チャ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化 消臭
チャ葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・チャ葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・チャエキス(1)、ウーロン茶エキス、紅茶エキス

ツバキ科植物チャノキ(学名:Camellia sinensis 英名:Tea plant)の葉からエタノールグリセリンなどで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

チャ葉エキスは、以下の表をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

分類 一般名称 化粧品成分表示名称 医薬部外品表示名称
不発酵茶 緑茶 チャ葉エキス チャエキス(1)
半発酵茶(50-55%発酵) 烏龍茶 ウーロン茶エキス
強発酵茶(100%発酵) 紅茶 紅茶エキス

これらの種類がありますが、これらは同じ茶樹の葉からつくられ、違いは発酵度(∗1)のみであるため(文献2:1992;文献3:2016)、医薬部外品表示名称では区別されていますが、化粧品成分表示名称ではすべてチャ葉エキスと表示されます。

∗1 一般的に発酵というと乳酸発酵のように微生物が関与する工程に用いられますが、茶の製造工程で用いられる発酵は、茶葉自身が持つ酵素による酸化、分解などの成分変化によるものです。

茶葉(チャヨウ)は、中国においては紀元前10世紀の周の時代に薬用とされ、紀元3世紀ごろに嗜好品とされはじめ、8世紀の唐の時代に栽培や製茶が普及しています(文献4:2011)

日本においては、滋賀県大津市に存在する日吉大社に伝わる安土桃山時代にまとめられた言い伝え集「日吉社神道秘密記」に、最澄が805年に唐より茶の種を持ち帰ったこと、そして比叡山のふもと(現在の滋賀県大津市坂本地区)に植えて栽培したことが記録されており、805年に中国から伝来したという説が有力視されています。

当初は茶の薬理効果を目的に栽培され、上流階級や僧侶の間だけに用いられましたが、1214年に栄西が日本初の茶の専門書「喫茶養生記」を著したことをきっかけに御武家階層を中心に庶民の間にも喫茶の風習として広まり、その飲用法は茶の湯として芸道の中に育まれていく抹茶法と江戸中期以降は日常生活の中で発展する葉茶法(淹茶)に分かれ、現在に至っています(文献2:1992)

チャ葉エキスは天然成分であることから地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド エピガロカテキンガレート(主要成分)、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン など(∗2)
アルカロイド カフェイン、テオフィリン、テオブロミン
アミノ酸 テアニン

∗2 茶カテキン類は性質的にはタンニンでもあり、以前は性質を元にした分類としてタンニンという名称が用いられることが多かったのですが、近年は化学構造で分類した名称を優先することが多く、タンニンという名称が用いられる機会は減少しています。ただし、食品化学分野においては現在も便宜上タンニンという名称が用いられています。茶カテキン類は縮合型タンニンに分類されます。

これらの成分で構成されていることが報告されており(文献3:2016;文献5:2011;文献6:2016)、主要成分は紫外線曝露皮膚に対する抗酸化作用、色素沈着抑制作用、ターンオーバー促進作用などを示すことが知られている茶カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate:EGCG)であると考えられます(文献7:2001;文献8:1999;文献9:2003)

茶カテキンは、以下の表をみるとわかりやすいと思いますが、

分類 一般名称 茶カテキン含有量
不発酵茶 緑茶 多い


少ない
半発酵茶(50-55%発酵) 烏龍茶
強発酵茶(100%発酵) 紅茶

不発酵茶(緑茶)で最も多く、ウーロン茶や紅茶においては発酵過程でカテキン類が酸化重合物したカテキン酸化重合物に変化するため、茶カテキン自体は発酵度が高くなるほど減少することが知られています(文献10:2000)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア化粧品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、頭皮ケア製品、ボディソープ製品、デオドラント製品など様々な製品に汎用されています。

過酸化水素(H₂O₂)および一酸化窒素(NO)産生抑制による抗酸化作用

過酸化水素(H₂O₂)および一酸化窒素(NO)産生抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として紫外線曝露皮膚における活性酸素種生成メカニズムと過酸化水素および一酸化窒素について解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O₂)が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり(文献11:2002;文献12:2019)、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O₂)が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(HO)を経て、最終的に水(H₂O)になるというものです(文献13:2019)

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます(文献13:2019)

一方で、紫外線の曝露など(∗3)によりスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を含む活性酸素種の過剰な産生が知られており(文献14:1998)、過剰に産生されたスーパーオキシドはスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によっては過酸化水素を経てヒドロキシルラジカル(HO)まで変化することが知られています。

∗3 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

発生したヒドロキシルラジカル(HO)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します(文献13:2019;文献15:1996;文献16:2013)

また、この活性酸素発生メカニズムのほかにも光依存型活性酸素発生系として、紫外線の皮膚曝露により一酸化窒素(NO)が産生されることが知られており、産生された一酸化窒素はメラニンの産生を促進することが報告されています(文献17:2014)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後に過酸化水素や一酸化窒素の産生を抑制することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、しいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2001年にアラバマ大学バーミングハム校皮膚科によって報告された紫外線曝露ヒト皮膚に対するエピガロカテキンガレートの活性酸素種への影響検証によると、

健常な皮膚を有する6人の白人被検者(25-56歳)の臀部の一部にエピガロカテキンガレート(50μLのアセトン中に1mg/c㎡皮膚領域以下)を塗布し、未塗布部位および塗布部位にUVを4回照射し、照射6,24および48時間後の表皮における過酸化水素産生量および一酸化窒素産生量(∗4)を評価したところ、以下の表のように、

∗4 一酸化窒素は水溶液中で急速に蓚酸塩と亜硝酸塩に分解されるため、一酸化窒素産生量の指標を亜硝酸塩濃度としています。

紫外線照射皮膚におけるエピガロカテキンガレートの過酸化水素産生抑制効果

 紫外線照射皮膚におけるエピガロカテキンガレートの一酸化窒素産生抑制効果

エピガロカテキンガレート塗布部位は、未塗布部位と比較して過酸化水素および一酸化窒素の産生を有意に抑制した。

このような試験結果が明らかにされており(文献18:2001)、エピガロカテキンガレートに過酸化水素(H₂O₂)および一酸化窒素(NO)産生抑制による抗酸化作用が認められています。

チャ葉エキスの主要成分はエピガロカテキンガレートであることから、チャ葉エキスにおいてもエピガロカテキンガレート濃度依存的な作用傾向を有していると考えられます。

過酸化脂質抑制による抗酸化作用

過酸化脂質抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として過酸化脂質の発生メカニズムと過酸化脂質の皮膚への影響について解説します。

皮膚に対する紫外線曝露によって産生される活性酸素種である一重項酸素(¹O₂)やヒドロキシルラジカル(HO)は、細胞膜と反応して過酸化脂質(lipid peroxide)を生成することが知られています(文献19:2018)

過酸化脂質の発生メカニズムについては、以下の図をみるとわかりやすいと思いますが、

過酸化脂質発生メカニズム(脂質過酸化反応)

発生したヒドロキシルラジカル(HO)が脂質(LH)から電子を奪い、水素原子と結合して水(H₂O)と脂質ラジカル(L・)を生成することからはじまり、生成された脂質ラジカルは酸素分子(O₂)と速やかに反応して脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)となります(文献19:2018)

脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)は、他の脂質(LH)と反応して水素を引き抜き、自らは過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド)となり、同時に新たに脂質ラジカル(L・)が生成され、脂質過酸化反応が連鎖的に繰り返されます(文献19:2018)

このような連鎖的反応によって生成された過酸化脂質は、皮膚に対して炎症、浮腫、壊死、色素沈着などを起こすことが知られています(文献20:1991)

また、皮膚表面に存在する皮表脂質(∗5)においても紫外線などの曝露によって発生する一重項酸素により過酸化脂質が増加することが知られており(文献21:1991)、皮表脂質の過酸化脂質量は20代を最小としそれ以降は年齢とともに増加することも明らかにされています(文献22:1995)

∗5 皮表脂質とは、表皮細胞(角化細胞)の分化過程で産生されるコレステロール、コレステロールエステルなどの表皮脂質と皮脂腺由来の皮脂が皮膚表面で混ざったもののことをいいます。

皮表脂質の成分組成は、ヒトによって含有量が異なり、また同じヒトであっても日によって変動がありますが、

由来 成分 含量(%) 含量範囲(%)
表皮細胞
(角化細胞)
コレステリルエステル 2.5 1.5 – 2.6
コレステロール 1.5 1.2 – 2.3
皮脂腺 スクアレン 10 10.1 – 13.9
ワックス 22 22.6 – 29.5
トリグリセリド 25 19.5 – 49.4
モノグリセリド、ジグリセリド 10 2.3 – 4.3
(ジグリセリドのみ)
遊離脂肪酸 25 7.9 – 39.0

このように報告されており(文献23:1990;文献24:1969)、皮脂腺由来の脂肪が約90%を占めることから、広義には皮表脂質も皮脂と呼ばれています。

皮表脂質では、スクアレンが酸化の第一標的となることが明らかにされており、ヒト皮膚再構築モデルを用いてこのスクアレン過酸化物の皮膚刺激性を検討したところ、皮表接触4時間後では障害反応は起こりませんが、接触24時間後では特異的に障害反応を示し、その障害範囲は表皮ケラチノサイトだけでなく真皮線維芽細胞にも及んでいることが報告されています(文献22:1995)

スクアレン過酸化物が皮表接触24時間後で線維芽細胞まで障害を起こすメカニズムとしては、スクアレン過酸化物由来の脂質過酸化反応の連鎖により真皮まで伝播していき、線維芽細胞の細胞膜構成脂質を酸化し破壊するという反応系であると考えられています(文献22:1995)

アトピー性皮膚炎においては、健常皮膚と比較して皮表の抗酸化能が劣っている(過酸化脂質産生量が多い)ことが明らかにされており、皮膚の状態と皮表脂質過酸化の進行度合いは相関することが示唆されています(文献22:1995)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後に過酸化脂質を抑制することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、しいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2001年にアラバマ大学バーミングハム校皮膚科によって報告された紫外線曝露ヒト皮膚に対するエピガロカテキンガレートの過酸化脂質への影響検証によると、

健常な皮膚を有する6人の白人被検者(25-56歳)の臀部の一部にエピガロカテキンガレート(50μLのアセトン中に1mg/c㎡皮膚領域以下)を塗布し、未塗布部位および塗布部位にUVを4回照射し、照射6,24および48時間後の表皮における過酸化脂質産生量をマロンジアルデヒドを指標として評価したところ、以下の表のように、

紫外線照射皮膚におけるエピガロカテキンガレートの過酸化脂質抑制効果

エピガロカテキンガレート塗布部位は、未塗布部位と比較して過酸化脂質の産生を有意に抑制した。

このような試験結果が明らかにされており(文献18:2001)、エピガロカテキンガレートに過酸化脂質抑制による抗酸化作用が認められています。

チャ葉エキスの主要成分はエピガロカテキンガレートであることから、チャ葉エキスにおいてもエピガロカテキンガレート濃度依存的な作用傾向を有していると考えられます。

ノネナール産生抑制による加齢臭抑制作用

ノネナール産生抑制による加齢臭抑制作用に関しては、まず前提知識として加齢臭とノネナールの関係について解説します。

中高年者に特有のにおいである加齢臭は、体幹部とくに胸や背中部分から臭ってくる脂臭くて少し青臭い、梅雨時の黴びた古本や古いポマードを連想させる嫌なにおいであり、不飽和アルデヒドの一種である2-ノネナールが加齢臭の主な原因成分であることが明らかにされています(文献25:1999)

このような背景から、ノネナールを減少させることは、加齢臭の抑制に非常に重要であると考えられます。

2012年にサントリー健康科学研究所によって報告されたノネナールに対するチャ葉エキス(ウーロン茶エキス)の影響検証によると、

ウーロン茶抽出物(100mg/mL)または甜茶抽出物(100mg/mL)に調整したエタノール溶液と、対照として精製水のみおよび25%エタノール溶液のみをそれぞれ袋に入れ、初期ガス濃度20ppmに調整した2-ノネナールを添加し、30分おきに150分まで袋内の2-ノネナール濃度を算出したところ、以下の表のように、

ウーロン茶抽出物による2-ノネナールの消臭効果

ウーロン茶抽出物および甜茶抽出物は、精製水と比較してより高い消臭効果が確認された。

次に抗ノネナール剤としてウーロン茶エキス、甜茶エキス、緑茶エキスおよび柿渋エキスの混合物を調整し、初期ガス濃度20ppmに調整した2-ノネナールを添加して、30分おきに150分まで袋内の2-ノネナール濃度を算出したところ、以下の表のように、

抗ノネナール剤による2-ノネナールの消臭効果

さらに加齢臭が気になるあるいは加齢臭を指摘されたことがある20人の男性被検者(43-75歳,平均60歳)にウーロン茶エキス、甜茶エキス、緑茶エキスおよび柿渋エキスの4種のポリフェノールを組み合わせた固形石鹸を用いて毎日身体全体を洗浄してもらい、使用前、使用14日および28日後に3日間就寝時に着用したTシャツから抽出したノネナール量を測定したところ、以下の表のように、

加齢臭に対する4種のポリフェノールの2-ノネナールへの消臭効果

4種のポリフェノール配合石鹸を使用した場合、使用前と比較して2-ノネナール量の低減を確認した。

このような試験結果が明らかにされており(文献26:2012)、チャ葉エキス(ウーロン茶エキス)にノネナール減少による加齢臭抑制作用が認められています。

ノネナールは、皮脂中に存在するパルミトレイン酸が酸化あるいは皮膚常在菌によって分解されることにより発生することが明らかになっていますが(文献25:1999)、チャ葉エキスのノネナール抑制メカニズムは、皮脂の酸化を防ぐことでノネナールへの分解を抑制することによものであると考えられています(文献26:2012)

効果・作用についての補足 – チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献27:2002;文献28:2016;文献29:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献8:2002;文献10:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献27:2002;文献29:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献27:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献27:2002)

このような背景から、紫外線の曝露からメラニン排出までのプロセスにおけるいずれかのポイントでメラニンにアプローチすることが、色素沈着の抑制において重要であると考えられています。

チャ葉エキスの主要成分と考えられている茶カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate:EGCG)およびエピカテキンガレート(epicatechin gallate:ECG)は、複数のin vitro試験データにおいて優れたチロシナーゼ活性阻害能が認められており(文献8:1999;文献30:2000;文献31:2008)、またチロシナーゼに作用する活性部位がガロイル基であることも明らかにされていることから(文献31:2008)、チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用を有すると考えられています。

ただし、チャ葉エキスとしてヒト皮膚に塗布した場合の有用性試験データがみつけられていないため、現時点では化粧品におけるチャ葉エキスの効果・作用としては保留とし、ヒト皮膚に塗布した場合の有用性試験データがみつかりしだい追補します。

複合植物エキスとしてのチャ葉エキス

チャ葉エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料がありチャ葉エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Redensyl
構成成分 グリセリン、ピロ亜硫酸Na、グリシン、塩化亜鉛、セイヨウアカマツ球果エキスチャ葉エキス
特徴 DHQC(Dihydroquercetin-Glucoside:ジヒドロケルセチングルコシド)による発毛幹細胞の活性化およびEGCG2(Epigallocatechin Gallatyl Glucoside:没食子酸エピガロカテキングルコシド)による炎症性サイトカインの一種であるIL-8(Interleukin-8)抑制などの複合効果により育毛・発毛にアプローチするよう設計された複合成分
原料名 ハーベックスアンチOX
構成成分 BGチャ葉エキス、フトモモ葉エキス、ワレモコウエキス
特徴 活性酸素消去作用を有した3種類の混合植物抽出液
原料名 ファルコレックスMSTC
構成成分 エタノールBGクララ根エキスチャ葉エキスマグワ根皮エキスベニバナ花エキス
特徴 4種類の異なる色素沈着抑制作用を有した植物抽出液を組み合わせることで、多角的な色素沈着抑制にアプローチするよう設計された複合植物抽出液

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2013-2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

チャ葉エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2013-2014年)

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チャ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

チャ葉エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:100%濃度においてわずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 101人の被検者に0.86%チャ葉エキス(紅茶エキス)を含むフェイシャルトリートメント製品150μLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚反応は観察されなかった(Product Investigations Inc,2014)
  • [ヒト試験] 638人の被検者に0.86%チャ葉エキス(紅茶エキス)を含むアイクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚反応は観察されなかった(Product Investigations Inc,2014)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に100%チャ葉エキス(緑茶の水/PG抽出物)を点眼し、点眼1時間後および1,2および3日後に眼刺激性を評価したところ、1時間で軽度の結膜刺激が観察され、2匹のウサギにわずかな角膜刺激がみられたが、24時間以内にすべて回復した。100%チャ葉エキスはわずかな眼刺激剤であった(S.A. Biogir,1991)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼にチャ葉エキス(紅茶エキス)0.1gを点眼し、点眼1時間後および1,2および3日後に眼刺激性を評価したところ、1時間で軽度の結膜刺激が観察され、すべてのウサギにわずかな角膜刺激がみられたが、48時間以内にすべて回復した。この試験物質ははわずかな眼刺激剤であった(S.A. Biogir,1991)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、100%濃度において共通してわずかな眼刺激が報告されているため、一般に100%濃度においてわずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 6人の被検者の前腕に10%チャ葉エキス(緑茶エキスまたは紅茶エキス)を含むゲルを適用し、次いで2.5分間にわたって試験部位にUVA、UVBおよびUVCを照射し、比較対象として未処置部位およびチャ葉エキス未配合ゲル適用部位も同様に照射した。照射後に試験部位を観察したところ、未処置部位およびチャ葉エキス未配合ゲル適用部位で紅斑が観察されたが、チャ葉エキスを含むゲル適用部位では紅斑の兆候はみられなかった(M. Türkoðlu et al,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されているため、一般に光毒性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

チャ葉エキスは抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Camellia sinensis-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
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  4. 鈴木 洋(2011)「茶葉(ちゃよう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,319.
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