ゲンノショウコ花/葉/茎エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 収れん成分 細胞賦活 抗酸化成分 抗シワ成分
ゲンノショウコ花/葉/茎エキス
[化粧品成分表示名称]
・ゲンノショウコ花/葉/茎エキス

[医薬部外品表示名称]
・ゲンノショウコエキス

フウロソウ科植物ゲンノショウコ(学名:Geranium thunbergii)の地上部(花・葉・茎)からエタノール、またはBG(1,3-ブチレングリコール)で抽出して得られるエキスです。

ゲンノショウコ花/葉/茎エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • タンニン類:ゲラニイン
  • フラボノイド類:クエルセチン

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2017;文献9:1978)

江戸時代初期から民間で用いられてきた日本の代表的な民間薬であり、ゲンノショウコという名は下痢にはっきりとした効果があることを意味しています。

ゲンノショウコの葉には多量のタンニンが含まれており、その約⅔はゲラニインです(文献2:2017)

健胃・整腸・止瀉作用があり、あらゆる下痢に応用され、下痢止めを目的とする場合はタンニン類がよく抽出されるように半量になるまで煎じ、また短く煎じると緩下剤になり便秘にも応用できます(文献2:2017)

医療用の整腸薬としてベルベリンと配合され、そのほかに民間では強壮・保健のお茶として飲まれたり、煎じた液を腫れ物やしもやけの外用薬として用いています(文献2:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、洗顔料、化粧下地、ファンデーションなどに使用されます(文献1:2006;文献4:1990;文献5:1994;文献6:2011;文献8:2009)

NGF阻害による抗炎症作用および抗アレルギー作用

NGF阻害による抗炎症作用および抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚における炎症とNGFの関係について解説しておきます。

以下の皮膚における炎症およびかゆみのメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

皮膚におけるかゆみの作用機序

アトピー性皮膚炎、乾燥肌、敏感肌といった皮膚状態では共通して表皮内にまで多くの知覚神経線維が伸長してきており、皮膚の知覚神経伸長には表皮細胞が産生するNGF(神経成長因子)が関与しています。

2011年に大正製薬によって報告された技術情報によると、

神経突起伸長試験キットを用いて、NGF(300ng/mL)および各生薬エキス(細切りにし10倍量(w/v)のエタノール:水混合液(1:1)で沸騰後30分間抽出・ろ過した後にエタノールを除去したもの)にPC12細胞懸濁液(100μL)添加し、3日間培養し、細胞突起量を測定したところ、以下の4種類が高い阻害作用を示した。

生薬 阻害率(%)
ゲンノショウコ(Geranium thunbergii) 78.7
ホップ(Humulus lupulus) 95.9
ローズマリー(Rosmarinus officinalis) 91.4
セージ(Salvia officinalis) 98.4

また、皮膚炎症状を有したマウスの背部にこれら4種類の生薬エキス10%を含むエタノール溶液100μLを1日1回、週5回を7週間にわたって塗布し、皮膚の観察を1週間に1回行ない、皮膚炎症状態および皮膚水分蒸散量を測定した。

試験の結果、すべての生薬エキスで有意な炎症抑制作用が認められ、また皮膚水分蒸散量も抑制傾向にあり、とくにホップ塗布群では有意な皮膚水分蒸散量抑制作用が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2011)、ゲンノショウコエキスにNGF阻害による抗炎症作用および抗アレルギー作用が認められています。

収れん作用

収れん作用に関しては、ゲンノショウコには加水分解型タンニンの一種であるゲラニインが含まれており(文献9:1978)、ゲラニインが皮膚や頭皮の水分に溶解することによりタンパク質凝集作用(収れん作用)が起こると考えられます(文献10:2007)

ATP産生促進による細胞賦活作用

ATP産生促進による細胞賦活作用に関しては、まず前提知識としてATP(アデノシン三リン酸)について解説します。

ATP(アデノシン三リン酸)は、生態機能を維持するために炭水化物、脂質、タンパク質を代謝させて得られるエネルギーのことで、細胞のエネルギー源として多くの細胞間反応を活発にしています。

細胞が分裂、増殖、分化あるいは恒常性維持などの働きをするためには、少なくともエネルギー源であるATPの供給が必要不可欠であり、ATPの産生量を上げることにより、細胞内のエネルギー代謝が促進され、細胞増殖、細胞活性化、細胞分裂促進またそれにともなうターンオーバーの正常化につながると考えられています。

2009年に丸善製薬によって公開された技術情報によると、

in vitro試験において正常ヒト新生児角化細胞を用いてゲンノショウコ抽出物(5、10および20μg/mL)を添加し、対照を100としてATP産生量を測定したところ、以下の表のように、

試料 試料濃度(μg/mL) ATP産生促進率(%)
対照   100
ゲンノショウコ抽出物 5 147.5
10 117.7
20 121.6

ゲンノショウコ抽出物は有意にATP産生を促進することが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2009)、ゲンノショウコエキスにATP産生促進による細胞賦活作用が認められています。

スーパーオキシド(O₂⁻)消去能による抗酸化作用

スーパーオキシド(O₂⁻)消去能による抗酸化作用は、まず前提知識として生体内における活性酸素の構造およびスーパーオキシドについて解説します。

生体内における活性酸素は以下のように、

酸素(O₂) → スーパーオキシド(O₂⁻) → 過酸化水素(H₂O₂) → ヒドロキシラジカル(・OH)

最初に酸素と反応(電子を取り込む)して、まず活性酸素のスーパーオキシドを発生させ、発生したスーパーオキシドは活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって水に分解されますが、その過程で活性酸素である過酸化水素が発生します。

このような背景から、最初に発生する活性酸素であるスーパーオキシドを可能な限り消去し、過酸化水素以降の発生を防止することは健常な皮膚の維持において重要だと考えられます。

ゲンノショウコ花/葉/茎エキスには、活性酸素のひとつであるスーパーオキシド(O₂⁻)の消去能が認められています(文献4:1990)

コラゲナーゼ活性抑制およびコラーゲン減少抑制による抗シワ作用

コラゲナーゼ活性抑制およびコラーゲン減少抑制による抗シワ作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とコラーゲンおよびコラゲナーゼの関係を解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

コラーゲンは、細胞外マトリックスの主成分であり、膠質状の性質を持つ白い紐状のタンパク質からなる丈夫な太い繊維で、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支えています(文献7:2002)

コラゲナーゼは、コラーゲンを分解する酵素であり、通常はコラーゲンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとコラゲナーゼが活性化し、コラーゲンの分解が促進されることでコラーゲンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。

このような背景からコラゲナーゼの活性抑制またはコラーゲンの減少を抑制することは、皮膚の老化(ハリ、シワ、たるみ)を抑制するために重要であると考えられます。

1994年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

正常ヒト線維芽細胞を用いて、活性酸素(キサンチン100μg/mL+キサンチンオキシダーゼ100μU/mL)を添加した場合と活性酸素にさらにO₂⁻の消去能が報告されている生薬エキス(チョウジエキス、ゲンノショウコエキス、シャクヤクエキス)をそれぞれ100μg/mL添加し、コラーゲン生成の減少におよぼす影響を検証したところ、以下のグラフのように、

活性酸素によるコラーゲン生成の変化に対する生薬エキスの影響

それぞれの生薬エキスは、活性酸素によるコラーゲン生成の減少を有意に抑制した。

また、真皮における線維芽細胞は通常コラーゲン生成と同時にコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼを活性させてコラーゲン量を一定に保っており、活性酸素の発生によってコラゲナーゼ活性の割合が高まり、コラーゲンを過剰に分解することでコラーゲン減少が促進される一面がありますが、各生薬エキスをそれぞれ100μg/mL添加し、コラゲナーゼ活性への影響を検証したところ、以下のグラフのように、

活性酸素によるコラゲナーゼ活性の変化に対する生薬エキスの影響

チョウジエキスおよびゲンノショウコエキスは、活性酸素によるコラゲナーゼ活性の上昇を有意に抑制したが、シャクヤクエキスはやや抑制傾向ではあったものの有意な差ではなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1994)、ゲンノショウコエキスにコラゲナーゼ活性抑制およびコラーゲン減少抑制による抗シワ作用が認められています。

またゲンノショウコエキスのコラーゲン減少抑制による抗シワ作用のメカニズムは、活性酸素のひとつであるスーパーオキシド(O₂⁻)消去能が深く関係していると考えられます。

ただし、試験はin vitroで行われており、また一般的に化粧品配合量は1%未満であり、実際には試験よりもかなり穏やかな抑制作用傾向であると考えられます。

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ゲンノショウコ花/葉/茎エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ゲンノショウコ花/葉/茎エキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ゲンノショウコ花/葉/茎エキスは抗炎症成分、収れん成分、細胞賦活成分、抗酸化成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 収れん成分 細胞賦活成分 抗酸化成分 抗老化成分

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文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,369.
  2. 原島 広至(2017)「ゲンノショウコ(現証拠)」生薬単 改訂第3版,144-145.
  3. 鈴木 洋(2011)「現之証拠(げんのしょうこ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,132-133.
  4. 伊藤 三明, 他(1990)「生薬抽出物のスーパーオキシド消去作用」日本香粧品学会誌(14)(4),196-199.
  5. 田中 浩, 他(1994)「活性酸素の培養ヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン代謝に及ぼす影響」日本化粧品技術者会誌(28)(2),172-177.
  6. 高野 憲一, 他(2011)「生薬エキスのアトピー性皮膚炎モデルマウス皮膚炎症状に対する作用」YAKUGAKU ZASSHI(131)(4),581-586.
  7. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  8. 丸善製薬株式会社(2009)「ATP産生促進剤および表皮細胞賦活化剤」特開2009-256272.
  9. 奥田 拓男(1978)「渋くないタンニン」ファルマシア(14)(8),653-656.
  10. 小西 正敏, 他(2007)「皮膚収斂剤」特開2007-302620.

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