チョウジエキスとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化 抗アレルギー 抗老化 抗脱毛
チョウジエキス
[化粧品成分表示名称]
・チョウジエキス

[医薬部外品表示名称]
・チョウジエキス

フトモモ科植物チョウジノキ(学名:Syzygium aromaticum = Eugenia caryophyllus 英名:Clove)の花蕾からエタノール、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

チョウジノキは、インドネシアのモルッカ諸島原産であり、18世紀まではモルッカの特産でしたが、現在では生産の90%を東アフリカのタンザニアに属するザンジバル諸島が占め、ほかにはインドネシアやマレーシアなどで栽培されています(文献1:2011)

日本においては正倉院の御物にクローブがおさめられていたことから、奈良時代の聖武天皇の時代(724-749年)にはすでに渡来していたと報告されています(文献2:1994)

チョウジエキスは天然成分であることから、国・地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フェニルプロパノイド オイゲノール、アセチルオイゲノール
タンニン 加水分解型タンニン オイゲニン など
フラボノイド フラボノール ラムネチン、ケンペロール
テルペノイド セスキテルペン β-フムレン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献3:2013;文献4:2011)

生薬としての主要成分は、鎮静、鎮痙、抗炎症、抗菌作用などで知られているオイゲノール(eugenol)ですが、オイゲノールは甘く強い芳香を有していることから、化粧品に用いる場合はオイゲノールをはじめとする芳香成分(精油成分)を除去している原料もあります(文献5:2006)

チョウジノキの蕾(生薬名:丁子 和名:クローブ)の化粧品以外の主な用途としては、香辛料(スパイス)分野においてクローブはコショー、シナモン、ナツメグと並ぶ世界四大香辛料の一つとして知られており、甘く濃厚な香りとしびれるような刺激的な風味を有していることから香辛料として肉料理、ケーキ、プディングなどに用いられます(文献1:2011;文献2:1994)

漢方分野においては、温裏(∗1)・健胃・止嘔の効果を有していることからおもに芳香性健胃薬として用いられ、また中国では古くから口臭を消すために口の中に含む習慣があることから口内清涼剤にも配合されています(文献1:2011)

∗1 漢方における病態概念として病気に反応しているまたは病気が発現している場所を示す言葉として「表裏(ひょうり)」があり、「表」とは体表部、「裏」とは身体内部の臓器、消化器を示します。温裏(おんり)とは温清・熱性の薬物によって陽気を補い寒邪を除去する知慮法で、全身や局所の血液循環を促進し、代謝機能を高めることを意味します。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、シート&マスク製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、ボディ&ハンドケア製品、シャンプー製品、ボディソープ製品、ボディ石鹸などに使用されています。

SOD様活性による抗酸化作用

SOD様活性による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として皮膚における活性酸素種、活性酸素種の酸化還元反応およびSODの役割について解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O₂)が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり(文献6:2002;文献7:2019)、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O₂)が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(HO)を経て、最終的に水(H₂O)になるというものです(文献8:2019)

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます(文献8:2019)

一方で、紫外線の曝露など(∗2)によりスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を含む活性酸素種の過剰な産生が知られており(文献9:1998)、過剰に産生されたスーパーオキシドはスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によってはヒドロキシルラジカル(HO)まで変化することが知られています。

∗2 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

発生したヒドロキシルラジカル(HO)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します(文献8:2019;文献10:1996;文献11:2013)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後にスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)の活性を増強することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2006年に一丸ファルコスによって報告されたチョウジエキスのSOD活性およびヒト肌荒れ皮膚への影響検証によると、

in vitro試験において100%SOD阻害率を測定できるSOD Assay Kit-WSTを用いてチョウジエキスの活性酸素消去率(SOD活性率)を評価したところ、以下のグラフのように、

チョウジエキスのSOD様活性作用

チョウジエキスには活性酸素消去作用(SOD様作用)が観察された。

このことから、チョウジエキスは活性酸素消去剤として有用であると考えられた。

次に、20人の被検者のうち10人に5%チョウジエキス配合乳液を、別の10人に対照として未配合乳液を、それぞれ顔面に1日1回3ヶ月間連続使用してもらった。

3ヶ月後に「有効:肌のツヤ・ハリが増し、乾燥肌・肌荒れが改善された」「やや有効:肌のツヤ・ハリがやや増し、乾燥肌・肌荒れがやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 皮膚感触に対する評価(人数)
有効 やや有効 無効
チョウジエキス配合乳液 10 7 2 1
乳液のみ(対照) 10 0 2 8

5%チョウジエキス配合乳液の塗布は、未配合乳液と比較して乾燥肌を改善し、肌にツヤ・ハリを付与することが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献12:2006)、チョウジエキスにSOD様活性による抗酸化作用が認められています。

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗3)(文献13:2010;文献14:1968;文献15:1999)

∗3 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献15:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献15:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献15:1999;文献16:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、ヒスタミンの遊離を抑制することは、アレルギー性炎症の抑制において重要であると考えられています。

1998年にノエビアによって報告されたチョウジエキスのヒスタミンおよびアトピー性皮膚炎症状に対する影響検証によると、

ラット由来好塩基球白血病細胞液に各植物抽出物を加えて培養し、ヒスタミンの遊離阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

植物エキスのヒスタミン遊離抑制作用

チョウジエキス(50%エタノール抽出)は、80%以上のヒスタミン遊離抑制作用を示した。

次に、アトピー性皮膚炎を有する女性患者18人(17-30歳)の顔に0.5%チョウジエキス配合W/O型(油中水型)軟膏を、また比較対照としてチョウジエキス未配合の軟膏をそれぞれ1日2回(朝夕)2週間にわたって塗布し、2週間後に評価したところ、以下の表のように、

試料 症例数 顕著 有効 やや有効 無効 悪化
チョウジエキス配合軟膏 18 5 8 5 0 0
軟膏のみ(比較対照) 15 0 1 3 7 4

0.5%チョウジエキス配合軟膏の塗布は、アトピー性皮膚炎の症状改善に有効であることがわかった。

このような試験結果が明らかにされており(文献17:1998)、チョウジエキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。

コラゲナーゼ活性阻害による抗老化作用

コラゲナーゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造、役割および真皮に存在するタンパク質分解酵素であるコラゲナーゼについて解説します。

真皮については、以下の真皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

真皮の構造

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス)に二分されますが、主成分である間質成分は大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞はその間に散在しています(文献18:2002;文献19:2018)

間質成分の大部分を占めるコラーゲンは、膠質状の太い繊維であり、その繊維内に水分を保持しながら皮膚の張りを支えています(文献18:2002)

このコラーゲンは、Ⅰ型コラーゲン(80-85%)とⅢ型コラーゲン(10-15%)が一定の割合で会合(∗4)することによって構成されており(文献20:1987)、Ⅰ型コラーゲンは皮膚や骨に最も豊富に存在し、強靭性や弾力をもたせたり、組織の構造を支える働きが、Ⅲ型コラーゲンは細い繊維からなり、しなやかさや柔軟性をもたらす働きがあります(文献21:2013)

∗4 会合とは、同種の分子またはイオンが比較的弱い力で数個結合し、一つの分子またはイオンのようにふるまうことをいいます。

エラスチン(elastin)を主な構成成分とする弾性繊維は、皮膚の弾力性をつくりだす繊維であり、コラーゲンとコラーゲンの間に絡み合うように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持しています(文献18:2002)

基質は、主に糖タンパク質(glycoprotein)プロテオグリカン(proteoglycan)およびグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)で構成されたゲル状物質であり、これらの分子が水分を保持し、コラーゲンやエラスチンと結合して繊維を安定化させることにより、皮膚は柔軟性を獲得しています(文献18:2002;文献19:2018)

プロテオグリカンは、軸タンパクにグリコサミノグリカンが多数結合した分子量10万-100万以上の巨大な分子であり、グリコサミノグリカンは酸性ムコ多糖類であるヒアルロン酸コンドロイチン硫酸を主成分とし、ヒアルロン酸は水分保持に関与し、コンドロイチン硫酸は繊維の支持や他の基質の保持に働いています(文献19:2018)

細胞成分として線維芽細胞(fibroblast)は、真皮に分散しており、コラーゲン繊維や弾性繊維、ムコ多糖を産生する細胞であることから、必要に応じて線維芽細胞が活発に働きこれらの物質が順調につくられていることが、皮膚の張りや弾力を維持する上で重要です(文献18:2002)

真皮の働きを要約すると、

  • コラーゲン繊維が水分を保持しながら皮膚の張りを支持
  • エラスチンを主とした弾性繊維がコラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持
  • 基質(ゲル状物質)が水分を保持し、コラーゲン繊維と弾性繊維を安定化

それぞれがこのように働くことで、皮膚は張りや柔軟性・弾性を獲得しています。

一方で、紫外線を浴びる時間や頻度に比例して、間質成分であるコラーゲン、エラスチン、ムコ多糖類への影響が大きくなり、シワの形成促進、色素沈着の増加など老化現象が徐々に進行することが知られています(文献22:2002)

コラーゲンにおいては、UVA曝露によりコラーゲン合成能の減少(文献23:1993)やコラーゲンを特異的に分解する酵素であるコラゲナーゼの産生が促進されることが報告されており(文献24:1993)、このような長期紫外線暴露後の細胞外マトリックス成分の産生・分解系バランスの崩れが光老化の原因であると考えられています(文献25:1998)

このような背景から、紫外線曝露によって線維芽細胞から産生されるコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼの活性を阻害することは、紫外線曝露による光老化の抑制に重要であると考えられます。

2003年に一丸ファルコスによって報告されたチョウジエキスのコラゲナーゼおよびヒト皮膚への影響検証によると、

in vitro試験において、合成基質0.5mg/mLにコラゲナーゼ0.1mg/mLおよび固形分濃度0.5%に調製した各植物抽出液を添加し、反応および処理後にコラゲナーゼ阻害率を算出したところ、以下の表のように、

試料 コラゲナーゼ活性阻害率(%)
チョウジエキス 60.6

チョウジエキスはコラゲナーゼ活性を有意に阻害する作用を有することが確認された。

次に、60人の女性被検者(25-50歳)を30人1グループとし、1つのグループには5%チョウジエキス配合乳液を1日2回(朝晩)3ヶ月にわたって顔面に塗布してもらい、残りの1つのグループには対照としてチョウジエキス未配合乳液を同様に塗布してもらった。

3ヶ月後に「有効:肌のハリ・ツヤが増し、シワ・タルミが目立たなくなった」「やや有効:肌のハリ・ツヤがやや増し、シワ・タルミがやや目立たなくなった」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 肌のハリ・ツヤ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
チョウジエキス配合乳液 5 24 1
乳液のみ(対照) 0 3 27
試料 肌のシワ・タルミ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
チョウジエキス配合乳液 3 24 3
乳液のみ(対照) 0 2 28

チョウジエキス配合乳液は、有意に肌にハリ・ツヤを与え、また肌のシワ・タルミを目立たなくすることが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献26:2003)、チョウジエキスにコラゲナーゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

ただし、ヒト使用試験においては2003年時点では有効なシワの評価方法が確立されていなかった中での効果確認であるため、その点は留意する必要があります。

5α-リダクターゼ活性阻害による抗脱毛作用

5α-リダクターゼ活性阻害による抗脱毛作用に関しては、まず前提知識として毛髪の成長メカニズムと5α-リダクターゼについて解説します。

毛髪の成長メカニズムに関しては、以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

毛髪は、毛細血管が蜜に分布し毛の栄養や発育を司る毛乳頭細胞から毛母細胞に栄養が供給され、栄養を受けた毛母細胞が細胞分裂を行い、分裂した片方が毛母にとどまり次の分裂に備え、残りの片方が毛の細胞(毛幹)となって角化していき、次々に分裂してできる新しい細胞によって表面に押し上げられるというメカニズムによって形成されています(文献27:2002;文献28:2002)

また、毛髪には周期があり、以下の毛周期図を見てもらうとわかりやすいと思いますが、

毛周期(ヘアサイクル)

成長期に入ると約2-6年の期間、毛幹(∗5)が伸び続け、その後に短い退行期が訪れることにより毛根が退縮し、やがて休止期となり毛髪が脱落、数ヶ月の休止期間の後に再度成長期に入って毛幹が伸びていくというサイクルを一生繰り返します(文献29:2009)

∗5 毛幹とは、毛の皮膚から外に露出している部分のことであり、一般に毛と認識されている部位です。

休止期には毛乳頭も縮小しますが消失することはなく、その後の休止期から成長期への移行により再び増大し、休止期毛包の一部が再び毛乳頭細胞と接触して分裂・増殖をはじめ、毛乳頭細胞を取り囲んで新しい毛球部を形成することによって次の毛周期がはじまるため、通常は毛髪量は一定に保たれています(文献30:2016;文献31:1999)

一方で、なんらかの理由で生理的な範囲以上に脱毛が起こり毛髪量が減少する脱毛症が知られており(文献32:2009)、一般に広く知られている脱毛症として男性型脱毛症と女性型脱毛症があります。

男性型脱毛症とは、前頭部から頭頂部を主体に頭髪が次第に粗となる状態のことであり、これは毛周期における成長期が短縮し、成長期毛包が次第に小さくなり軟毛化する結果生じることが知られているのに対して、中年以降の女性において頭頂部を中心に薄毛化が起こる状態を女性型脱毛症と呼び、男性型脱毛症とは別の原因による脱毛症であると考えられていました(文献32:2009;文献33:2003)

ただし、最近では女性型脱毛症も体内の性ホルモンバランスの崩れなどにより男性ホルモンの働きが強くなった結果として生じると考えられてきており、男性型脱毛症と女性型脱毛症をまとめて壮年性脱毛症と呼ぶことが提唱されています(文献33:2003)

脱毛症における男性ホルモンの働きについては、以下の毛乳頭におけるテストステロン(男性ホルモン)の作用メカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛乳頭におけるテストステロンの作用メカニズム

毛乳頭に分布する毛細血管から男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)が毛乳頭に取り込まれ、取り込まれたテストステロンが5αリダクターゼという酵素の働きによってDHT(Dihydrotestosterone:ジヒドロテストステロン)に変化し、さらにDHTが組織内の男性ホルモン受容体と結合して男性ホルモン作用を発現し脱毛因子を誘導することが毛成長抑制(脱毛)への最初のステップとして知られています(文献32:2009;文献33:2003;文献34:2013)

このような背景から、5αリダクターゼの活性を阻害し過剰なDHTへの変化を抑制することは脱毛の抑制において重要であると考えられます。

日華化学によって公開されたチョウジエキスの5αリダクターゼおよびヒト毛髪への影響検証によると、

in vitro試験において5α-リダクターゼの働きを抑制する化粧品原料を探索したところ、以下のグラフのように、

チョウジエキスの5α-リダクターゼ活性阻害作用

チョウジエキスが、有意に5α-リダクターゼの活性を阻害することを見出した。

次に、実際にチョウジエキスを配合した薬剤を1日2回6ヶ月にわたって連用した実使用試験を行い、試験開始前、試験開始3ヶ月、6ヶ月後にそれぞれ連続3日間、洗髪時の抜け毛をカウントし、その値の平均を抜け毛の本数として評価したところ、以下のグラフのように、

チョウジエキス配合薬剤の6ヶ月連用による抜け毛の本数の推移

チョウジエキス配合薬剤の連用により、経時的に抜け毛の本数が減少するという成果が得られ、また頭頂部の毛髪が増加するという成果も得られました。

このような試験結果が明らかにされており(文献35:-)、チョウジエキスに5α-リダクターゼ活性阻害による抗脱毛作用が認められています。

複合植物エキスとしてのチョウジエキス

チョウジエキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、チョウジエキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 SYプランテックスKN
構成成分 カワラヨモギ花エキスチョウジエキスカプリル酸グリセリルBG
特徴 3種類の抗菌作用をもつ天然植物系成分を組み合わせることで、コウジカビ、カンジダ、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌など多角的な抗菌スペクトルを有した複合植物系抽出液
備考 この複合植物エキスに用いられるチョウジエキスはオイゲノールをはじめとする精油成分を除去したものであり、黄色ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌に対する抗菌活性を有しているのはチョウジエキスのタンニン成分であると報告されています(文献5:2006)

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チョウジエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

チョウジエキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性データ(文献12:2006)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した背部皮膚に1%チョウジエキス水溶液0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後に一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギにおいても紅斑および浮腫などの皮膚刺激を認めず、陰性と判定された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部皮膚に2%チョウジエキス水溶液0.03mLを1日1回週5回2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に一次刺激性の評価基準に基づいて紅斑および浮腫を指標として評価したところ、いずれのモルモットにおいても紅斑および浮腫などの皮膚刺激を認めず、陰性と判定された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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チョウジエキスは抗酸化成分、抗アレルギー成分、抗老化成分、抗脱毛成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分 抗アレルギー成分 抗老化成分 抗脱毛成分

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  32. 斎藤 典充, 他(2009)「脱毛症」美容皮膚科学 改定2版,642-647.
  33. 松崎 貴(2003)「脱毛症の生物学」最新の毛髪科学,47-53.
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