ショウブ根茎エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗菌成分 美白成分 細胞賦活剤
ショウブ根茎エキス
[化粧品成分表示名称]
・ショウブ根茎エキス、ショウブ根エキス

[医薬部外品表示名称]
・ショウブ根エキス

ショウブ科植物(∗1)ショウブ(学名:Acorus calamus 英名:sweet flag)の根茎からエタノールまたはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

∗1 クロンキスト体系ではサトイモ科に含めているが、1998年に公表された分子系統学による被子植物の新しい分類体系であるAPG植物分類体系ではショウブ科に属しています。

ショウブ根茎エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 精油:アサロン、オイゲノール

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2015;文献3:2011)

ショウブは、北海道から九州まで広く分布し、池沼の水辺に自生しています。

強い香りがあり、葉が剣状のため古くから魔除けとしても利用されており、端午の節句にショウブを軒に挿して戸口にヨモギを吊るす風習やショウブの葉を風呂に入れる菖蒲湯の風習があります。

日本の民間療法では、胃炎、ひきつけ、創傷などの治療に根を煎じたものやおろしたものを利用していました(文献3:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品などに使用されます(文献1:2006;文献4:2001;文献5:2014;文献6:2015;文献8:2015)

紫外線によるデンドライト伸長抑制による色素沈着抑制作用

紫外線によるデンドライト伸長抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識として黒化メラニンが合成されるメカニズムと合成された黒化メラニンが表皮ケラチノサイトに輸送されるメカニズムを解説します。

以下のメラニン生合成の仕組み図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユウメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

合成されたメラニン色素は、以下の図のように、

メラニン輸送の仕組み

メラノソームという細胞小器官に貯蔵されますが、メラノソームに貯蔵されたメラニン色素を表皮ケラチノサイトまで輸送するメラノサイトの触手がデンドライトです。

また、デンドライトの伸長因子がメラノサイトに働きかけるのを抑制することでメラニン顆粒の移動が抑制され、表皮ケラチノサイトの色素沈着抑制につながることが報告されています(文献4:2001)

2001年にポーラ化成工業によって公開された技術情報によると、

in vitro試験においてショウブ根茎エキスのデンドライト伸長抑制作用を検証した。

メラノサイト培地に、マクロファージ培養上清(デンドライト伸長促進)を添加したもの(ポジティブコントロール)、マクロファージ培養上清(デンドライト伸長促進)を添加しさらに0.005%ショウブ根茎エキスを添加したもの、何も添加しないもの(ネガティブコントロール)を比較したところ、以下の表のように、

試料 デンドライトの長さ(μM)
ポジティブコントロール 37.31
ショウブ根茎エキス0.005% 20.78
ネガティブコントロール 12.92

ショウブ根茎エキスは、有意にデンドライト伸長を抑制することが示された。

この結果からショウブ根茎エキスに優れたデンドライト伸長抑制作用があることがわかった。

また配合量は少なすぎても効果が発揮されず、多すぎても効果が頭打ちになるため、好ましい配合量は0.001%~10%の範囲であり、さらに好ましくは0.01%~5%の範囲である。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2001)、ショウブ根茎エキスに紫外線によるデンドライト伸長抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

DNA損傷抑制による細胞賦活作用

DNA損傷抑制による細胞賦活作用に関しては、まず前提知識としてDNA損傷による皮膚への影響について解説します。

皮膚および毛髪におけるDNA損傷は、細胞内に起因するもの(活性酸素)と外界に由来するもの(紫外線、化学物質)が主な原因と考えられており、これらに曝露された皮膚や毛髪は、DNA分子が紫外線などのエネルギーを直接吸収することにより、またはDNA以外の光増感分子がエネルギーを吸収した後、そのエネルギーがDNAへ2次的に傷害を引き起こすことにより引き起こされます。

細胞のDNAに損傷が生じると、アポトーシス(∗2)の誘導や細胞周期の停止が起こり、細胞の正常な分化や増殖が行われなくなります。

∗2 あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによる細胞の自然死現象のことです。

またDNAの損傷が生じたがアポトーシスを誘導するには十分でない場合は損傷を受けた細胞が未修復のDNAを複製し、エラーを生じた遺伝情報が細胞のDNAに残されるため、細胞老化が促進され、細胞の種々の機能が低下することも知られています。

つまり、DNA損傷が修復されない場合は、皮膚においては色素沈着、炎症、光老化、ターンオーバーの乱れ、皮膚バリア機能の低下など種々の皮膚障害の原因となり、毛髪においては脱毛、薄毛、フケの発生、白髪など毛髪障害の原因となります。

このような背景からDNA損傷を抑制することは、正常な皮膚および毛髪の維持にとって重要であると考えられています。

2001年にコーセーによって公開された技術情報によると、

ショウブ根茎エキスのDNA損傷抑制効果を抗γH2AX抗体を用いるDNA損傷抑制試験によって評価した。

抗γH2AX抗体を用いるDNA損傷抑制試験は、生細胞を用いてDNA二重鎖切断が生じた箇所近傍のヒストンH2AXタンパク質のリン酸化を特異的に検出する試験法であり、DNA損傷の中でも最も深刻な二重鎖切断の抑制効果を定量的に判別できることから有効な試験法といえる。

in vitro試験においてショウブ抽出物(5μg/mLまたは200μg/mL)のDNA損傷抑制作用を測定したところ(比較対照としてボタンピ抽出物を同濃度で使用)、以下のグラフのように、

ショウブ抽出物のDNA損傷抑制効果

エキス未添加の場合は約40%の細胞がγH2AX陽性つまりDNA損傷を生じていたが、ショウブ抽出物を5μg/mL添加した細胞ではDNA損傷の発生率は約37%に、200μg/mL添加では約29%に抑制されており、ショウブ抽出物は濃度依存的にDNA損傷を抑制した。

一方、ボタン抽出物を添加した場合は濃度依存的にDNA損傷が増加していた。

これらの結果からショウブ抽出物はDNA損傷抑制、とくにDNA二重鎖切断防止または修復に適しいていることが確認された。

また配合量は少なすぎても効果が発揮されず、好ましい配合量は0.00001%以上であり、0.0001%以上含むことがより好ましく、0.001%以上含むことがさらに好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2014)、ショウブ根茎エキスにDNA損傷抑制による細胞賦活作用が認められています。

表皮幹細胞性維持および幹細胞増殖促進による細胞賦活作用

表皮幹細胞性維持および幹細胞増殖促進による細胞賦活作用に関しては、まず前提知識として皮膚における幹細胞について解説します。

幹細胞とは、細胞の元となっている細胞であり、分化機能(人体のさまざまな細胞を作り出す機能)と自己複製機能(幹細胞の機能を有した細胞に分裂する機能)を併せ持った細胞のことをいいます(以下画像参照)

幹細胞のメカニズム

具体的には脊椎動物(哺乳動物)の組織は、傷害、疾患、加齢などにともない細胞・臓器の損傷が起こった場合に再生系が働き、細胞・臓器の損傷を回復しようとしますが、この回復しようとする作用は該当組織に存在する幹細胞があらゆる細胞・臓器に分化し損傷部を補うことで回復に導くと考えられています(文献8:2015)

幹細胞は、表皮および真皮でも基底膜付近に存在が報告されており(文献7:2005)、真皮幹細胞が線維芽細胞を生み出し、線維芽細胞によって細胞外マトリックスを形成するのに対して、表皮幹細胞は表皮角化細胞を生み出し、ターンオーバーに重要な役割を果たし肌表面を正常に保ちます。

また幹細胞は加齢によって減少することが知られており、幹細胞の減少によって表皮ターンオーバーの遅延、表皮の菲薄化(∗3)が起こることも知られています。

∗3 菲薄化(ひはくか)とは、皮膚が薄くなることで、一般に加齢にともない幹細胞の減少とともに皮膚は薄くなっていきます。

こういった背景から幹細胞性(∗4)を維持することは、ターンオーバーの遅延改善や表皮の菲薄化予防をはじめ正常な皮膚の維持に重要であると考えられます。

∗4 幹細胞性とは、自己複製能および多分化能を有し、増殖性であることをいい、未分化状態を維持できず分化誘導が進んでしまうと幹細胞の能力は失われていることになるため、未分化の幹細胞のみが肝細胞性を有しているといえます。

2015年にコーセーによって公開された技術情報によると、

in vitro試験において表皮細胞(ケラチノサイト)を培養した培地にショウブ抽出物を添加し、コロニー数をカウントして効果を確認するコロニー試験を実施した。

効果の観点からは、化粧品として許容可能濃度においてコロニー数が対照と比較して50%以上増加していることが好ましく、75%以上増加しているとより好ましい。

また長期間において幹細胞性を維持しうるとの観点から直径3mm以上の大きいコロニー数が対照より増加し、かつ濃度依存的に増加していることが好ましい。

これらの観点を考慮に入れて、試験を実施したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) コロニー数(3mm以下) コロニー数(3mm以上) 合計
対照 0 14 14 28
ショウブ抽出液 0.003 28 25 53
ショウブ抽出液 0.03 27 32 59

ショウブ抽出物は、対照(未添加)に比べてコロニー数が濃度依存的に増えており、また濃度が高くなると3mm以上の大きいコロニーの割合が増えており、これは幹細胞性を維持していることを示すものである。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2015)、ショウブ根茎エキスに表皮幹細胞性維持による細胞賦活作用が認められています。

また2015年にメナード化粧品によって公開された技術情報によると、

in vitro試験において、各溶媒によって抽出されたショウブ根茎エキスの幹細胞未分化状態維持効果を、nanog遺伝子相対発現量100%を未分化状態であると定め、培養3日後のマウスES細胞におけるnanog遺伝子相対発現量の値を算出したところ、以下の表のように、

添加抽出物 培養3日後のNanog発現量(%)
未添加 24
ショウブ熱水抽出物 78
ショウブ50%エタノール抽出物 70
ショウブエタノール抽出物 65

すべてのショウブ抽出物は、未添加と比較して顕著な幹細胞未分化状態維持効果が認められた。

またヒト体性幹細胞に各溶媒によって抽出された0.001%ショウブ抽出物を添加し、3日間培養し、3日後に細胞数を計測したところ、以下の表のように、

添加抽出物 培養細胞増殖率(%)
未添加 100
ショウブ熱水抽出物 146
ショウブ50%エタノール抽出物 135
ショウブエタノール抽出物 129

すべてのショウブ抽出物は、未添加と比較して顕著な細胞増殖促進効果が認められた。

また配合範囲は0.00001%~1%とすることが好ましく、0.00001%未満であると効果が十分に発揮されにくい場合がある。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2015)、ショウブ根茎エキスに幹細胞増殖促進による細胞賦活作用が認められています。

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ショウブ根茎エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ショウブ根茎エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ショウブ根茎エキス 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ショウブ根茎エキスは毒性なし(∗5)となっており、安全性に問題ない成分であると考えられます。

∗5 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ショウブ根茎エキスは抗菌成分、美白成分、細胞賦活成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗菌成分 美白成分 細胞賦活成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,373.
  2. 宇山 光男, 他(2015)「ショウブ」化粧品成分ガイド 第6版,204.
  3. 鈴木 洋(2011)「菖蒲根(しょうぶこん)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,228-229.
  4. ポーラ化成工業株式会社(2001)「メラノサイトのデンドライトの伸長抑制剤及びそれを含有する化粧料」特開2001-335420.
  5. 株式会社コーセー(2014)「DNA損傷抑制剤」特開2014-129267.
  6. 株式会社コーセー(2015)「ショウブ抽出液を含む表皮幹細胞性維持剤」特開2015-044788.
  7. 日本メナード化粧品株式会社(2005)第30回日本香粧品学会学術大会
  8. 日本メナード化粧品株式会社(2015)「幹細胞の未分化状態維持剤及び増殖促進剤」特開2015-116127.

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