キハダ樹皮エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗菌 紫外線吸収
キハダ樹皮エキス
[化粧品成分表示名称]
・キハダ樹皮エキス

[医薬部外品表示名称]
・オウバクエキス

ミカン科植物キハダ(学名:Phellodendron amurense 英名:Amur Corktree)の周皮を除いた樹皮からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

キハダ(黄肌)は、朝鮮半島、中国北部、アムール地方に分布し、日本においても北海道から本州、四国、九州、沖縄に至るまで全土に分布しています(文献1:2011)

キハダ樹皮エキスは天然成分であることから、国・地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
アルカロイド ベルベリン(主要成分)、パルマチン、マグノフロリン など
テルペノイド トリテルペン オバクノン、リモニン

これらの成分で構成されていることが報告されており(文献1:2011;文献2:2013)、主要成分であるベルベリン(berberine)には抗菌作用、抗炎症作用などが知られています(文献3:1953;文献4:1981)

キハダのコルク質の周皮を除いた樹皮(生薬名:黄柏)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において健胃・消炎作用があることから胃腸炎など胃腸系の炎症や炎症性の下痢に、また打ち身、捻挫、リウマチ、関節炎などの炎症性疾患に対して湿布薬として用いられています(文献5:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品などに使用されています。

アクネ菌生育阻害による抗菌作用

アクネ菌生育阻害による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌およびアクネ菌について解説します。

皮膚表面および皮脂腺開口部には多数の微生物が存在しており、その中でも健康なヒトの皮膚に高頻度で検出される病原菌をもたない微生物を皮膚常在菌と呼んでいます(文献6:1986;文献7:1994)

健常な皮膚表面およびの主な皮膚常在菌の種類としては、20-69歳までの健常女性84人の頬より菌を採取し分離同定したところ、以下の表のように(∗1)

∗1 好気性とは、酸素を利用した代謝機構を備えていること、嫌気性とは増殖に酸素を必要としない性質のことです。

分類 名称 性質 検出率(%)
グラム陽性桿菌 アクネ菌(cutibacterium acnes) 嫌気性 100.0
グラム陽性球菌 表皮ブドウ球菌(staphylococcus epidermidis) 好気性 79.1
グラム陽性細菌 ミクロコッカス属(micrococcus) 好気性 41.2
グラム陽性球菌 黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus) 好気性 8.7
グラム陽性細菌 枯草菌(bacillus subtilis) 好気性 6.1

すべての人からアクネ菌が検出され、次いで表皮ブドウ球菌が79.1%の人から検出されたことから、これらが主要な皮膚常在菌であると考えられます(文献7:1994)

皮膚常在菌の平均的な菌数については、被検者の頬1c㎡あたりの平均菌数を検討したところ、以下のグラフのように、

健常皮膚における皮膚常在菌の平均数

最も多く検出されたのはアクネ菌、次いで表皮ブドウ球菌であり(文献7:1994)、この試験結果は従来の試験データ(文献6:1986)とも同様であることから、一般に健常な皮膚状態かつこれらの皮膚常在菌が存在する場合はこれらの皮膚常在菌が大部分を占めていると考えられます。

皮膚常在菌は、皮膚上の皮表脂質やアミノ酸などを生育のための栄養源とし、1000種もの菌がお互いに競合と調和関係を構築しながら安定した叢(フローラ)を形成することで、通常は病原性を示すことなく、むしろ外部からの病原菌の侵入を防ぐ一種のバリア機能を発揮していると考えられています(文献6:1986;文献8:2018)

アクネ菌は嫌気性菌であり、酸素のある環境ではほとんど増殖できないため、毛穴や皮脂腺に存在しており、皮脂分解酵素であるリパーゼ(lipase)を産生・分泌し、皮脂の構成成分であるトリグリセリドを脂肪酸とグリセリンに分解することによって皮膚を弱酸性に保ち、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)など病原性の強い細菌の増殖を抑制する役割を担っています(文献9:2011)

一方で、以下のニキビの種類・重症度図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

ニキビの種類・重症度

様々な要因から皮脂の分泌量が過剰に増えることにより、毛穴開口部の角層が硬くなって毛穴を塞ぐことや角質細胞と脂質の混合物が毛穴に詰まり狭められて皮脂が溜まることなど、酸素が少なく栄養が多いアクネ菌にとって理想的な環境となった場合に、アクネ菌が過剰に増殖することが知られています。

アクネ菌が増殖するメカニズムとしては、アクネ菌がリパーゼを分泌しトリグリセリドを分解することによって生じる脂肪酸の一種であるオレイン酸が毛穴開口部の角層を硬くし、アクネ菌の生育を促進することから(文献10:1970)、アクネ菌がリパーゼを分泌することでオレイン酸を産生し、閉塞環境を強化しながら増殖していくというものになります(文献7:1994)

アクネ菌は、過剰に増殖しなければニキビの原因菌になりませんが、皮脂の分泌量が増えて何かの理由で毛穴が塞がり過剰に増殖すると、増殖したアクネ菌の数に比例して分泌されるリパーゼによって産生された過剰な脂肪酸や増殖した菌体の成分が毛穴に炎症を引き起こすことから(文献11:1970;文献12:1980;文献13:1972)、ニキビの発生から悪化の要因であると考えられています。

このような背景から、皮膚常在菌がバランスした健常な皮膚状態であればアクネ菌の存在は問題ではありませんが、毛穴開口部の閉塞などによりアクネ菌が増殖し皮膚常在菌バランスが崩れた場合は、増殖したアクネ菌を抑制するアプローチが皮膚常在菌バランスの改善、ひいては皮膚状態の改善に重要であると考えられます。

2011年に資生堂によって報告されたキハダ樹皮エキスのアクネ菌への影響検証によると、

in vitro試験において終濃度1%キハダ樹皮エキス50μLを含浸させた直径8mmの円型ろ紙をそれぞれアクネ菌、黄色ブドウ球菌を接種した培地に置き、アクネ菌を含む培地は嫌気環境にて、黄色ブドウ球菌を含む培地は好気環境にて72時間培養したあと、円型ろ紙の周囲に発生した菌未生育帯(発育抑制帯、透明ゾーン)の大きさを測定し、以下の2段階でキハダ樹皮エキスの菌に対する増殖抑制効果を評価したところ、以下の表のように、

評価は「○:生育抑制ゾーン15mm以上」「☓:生育抑制ゾーン15mm未満」の2段階とした。

試料 評価
アクネ菌 黄色ブドウ球菌
キハダ樹皮エキス

キハダ樹皮エキスは、アクネ菌および黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌効果を示した。

また、キハダ樹皮エキスのアクネ菌および黄色ブドウ球菌に対するMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を測定したところ、以下の表のように(∗2)

∗2 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

試料 MIC(ppm)
アクネ菌 黄色ブドウ球菌
キハダ樹皮エキス 130 500

キハダ樹皮エキスは、とくにアクネ菌に対して高い抗菌活性を有することが確認できた。

このような検証結果が報告されており(文献14:2011)、キハダ樹皮エキスにアクネ菌生育阻害作用が認められています。

次に、1999年に資生堂によって報告されたニキビに対するキハダ樹皮エキスの影響検証によると、

ニキビに悩む20人(13-20歳)に0.05%キハダ樹皮エキス配合化粧水を1日に2回4週間にわたって塗布してもらい、4週間後に患部の観察をおこなったところ、20人のうち5-9人に改善がみられた。

また、0.05%キハダ樹皮エキス、1%エリスリトールおよび抗炎症成分である0.1%グリチルリチン酸2Kを配合した化粧水を別のニキビに悩む20人(13-20歳)に同様の期間塗布してもらったところ、20人のうち15人以上に改善がみられた。

このような検証結果が報告されており(文献15:1999)、キハダ樹皮エキスにニキビに対する改善効果が認められています。

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗3)

∗3 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献16:2002;文献17:2002;文献18:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献19:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

2016年に台北医科大学の口腔内科歯学部および医用生体工学部によって報告されたキハダ樹皮エキスの紫外線吸収波長領域データによると、以下の表のように、

キハダ樹皮エキスの紫外線吸収波長

270および345nmに吸収極大をもつことが明らかにされており(文献20:2016)、キハダ樹皮エキスにUVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用が認められています。

このような背景から、日焼け止め製品に使用されています。

複合植物エキスとしてのキハダ樹皮エキス

キハダ樹皮エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、キハダ樹皮エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 K-Blend HANA
構成成分 BGムラサキ根エキストウキ根エキスキハダ樹皮エキスウコン根茎エキス
特徴 漢方処方「紫雲膏」および「中黄膏」に基づき、チロシナーゼ活性阻害作用および抗酸化作用による多角的な色素沈着抑制作用を発揮する4種類の植物エキス混合液

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キハダ樹皮エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

キハダ樹皮エキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性データ(文献21:2001)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部皮膚に固形分濃度として2%に調製したキハダ樹皮エキス0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後に一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギにおいても紅斑および浮腫などの皮膚刺激を認めず、陰性と判定された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部皮膚に固形分濃度として2%に調製したキハダ樹皮エキス0.5mLを1日1回週5回2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に一次刺激性の評価基準に基づいて紅斑および浮腫を指標として評価したところ、いずれのモルモットにおいても紅斑および浮腫などの皮膚刺激を認めず、陰性と判定された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

キハダ樹皮エキスは抗菌成分、紫外線防御成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗菌成分 紫外線防御成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 鈴木 洋(2011)「黄柏(おうばく)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,43-44.
  2. 御影 雅幸(2013)「オウバク」伝統医薬学・生薬学,161-162.
  3. 内炭 精一(1953)「ベルベリン」日本東洋醫學會誌(4)(3),60-69.
  4. 難波 恒雄, 他(1981)「抗炎症剤に関する研究(第2報)黄連の抗炎症活性成分」YAKUGAKU ZASSHI(115)(8),618-625.
  5. 根本 幸夫(2016)「黄柏(オウバク)」漢方294処方生薬解説 その基礎から運用まで,43-44.
  6. 桑山 三恵子, 他(1986)「健常女性の皮膚常在菌叢と皮膚の性状」日本化粧品技術者会誌(20)(3),167-179.
  7. 末次 一博, 他(1994)「皮膚常在菌の皮膚状態に与える影響」日本化粧品技術者会誌(28)(1),44-56.
  8. 岡部 美代治(2018)「皮膚常在菌の化粧品への応用と今後の展望」Fragrance Journal(46)(12),17-20.
  9. E.A. Grice, et al(2011)「The skin microbiome」Nature Reviews Microbiology(9),244-253.
  10. S.M. Puhvel, et al(1970)「Effect of Fatty Acids on the Growth of Corynebacterium Acnes in Vitro」Journal of Investigative Dermatology(54)(1),48-52.
  11. S.M. Puhvel, et al(1970)「Effect of Fatty Acids on the Growth of Corynebacterium Acnes in Vitro」Journal of Investigative Dermatology(54)(1),48-52.
  12. G.F. Webster, et al(1980)「Characterization of serum-independent polymorphonuclear leukocyte chemotactic factors produced byPropionibacterium acnes」Inflammation(4),261-269.
  13. S.M. Puhvel, et al(1972)「The Production of Hyaluronidase (Hyaluronate Lyase) by Corynebacterium Acnes」Journal of Investigative Dermatology(58)(2),66-70.
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  15. 株式会社資生堂(1999)「皮膚外用剤」特開平11-116436.
  16. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  17. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
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  19. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2020年7月1日アクセス.
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  21. 一丸ファルコス株式会社(2001)「天然物由来ニキビ治療剤」特開2001-097842.

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