アスタキサンチン(ヘマトコッカスプルビアリスエキス)とは…成分効果と毒性を解説

抗酸化成分 抗炎症成分 抗シワ成分 抗老化成分 美白成分
アスタキサンチン
[化粧品成分表示名称]
・アスタキサンチン、ヘマトコッカスプルビアリスエキス、ヘマトコッカスプルビアリス油

[医薬部外品表示名称]
・アスタキサンチン、アスタキサンチン液

天然品は主にヘマトコッカス藻から抽出また一部はオキアミから産生される油溶性カロテノイド色素(赤橙色色素)のひとつです。

ヘマトコッカス由来の場合、成分表示名称は「アスタキサンチン」のほかに「ヘマトコッカスプルビアリス油」「ヘマトコッカスプルビアリスエキス」と表示されることも多いです。

アスタキサンチンは、一部の藻類やオキアミ、エビ、タイ、サケなど自然界の多くの動植物組織中に広く分布しており、甲殻類では殻に、それらをエサとするマダイでは体表に、サケ科魚類では筋肉の赤色部分などに存在します。

天然に存在する色素成分であるカロテノイドの一種キサントフィルに属する赤色色素で、生体内ではタンパク質と結合し、黒っぽい色をしていますが、加熱によって分離されると本来の赤色に変色します。

1938年にノーベル化学賞を受賞したオーストラリアの生化学者、リヒャルト・クーンらによって発見され、それ以後アスタキサンチンの「自然界最強といわれる抗酸化成分」といわれる抗酸化力をはじめ、抗疲労作用、抗炎症作用、生活習慣病予防効果など様々な機能が明らかにされており、いまなお精力的に研究され続けています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品などに使用されます(文献6:2006)

過酸化脂質抑制および一重項酸素(¹O₂)抑制による抗酸化作用

過酸化脂質抑制および一重項酸素(¹O₂)抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として過酸化脂質と一重項酸素について解説します。

過酸化脂質は、以下の細胞膜の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

細胞膜の構造図

皮脂や細胞間脂質、細胞膜を構成しているリン脂質などの酸化が進んだ脂質のことで、皮膚に過酸化脂質が増えると様々な物質の変性・損傷が起こり、肌はくすみ、ハリはなくなり、色素沈着は濃くなり、老化が促進されます(文献3:2002)

皮膚において過酸化脂質が生成される主な原因のひとつが紫外線であり、紫外線により発生した活性酸素のひとつである一重項酸素が脂質と結合することで過酸化脂質の生成が促進されます(文献3:2002)

次に一重項酸素(¹O₂)は、光増感反応があり、紫外線を浴びた皮膚に発生する反応性の強い活性酸素で、以下の紫外線を浴びたときの炎症およびメラニン合成のメカニズムをみるとわかりやすいと思うのですが、

炎症の仕組み

一重項酸素(¹O₂)が活性化することで、炎症の元となる炎症性サイトカインやメラニン活性化因子である様々な情報伝達物質がメラノサイトに届けられた黒化メラニンの合成が始まるため、炎症・色素沈着の要因となります。

また、UVAは真皮に到達すると真皮に存在する光増感物質と反応して一重項酸素(¹O₂)をはじめとする活性酸素を発生させて酸化ストレスを引き起こし、コラーゲン分解酵素であるMMP-2およびMMP-9が活性化することで、以下の図のように、

基底膜におけるコラーゲンの仕組み

表皮基底膜に存在するⅣ型コラーゲンおよびそれに連結しているⅦ型コラーゲンの分解が亢進され、真皮と表皮におけるエネルギーや栄養の輸送能が低下し、光老化の原因になると考えられています(文献4:2016)

紫外線による発生のほかにも、生体内で起こる脂質過酸化反応の進行過程において生成されると考えられています(文献4:2016)

アスタキサンチンの過酸化脂質抑制のメカニズムは、以下の細胞膜の構造図をみてもらうとわかるように、

細胞膜の構造図

細胞膜は脂質二重構造となっており、アスタキサンチンは膜に貫通する形で縦に浸透するので、膜に進入するラジカルや活性酸素のみではなく、膜の表面に発生するラジカルや活性酸素をも捕捉することができ、それによって膜の変形能の保持や受容体、輸送体、イオンチャンネルおよびシグナル伝達といった重要な生命活動を維持します(文献6:2006)

一方でリコペンやβ-カロテンは二重構造の隙間に位置するため、膜に進入するラジカルや活性酸素は捕捉できますが、膜の表面で発生するラジカルに対しては抗酸化作用を発揮できません(文献6:2006)

このようなメカニズムが明らかにされており(文献6:2006)、アスタキサンチンには優れた過酸化脂質抑制作用が認められています。

次に、アスタキサンチンはカロテノイドのひとつですが、カロテノイドの性質として太陽のエネルギーの強度を調節したり、細胞内で引き起こされる有害なフリーラジカルや活性酸素の消去能を有しており、1989年に報告されているカロテノイドの一重項酸素消去能検証では、以下の表のように、

カロテノイド 一重項酸素消去速度定数
10⁻⁹Kq(M⁻¹ s⁻¹)
α-カロテン 19
β-カロテン 14
ゼアキサンチン 10
ルテイン 8
クリプトキサンチン 6
アスタキサンチン 24
カンタキサンチン 21
リコペン 31
α-トコフェロール 0.3

アスタキサンチンは、リコペンに次ぐ一重項酸素消去能を有していることが明らかになっています(文献5:1989)

また、2014年に富士フィルムによって報告されたアスタキサンチン乳化物の微粒子化における抗酸化力の影響検証によると、

アスタキサンチンには、一重項酸素のエネルギーを受け取ることで一重項酸素の消去を加速させる働きがあり、アスタキサンチンをより微粒子化することで一重項酸素の消去能が高まると考え、アスタキサンチン乳化物を添加した溶液内に一重項酸素を発生させ、その一重項酸素が放出している光を感知することで一重項酸素が発生してから消えていくまでの時間を測定したところ、

粒子サイズの異なるアスタキサンチン乳化物における一重項酸素消去速度比較

粒子サイズ430nmのアスタキサンチン乳化物と比較して粒子サイズ80nmのアスタキサンチン(∗1)は一重項酸素消去速度が有意に速くなる(約9倍)ことが確認された。

∗1 富士フィルムでは100nm以下のサイズにしたアスタキサンチンをナノアスタキサンチンと定義しています。

この結果によりアスタキサンチン乳化物をより微粒子化することで一重項酸素の消去能が高まることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:2014)、ナノアスタキサンチンに通常のアスタキサンチンより優れた一重項酸素消去作用が認められています。

さらに、2013年に富士フィルムによって報告されたリコピンとの併用によるアスタキサンチン抗酸化能への影響検証によると、

アスタキサンチンと同様に高い抗酸化能を有することが知られているリコピンをアスタキサンチンと共存させたところ、以下のグラフのように、

アスタキサンチンとリコピンの相乗効果

アスタキサンチンをリコピンと共存させることで、アスタキサンチンの抗酸化能の持続性が約3倍に向上したことがわかった。

また、リコピン共存下でアスタキサンチンの抗酸化能がより持続する理由のひとつに、抗酸化作用の結果発生したアスタキサンチン酸化体に対して、リコピンが自身の電子を与えてリコピン酸化体に変化すると考えられた。

さらにアスタキサンチンとリコピンのエネルギー準位関係を実験と理論計算から見積もったところ、この仮説を支持する結果が得られた。

このような検証結果が明らかにされており(文献13:2013)、アスタキサンチンはトマト果実エキスと併用することによって抗酸化作用の持続性が向上することが認められています。

捕捉として、トマトにはリコピンが豊富に含まれており、富士フィルムではリコピンに該当する成分としてトマト果実エキスを配合しているため、トマト果実エキスとの併用でも相乗効果が得られると考えられます。

NF-κB活性抑制による抗炎症作用

NF-κB活性抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として紫外線による炎症のメカニズムおよびNF-κB(エヌエフカッパビー)について解説します。

以下の紫外線による炎症のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

炎症の仕組み

紫外線を浴びると表皮において最初に活性酸素が発生しますが、活性酸素の働きによって様々な遺伝子の発現を誘導するタンパク質(転写因子)であるNF-κBが活性化します。

活性化したNF-κBは、情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトに届けることでメラニン生合成を誘発したり、炎症性サイトカインを産生し炎症を誘発します。

アスタキサンチンにはNF-κB活性化抑制作用が明らかにされており(文献6:2006)、NF-κB活性化を抑制し炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-1βの産生を抑制する抗炎症作用が認められています(文献7:2003)

また、NF-κBの活性化を抑制することでメラニン生合成を誘発する情報伝達物質であるプロスタグランジンE2やCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)の発現抑制も明らかにされており(文献7:2003)、色素沈着抑制とも深く関与していることがわかります。

さらに、アスタキサンチンには紫外線によって活性化しコラーゲンの減少の原因となるコラーゲン分解酵素のMMP-1の活性を抑制する作用が認められていますが、これはMMPがNF-κBから産生されるサイトカインによって活性化される経路において活性化されるので、NF-κBの活性化抑制によってMMP-1の活性化も抑制されるというメカニズムとなっており、抗シワ・抗老化とも密接に関係しています(文献6:2006)

プロスタグランジンE₂、COX-2発現抑制およびメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用

プロスタグランジンE₂、COX-2発現抑制およびメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識として紫外線によるメラニン生合成のメカニズム、プロスタグランジンE₂およびCOX-2について解説します。

すでに掲載した炎症のメカニズム図をてみもらうとわかりやすいと思うのですが、

炎症の仕組み

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、活性酸素の働きによって様々な遺伝子の発現を誘導するタンパク質(転写因子)であるNF-κBが活性化します。

そして、NF-κBが様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)を誘発し、情報伝達物質がメラノサイトに届けられることでメラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユウメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

また、NF-κBは様々な炎症性サイトカインを誘発し、炎症を起こしますが、炎症もメラノサイト内でのメラニン生合成を誘発します。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

プロスタグランジンE₂は、炎症性物質のひとつであり炎症にも関与しますが、同時に情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)であるCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)を律速酵素として触媒し、メラノサイトに直接届いてメラニン生成の誘発にも関与します。

1995年に富士化学工業によって報告されたアスタキサンチンの色素沈着抑制作用によると、

オキアミ由来アスタキサンチン(アスタキサンチン5%含有抽出物)を紅斑が起きにくく色素沈着が起きやすいスキンタイプの男性7人(19~38歳)の背部に24時間閉塞適用し、UVBを2MED照射した後再び8時間閉塞適用した。

UVB照射1週間後の色素沈着強度は以下のグラフのように、

アスタキサンチンの色素沈着抑制作用

アスタキサンチン適用部においてUVB照射のみに比べて有意に低かった。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1995)、アスタキサンチンに紫外線(UVB)による色素沈着抑制作用が認められています。

アスタキサンチンは、紫外線によって発生する活性酸素のひとつである一重項酸素消去能を有しており、またNF-κBの活性化を抑制することでメラニン生合成を誘発する情報伝達物質であるプロスタグランジンEE₂やCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)の発現抑制も明らかにされているため(文献7:2003)、この色素沈着抑制作用は活性酸素消去やNF-κBの活性化抑制によってプロスタグランジンEE₂およびCOX-2が抑制された結果であると考えられています(文献6:2006)

次にメラニン生成抑制作用についてですが、2002年にコーセーによって報告されたメラニン生成抑制作用検証によると、

B16メラノーマ細胞を用いたin vitro試験においてオキアミ由来アスタキサンチンを添加してメラニン生成反応を調べたところ、以下のグラフのように、

アスタキサンチンのメラニン生成抑制作用

アスタキサンチンは濃度依存的にメラニンの生成を抑制することがわかった。

ただし、メラニン生成過程においてチロシナーゼ阻害活性は認められなかった。

また細胞毒性が認められなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:2002)、アスタキサンチンに紫外線(UVB)によるメラニン生成抑制作用が認められています。

チロシナーゼ阻害活性が認められていないため、メラニン生成過程における酸化重合の抑制が作用機序であると考えられています。

エラスチン変性抑制、コラーゲン変性抑制およびMMP-1活性抑制による抗老化作用

エラスチン変性抑制、コラーゲン変性抑制およびMMP-1活性抑制による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮におけるコラーゲンおよびエラスチンの働き、Ⅰ型コラーゲンおよびMMP-1について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

コラーゲンは、白い紐状のタンパク質からなる丈夫な太い繊維で、膠質状の性質を持ち、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支えています(文献11:2002)

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献11:2002)

しかし、紫外線を浴びるとコラーゲン分解酵素、エラスチン分解酵素、ヒアルロン酸分解酵素などが活性化し、必要以上にコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を分解し、真皮コラーゲン量やエラスチン量が減少することが明らかになっており、コラーゲン量およびエラスチン量が減少していくと、皮膚のハリ・弾力が次第に失われ、徐々にシワ・たるみが生じます。

コラーゲンについてさらに詳細にみていくと、以下のように、

真皮におけるコラーゲンの種類

  • Ⅰ型コラーゲン:真皮内に網目状に張りめぐらされている強硬なコラーゲン。肌の弾力やハリを保持
  • Ⅲ型コラーゲン:真皮の乳頭層に多く含まれる細くて柔らかいコラーゲン。肌に柔らかさを付与
  • Ⅳ型コラーゲン:基底膜の膜状構造を維持するための骨格の役割をするコラーゲン

というようにそれぞれ役割が異なっており、大部分は網の目を形成するⅠ型コラーゲンになります。

そして、コラーゲン分解酵素であるMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の中で、MMP-1はⅠ型コラーゲン分解酵素であるⅠ型コラゲナーゼのことを指します。

2005年にコーセーによって報告された紫外線(UVB)照射後の皮膚弾力性およびMMP-1活性検証によると、

剃毛したマウスの背部にUVBを週5回照射(65~95mJ/c㎡)し、アスタキサンチン350μM(0.02%)溶液(エタノール:dpg = 1:1)0.1mLを照射直後から1日2回週5回、照射と塗布を18週間にわたって行ったところ、目視評価においてシワ形成が抑制されており、皮膚弾力性測定において以下のグラフのように、

UVB照射後の皮膚弾力性の変化

アスタキサンチンによって皮膚弾力性の低下が抑えられた。

また、アスタキサンチンによりエラスチンの沈着および表皮の肥厚が抑制されており、電子顕微鏡観察においてエラスチンの異常が認められず、コラーゲンの縮小や繊維束の輪郭の不明瞭化が抑えられていた。

さらに、UVB照射によるアスタキサンチンのコラーゲン分解酵素であるMMP-1活性への影響を検討したところ、以下のグラフのように、

UVB照射後のMMP-1活性

アスタキサンチンは、MMP-1の活性をin vivoにおいて有意に抑制した。

このような検証結果が明らかにされており(文献10:2005)、アスタキサンチンにエラスチン変性抑制、コラーゲン変性抑制およびMMP-1活性抑制による抗シワ・抗老化作用が認められています。

小胞体シャペロンBiP遺伝子発現促進による抗老化作用

小胞体シャペロンBiP遺伝子発現促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮エラスチンの構造と小胞体シャペロンBiPについて解説します。

真皮エラスチンの役割についてはエラスチン変性抑制、コラーゲン変性抑制およびMMP-1活性抑制による抗老化作用で解説しましたが、真皮エラスチン繊維の構造は以下の図のように、

真皮エラスチンの構造

細胞から分泌されたフィブリリンと呼ばれるタンパク質の細繊維上にトロポエラスチンと呼ばれる球状のタンパク質が沈着・架橋することで形成されています。

小胞体シャペロンとは、タンパク質の正しい構造形成を介助し、そのタンパク質の正常な働きを促進する因子の総称で、小胞体シャペロンのひとつであるBiPは、異常な構造のタンパク質を認識するセンサーとして働き、タンパク質のクオリティーの管理に深く関与しています。

つまり、小胞体シャペロンBiPの産生が減少すると、タンパク質の構造が不均一になり、正常な働きが損なわれ、エラスチンに関与する小胞体シャペロンBiPが減少するとハリ・弾力の減少につながると考えられます。

2018年にコーセーによって報告された加齢による真皮エラスチン繊維の変性メカニズムの解明およびアスタキサンチンの小胞体シャペロンBiPへの効果検証によると、

エラスチン繊維は、加齢や紫外線により変性するとシワやたるみが生じるといわれているが、紫外線の慢性曝露による変化である光老化と加齢による生理的変化である自然老化では皮膚症状が異なることが知られている。

そこで、加齢による真皮エラスチン繊維の変性メカニズムを検討するために、同一人物の加齢モデル細胞系列のうち、老齢細胞(62歳)と若齢細胞(36歳)を用いてフィブリリンの繊維形状を比較したところ、以下の図のように、

同一人物由来の加齢モデル細胞系列が作り出すフィブリリン細繊維

若齢細胞では均一な繊維構造が確認されたのに対して老齢細胞では部分的に凝集し、不均一なフィブリリン細繊維構造が確認された。

この結果をうけて、細胞が作り出すタンパク質を網羅的に解析したところ、以下のグラフのように、

 同一人物由来の加齢モデル細胞系列における小胞体シャペロンBiPの産生量

老齢細胞は、タンパク質のクオリティを調節する小胞体シャペロンBiP産生量が減少していることがわかった。

そこで、若齢細胞に存在している小胞体シャペロンBiP遺伝子を人為的に減少させたところ、老齢細胞と同様の凝集した不均一なフィブリリンの繊維構造を形成することが確認された。

これらの結果により、加齢に伴う小胞体シャペロンBiPの減少によってエラスチンを形成するフィブリリンのクオリティーが低下し、細繊維の形成不良が起きることが示唆された。

また、これらの結果は、小胞体シャペロンBiPの産生量を促進し、フィブリリンのクオリティーを向上させることが、加齢による真皮エラスチン繊維の変性を改善し、皮膚のハリ・弾力向上へつながると考えられた。

アスタキサンチンには、すでに紫外線によるエラスチン変性抑制作用が明らかにされているが、加齢によるエラスチン変性への影響を検討するため、老齢細胞にアスタキサンチンを添加し、真皮エラスチン繊維形成への影響を検討したところ、以下のグラフのように、

老齢細胞におけるアスタキサンチンの小胞体シャペロンBiP遺伝子発現促進効果

アスタキサンチンに小胞体シャペロンBiP遺伝子の発現量を有意に増加させる効果を見出した。

この結果から、アスタキサンチンは加齢した細胞においてフィブリリンのクオリティを向上させ、真皮エラスチン繊維の変性を抑制し、改善する可能性があると考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献14:2018)、アスタキサンチンに小胞体シャペロンBiP遺伝子発現促進による抗老化作用が認められています。

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アスタキサンチンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

アスタキサンチンの現時点での安全性は、皮膚刺激性はほとんどなく、眼刺激性はデータ不足のため詳細不明ですが、重大な皮膚感作(アレルギー)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

なお、オキアミは甲殻類ではなくオキアミ類であり、甲殻類にアレルギーを有している場合でもオキアミ由来のアスタキサンチンでアレルギーが起こるケースはほとんどないと報告されています。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

富士化学工業の「Effects of astaxanthin from Haematococcus pluvialis on human skin」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 45人の被検者の上腕内側に5%ヘマトコッカス由来アスタキサンチン、対照クリーム、アスタキサンチンを含むクリームの3つの試験試料を24時間Finn Chamber適用し、Finn Chamber除去30分および24時間後に試験部位を評価したところ、5%アスタキサンチンにおいて45人のうち42人の被検者は反応を示さなかった。残りの3人のうち2人は24時間後にほとんど知覚できないわずかな反応を示し、残った1人は48時間後にほとんど知覚できないわずかな反応を示した。対照クリームにおいて45人のうち42人の被検者は反応を示さなかった。残りの3人のうち2人は24時間後にほとんど知覚できないわずかな反応を示し、残った1人は48時間後にほとんど知覚できないわずかな反応を示した。アスタキサンチンクリームにおいて45人のうち43人の被検者は反応を示さなかった。残りの2人は24時間および48時間後の両方でほとんど知覚できないわずかな反応を示し、残った1人は48時間後にほとんど知覚できないわずかな反応を示した。3つの試験資料はすべて安全であると判断され、皮膚一次刺激誘発に関する安全性に問題ないと結論付けられた
  • [ヒト試験] 11人の女性被検者を用いてヘマトコッカス由来のアスタキサンチン配合クリーム製剤の累積刺激性を評価するために皮膚反復適用試験を実施した。各被検者は3週間にわたって毎日連続で朝夕に顔を明後日化粧水でケアした後に試験試料0.2gを目の下から頬にかけて薄く広げ、3週間の前後で評価したところ、試験試料によって皮膚状態の悪化を示す被検者はおらず、皮膚一次刺激性試験と同様に皮膚反復適用試験においても安全性に問題ないと結論付けられた

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、皮膚刺激性の報告はないため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

眼刺激性に関する試験結果や安全データはみつからず、データ不足のため詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

試験結果や安全データはみつかりませんが、重大なアレルギーの報告はなく、現在はエビやカニなどの甲殻類を使用していないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

オキアミ由来の場合は、エビに似ているために甲殻類だと思いがちですが、エビの仲間ではなくオキアミ類となっており、厚生労働省の「食品衛生法施行規則の一部改正案(アレルギー表示対象品目に「えび」「かに」を追加することについて)に対して寄せられた御意見について」という公開資料(文献2:2008)によると、

問い9:オキアミ類を特定原材料もしくは、特定原材料に準ずるものに含めるべきではないか。

回答:えびの摂取によりアレルギー症状を呈した症例について、オキアミ類を摂取した場合の症状の有無をアンケート調査したところ、アレルギー症状を呈する患者の割合が低かったことから、今回の義務表示の対象としていないところです。

このように回答があり、エビやカニなどの甲殻類にアレルギーを有していてもオキアミではアレルギー症状が起こることはまれだと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
アスタキサンチン 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、アスタキサンチンは毒性なし(∗2)となっており、安全性に問題はないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

アスタキサンチンは抗酸化成分、抗炎症成分、抗老化成分、美白成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分 抗炎症成分 抗老化成分 美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Seki,T, Sueki,H, Kouno,H, Suganuma,K, Yamashita,E(2001)「ヘマトコッカス由来アスタキサンチンの皮膚に及ぼす影響―ヒト皮膚刺激性試験・反復塗布試験・目尻シワ取り効果」Fragrance Journal(29)(12),p98-103.
  2. “厚生労働省”(2008)「食品衛生法施行規則の一部改正案(アレルギー表示対象品目に「えび」「かに」を追加することについて)に対して寄せられた御意見について」, <http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495070135&Mode=2> 2018年3月10日アクセス.
  3. 朝田 康夫(2002)「過酸化脂質の害は」美容皮膚科学事典,163-165.
  4. 寺尾 純二(2016)「生体における一重項酸素の生成と消去 – 酸化ストレスとの関わりを考える -」ビタミン(90)(11),525-536.
  5. Di Mascio P, et al(1989)「Lycopene as the most efficient biological carotenoid singlet oxygen quencher.」Arch Biochem Biophys(274)(2),532-538.
  6. 山下 栄次(2006)「アスタキサンチンの機能性と化粧品的応用」Fragrance Journal(34)(3),21-27.
  7. Lee SJ, et al(2003)「Astaxanthin inhibits nitric oxide production and inflammatory gene expression by suppressing I(kappa)B kinase-dependent NF-kappaB activation.」Molecules and Cells(16)(1),97-105.
  8. 山下 栄次(1995)「オキアミ由来アスタキサンチンの色素沈着抑制効果(メラニン色素の制御と美白剤の開発)」Fragrance Journal臨時増刊(14),180-185.
  9. Arakane K(2002)「Superior skin protection via astaxanthin.」Carotenoid Science(5),21-24.
  10. 水谷 友紀, 他(2005)「カロテノイドの光老化予防効果と化粧品への応用」日本香粧品学会誌(29)(1),9-19.
  11. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  12. “富士フィルム”(2014)「ナノアスタキサンチンのパワーを実証 アスタキサンチンの乳化物をより微粒子化すると、抗酸化力が高まることを確認」, <http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0908.html> 2018年10月5日アクセス.
  13. “富士フィルム”(2013)「新アスタリフトシリーズの開発」, <https://www.fujifilm.co.jp/rd/report/rd058/pack/pdf/ff_rd058_005.pdf> 2018年10月5日アクセス.
  14. “株式会社コーセー”(2018)「加齢に伴う真皮エラスチン線維の変性メカニズムを解明 -アスタキサンチンによる、新たなハリ・弾力改善アプローチを発見-」, <http://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2018/07/20180702.pdf> 2018年10月5日アクセス.

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