塩化レボカルニチンとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 保湿成分
塩化レボカルニチン
[医薬部外品表示名称]
・塩化レボカルニチン

生体成分のL-カルニチンの塩化物であり、皮膚に浸透すると塩が解離し、L-カルニチンとして効果を発揮する成分で、2005年2月にカネボウの申請により、

  • 肌荒れを防ぐ
  • 日焼け・雪やけ後のほてりを防ぐ
  • 皮膚をすこやかに保つ
  • 皮膚にうるおいを与える
  • 皮膚を保護する
  • 皮膚の乾燥を防ぐ

これらの効果が認められ、医薬部外品有効成分として承認された抗炎症剤です。

塩化レボカルニチンは、L-カルニチン欠乏の改善効果が医療用医薬品として既に承認されていますが、医薬部外品としてはこれが初承認となります。

L-カルニチンは脂肪の代謝に必要な物質で、脂肪燃焼促進効果があるため、ダイエット用サプリメントとして知名度がありますが、化粧品(医薬部外品)としての効果は、皮膚表層部のβ酸化(∗1)能を高め、エネルギー代謝を促進することによって、角層のバリア機能の低下を防止し、肌荒れを防ぐというもので、わかりやすく言い換えると、肌荒れで減少しがちなセラミド、脂肪酸、コレステロールなど細胞間脂質を増加させ、バリア機能が向上することによって、結果的に肌荒れや水分蒸散などが改善するということです。

∗1 脂肪酸はミトコンドリアに運ばれた後、そのままでは取り込まれないため、β酸化によってアセチル-CoAにまで代謝(分解)されますが、この経路をβ-酸化といいます。

細胞間脂質やバリア機能について解説しておくと、細胞間脂質とは以下の肌図のように、

セラミド(細胞間脂質)

肌の一番上の表皮の角質と角質の間を埋めるように存在し、細胞間脂質の構成は、

  • セラミド:50%
  • 脂肪酸:20%
  • コレステロールエステル:15%
  • コレステロール:10%
  • 糖脂質:5%

となっています。

この細胞間脂質が角質と角質の間を満たすことで肌のバリア機能も役割を果たしており、肌の水分の蒸発を抑制し、水分量をコントロールしたり、外部の乾燥や刺激から肌を保護します。

肌荒れや湿疹などが原因で皮膚が炎症を起こしたり、乾燥肌に傾くと細胞間脂質のバランスが崩れて、肌の水分が蒸散してしまったり、保護力が低下してより肌荒れや乾燥を悪化させることになりますが、塩化レボカルニチンはそれぞれの細胞間脂質を有意に増加させることで、皮膚のバリア機能低下を改善し、結果的に肌荒れや乾燥を改善するということです。

カネボウが実施した皮膚再構築モデルにおける角層細胞間脂質に与える作用のin vitro試験報告によると、

塩化レボカルニチンの角質細胞間脂質に与える影響

塩化レボカルニチンを添加した場合に、セラミド、脂肪酸、コレステロールなど各細胞間脂質量が有意に増加しているのがわかります(文献2:2005)

塩化レボカルニチン配合製剤の乾燥皮膚に対する有効性を評価する試験では、

皮脂欠乏症または乾皮症の患者に毎日朝夕2回塩化レボカルニチン配合製剤を塗布してもらい、医師の診断により効果を判定したところ、試験開始から適用期間が長くなるにつれて全般的改善度が向上した。

また、塩化レボカルニチン配合品と塩化レボカルニチンを含まない試験品(プラセボ品)を用いて、その有効性を比較した結果でも配合品はプラセボ品に比べて有意な効果が確認された

と報告されています(文献2:2005)

次に乾燥肌のボランティアに塩化レボカルニチン配合品とプラセボ品をそれぞれ6週間連用してもらう試験を行ない、効果の差を測定して比較したところ、角層の水分量は以下のグラフのように、有意な増加が認められ、また使用を中止しても1週間までその効果は持続した。

角層水分量の増加量

この結果は単なる保湿剤の効果ではなく、皮膚の機能が改善された結果であると考えられた(文献2:2005)

また、表皮バリア機能において経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定した結果、

経表皮水分蒸散量の減少量

有意に低い値を示し、表皮バリア機能が著しく改善されたことが示された(文献2:2005)

カネボウの化粧品のみに配合されています。

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塩化レボカルニチンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

塩化レボカルニチンの現時点での安全性は、医療用医薬品としてもすでに承認されており、皮膚刺激性は安全性に問題のない一過性のごくわずかな紅斑が起こる可能性がありますが、眼刺激性はなく、皮膚感作(アレルギー)が起こる可能性もほとんどなく、光毒性および光感作性もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

なお、塩化レボカルニチンの製品への配合量は非公開のため、安全性試験でも濃度は非公開となっており、伏せ字として●で記載しています。

皮膚刺激性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] 健康成人40人の背部に●%,●%,●%塩化レボカルニチン0.015mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後の皮膚反応を観察したところ、●%の適用群では除去1時間後4人の被検者に軽度の紅斑(±)、24時間後に1人の被検者に軽度の紅斑(±)が認められた。●%および●%適用群では、いずれも皮膚反応は認められなかった
  • [ヒト試験] 上記ヒトパッチ試験において●%適用群で刺激がみられ、これは溶媒である蒸留水の影響が考えられたことから、溶媒を精製水に変更し、生理食塩水を対照試料として上記と同様の方法で追加試験したところ、●%適用群ではパッチ除去1時間後1人の被検者に軽度の紅斑(±)、●%適用群では除去1時間後2人の被検者に軽度の紅斑(±)、●%適用群では除去1時間後1人に軽度の紅斑が認められ、いずれも24時間では消失した。●%で軽度の紅斑を示した4人のうち3人は対照の蒸留水にも同様に反応していること、溶媒対照の蒸留水群では明らかな紅斑を含め5人に皮膚反応が観察されること、2回目の試験では精製水群にも同様に軽度の紅斑が観察されたこと、生理食塩水には一切の皮膚反応がみられなかったことなどの理由により観察された軽度の紅斑については蒸留水および精製水によるものと考えられ、いずれの紅斑もごく軽微であることから、安全性に問題はないと考えられた

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、一過性のごく軽微な紅斑が起こる可能性があるが安全性に問題はないと報告されているため、皮膚刺激性については、安全性に問題のない一過性のごくわずかな紅斑が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた塩化レボカルニチンの眼粘膜刺激性試験の結果、いずれのウサギも刺激反応は認められず、この物質は眼刺激性を有しないと判断された

と記載されています。

試験結果によると、眼刺激性を有しないと報告されているため、眼刺激性はないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] モルモットを対象にしたMaximization法に準じた●%および●%塩化レボカルニチンの感作性試験において、陽性対照試料に0.1%2,4-ジニトロクロロベンゼンを含むエタノール溶液を用いて実施した結果、いずれの濃度の試験物質も皮膚反応は認められず、陽性対照の溶液感作群では、明らかに陽性反応の皮膚反応が認められた。したがって、この試験物質の感作性はないと考えられた

と記載されています。

試験結果は動物のものひとつですが、皮膚感作性はないと結論付けられているため、皮膚感作性(アレルギー性)はないと考えられます。

光毒性および光感作性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2005)によると、

  • 紫外線領域(290~400nm)に吸収がないため、試験は省略されています

と記載されています。

試験によると、紫外線領域に吸収がないため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
塩化レボカルニチン 掲載なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、塩化レボカルニチンは掲載なし(∗3)となっていますが、試験結果などをみる限り安全性は高いと考えられます。

∗∗∗

塩化レボカルニチンは抗炎症成分、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 医薬品医療機器総合機構(2005)「審査報告書 カネボウ トリートメントC」, <http://www.pmda.go.jp/quasi_drugs/2005/Q200500001/200542000_21700DZZ00716_A100_1.pdf> 2018年2月2日アクセス.
  2. 丹野修,原武昭憲(2005)「カルニチンの肌への効果 -塩化レボカルニチンの開発とその作用-」Fragrance Journal 33(8),p82-85.

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