プロポリスエキスの基本情報・配合目的・安全性

プロポリスエキス

化粧品表示名 プロポリスエキス
INCI名 Propolis Extract
配合目的 抗フケ など

1. 基本情報

1.1. 定義

ミツバチ科昆虫ミツバチ(学名:apis mellfera 英名:honey)が採取してきた種々の植物の樹液と自らの唾液(酵素)を混ぜ合わせてつくる樹枝状物質から得られるエキスです[1]

1.2. 成分組成

プロポリスエキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は一例として、

種類 成分名 構成比率(%)
樹脂   50-55
ロウ ミツロウ 30
精油   8-10
花粉   5
脂肪酸   微量
アミノ酸  
有機酸  
ミネラル  
ビタミン A
B1
B2
葉酸
ナイアシン
C
D
E
P

などで構成されており[2a]、樹脂画分には多種類のフラボノイドが存在していることなどが特徴となっています。

プロポリス自体には不純物が含まれており、皮膚アレルギーの症例報告が複数あることから[3a]、プロポリスエキスは一般に十分に精製されたものが用いられていると考えられます[2b]

1.3. ミツバチにおける役割

プロポリスは、ミツバチが種々の植物から樹枝状物質を集めて巣に持ち帰り、これを巣の内壁やくぼみに薄く塗ったり、巣箱の間隙や巣門に塗布して冷気や水の侵入を防いだり、巣の修理・補強などに用いられているほか、巣箱に侵入した外敵の死骸を封入して腐敗を防ぐために用いられています[4]

1.4. 化粧品以外の主な用途

プロポリスエキスの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 エタノールで処理しフラボノイドを主成分とする抽出物として得たものが菓子類などの酸化防止剤として用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • マラセチア菌生育阻害による抗フケ作用
  • 配合目的についての補足

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. マラセチア菌生育阻害による抗フケ作用

マラセチア菌増殖抑制による抗フケ作用に関しては、まず前提知識としてフケが発生するメカニズムおよびフケの原因菌について解説します。

フケ(頭垢)とは、表皮細胞の角化現象(ターンオーバー)により頭皮の角質から剥がれ落ちた角片に、皮脂や汗、ホコリが混じったものであり、皮膚の新陳代謝から生じる角片(垢)と同じですが、年齢的に皮脂の分泌が盛んになる20歳前後に最も多くなり、フケに含まれる皮脂の割合によって「乾性」と「湿性」に分類されます[6a]

フケが増殖する原因としては、頭皮の常在菌に分解された皮脂分解物が酸化した過酸化脂質による頭皮を刺激、強い界面活性剤やアルカリ石鹸による刺激により表皮細胞の代謝(分裂)を促進し、その結果として剥がれ落ちる角片が増え、フケが異常に目立ってくるフケ症(∗1)となると考えられています[6b][7a]

∗1 フケ症の多くは脂漏をともなうことから湿性フケであり、その重症化した症状が脂漏性皮膚炎と理解されています。

フケ症に関与する頭皮常在菌としては、真菌の一種であるピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale:P.ovale)が広く知られていましたが、1996年以降はピチロスポルム・オバーレとピチロスポルム・オルビクラーレ(Pityrosporum orbiculare:P.orbiculare)との統一菌種としてマラセチア・フルフル(Malassezia furfur:M.furfur)と命名されたことから、現在はマラセチア菌として知られています[7b][8]

このような背景から、マラセチア菌の増殖を抑制することは、フケの発生抑制に重要であると考えられます。

1984年に資生堂によって報告されたプロポリスエキスのP.ovale(Pityrosporum ovale:ピチロスポルム・オバーレ)への影響検証によると、

– in vitro試験 : マラセチア菌生育阻害作用 –

培地100mLにプロポリスエキスのエタノール溶液を1mL加えて処理し、これにヒト頭皮より分離したP.ovaleを接種して培養した後に抗菌性の強さを表すMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を基準として乾燥生菌数を測定したところ、以下の表のように(∗2)

∗2 ppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です

菌種 MIC(ppm)
Pityrosporum ovale 32

プロポリスエキスのエタノール溶液は、優れたP.ovale生育阻害効果を示した。

– ヒト使用試験 –

視感判定によりフケの多い10名の被検者のうち5名に1%プロポリスエキス配合ヘアトニックを、残りの5名にプロポリスエキス未配合ヘアトニックを1日1回それぞれ頭皮に使用してもらい、3日おきに計5回シャンプー前にフケの量を視感判定した。

その結果、プロポリスエキス未配合ヘアトニックを使用した5名ではフケの量に変化が見られなかったのに対して、1%プロポリスエキス配合ヘアトニックを使用した5名では少なくとも2回目以降で全員のフケの量が減少し、プロポリスエキスのフケ防止効果が認められた。

このような試験結果が明らかにされており[9]、プロポリスエキスにマラセチア菌生育阻害による抗フケ作用が認められています。

2.2. 配合目的についての補足

プロポリスエキスには、抗菌作用や皮脂調整作用をはじめ[10][11]、抗酸化作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用などが報告されていますが[12]、ヒト試験データがみつけられていないため、これらの作用については保留とし、試験データが見つかりしだい追補・再編集します。

3. 安全性評価

プロポリスエキスの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性

食品添加物の既存添加物リストに収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

3.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

プロポリス自体には複数のアレルギー報告がありますが[3b]、プロポリスエキスにおいては20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「プロポリスエキス」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,857.
  2. ab松田 忍(1994)「プロポリス-健康補助食品-」ミツバチ科学(15)(4),145-154. hdl:11078/522.
  3. ab北川 太郎, 他(1999)「プロポリス皮膚炎」アレルギー(48)(8-9),1090. DOI:10.15036/arerugi.48.1090_2.
  4. 滝野 慶則・持田 俊二(1982)「プロポリス,その化学成分と生物活性」ミツバチ科学(3)(4),145-152.
  5. 樋口 彰, 他(2019)「プロポリス抽出物」食品添加物事典 新訂第二版,314-315.
  6. ab朝田 康夫(2002)「フケの種類と手入れは」美容皮膚科学事典,394-400.
  7. abクラーレンス・R・ロビンス(2006)「フケ、頭皮フレーキングおよび頭皮ケア」毛髪の科学 第4版,328-334.
  8. 清 佳浩(2012)「マラセチア関連疾患」Medical Mycology Journal(53)(2),97-102. DOI:10.3314/mmj.53.97.
  9. 株式会社資生堂(1984)「抗アクネまたは抗フケ剤 」特開昭59-118702.
  10. 株式会社資生堂(1988)「皮膚外用剤」特開昭63-179812.
  11. 株式会社資生堂(1989)「皮脂分泌促進剤」特開平01-290614.
  12. 堤 龍彦, 他(2002)「ミツバチ由来原料の香粧品への応用」Fragrance Journal(30)(3),17-24.

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