オリザノールとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化成分 皮脂分泌促進 紫外線吸収 温感
オリザノール
[化粧品成分表示名称]
・オリザノール

[医薬部外品表示名称]
・γ-オリザノール

主にコメヌカ油およびコメ胚芽油から得られる、フェルラ酸とトリテルペンアルコール(∗1)や各種植物ステロールが縮合したフェルラ酸エステルの混合物です(文献1:1968;文献2:2008)

∗1 二重結合をもち炭素数5個(C5)を分子構造とするイソプレンを分子構造単位(イソプレンユニット)とし、イソプレンが複数個(C5×2個以上)連結した後に環化や酸化など種々の修飾を経て生成する化合物をテルペノイドと呼びます(文献3:2017)。「モノ(mono)」「ジ(di)」「トリ(tri)」はギリシャ語でそれぞれ「1」「2」「3」を意味し、またテルペノイドは炭素数10個(C5×2個)をモノテルペン、炭素数20個(C5×4個)をジテルペン、炭素数30個(C5×6個)をトリテルペンと呼び(文献4:2017)、テルペン構造に官能基としてヒドロキシ基(水酸基:-OH)が結合した化合物をテルペンアルコールと総称することから、トリテルペンアルコールは、炭素数30個(C5×6個)のトリテルペン構造に官能基としてヒドロキシ基(水酸基:-OH)が結合した化合物のことを指します。

γ-オリザノールは、玄米胚芽や米糠から抽出される油脂中に特異的に多く含まれており、種子の生命活動である発芽に何らかの形で関与し、さらに発芽エネルギー源であるタンパク質、脂質、糖質などの構成成分を長期間に渡り空気、光、熱などの劣化から防御する役割を担っていると考えられています(文献10:1998)

化粧品以外の主な用途としては、1963年頃から医薬品としての長い使用実績があり、これまでに抗酸化作用、成長促進作用、性腺刺激作用、血流促進作用、脂質代謝改善作用などの薬理作用が報告されており、臨床データとして自律神経失調症や更年期障害、むち打ち症の緩和などに改善効果が認められていることから医薬品として利用されています(文献10:1998;文献11:2011)

ほかにも油脂の熱酸化重合に対して抑制効果を示し、抗酸化力においてアミノ酸と相乗性を示すことから、酸化防止剤として加熱処理が必要な加工食品にアミノ酸と併用して使用されています(文献10:1998)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、洗顔料、洗顔石鹸、アウトバストリートメント製品などに使用されています。

また、米や米糠をコンセプトとした製品にも配合されています。

過酸化脂質抑制による抗酸化作用

過酸化脂質抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として皮膚における過酸化脂質について解説します。

過酸化脂質とは、文字通り酸化されてしまった有害物質としての脂質を意味し、とくに酸化されやすい不飽和脂肪酸が酸化した脂質を指します(文献12:2002;文献13:2008)

皮膚における過酸化脂質の生成は、食物摂取による体内からの作用もありますが、大部分は紫外線に繰り返し触れることによって、以下の皮膚角質層の図をみるとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮脂膜や角質層の細胞間脂質や細胞膜を構成している脂質の酸化が進行することが知られています(文献12:2002)

繰り返し紫外線に触れることで皮膚の酸化によって過酸化脂質が増えると、短期的には皮膚刺激によって顔がかゆくなる、微弱な炎症を起こす、尋常性ざ瘡(ニキビ)が悪化するといった症状がみられますが、長期的にはシミやソバカスが濃くなる、肌のハリや弾力が低下するなど皮膚の老化に直結するため(文献12:2002)、紫外線の防御および過酸化脂質の生成を抑制することは皮膚の健常性を維持する上で非常に重要であると考えられます。

1979年に名古屋大学医学部皮膚科教室によって報告されたリノール酸に対するオリザノールの影響検証(in vitro試験)によると、

リノール酸20mLずつを2つのシャーレに入れ、片方に1%γ-オリザノール製剤を添加した。

2つのシャーレを24時間紫外線に曝露し、紫外線照射前から照射1,2,4,6,8,10,12,20,24時間後に各シャーレより1mLずつ採取し、過酸化脂質量を定量したところ、以下のグラフのように、

γ-オリザノールの過酸化脂質抑制効果

γ-オリザノール添加リノール酸は、照射1時間後までは同値を示したが、その後6時間後まで生成した過酸化物を減少させるほど抑制的に作用し、その後は経時的に過酸化脂質量は増加するものの、最初の4倍の増加にとどまり、リノール酸のみと比較してかなり低値を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献14:1979)、オリザノールに過酸化脂質抑制による抗酸化作用が認められています。

試験はin vitroのみですが、リノール酸を混合する皮脂膜は皮膚表面であることから、同様に過酸化脂質の抑制効果を有すると考えられます。

皮脂腺活性による皮脂分泌促進作用

皮脂腺活性による皮脂分泌促進作用に関しては、まず前提知識として皮脂の構造と役割について解説します。

以下の皮膚の最外層である角質層の構造図および皮脂の流れ図をみてもらえるとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮脂の流れ

皮脂とは、狭義には皮脂腺で合成された脂質が毛包を通って皮膚表面に分泌される脂肪のことをいい、主にスクアレン、ワックス(ロウ)、脂肪酸系物質(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸)(∗2)で構成されています(文献15:2002;文献16:2002)

∗2 遊離脂肪酸は、オレイン酸ステアリン酸パルミチン酸などです。

また、表皮細胞(角化細胞)は分化の過程においてコレステロール、コレステロールエステルなどの表皮脂質を産生し、この表皮脂質と皮脂腺由来の皮脂が皮膚表面で混ざったものを皮表脂質といいます(文献15:2002;文献17:2002)

このような背景から皮表脂質の組成は、ヒトによって含有量が異なり、また同じヒトであっても日によって変動がありますが、

由来 成分 含量(%) 含量範囲(%)
表皮細胞
(角化細胞)
コレステリルエステル 2.5 1.5 – 2.6
コレステロール 1.5 1.2 – 2.3
皮脂腺 スクアレン 10 10.1 – 13.9
ワックス 22 22.6 – 29.5
トリグリセリド 25 19.5 – 49.4
モノグリセリド、ジグリセリド 10 2.3 – 4.3
(ジグリセリドのみ)
遊離脂肪酸 25 7.9 – 39.0

このように報告されており(文献17:1990;文献18:1969)、皮脂腺由来の脂肪が約90%を占めることから、広義には皮表脂質も皮脂と呼ばれています。

皮表脂質は、皮膚表面で汗と混合(乳化)して薄い脂肪の膜をつくり、皮表脂質膜(皮脂膜)を形成することで、

  • 皮膚や毛髪にうるおいやなめらかさを付与する
  • 外界の刺激から皮膚を保護
  • 弱酸性を示し外部の影響などによってアルカリ性となった皮膚を元のpH値に戻す緩衝作用
  • 有害な細菌の増殖を抑制

このような生理的役割を担っています(文献19:1988)

しかし、加齢によって皮脂分泌が減退することが知られており、とくに高齢者では新陳代謝の低下にともなう皮脂分泌の減退が乾皮症(∗3)の原因となることが知られています(文献20:2018;文献22:1979)

∗3 乾皮症とは、皮脂および汗の分泌が減退し、皮膚が乾燥して光沢やキメが失われた状態をいい、鱗屑および浅い亀裂を生じ軽度の瘙痒を訴えることがあります。皮膚が乾燥状態であっても高温下の場合は皮脂と汗の分泌が亢進するため乾皮症が起こりにくいとされており、一方で冬季など乾燥しやすい時期や環境下では皮膚バリア低下のため外的刺激を受けやすく、乾皮症が起こりやすいとされており、また乾皮症は掻痒を伴うことがあり、湿疹を合併すると皮脂欠乏性湿疹と呼ばれます(文献20:2018;文献21:2018)。

また乾皮症状は、皮膚表面から皮脂膜を連続的に除去することによっても発現させることが可能であるため(文献22:1979)、皮膚表面を洗いすぎたり、洗う回数が極端に多い場合にも発現しやすくなることが考えられます。

このような背景から、皮脂分泌の減退による皮膚乾燥に対して皮膚の分泌を促進することは、皮膚を健常に保つ上で重要であると考えられます。

1979年に名古屋大学医学部皮膚科学教室および名古屋大学医学部附属病院院分院皮膚科によって報告されたオリザノール塗布による皮脂分泌への影響検証によると、

γ-オリザノールの配合濃度による皮脂分泌量への影響を評価するため、0.1%、1%および2%γ-オリザノール配合軟膏と、基剤のみを調製し、これらの中から4つの組み合わせ(基剤と0.1%,基剤と1%,0.1%と1%および1%と2%)をそれぞれ健常皮膚を有する10人の被検者の前腕屈側に1日2回1ヶ月間にわたって塗布し(合計40人)、塗布終了の2日後に皮脂量を測定し、塗布前と塗布後の皮脂量を比較した。

その結果、皮脂分泌量は基剤と0.1%γ-オリザノール配合軟膏との間には有意差は認められなかったが、1%配合すると皮脂分泌量の明らかな増加がみられた。

ただし、1%と2%では有意差は認めなかった。

次に、左右両方に老人性乾皮症、小児乾燥型湿疹および進行性指掌角皮症(乾燥型主婦湿疹)のいずれかの疾患をもつ192人の患者(老人性乾皮症48人、小児乾燥型湿疹48人および進行性指掌角皮症96人)に1%γ-オリザノール軟膏および軟膏のみを二重盲検法に従ってそれぞれ片方ずつに1日2回6週間にわたって塗布した。

全般改善度を評価した結果、老人性乾皮症は4週後にγ-オリザノール軟膏が基剤のみと比較して有意な改善効果を示し、6週後でも優れた傾向を示した。

一方で、小児乾燥型湿疹および進行性指掌角皮症においては、全般改善度に差は認められなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1979)、1%濃度以上のオリザノールに皮脂腺活性による皮脂分泌促進作用が認められています。

また、1980年にZK-γ-551研究班によって報告された0.5%濃度オリザノール塗布による皮脂分泌への影響検証によると、

0.5%γ-オリザノール配合による皮脂分泌量への影響を評価するため、0.5%γ-オリザノール配合クリームと基剤のみとを、健常皮膚を有する16人の被検者(男性8人、女性8人)の前腕屈側に1日2回1ヶ月間にわたって塗布し、塗布終了の2日後に皮脂量を測定し、塗布前と塗布後の皮脂量を比較した。

その結果、0.5%γ-オリザノール配合クリームおよび基剤のみの両方で塗布後に皮脂分泌量の増加が認められ、0.5%γ-オリザノール塗布側にやや優れた傾向がみられるものの、統計学的に0.5%γ-オリザノールと基剤のみとの間に有意差は認められなかった。

次に、左右両方に尋常性魚鱗癬(乾皮症を含む)、アトピー性皮膚炎および進行性指掌角皮症(乾燥型主婦湿疹)のいずれかの疾患をもつ89人の患者(尋常性魚鱗癬17人、アトピー性皮膚炎35人および進行性指掌角皮症37人)に0.5%γ-オリザノール配合クリームおよび市販ビタミンA・D・E含有クリームを二重盲検法に従ってそれぞれ片方ずつに1日2回6週間にわたって塗布した。

全般改善度を評価した結果、尋常性魚鱗癬の2週および4週後、アトピー性皮膚炎の2週、4週および6週後においてγ-オリザノール配合クリームがやや優る傾向を認めた。

一方で、進行性指掌角皮症においては、全般改善度に差は認められなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献23:1980)、0.5%濃度オリザノールは健常な皮膚においてはやや皮脂分泌促進作用があるものの、有意差は認められていません。

ただし、尋常性魚鱗癬においては有意差は認められていないものの、傾向としてはγ-オリザノール配合クリームにやや優れた有用性が認められており、またアトピー性皮膚炎においては有意差が認められています(文献23:1980)

オリザノールの皮脂分泌促進作用のメカニズムは、オリザノール塗布による皮脂腺の肥大および皮脂腺に含まれる脂質の増加によるものであると考えられています(文献22:1979)

UVB吸収による紫外線防御作用

UVB吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗4)

∗4 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献24:2002;文献25:2002;文献26:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献27:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

2003年にローマ・ラ・サピエンツァ大学(イタリア)によって報告されたγ-オリザノール紫外線吸収波長領域データによると、以下の表のように、

γ-オリザノールの紫外線吸収波長

290および315nmに吸収極大をもつことが明らかにされており(文献28:2003)、γ-オリザノールにUVB吸収による紫外線防御作用が認められています。

また、1982年に一丸ファルコスによって報告されたモルモット皮膚に対するオリザノール塗布の影響検証によると、モルモット皮膚表面に強い紫外線を照射した場合、オリザノール無塗布皮膚では表皮上に紅斑が形成されたのに対して、γ-オリザノール塗布部位ではこの紅斑が抑制されたと報告されています(文献29:1982)

このような背景から、紫外線吸収目的で日焼け止め製品に配合されています。

寒冷負荷に対する皮膚温低下抑制による温感作用

寒冷負荷に対する皮膚温低下抑制による温感作用に関しては、1964年に札幌医科大学皮虜泌尿器科教室によって報告されたγ-オリザノール塗布による皮膚温への影響検証によると、

ウサギの皮膚面に1%および2%γ-オリザノール配合軟膏と対照として基剤のみを1日1回一定期間それぞれ場所(環境温度)を変えて塗布した。

それぞれの環境温度における試料塗布による皮膚温度の推移を測定し、平均を算出したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) 環境温度
21℃ 5℃ 0℃ -10℃
皮膚温度(℃)
γ-オリザノール軟膏 2 38.5 32.2 30.5 27.9
1 35.8 32.1 30.6 27.8
軟膏のみ 35.8 31.3 29.6 26.0

γ-オリザノール配合軟膏の塗布部位は、一定の寒冷環境(表においては5℃以下)による皮膚温度の低下に対する抑制(抵抗性)が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献30:1964)、オリザノールに寒冷負荷に対する皮膚温低下抑制による温感作用が認められています。

オリザノールの寒冷負荷に対する皮膚温低下抑制による温感作用のメカニズムは、寒冷負荷時の皮膚の微小循環血流増加による直接的な皮膚温上昇であると考えられています(文献31:1964)

効果・作用についての補足

オリザノールにはUVB吸収による紫外線防御作用および寒冷環境下における皮膚温上昇による温感作用を有していますが、温感作用は配合濃度1%以下および環境温度21℃以上において作用を示さないため(文献30:1964)、春から夏の日焼け止め製品にオリザノールが配合されていても温感作用は示さず、UVB吸収による紫外線防御作用のみが発揮されると考えられます。

γ-オリザノールは医薬品成分であり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 上限なし
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 1.25
粘膜に使用されることがある化粧品 1.25

γ-オリザノールは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 上限なし
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 0.50
薬用歯みがき類 0.50
浴用剤 0.50

スポンサーリンク

オリザノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

オリザノールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

– 健常皮膚を有する場合 –

名古屋大学医学部皮膚科学教室および名古屋大学医学部附属病院院分院皮膚科の安全性試験データ(文献5:1979)によると、

  • [ヒト試験] 健常な皮膚を有する35人の被検者の上腕屈側に1%γ-オリザノール配合軟膏および対照として軟膏基剤のみを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、除去1時間で1%γ-オリザノール軟膏適用者2人、軟膏のみ適用者1人にわずかな紅斑がみられたが24時間では軟膏のみ適用者に1人わずかな紅斑がみられた。この試験製剤は対照と比較して統計学的に有意差は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、基剤との間に有意差なしと報告されているため、一般に健常な皮膚を有する場合において皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

名古屋大学医学部皮膚科学教室および名古屋大学医学部附属病院院分院皮膚科の安全性試験データ(文献5:1979)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する37人の患者(接触性皮膚炎9人、顔面再発性皮膚炎1人、酒皺様皮膚炎8人、顔面黒皮症4人、肝斑8人、脂漏性湿疹5人、手湿疹2人)の上腕屈側に1%γ-オリザノール配合軟膏および対照として軟膏基剤のみと白色ワセリンを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、除去1時間で1%γ-オリザノール軟膏適用者、軟膏のみ適用者および白色ワセリン適用者それぞれに、明らかな紅斑が3人,4人,0人にみられ、わずかな紅斑が5人,2人,5人にみられた。除去24時間ではいずれの適用者においても皮膚刺激反応はみられなかった。1%軟膏と、対照である基剤および白色ワセリンの間に統計学的に有意差は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、基剤との間に有意差なしと報告されているため、一般に皮膚炎を有する場合において皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚炎を有する皮膚は、健常な皮膚を対象とした場合よりも皮膚刺激率が高い傾向を示していますが、これは被検者の皮膚の刺激に対する閾値の相違によるものと考えられており、また1%γ-オリザノール軟膏と軟膏基剤のみの間には刺激率の差がほとんどないことから、1%γ-オリザノールそのものには皮膚刺激性はほとんどないと推測されます。

眼刺激性について

詳細な試験データは不明ですが、γ-オリザノールは眼粘膜刺激性がきわめて低いことが判明していることから(文献6:1979;文献9:1984)一般に化粧品および医薬部外品配合濃度において眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

詳細な試験データは不明ですが、医薬部外品原料規格2006に収載されており、古くからの使用実績の中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないこと、臨床試験によって皮膚感作性が観察されていないことから(文献7:1979;文献9:1984)一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

名古屋大学医学部皮膚科学教室および名古屋大学医学部附属病院院分院皮膚科の安全性試験データ(文献5:1979)によると、

  • [ヒト試験] 健常な皮膚を有する35人の被検者の上腕屈側に1%γ-オリザノール配合軟膏および対照として軟膏基剤のみを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1時間後に皮膚刺激性を評価した。評価後に試験部位にUVライト(UVA)を10分間照射し、パッチ除去24時間後に光毒性を評価したところ、UV未照射であるパッチ除去1時間時点よりも皮膚刺激指数が小さいため、1%γ-オリザノールは光の影響がほとんどないものと推測された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されており、他にも同様の試験データが報告されていることから(文献8:1979)一般に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

オリザノールは抗酸化作用、紫外線防御成分、温感成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分 紫外線防御成分 温冷感成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 遠藤 富夫, 他(1968)「ヌカ油中のフェルラ酸エステルの研究 (第1報)」油化学(17)(6),344-348.
  2. 岡田 安代(2008)「γ-オリザノール」食品機能性の科学,1003-1008.
  3. 池田 剛(2017)「テルペノイド」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,120-124.
  4. 池田 剛(2017)「トリテルペン」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,142-146.
  5. 小林 敏夫, 他(1979)「γ-オリザノール配合軟膏の臨床効果の検討」皮膚(21)(2),123-134.
  6. 藤村 一, 他(1979)「γ-オリザノール配合軟膏の安全性に関する研究(第2報) -皮膚および眼粘膜に対する一次刺激性試験-」薬理と治療(7)(5),1313-1320.
  7. 江田 昭英, 他(1979)「γ-オリザノール配合軟膏の安全性に関する研究(第3報) -抗原性試験-」薬理と治療(7)(5),1321-1327.
  8. 江田 昭英, 他(1979)「γ-オリザノール配合軟膏の安全性に関する研究(第4報) -光毒性および光アレルギー性試験- 」薬理と治療(7)(5),1329-1333.
  9. 鹿熊 武, 他(1984)「γ-オリザノールの外用製剤への応用 -基礎化粧品添加物としての評価-」日本香粧品学会誌(8)(1),31-36.
  10. 岡田 忠司(1998)「γ-オリザノールの機能と応用」Fragrance Journal(26)(3),71-77.
  11. 鈴木 洋(2011)「玄米」カラー版健康食品・サプリメントの事典,63-65.
  12. 朝田 康夫(2002)「過酸化脂質の害は」美容皮膚科学事典,163-165.
  13. 霜川 忠正(2008)「過酸化脂質」BEAUTY WORD 皮膚科学用語編,101-102.
  14. 小林 美恵(1979)「皮脂腺に対するフェルラ酸エステル混合物の局所作用」皮膚(21)(1),18-34.
  15. 朝田 康夫(2002)「皮脂腺の機能と構造」美容皮膚科学事典,38-45.
  16. 朝田 康夫(2002)「皮表脂質の組成とその由来」美容皮膚科学事典,45-48.
  17. 鈴木 敏幸(1990)「スキンケアと界面化学」表面科学(11)(4),260-264.
  18. D.T. Downing, et al(1969)「Variability in the Chemical Composition of Human Skin Surface Lipids」Journal of Investigative Dermatology(53)(5),322-327.
  19. 松尾 聿朗, 他(1988)「皮表脂質の生理的役割」油化学(37)(10),827-831
  20. 清水 宏(2018)「角層の変化を主体とする病変」あたらしい皮膚科学 第3版,74-75
  21. 清水 宏(2018)「皮脂欠乏性湿疹」あたらしい皮膚科学 第3版,128-129
  22. 小林 美恵(1979)「皮脂腺に対するフェルラ酸エステル混合物の局所作用」皮膚(21)(1),18-34
  23. ZK-γ-551研究班(1980)「γ-オリザノール配合クリームの臨床効果の検討」皮膚(22)(3),492-504.
  24. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  25. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  26. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  27. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2020年7月1日アクセス.
  28. R Bucci, et al(2003)「Comparison of three spectrophotometric methods for the determination of γ-oryzanol in rice bran oil」Analytical and Bioanalytical Chemistry(375),1254-1259.
  29. 安藤 義隆(1982)「オリザノールのサンスクリーン効果」Fragrance Journal(10)(2),125-126.
  30. 神村 瑞夫, 他(1964)「γ-Oryzanolの局所応用が皮膚温におよぼす影響」臨床皮膚泌尿器科(17)(4),369-372.
  31. 神村 瑞夫, 他(1964)「γ-Oryzanolの局所塗布が放射性燐静脈内投与による皮膚表面放射能におよぼす影響」臨床皮膚泌尿器科(17)(4),373-374.

スポンサーリンク

TOPへ