては24時間10分周期(∗2)で変動する生理現象です(文献16:2015)

∗2 1960年代にドイツのユルゲン・アショフ(Jürgen Aschoff)は、ヒトにも概日リズムがあること、概日リズムの周期はおよそ25時間であることを証明しましたが(文献17:1962)、その後の光環境厳密に調整した実験を経て現在では概日リズムの周期が24時間10分であることが明らかにされています。

約24時間周期の概日リズムをつくりコントロールしているのは時計遺伝子であり、ヒトの主な時計遺伝子としては、

名称 分類 役割
CLOCK 転写促進因子 BMAL1と二量体を形成し、E-Boxに結合して時計遺伝子や時計制御遺伝子の転写を活性化
BMAL 転写促進因子 CLOCKと二量体を形成し、E-Boxに結合して時計遺伝子や時計制御遺伝子の転写を活性化
PER
(PERIOD)
転写調節因子
CLOCK/BMAL1抑制因子
CRYと複合体を形成して核に移行し、CLOCK/BMAL1を調整
CRY CLOCK/BMAL1抑制因子 CLOCK/BMAL1の抑制因子として機能

主にこれら4種類が報告されています(文献18:2012)

これら時計遺伝子が概日リズムを引き起こすメカニズムは、以下の概日リズムの分子メカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

概日リズムの分子メカニズム

中心的に概日リズムを細胞レベルで調整しているのは転写促進因子であるBMAL1およびCLOCKであり、核内においてBMAL1とCLOCKが二量体を形成し、これがDNA上のE-box配列に結合することで時計遺伝子であるPERやCRYの発現を調節し、発現したPERとCRYが二量体を形成して核内へと移行し、BMAL1/CLOCKによる転写活性を抑制するという転写活性と転写抑制のフィードバックループが24時間周期で遂行されることによって引き起こされています(文献18:2012)

この概日リズムは、全身のほぼすべての抹消組織に存在し、自律的に活性し協調的に作用することにより全身の概日リズムが保持されており、皮膚細胞においても存在が確認されています(文献18:2012;文献19:2009)

一方で、中心的な時計遺伝子であるBMALは昼に少なく夜に多くなるという日内変動が知られていますが、加齢によって日内変動が少なく(夜になっても多くなりにくく)なっていき(文献20:2010)、in vitro試験においてBMAL1発現を抑制した表皮細胞で角化の著しい減少が認められていることから(文献21:2009)、角層形成能(保湿能およびバリア機能)の低下につながる可能性が考えられます。

このような背景から、BMAL1遺伝子の発現量を増加することは、皮膚の健常性保持において重要であると考えられます。

2016年にロート製薬と一丸ファルコスによって報告されたビルベリー葉エキスの時計遺伝子への影響検証によると、

in vitro試験においてヒト表皮細胞にビルベリー葉エキスを添加し、経時的に遺伝子発現を解析したところ、以下のグラフのように、

ビルベリー葉エキスによるBMAL1発現量の変化

ビルベリー葉エキスを添加することで、BMAL1遺伝子の発現量が多くなり、はっきりとした振幅になっていることが確認された。

次に、被検者(人数不明)にビルベリー葉エキス(濃度不明)を含む基礎化粧品を8週間適用し、ターンオーバーの乱れなどの指標として用いられる角層重層剥離を指標として評価したところ、以下のグラフのように、

ビルベリー葉エキスの角層重層剥離への影響

ビルベリー葉エキスを添加することで、角層重層剥離の改善が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献15:2016)、ビルベリー葉エキスにBMAL1発現量増加による細胞賦活作用が認められています。

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ビルベリー葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ビルベリー葉エキスの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献5:2006)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットの剃毛した背部皮膚に1%ビルベリー葉エキス水溶液0.03mLを適用し、適用24,48および72時間後に皮膚一次刺激性を評価したところ、いずれのモルモットにおいても皮膚刺激反応を認めず、この試験物質は陰性と判定された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剃毛した背部皮膚に2%ビルベリー葉エキス水溶液を1日1回週5回2週間にわたって適用し、Draize法に基づいて各適用日に皮膚一次刺激性を、最終適用日の翌日に皮膚累積刺激性を評価したところ、いずれのモルモットにおいても皮膚刺激反応を認めなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚一次刺激および皮膚累積刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ビルベリー葉エキスは抗酸化成分、細胞賦活成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分 細胞賦活成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. F, Martz, et al(2010)「Phenolic Composition and Antioxidant Capacity of Bilberry (Vaccinium myrtillus) Leaves in Northern Europe Following Foliar Development and Along Environmental Gradients」Journal of Chemical Ecology(36),1017-1028.
  2. F. Martz, et al(1953)「Quercetin and its Glycosides in Leaves of Vaccinium myrtillus」Journal of the American Chemical Society(75)(1),50-52.
  3. J. Witzell, et al(2003)「Plant-part specific and temporal variation in phenolic compounds of boreal bilberry (Vaccinium myrtillus) plants」Biochemical Systematics and Ecology(31)(2),115-127.
  4. L. Jaakola, et al(2004)「Activation of flavonoid biosynthesis by solar radiation in bilberry (Vaccinium myrtillus L.) leaves」Planta(218),721-728.
  5. 一丸ファルコス株式会社(2006)「活性酸素消去剤」特開2006-117612.
  6. 伊藤 賢一(2006)「GABA合成酵素(GAD)を活性化するビルベリーエキスの抗老化作用」Fragrance Journal(34)(8),48-53.
  7. 朝田 康夫(2002)「活性酸素とは何か」美容皮膚科学事典,153-154.
  8. 河野 雅弘, 他(2019)「活性酸素種とは」抗酸化の科学,XⅢ-XⅣ.
  9. 小澤 俊彦(2019)「活性酸素種および活性窒素種の発生系」抗酸化の科学,123-138.
  10. 荒金 久美(1998)「光と皮膚」ファルマシア(34)(1),30-33.
  11. 岡田 富雄(1996)「天然抗酸化剤」皮膚の老化と活性酸素・フリーラジカル,106-125.
  12. 小澤 俊彦(2019)「酸化ストレス障害を制御する抗酸化酵素の性質と機能」抗酸化の科学,173-183.
  13. 花田 勝美(1996)「活性酸素・フリーラジカルは皮膚でどのようにつくられるか」皮膚の老化と活性酸素・フリーラジカル,15-35.
  14. 小林 枝里, 他(2013)「表皮の酸化ストレスとその防御機構」Fragrance Journal(41)(2),16-21.
  15. ロート製薬株式会社(2016)「ビルベリー葉エキスがサーカディアンリズムを整え、体内の抗酸化にも働くことを確認」, <https://www.rohto.co.jp/news/release/2016/0614_03/> 2020年10月17日アクセス.
  16. 池田 正明(2015)「生体リズム研究の現在 ―時計遺伝子の機能と疾患の接点を中心として―」外科と代謝・栄養(49)(6),319-326.
  17. J.V. Aschoff, et al(1962)「Spontanperiodik des Menschen bei Ausschluß aller Zeitgeber」Naturwissenschaften(49),337-342.
  18. 榛葉 繁紀(2012)「時計遺伝子による代謝調節と疾患」化学と生物(50)(11),794-800.
  19. M. Tanioka, et al(2009)「Molecular clocks in mouse skin」Journal of Investigative Dermatology(129)(5),1225-1231.
  20. 田中 弘, 他(2010)「時計遺伝子Bmal-1の皮膚細胞に対する作用」日本薬学会 第130年会.
  21. 小林 幸枝, 他(2009)「体内時計調節因子BMAL1による皮膚機能の調節」日本薬学会 第129年会.

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