キハダ樹皮エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗菌成分 抗炎症成分 保湿成分
キハダ樹皮エキス
[化粧品成分表示名称]
・キハダ樹皮エキス

[医薬部外品表示名称]
・オウバクエキス

ミカン科植物キハダ(学名:Phellodendron amurense)の周皮を除いた樹皮からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)で抽出して得られるエキスです。

キハダ樹皮エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • アルカロイド類:ベルベリン、パルマチン
  • フラボノイド

などで構成されています(文献1:2006)

キハダという名は樹皮を剥ぐと内側が黄色いことを表しており、この内皮は古くから黄色染料としても用いられてきました。

この染料には防虫作用もあるため、中国ではかつて公式文書はキハダで染めた黄紙が用いられたと記録されています。

ベルベリンやキハダ樹皮エキスには抗菌、抗炎症、中枢抑制、降圧、健胃・止瀉作用などが知られており、古来より日本各地でオウバクを主成分とする民間薬が多くあり、とくに胃腸薬が有名です(文献2:2011)

漢方では、清熱燥湿・解毒・清虚熱の効能があり、下痢、糖尿病、黄疸、膀胱炎、痔、帯下、肺結核、湿疹、腫れ物などに用いられ、とくに「下焦の湿熱」の症状に対して効果があり、下痢、排尿異常、性器疾患、下肢の神経症状などに用いられます(文献2:2011)

民間ではオウバク末を酢で練って湿疹や打撲傷などの外用薬としても用いられます(文献2:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品をはじめ、ハンド&ボディケア製品、日焼け止め製品、洗顔料などに使用されます(文献1:2006;文献4:1994;文献6:2006)

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、皮膚の恒常性を保つ一因となっており、皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占めています。

表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献5:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮脂分泌の亢進により皮脂貯留が起こることで増殖し、それにともなって増殖したアクネ菌や表皮ブドウ球菌に存在するリパーゼも増加することにより、皮脂成分であるトリグリセリドが分解され、遊離脂肪酸が増加し、炎症を引き起こすといわれています。

また健全な皮膚では常在菌の大部分を占める表皮ブドウ球菌の数に変動が少なく、一定の菌数を保っていることが報告されています(文献4:1994)

これらの背景から常在菌を一定に保つことにより、皮膚の炎症の予防および改善が期待できると考えられます。

1994年にクラブコスメチックによって公開された技術情報によると、

健常な皮膚は弱酸性を保っており、弱酸性で抗菌性を有する生薬抽出物の連用が、皮膚常在菌数を効果的にコントロールすると考え、弱酸性領域で殺菌・抗菌性を有する植物抽出物を検討した。

弱酸性条件下(pH5.5)で、各種抽出物(アマチャワレモコウクジン、エンジュ、カリンエイジツシャクヤクボタン、オウバク、オウレン)0.05mLの種々の最近に対する抗菌性をディスク法による薬剤感受性試験(∗1)によって阻止円の直径を計測したところ、以下の表のように、

∗1 ディスク法による薬剤感受性試験とは、抗菌薬または抗菌作用を有する植物抽出物の塗布したディスクを菌の中に1日置き、細菌に耐性があるかどうかを調べる方法で、耐性がなければディスクの周りに菌は繁殖せず、ディスクを中心とした円の直径を阻止円として計測します。

生薬名 黄色ブドウ球菌 表皮ブドウ球菌
アマチャ 15.2mm 12.0mm
ワレモコウ 12.0mm 12.3mm
クジン 17.0mm 19.5mm
エンジュ 14.0mm 13.7mm
カリン 14.0mm 10.0mm
エイジツ 10.5mm 13.0mm
シャクヤク 9.0mm 10.0mm
ボタン 10.0mm 10.2mm
オウバク 21.5mm 15.5mm
オウレン 24.5mm 18.3mm

オウバク抽出物は、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に抗菌性を有していることが示された。

また、0.2%オウバク抽出物の表皮ブドウ球菌に対する生育阻害率をpH5.5(弱酸性)およびpH7.2(中性)に調整して測定したところ、以下の表のように、

生薬名 pH5.5(弱酸性) pH7.2(中性)
オウバク 65.2% 99.2%

オウバク抽出物は、弱酸性下で有意な表皮ブドウ球菌阻害作用を有することを確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1994)、キハダ樹皮エキスに弱酸性皮膚における皮膚常在菌(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)のバランス保持による抗菌作用が認められています。

セラミド合成促進による保湿作用

セラミド合成促進による保湿作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献7:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献8:1991;文献9:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難なため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

生体内におけるセラミド合成を促進する成分・物質を検討したところ、コメクズアンズスイカズラユキノシタ、テンチャ、ラフマ、サンザシイザヨイバラ、エゾウコギ、ナツメシソオウレンサイシン、コガネバナ、キハダ、クワボタンシャクヤクチンピムクロジチョウジユリダイズシロキクラゲの抽出物によりセラミド合成が促進されることを見出した。

in vitro試験において、マウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地を用いて、試料未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 10μg/mLあたりのセラミド合成促進率(%)
コメ 熱水 110
エタノール 115
クズ 熱水 133
エタノール 145
アンズ 50%BG水溶液 123
エタノール 137
スイカズラ 熱水 116
エタノール 122
ユキノシタ 熱水 121
テンチャ エタノール 115
ラフマ エタノール 114
サンザシ 50%BG水溶液 130
イザヨイバラ 熱水 112
エタノール 115
エゾウコギ 熱水 129
ナツメ 熱水 162
エタノール 152
シソ エタノール 187
オウレン 熱水 150
サイシン 熱水 145
エタノール 165
コガネバナ 50%BG水溶液 118
熱水 121
キハダ 熱水 178
エタノール 195
クワ 熱水 129
エタノール 145
ボタン 熱水 116
50%BG水溶液 126
シャクヤク 熱水 112
チンピ 熱水 111
エタノール 117
ムクロジ エタノール 115
チョウジ 熱水 114
ユリ 50%BG水溶液 115
ダイズ エタノール 120
熱水 129
シロキクラゲ 熱水 125

キハダ抽出物は、無添加と比較してセラミド合成促進効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2006)、キハダ樹皮エキスにセラミド合成促進による保湿作用が認められています。

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キハダ樹皮エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

キハダ樹皮エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合範囲内において、皮膚刺激性は非刺激またはわずかな刺激性が起こる可能性がありますが、皮膚感作性(アレルギー性)、光毒性および光感作性の報告もないため、総合的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“池田回生病院皮膚科”の「頭皮用製品の低刺激性低アレルギー性評価」(文献4:1996)によると、

  • [ヒト試験] 健常な30人の被検者の両前腕内側に2%キハダ樹皮のエタノール抽出物を含む頭皮ケア製品を20分FinnChamber適用し、パッチ除去10分後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激反応および接触蕁麻疹反応はなかった
  • [ヒト試験] 健常な30人の被検者の背部に2%キハダ樹皮のエタノール抽出物を含む頭皮ケア製品を48時間FinnChamber適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、7人の被検者にうぇあずかな紅斑反応、1人の被検者に紅斑浸潤に小水疱丘疹を伴う反応が観察されたが、72時間後には反応は観察されず、他の被検者に皮膚刺激および皮膚感作反応は観察されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、7人の被検者にわずかな紅斑が観察され、1人の被検者に一時的な紅斑浸潤に小水疱丘疹を伴う反応が観察されていますが、これらは2%濃度の結果であり、化粧品に配合される場合は一般的に1%未満であり、試験ほどの刺激性は起こらないと推測されるため、化粧品配合範囲内において、皮膚刺激性は無刺激またはわずかな刺激性が起こる可能性がありますが、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

光毒性および光感作性について

“池田回生病院皮膚科”の「頭皮用製品の低刺激性低アレルギー性評価」(文献4:1996)によると、

  • [ヒト試験] 健常な30人の被検者の背部に2%キハダ樹皮のエタノール抽出物を含む頭皮ケア製品を48時間FinnChamber適用し、パッチ除去に塗布部位の左半分をアルミ箔を入れた黒色テープで覆い、UVAライト(3.0J/c㎡)を12.5cmの距離で5分間照射し、照射30分後および翌日に皮膚反応を評価したところ、皮膚反応は観察されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
キハダ樹皮エキス

参考までに化粧品毒性判定事典によると、キハダ樹皮エキスは△(∗2)となっており、一般的に安全性に問題はないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

キハダ樹皮エキスは抗菌成分、抗炎症成分、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗菌成分 抗炎症成分 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,364.
  2. 鈴木 洋(2011)「黄柏(おうばく)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,43-44.
  3. 須貝 哲郎(1996)「頭皮用製品の低刺激性低アレルギー性評価」皮膚(38)(4),448-456.
  4. 株式会社クラブコスメチックス(1994)「皮膚外用剤」特開平6-279256.
  5. 石坂 要, et al(2001)「健常人より分離した皮膚常在菌について」日本化粧品技術者会誌(35)(1),34-41.
  6. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「セラミド合成促進剤」特開2006-111560.
  7. G Grubauer, et al(1989)「Transepidermal water loss:the signal for recovery of barrier structure and function.」The Journal of Lipid Research(30),323-333.
  8. Imokawa G, et al(1991)「Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis: an etiologic factor in atopic dry skin?」J Invest Dermatol.(96)(4),523-526.
  9. Di Nardo A, et al(1998)「Ceramide and cholesterol composition of the skin of patients with atopic dermatitis.」Acta Derm Venereol.(78)(1),27-30.

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