チョウジエキスとは…成分効果と毒性を解説

抗菌成分 抗アレルギー 美白 保湿 バリア改善 抗シワ成分 育毛
チョウジエキス
[化粧品成分表示名称]
・チョウジエキス

[医薬部外品表示名称]
・チョウジエキス

フトモモ科植物チョウジノキ(学名:Syzygium aromaticum 英名:Cloves)の開花直前の蕾を乾燥させたものからエタノールで抽出して得られるエキスです。

チョウジエキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 精油:オイゲノール
  • タンニン類:オイゲニイン

などで構成されています(文献1:2006)

チョウジは、18世紀までインドネシアのモルッカ諸島の特産でしたが、現在では東アフリカのザンジバルの生産が90%を占めており、紀元前より香料としてインドやヨーロッパまで知られ、今日ではスパイスとして肉料理やケーキ、プディングなどによく用いられています(文献2:2011)

かつて日本人女性が使っていた「びんつけ油」の匂いも丁字であり、現在でも石けんや整髪料に広く使われています(文献2:2011)

薬理的には、チョウジの粉末は伝統医学で芳香性健胃薬として用いられてきた歴史があり、ハーブティーとしては風味を良くするためにオレンジピールとブレンドして歯痛や頭痛に用いられ、また歯科領域では歯痛や局所麻酔の目的で欠かせない存在となっていることからチョウジの精油の香りは「歯医者さんの香り」と呼ばれています(文献3:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品をはじめ、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、洗顔料、洗浄製品、ヘアケア製品、育毛剤などに使用されます(文献1:2006;文献4:1990;文献5:1993;文献6:2004;文献7:2002;文献8:2006;文献9:2011;文献10:2017;文献11:1994;文献12:1998;文献13:1998;文献16:2006)

グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対する抗菌作用

グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対する抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌とグラム陽性菌およびグラム陰性菌について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、健康な状態においてはそれが病原性微生物の侵入を排除する生体バリアとしても機能しており、皮膚の恒常性を保つ一因となっています。

皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占め、表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献20:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮脂分泌の亢進により皮脂貯留が起こることで増殖し、それにともなって増殖したアクネ菌や表皮ブドウ球菌に存在するリパーゼも増加することにより、皮脂成分であるトリグリセリドが分解され、遊離脂肪酸が増加し、炎症を引き起こすといわれています。

チョウジエキスには、オイゲノールによる抗菌性がよく知られており、のちにチョウジエキスのタンニン成分にもグラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して強い抗菌性があることが認められているため(文献8:2006)、皮膚常在菌においてグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を抑制すると考えられます。

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用に関しては、前提知識として即時型アレルギーのメカニズムとヒスタミンについて解説します。

代表的な即時型アレルギーとしてじんま疹があり、じんま疹のイメージと以下の即時型アレルギーが起こるメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

即時型アレルギーが起こるメカニズム

即時型アレルギー(じんま疹)は、

  1. 真皮に存在する肥満細胞の表面で抗原(アレルゲン)と抗体(IgE)が結びつくことで抗原抗体反応が起こる
  2. 抗原抗体反応によって肥満細胞が破れてヒスタミンなどの炎症因子が細胞外へ放出される
  3. ヒスタミンが血管の透過性を高めると、血漿成分が血管外に漏出することにより、数分後に皮膚に赤みが生じ、じんま疹が発症する

このようなプロレスを通して起こります(文献14:2002)

もう少し詳しく解説しておくと、肥満細胞は皮膚においては真皮の毛細血管周囲くまなく分布しており、肥満細胞の表面には免疫グロブリンE(IgE抗体)という抗体が付着しています。

IgE抗体に反応する抗原(アレルゲン)が体内に侵入すると、肥満細胞の表面で抗原と抗体が結びつき、抗原抗体反応が起こることによって肥満細胞内の化学伝達物質を含む顆粒が細胞外へ放出されます。

代表的な化学伝達物質のひとつがかゆみや腫れを起こすヒスタミンで、ヒスタミンは神経を刺激してかゆみを起こし、また血管の透過性を高めるため、血漿成分が血管壁を通して血管外へ出てその周辺の皮膚にたまってむくみができ、その結果かゆみを伴った膨疹がみられるようになるというメカニズムになります。

1998年にノエビアによって公開された技術情報によると、

安全性の高い抗アレルギー剤を得るために、広く天然物よりアレルギー作用を有する物質のスクリーニングを行った結果、アセンヤクエキス、サンショウエキス、チョウジエキス、ノイバラ果実エキスワレモコウエキスビワ葉エキス、キナノキ樹皮エキス、ユキノシタエキスシラカバ樹皮エキスまたはヨーロッパシラカバ樹皮エキスブドウ葉エキスの10種の植物抽出物に肥満細胞および好塩基球からのヒスタミン遊離を阻害する作用を見出した。

上記10種の1%生薬および植物抽出物のヒスタミン遊離抑制効果をラット由来好塩基球白血病細胞から遊離されるヒスタミンを指標とする抗アレルギー作用試験法を用いて評価したところ、以下のグラフのように、

生薬および植物抽出物におけるヒスタミン遊離抑制作用比較

各生薬および植物抽出物がヒスタミンの遊離を抑制することが明らかである。

また0.5%チョウジエキス配合軟膏を17~30歳のアトピー性皮膚炎を有する女性患者20人にそれぞれ朝夕2回2週間にわたって顔に塗布し、2週間後に改善効果を5段階(顕著、有効、やや有効、無効、悪化)で評価したところ、

症例数 顕著 有効 やや有効 無効 悪化
20 4 8 8 0 0

チョウジエキスはアトピー性皮膚炎の症状改善に有効であり、塗布期間中に症状の悪化した患者は一人もいなかった。

またチョウジエキスのみを用いてもよいが、他の9種類の植物抽出物を混合して用いることで相乗効果が期待できる。

0.001%~5%の濃度範囲とすることが望ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献13:1998)、チョウジエキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン合成のプロセスおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン合成の仕組み図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

1998年に大阪府立公衆衛生研究所と富山医科薬科大学薬学部の共同研究によって報告された生薬の皮膚関連酵素に対する阻害作用検証によると、

チロシナーゼに対する阻害作用物質を探索する目的で66種類の生薬の水製エキスについて酵素阻害作用を測定し、また生薬水製エキスからフェノール製物質を除去した分画についても阻害作用を測定したところ、

生薬エキス タンニン量 チロシナーゼ活性阻害率(%)
  (%) 水製エキス 水製エキス(タンニン除去)
アセンヤク 3.10 46 -4
オウヒ 2.90 49 -2
ガイヨウ 1.25 25 7
キジツ 0.60 40 0
キョウニン 0 91 86
ケイケットウ 2.70 69 -17
シソヨウ 1.30 43 27
シャゼンジ 0.45 28 1
ダイオウ 2.90 60 -11
チョウジ 2.15 42 -15
チョレイ 0.50 26 13
トウニン 0.50 66 48

水製エキスについて阻害率50%異常の生薬は、キョウニン、ケイケットウ、ダイオウ、トウニンの4種類であった。

また、阻害率20~50%の生薬は、アセンヤク、オウヒ、ガイヨウ、キジツ、シソヨウ、シャゼンジ、チョウジ、チョレイの8種類であった。

アセンヤク、オウヒ、ガイヨウ、ケイケットウ、ダイオウ、チョウジはタンニン量が多い生薬であり、フェノール物質を除去(タンニン除去)した場合では阻害活性が著しく低下したことから、これらの生薬に存在する阻害物質はタンニンであると推察された。

キジツは水製エキスで阻害作用を示し、フェノール物質を除去した場合では阻害作用を失っていたが、タンニン量は0.60%と多くなく、このことからキジツの阻害物質はタンニン以外のフェノール性物質である可能性が考えられる。

フェノール物質を除去(タンニン除去)した場合で阻害率20%異常の生薬はキョウニン、シソヨウ、トウニンの3種類であり、これらの生薬についてはフェノール性物質以外の阻害作用をもつ成分の存在が示唆された。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:1998)、チョウジエキスにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用に関しては、メラニン生合成のメカニズムとSCFおよびc-kitレセプターについて解説します。

メラニン生合成についてはチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用のパートで解説していますが、重ねて解説しておきます。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

SCFは肝細胞増殖因子であり、メラニン生合成のメカニズムでは情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)のひとつとして知られており、メラノサイトに存在するSCFの受容体であるc-kitレセプターに輸送され結合されることにより、肥満細胞が遊走、分化・増殖し、アトピー性皮膚炎が引き起こされたり、メラニン合成が活性化することが明らかになっています(文献15:1996)

2002年に花王によって公開された技術情報によると、

細胞表面上のc-kitレセプターに対するSCFの結合を特異的に阻害する天然物を探索したところ、カンゾウアスパラサスリネアリス、アセンヤク、ナギイカダシコンエンメイソウトウガラシウコン、コンフリー、ノバラユリチャ、チョウジ、ツバキの抽出物にSCF結合阻害活性があることを見出した。

そこでヒト培養メラノサイトを用いたin vitro試験において各植物抽出物を1%濃度で添加し、SCF/c-kitの特異的結合量を測定したところ、以下の表のように、

植物 SCF結合阻害率(%)
カンゾウ 71.0
アスパラサスリネアリス 40.4
アセンヤク 34.1
ナギイカダ 31.5
シコン 29.1
エンメイソウ 27.4
トウガラシ 25.0
ウコン 20.2
コンフリー 17.3
ノバラ 17.0
ユリ 11.0
チャ 63.0
チョウジ 49.9
ツバキ 45.0

チョウジ抽出物は、c-kitレセプターに対するSCFの結合阻害活性を有することが認められた。

また配合量は通常0.00001%~1%が好ましく、とくに0.0001%~0.1%が好ましい。

このような検証結果が明らかになっており(文献7:2002)、チョウジエキスにSCF結合阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献17:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献18:1991;文献19:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難であるため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

生体内におけるセラミド合成を促進する成分・物質を検討したところ、コメクズアンズスイカズラユキノシタ、テンチャ、ラフマ、サンザシイザヨイバラ、エゾウコギ、ナツメシソオウレンサイシン、コガネバナ、キハダクワボタンシャクヤクチンピムクロジ、チョウジ、ユリダイズシロキクラゲの抽出物によりセラミド合成が促進されることを見出した。

in vitro試験において、マウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地を用いて、試料未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 10μg/mLあたりのセラミド合成促進率(%)
コメ 熱水 110
エタノール 115
クズ 熱水 133
エタノール 145
アンズ 50%BG水溶液 123
エタノール 137
スイカズラ 熱水 116
エタノール 122
ユキノシタ 熱水 121
テンチャ エタノール 115
ラフマ エタノール 114
サンザシ 50%BG水溶液 130
イザヨイバラ 熱水 112
エタノール 115
エゾウコギ 熱水 129
ナツメ 熱水 162
エタノール 152
シソ エタノール 187
オウレン 熱水 150
サイシン 熱水 145
エタノール 165
コガネバナ 50%BG水溶液 118
熱水 121
キハダ 熱水 178
エタノール 195
クワ 熱水 129
エタノール 145
ボタン 熱水 116
50%BG水溶液 126
シャクヤク 熱水 112
チンピ 熱水 111
エタノール 117
ムクロジ エタノール 115
チョウジ 熱水 114
ユリ 50%BG水溶液 115
ダイズ エタノール 120
熱水 129
シロキクラゲ 熱水 125

チョウジ抽出物は、無添加と比較してセラミド合成促進効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献16:2006)、チョウジエキスにセラミド合成促進による保湿・バリア改善作用が認められています。

O₂⁻(スーパーオキシドアニオン)消去能による抗シワ作用

O₂⁻(スーパーオキシドアニオン)消去能による抗シワ作用に関しては、チョウジエキスには紫外線によって発生した活性酸素のひとつであるO₂⁻の消去能が明らかになっています(文献4:1990)

1994年に日本メナード化粧品が報告した活性酸素によるコラーゲン生成の変化に対する生薬エキスの影響検証によると、

正常ヒト線維芽細胞を用いて、活性酸素(キサンチン100μg/mL+キサンチンオキシダーゼ100μU/mL)を添加した場合と活性酸素にさらにO₂⁻の消去能が報告されている生薬エキス(チョウジエキス、ゲンノショウコエキスシャクヤクエキス)をそれぞれ100μg/mL添加し、コラーゲン生成の減少におよぼす影響を検証したところ、以下のグラフのように、

活性酸素によるコラーゲン生成の変化に対する生薬エキスの影響

それぞれの生薬エキスは、活性酸素によるコラーゲン生成の減少を有意に抑制した。

また、真皮における線維芽細胞は通常コラーゲン生成と同時にコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼを活性させてコラーゲン量を一定に保っており、活性酸素の発生によってコラゲナーゼ活性の割合が高まり、コラーゲンを過剰に分解することでコラーゲン減少が促進される一面がありますが、各生薬エキスをそれぞれ100μg/mL添加し、コラゲナーゼ活性への影響を検証したところ、以下のグラフのように、

活性酸素によるコラゲナーゼ活性の変化に対する生薬エキスの影響

チョウジエキス、ゲンノショウコエキスは活性酸素によるコラゲナーゼ活性の上昇を有意に抑制したが、シャクヤクエキスはやや抑制傾向ではあったものの有意な差ではなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献11:1994)、チョウジエキスには活性酸素によるコラーゲン生成減少抑制作用およびコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼの活性抑制作用が認められ、結果的に紫外線による抗シワ・抗老化の抑制効果が示唆されています。

ただし、試験はin vitroで行われており、また一般的に化粧品配合量は1%未満であり、実際には試験よりもかなり穏やかな抑制作用傾向であると考えられます。

線維芽細胞のコラーゲン繊維との接着性強化による抗シワ作用

線維芽細胞のコラーゲン繊維との接着性強化による抗シワ作用に関しては、前提知識として以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

真皮の潤い成分一覧

肌の弾力は主に皮膚の真皮にあるコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、線維芽細胞で構成されていますが、コラーゲンの構築・維持に重要な役割を担っている線維芽細胞は接着性の細胞であり、接着因子であるフィブロネクチンを介してコラーゲン繊維と接着し、細胞外マトリックスの産生およびコラーゲン繊維構造の構築を行います。

一方でシワの形成に関しては、要因のひとつとして光老化や加齢の影響でフィブロネクチンに対する線維芽細胞の接着性が弱まることで徐々にコラーゲン繊維束構造の変性が起きることが明らかになっていますが、チョウジエキスの作用機序は、線維芽細胞のコラーゲンへの接着性を高めることにあります。

2004年のポーラ化成工業によって実施されたクローブエキス(チョウジエキス)配合化粧水連用によるシワの抑制および肌のハリ・弾力改善効果検証によると、

化粧意識の高い女性被検者41(19~68歳)人に1%クローブエキス配合化粧水を1ヶ月間(3月~4月)連用してもらい、化粧水以外は普段どおりスキンケアしてもらい、評価は3人の評価者で行い、肉眼観察において連用1ヶ月でシワが薄くなったと評価された被検者を「改善あり」とし、キメについても皮溝・皮丘がよりはっきりしているかどうかを評価し、改善あり・なしを判定した。

評価の結果、以下の円グラフのように、

クローブエキス配合化粧水1ヶ月連用による肌状態変化の割合

約50%の被検者に弾力改善傾向および目尻のシワの改善効果がみられ、約40%の被検者にキメ改善効果がみられた。

このようなヒト試験結果が明らかになっており(文献6:2004)、線維芽細胞のコラーゲンへの接着性改善による抗シワ改善効果が認められています。

また、他の抗シワ成分と組み合わせることで相乗効果も期待できるとされており、ポーラ化成はコラーゲン繊維束の再構築を促進する物質として報告されているウルソール酸ベンジルとチョウジエキスとの併用試験を行った結果、ウルソール酸ベンジル単体に比べて高いシワ改善効果が観察され、相乗効果が認められたと報告しています(文献6:2004)

ただし、これらの試験は1%濃度で実施しており、化粧品に配合される場合は一般的に1%未満であると推測されるので、試験結果よりは穏やかな抗シワ作用であると考えられます。

5α-リダクターゼ抑制によるヘアサイクルの正常化、抜け毛抑制および育毛作用

抜け毛抑制の作用機序は、5α-リダクターゼ抑制により、ヘアサイクルが正常に戻り、抜け毛が抑制されるというものですが、前提知識として男性方脱毛症の仕組みを解説しておくと、以下の毛髪における男性ホルモン作用の仕組み図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

毛髪における男性ホルモン作用の仕組み

男性ホルモンの一種であるテストステロンは毛髪の毛乳頭細胞内で5α-リダクターゼという酵素により強力な男性ホルモン作用を有するDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、これが細胞内の男性ホルモンレセプターと結合することで男性型脱毛症の症状発生の引き金となるとされています。

つまり、5α-リダクターゼを抑制することで、DHTへの変換も抑制され、結果的に男性型脱毛症に伴う毛髪症状が改善されると考えられます。

デミ毛髪科学研究所の男性型脱毛症に関する研究結果によると、

AGA(Androgenetic alopecia、男性型脱毛症)は、思春期以降に頭頂部、前頭部のどちらか一方もしくは両方の毛髪が徐々に細くなる男性特有の脱毛症であり、AGAには男性ホルモンが大きく関与しています。

男性ホルモンのテストステロンは5α-リダクターゼという酵素の働きにより脱毛作用が強いジヒドロテストステロンになり、これが毛根に作用するとヘアサイクルの退行期が誘導され、毛乳頭が萎縮して毛髪が徐々に細くなり、いずれ脱毛に至ります。

5α-リダクターゼの働きを抑制する化粧品原料を探索したところチョウジエキスが以下のように、

チョウジエキスにおける5α-リダクターゼ活性阻害効果

有意に5α-リダクターゼの活性を阻害することを発見しました。

また、実際にチョウジエキスを配合した薬剤を1日2回6ヶ月にわたって連用した実使用試験を行い、試験開始前、試験開始3ヶ月、6ヶ月後にそれぞれ連続3日間、洗髪時の抜け毛をカウントし、その値の平均を抜け毛の本数として評価したところ、以下のグラフのように、

チョウジエキス配合薬剤の6ヶ月連用による抜け毛の本数の推移

経時的に抜け毛の本数が減少するという成果が得られ、また頭頂部の毛髪が増加するという成果も得られました。

このように報告されており(文献10:2017)、5α-リダクターゼ活性阻害により、ヘアサイクルが正常化され抜け毛の抑制、毛髪の増加が認められています。

ただし、これらの試験は濃度が不明であり、化粧品に配合される場合は一般的に1%未満であると推測されるので、試験結果よりは穏やかな抜け毛抑制効果であると考えられます。

複合植物エキスとしてのチョウジエキス

SYプランテックスKN,KTB,MEという複合植物エキスは、以下の成分を中心に構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 真菌に対する抗菌性

とされており、それぞれの抗菌性の相乗効果によって多角的に抗菌するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はSYプランテックスシリーズであると推測することができます(文献5:2011)

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チョウジエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

チョウジエキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

チョウジエキスは抗菌成分、美白成分、保湿成分、バリア改善成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗菌成分 美白成分 保湿成分 バリア改善成分 抗老化成分 抗炎症成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,376.
  2. 鈴木 洋(2011)「丁字(ちょうじ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,321-322.
  3. 林真一郎(2016)「クローブ」メディカルハーブの事典 改定新版,58-59.
  4. 伊藤 三明, 他(1990)「生薬抽出物のスーパーオキシド消去作用」日本香粧品学会誌(14)(4),196-199.
  5. 紅 陽子, 他(1993)「活性酸素によるヒアルロン酸の断片化に対する植物抽出液の抑制作用」
    日本化粧品技術者会誌(27)(2),130-135.
  6. 清野 綾子(2004)「クローブエキス配合化粧水連用によるシワの抑制および肌のハリ・弾力改善効果」Fregrance Journal(32)(5),52-57.
  7. 花王株式会社(2002)「SCF結合阻害剤」特開2002-302451.
  8. 山田 武, 他(2006)「カワラヨモギエキスの特性と化粧品用抗菌剤への展開」Fregrance Journal(34)(4),60-67.
  9. 村島 健司, 他(2011)「物性抗菌剤の開発-高品質カワラヨモギエキスの機能と化粧品への応用-」Fregrance Journal(39)(2),47-52.
  10. “デミ毛髪科学研究所”(2017)「男性型脱毛症に関する研究成果」, <http://www.demi.nicca.co.jp/hair_labo/forefront/ikumou_02.html> 2018年7月14日アクセス.
  11. 田中 浩, 他(1994)「活性酸素の培養ヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン代謝に及ぼす影響」日本化粧品技術者会誌(28)(2),172-177.
  12. 沢辺 善之, 他(1998)「生薬の皮膚関連酵素に対する阻害作用」YAKUGAKU ZASSHI(118)(9),423-429.
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