ワレモコウエキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 収れん 抗菌成分 抗アレルギー 美白 抗老化成分 抗たるみ 育毛 消臭
ワレモコウエキス
[化粧品成分表示名称]
・ワレモコウエキス

[医薬部外品表示名称]
・ワレモコウエキス

バラ科植物ワレモコウ(学名:Sanguisorba officinalis)の根および根茎からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)、またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

ワレモコウエキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • タンニン
  • サポニン類:サンギソルビン、チユグルコシド

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2011)

ワレモコウは、日本各地およびアジアからヨーロッパにかけて分布する秋の野草のひとつで、ジャコウソウやオケラなど芳香のある植物につけられる「吾木香」と名付けられていますが、ワレモコウはとくに良い芳香を有していないため「吾亦紅」という字を当てられることもあります。

成分として根にタンニン、サポニンが含まれ、サポニン成分としてサンギソルビン、チユグルコシドなどが知られています(文献2:2011)

薬理学的には、出血時間の短縮、血管収縮などの止血作用が認められているほか、抗菌作用、抗火傷作用なども知られています(文献2:2011)

漢方では、ワレモコウは地楡(ちゆ・じゆ)と呼ばれ、清熱涼血・止血の効能があり、吐血、鼻血、下血、湿疹、腫れ物、外傷、火傷などに用いられます(文献2:2011)

民間療法では、下痢のときに煎じて服用したり、扁桃腺や口内炎にはうがいで用います(文献2:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、アイケア化粧品、ヘアケア製品、頭皮ケア製品、洗浄製品、アイメイクアップ化粧品、まつ毛美容液、シート パック製品など様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献3:2007;文献5:2008;文献6:2018;文献7:2003;文献8:1998;文献10:1994;文献12:2000)

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、皮膚の恒常性を保つ一因となっており、皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占めています。

表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献11:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮脂分泌の亢進により皮脂貯留が起こることで増殖し、それにともなって増殖したアクネ菌や表皮ブドウ球菌に存在するリパーゼも増加することにより、皮脂成分であるトリグリセリドが分解され、遊離脂肪酸が増加し、炎症を引き起こすといわれています。

また健全な皮膚では常在菌の大部分を占める表皮ブドウ球菌の数に変動が少なく、一定の菌数を保っていることが報告されています(文献10:1994)

これらの背景から常在菌を一定に保つことにより、皮膚の炎症の予防および改善が期待できると考えられます。

1994年にクラブコスメチックによって公開された技術情報によると、

健常な皮膚は弱酸性を保っており、弱酸性で抗菌性を有する生薬抽出物の連用が、皮膚常在菌数を効果的にコントロールすると考え、弱酸性領域で殺菌・抗菌性を有する植物抽出物を検討した。

弱酸性条件下(pH5.5)で、各種抽出物(アマチャ、ワレモコウ、クジン、エンジュ、カリンエイジツシャクヤクボタンオウバクオウレン)0.05mLの種々の細菌に対する抗菌性をディスク法による薬剤感受性試験(∗1)によって阻止円の直径を計測したところ、以下の表のように、

∗1 ディスク法による薬剤感受性試験とは、抗菌薬または抗菌作用を有する植物抽出物の塗布したディスクを菌の中に1日置き、細菌に耐性があるかどうかを調べる方法で、耐性がなければディスクの周りに菌は繁殖せず、ディスクを中心とした円の直径を阻止円として計測します。

生薬名 黄色ブドウ球菌 表皮ブドウ球菌
アマチャ 15.2mm 12.0mm
ワレモコウ 12.0mm 12.3mm
クジン 17.0mm 19.5mm
エンジュ 14.0mm 13.7mm
カリン 14.0mm 10.0mm
エイジツ 10.5mm 13.0mm
シャクヤク 9.0mm 10.0mm
ボタン 10.0mm 10.2mm
オウバク 21.5mm 15.5mm
オウレン 24.5mm 18.3mm

ワレモコウ抽出物は、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に抗菌性を有していることが示された。

また、0.2%ワレモコウ抽出物の表皮ブドウ球菌に対する生育阻害率をpH5.5(弱酸性)およびpH7.2(中性)に調整して測定したところ、以下の表のように、

生薬名 pH5.5(弱酸性) pH7.2(中性)
ワレモコウ 96.3% 97.7%

ワレモコウ抽出物は、弱酸性下で有意な表皮ブドウ球菌阻害作用を有することを確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献10:1994)、ワレモコウエキスに弱酸性皮膚における皮膚常在菌(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)のバランス保持による抗菌作用が認められています。

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用に関しては、前提知識として即時型アレルギーのメカニズムとヒスタミンについて解説します。

代表的な即時型アレルギーとしてじんま疹があり、じんま疹のイメージと以下の即時型アレルギーが起こるメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

即時型アレルギーが起こるメカニズム

即時型アレルギー(じんま疹)は、

  1. 真皮に存在する肥満細胞の表面で抗原(アレルゲン)と抗体(IgE)が結びつくことで抗原抗体反応が起こる
  2. 抗原抗体反応によって肥満細胞が破れてヒスタミンなどの炎症因子が細胞外へ放出される
  3. ヒスタミンが血管の透過性を高めると、血漿成分が血管外に漏出することにより、数分後に皮膚に赤みが生じ、じんま疹が発症する

このようなプロレスを通して起こります(文献9:2002)

もう少し詳しく解説しておくと、肥満細胞は皮膚においては真皮の毛細血管周囲くまなく分布しており、肥満細胞の表面には免疫グロブリンE(IgE抗体)という抗体が付着しています。

IgE抗体に反応する抗原(アレルゲン)が体内に侵入すると、肥満細胞の表面で抗原と抗体が結びつき、抗原抗体反応が起こることによって肥満細胞内の化学伝達物質を含む顆粒が細胞外へ放出されます。

代表的な化学伝達物質のひとつがかゆみや腫れを起こすヒスタミンで、ヒスタミンは神経を刺激してかゆみを起こし、また血管の透過性を高めるため、血漿成分が血管壁を通して血管外へ出てその周辺の皮膚にたまってむくみができ、その結果かゆみを伴った膨疹がみられるようになるというメカニズムになります。

1998年にノエビアによって公開された技術情報によると、

安全性の高い抗アレルギー剤を得るために、広く天然物よりアレルギー作用を有する物質のスクリーニングを行った結果、アセンヤクエキス、サンショウエキスチョウジエキスノイバラ果実エキス、ワレモコウエキス、ビワ葉エキス、キナノキ樹皮エキス、ユキノシタエキスシラカバ樹皮エキスまたはヨーロッパシラカバ樹皮エキスブドウ葉エキスの10種の植物抽出物に肥満細胞および好塩基球からのヒスタミン遊離を阻害する作用を見出した。

上記10種の1%生薬および植物抽出物のヒスタミン遊離抑制効果をラット由来好塩基球白血病細胞から遊離されるヒスタミンを指標とする抗アレルギー作用試験法を用いて評価したところ、以下のグラフのように、

生薬および植物抽出物におけるヒスタミン遊離抑制作用比較

各生薬および植物抽出物がヒスタミンの遊離を抑制することが明らかである。

また0.5%ワレモコウエキス配合軟膏を17~30歳のアトピー性皮膚炎を有する女性患者17人にそれぞれ朝夕2回2週間にわたって顔に塗布し、2週間後に改善効果を5段階(顕著、有効、やや有効、無効、悪化)で評価したところ、

症例数 顕著 有効 やや有効 無効 悪化
17 5 8 3 1 0

ワレモコウエキスはアトピー性皮膚炎の症状改善に有効であり、塗布期間中に症状の悪化した患者は一人もいなかった。

またワレモコウエキスのみを用いてもよいが、他の9種類の植物抽出物を混合して用いることで相乗効果が期待できる。

0.001%~5%の濃度範囲とすることが望ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1998)、ワレモコウエキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、以下のメラニン生合成の仕組み図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化していきますが、ワレモコウエキスにはこのチロシナーゼの活性抑制作用が明らかにされており、チロシンとチロシナーゼを結合させない(結合量を減少させる)ことで、黒色メラニンの生合成を抑制することが認められています。

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とエラスターゼを解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献13:2002)

エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素であり、通常はエラスチンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとエラスターゼが活性化し、エラスチンの分解が促進されることでエラスチンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。

2000年にノエビアによって公開された技術情報によると、

in vitro試験においてエタノール抽出したワレモコウ根、イタドリ根メリッサ葉ローズマリー葉ベニバナ花ショウガ根茎それぞれ100μg/mLのエラスターゼ活性阻害率を測定したところ、以下の表のように、

試料 エラスターゼ阻害率(%)
ワレモコウ根 68.7
イタドリ根 20.2
メリッサ葉 23.4
ローズマリー葉 20.3
ベニバナ花 20.2
ショウガ根茎 22.1

ワレモコウエキスは100μg/mLで60%以上の有意なエラスターゼ阻害率を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:2000)、ワレモコウエキスにエラスターゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

筋細胞賦活による抗たるみ作用

筋細胞賦活による抗たるみ作用に関しては、前提知識として筋肉の衰えとたるみの関係について解説してきます。

顔面には、表情筋と呼ばれる皮膚を動かし、表情をつくる筋が存在しますが、

表情筋の解説

加齢や使用頻度の低下にともなってこの筋が衰弱すると、表情が乏しくなり、顔面の皮膚にたるみが生じると考えられています。

また、まぶたの開閉は表情筋である眼輪筋や前頭筋などにようり行われており、これらの筋の機能低下により、まぶたが下がり、眼の開きが小さくなると考えられています。

眼の開きを大きく見せることは化粧の主要な目的のひとつで、従来はアイメイクによって対処されてきましたが、2008年に資生堂によって技術公開された情報によると、ワレモコウエキスを顔面に塗布することにより、塗布部分の筋細胞の賦活化により顔面のたるみの軽減が可能になることが明らかになっています(文献5:2008)

さらに顔面の中で最適な部位は眼の周りの皮膚領域であり、眼の周りにワレモコウエキスを塗布することにより、眼輪筋、上眼瞼挙筋、下眼瞼挙筋などの筋機能が増加し、眼の開きの幅が大きくなり、いわゆる眼がぱっちりした状態の実現が期待できるとされています(文献5:2008)

効果が期待できる配合量は、0.0001%~0.1%、最適な配合量は0.001%~0.01%とされており、一般的な化粧品配合量でも継続的な使用で、とくに眼領域の筋細胞賦活による抗たるみ作用が認められています。

唇のヒアルロン酸産生促進による抗老化作用

唇のヒアルロン酸産生促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として唇のヒアルロン酸について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

唇も皮膚と同じく表皮と真皮で構成されていますが、皮膚との違いは皮膚に比べて表皮の角層が薄く、バリア機能が脆弱なことで、真皮に関しては皮膚と同じく立体感・ボリューム感や弾力を担っています。

唇の真皮にも皮膚と同じくヒアルロン酸が多く存在し、ヒアルロン酸が多量の水分を抱え込み皮膚にボリュームやハリ・弾力を与えることはよく知られ、また皮膚では加齢によりヒアルロン酸が減少することも知られていますが、唇のヒアルロン酸も加齢にともない減少していくことが明らかとなっています(文献6:2018)

2018年にポーラ化成によって報告されたワレモコウエキスによる唇のヒアルロン酸量増加検証によると、

20~70代の女性の唇の組織断面でヒアルロン酸を比較したところ、加齢にともない真皮のヒアルロン酸が少なくなることが明らかとなり、このことから年齢を重ねた唇ではヒアルロン酸が減ることでボリュームが損なわれることが考えられる。

そこで、唇の真皮に由来する線維芽細胞を用いてヒアルロン酸の産生を高める成分を探索した結果、以下の図のように、

ワレモコウエキスによるヒアルロン酸産生促進作用

ワレモコウから抽出したエキスが高い作用を発揮することを見出した。

この結果から、ワレモコウエキスにより唇のヒアルロン酸が増えることで、より立体感・ボリューム感のある魅力的な唇に導くことが期待される。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2018)、ワレモコウエキスに唇のヒアルロン酸産生促進による立体感・ボリューム感のある唇への改善作用(抗老化作用)が認められています。

FGF-5拮抗および毛成長期延長作用による育毛作用

FGF-5拮抗および毛成長期延長作用による育毛作用に関しては、まず前提知識としてFGF-5および毛成長期について解説します。

以下の毛髪の構造図および毛周期の図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

毛髪の構造

毛周期(ヘアサイクル)

毛髪は、2~6年の「成長期」、数週間の「退行期」、数ヶ月の「休止期」というサイクルで自然な脱毛から新しい毛髪に生え替わるサイクルを繰り返しており、洗髪やブラッシングなどで抜ける髪は休止期のもので、1日の自然脱毛数は50~80本程度です(文献4:2002)

この毛周期の中で、様々な細胞増殖因子が毛周期の調節に働いていると考えられていますが、細胞増殖因子のひとつであるFGF-5は成長期後期に発現し、毛包や毛の成長に対して抑制的に働き、毛髪の成長期を終了させて退行期に移行させることで毛成長を抑える作用があると考えられています(文献3:2007)

一方で毛包にはFGF-5の半分程度の分子量のFGF-5Sの存在も確認されており、FGF-5SにはFGF-5の退行期への誘導を阻害する作用があることが示唆されています。

2007年にポーラ化成によって報告されたワレモコウエキスの育毛作用検証によると、

FGF-5は成長期毛包を退行期へ移行させるが、FGF5SはFGF-5の退行期誘導を阻害するが、この両物質のバランス異常が脱毛症の原因のひとつになっている可能性があり、FGF-5の働きを抑えるFGF-5拮抗物質が脱毛防止の有望な物質になると考えた。

入手可能な市販植物エキス24種を探索し、ivitroおよびin vivo試験にて検証した結果、ワレモコウエキスにFGF-5拮抗作用が認められたため、ヒトでの育毛効果を検証した。

脱毛で悩む39人(男性30人、女性9人、平均年齢46歳)を2群に分け、1群に10%ワレモコウエキス配合トニックを、別の1群には対照トニックとして基剤を4ヶ月間1日2回使用してもらい、洗髪時の抜け毛数およびフォトトリコグラムで評価したところ、以下のグラフのように、

ワレモコウエキス使用による洗髪時の抜け毛数の変化

ワレモコウエキス使用による休止期毛率の変化

ワレモコウエキス配合トニック使用により、使用前と比べて抜け毛数は4ヶ月後に68.0%まで有意に減少し、毛髪伸長速度は4ヶ月後に117.7%まで有意に増加したことによる改善効果が認められた。

一方で休止期毛率は使用前に比べ4ヶ月後に67.7%まで有意の減少を示した。

これらの結果からワレモコウエキスには高い育毛効果があることが明らかとなった。

しなしながら、この育毛効果にFGF-5拮抗作用が関係しているかが不明であるため、育毛メカニズムに関してさらに検討した。

ラットの髭外毛根鞘細胞および毛乳頭細胞を用いてワレモコウエキスを0.1~0.00001%含有する培地に交換し、3日間培養後に細胞の増殖性を評価したところ、以下のグラフのように、

ラット髭外毛根鞘細胞の増殖性に対するワレモコウエキスの影響

ワレモコウエキスには有意の細胞増殖作用が認められた。

したがって、ワレモコウエキスのヒト使用試験で毛髪伸長速度の増加がみられたのは、ワレモコウエキスの細胞増殖作用によるとも考えられるが、マウスにおける養毛試験ではワレモコウエキスに毛成長促進作用は認められていないため、この点については検討が必要と思われる。

また、FGF-5拮抗作用を示したワレモコウエキスにはFGF-5の退行期誘導を阻害して成長期の期間を伸ばす働きがあると考えられるため、ワレモコウエキスの成長期延長作用を検証した。

第二休止期のマウスの背部を除毛後にワレモコウエキス40μLを、対照群には基剤(50%エタノール水)40μLを1日1回週5日連続塗布し、個々の動物の毛包がほぼ成熟状態に達し皮表に毛の先端が観察される発毛日から10~12日後に組織を観察したところ、以下のグラフのように、

 ワレモコウエキスの毛成長期間延長作用の評価

対照群の毛包はほとんどが萎縮した短い休止期毛包だったのに対してワレモコウエキス塗布群では成熟した成長期毛包が多数残存しており、その毛包長は対照群に比べ有意に長かった。

この結果はワレモコウエキスにFGF-5の退行期誘導を阻害し成長期を延長する作用があることを示している。

異常のことから、ヒト使用試験で観察されたワレモコウエキスの休止期毛率減少効果および抜け毛減少効果にはワレモコウエキスの成長期延長作用が関与していると考えられる。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2007)、ワレモコウエキスにFGF-5拮抗および毛成長期延長作用による育毛作用が認められています。

ただし、ヒト試験は10%濃度で行われており、育毛剤では1%以上配合されることもありますが、一般的に化粧品またはヘアケア製品での配合量は1%未満であり、試験よりもかなり穏やかな作用傾向であると考えられます。

ビニルケトン類生成抑制による消臭作用(抗酸化作用)

ビニルケトン類生成抑制による消臭作用(抗酸化作用)に関しては、まず前提知識としてビニルケトン類について解説しておきます。

2003年にライオンがヒトの腋臭について研究した結果、臭気原因成分としてビニルケトン類であるOEO(1-octen-3-one)とODO(cis-1,5-octadien-3-one)が発見されました(文献7:2003)

これらのビニルケトン類は、人体代謝物中のリノール酸リノレン酸などの不飽和脂肪酸と鉄が作用することにより、不飽和脂肪酸が酸化を受けて生成されることが確認されており、このメカニズムにより発生するにおいは酸化臭と定義されています。

この酸化臭は、発汗直後から発生し、とくに汗のかき始めのツンとくるにおいに大きく寄与していると考えられています。

2003年にライオンによって報告された植物抽出エキスの抗酸化作用によるビニルケトン類の生成抑制検証によると、

酸化臭であるビニルケトン類(OEO,ODO)の生成を植物エキスの抗酸化作用により抑制することを検証するために、一般的な抗酸化力を評価するオーブン試験により各種植物抽出エキスの抗酸化力を共役ジエンの生成時間で評価したところ、クワエキス、ワレモコウエキス、ドクダミエキスに高い抗酸化力が認められた。

次に、高い抗酸化力が認められたクワエキス、ワレモコウエキス、ドクダミエキスの抗酸化力をさらに詳しく検証するためにリノール酸を用いたOEOの生成抑制試験を行ったところ、以下のグラフのように、

植物エキスによるOEO生成抑制作用比較

それぞれのエキスで高いOEO生成抑制作用が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2003)、ワレモコウエキスには強い酸化臭抑制作用が認められています。

ただし、試験では濃度などが不明であり、一般的に化粧品配合量は1%未満であるため、試験よりも穏やかな酸化臭抑制作用である可能性が考えられます。

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ワレモコウエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ワレモコウエキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上n使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ワレモコウエキスは抗炎症成分、収れん成分、抗菌成分、美白成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 収れん成分 抗菌成分 美白成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,361.
  2. 鈴木 洋(2011)「地楡(ちゆ・じゆ))」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,320-321.
  3. 前田 哲夫(2007)「ワレモコウエキスの育毛効果」Fregrance Journal(35)(12),49-54.
  4. 朝田 康夫(2002)「毛髪の成長と寿命」美容皮膚科学事典,359-362.
  5. 江連 智暢(2008)「筋細胞賦活化剤 」特開2008-214315.
  6. “ポーラ化成株式会社”(2018)「ワレモコウエキスに唇のヒアルロン酸を増やす効果」, <http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20180628_1.pdf> 2018年8月30日アクセス.
  7. 飯田 悟, 他(2003)「体臭発生機構の解析とその対処(1)」日本化粧品技術者会誌(37)(3),195-201.
  8. 株式会社ノエビア(1998)「抗アレルギー剤及びこれを含有する抗アレルギー性化粧料並びに食品」特開平10-36276.
  9. 朝田 康夫(2002)「じんま疹の症状は」美容皮膚科学事典,276-279.
  10. 株式会社クラブコスメチックス(1994)「皮膚外用剤」特開平6-279256.
  11. 石坂 要, 他(2001)「健常人より分離した皮膚常在菌について」日本化粧品技術者会誌(35)(1),34-41.
  12. 株式会社 ノエビア(2000)「エラスターゼ阻害剤、及びこれを含有して成る老化防止用皮膚外用剤」特開2000-319189.
  13. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

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