ローマカミツレ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 抗菌成分 消臭剤
ローマカミツレ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・ローマカミツレ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・ローマカミツレエキス

[慣用名]
・ローマンカモミール、ローマンカミツレ

キク科植物ローマカミツレ(学名:Chamaemelum nobile 異名:Anthemis Nobilis)の花から抽出して得られるエキスです。

ローマカミツレ花エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 精油:カマズレン、アンゲリカ酸エステル
  • カフェー酸
  • フラボノイド

などで構成されています(文献2:2006)

ローマカミツレ花エキスは、もともとカモミール(ローマンカモミール)と呼ばれ、ハーブティーとして親しまれており、薬用ハーブとしてもヨーロッパを中心に防虫や肌を整える化粧水として使用されてきました。

フランスでは最も使用される薬用植物のひとつであり、鎮静作用、中枢神経抑制作用、鎮痙作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、鎮痛作用、月経困難症の緩和などの薬効が知られています(文献3:2018)

化粧品に配合される場合は、

これらの作用があるとされており、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、洗顔石けん、ボディソープ、メイクアップ化粧品、ヘアケア製品など様々な製品に使用されます(文献2:2006;文献5:2006)

アルカリホスファターゼ抑制による腋消臭作用

アルカリホスファターゼ抑制による腋消臭作用に関しては、まず前提知識として腋臭発生のメカニズムとアルカリホスファターゼについて解説します。

以下の体毛の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

体毛の構造図

一般に腋臭およびワキガ発生のメカニズムは、アポクリン汗腺から汗とともに分泌される脂質やタンパク質などが皮膚表面の常在菌や空気中の細菌によって分解されて起こると考えられています(文献7:2002)

アポクリン汗腺の分泌活動が盛んであればあるほどにおいも強くなりますが、アポクリン汗腺では分泌細胞が離出する分泌活動期と離出によって失われた分泌細胞が再形成される細胞回復期があり、この活動サイクルのすべての時期において、脂質やタンパク質の分解酵素であるアルカリホスファターゼの活性が認められています(文献5:2006)

2006年にクラシエ(旧カネボウ)によって報告された植物エキスによるアルカリホスファターゼ抑制による腋消臭の検証によると、

においの防止へのアプローチは、

  • 殺菌剤による常在菌の殺菌
  • 吸着剤による汗の吸着
  • 香りによるマスキング

など分泌された汗に対処するものが多く、においの発生に強く関わるアポクリン汗の分泌を抑制する方法はこれまでなかった。

そこで、アポクリン汗腺におけるにおい発生のメカニズムを研究したところ、アポクリン汗腺のすべての活動サイクルにおいてアルカリホスファターゼの活性が認められた。

この事実はアルカリホスファターゼがアポクリン汗腺の活動サイクル全般に関与していることを示しており、アルカリホスファターゼ活性を阻害することでアポクリン汗腺の活動を抑制し、腋臭およびわきがを防止する効果が期待できる。

アポクリン汗腺の分泌を抑制する可能性のある素材の探索を目的に約50種類の植物エキスのアルカリホスファターゼ阻害活性を測定したところ、セージエキスアルテアエキスオウゴンエキス、ローマカミツレエキスに強い阻害活性が認められた。

さらに、アルカリホスファターゼ活性阻害によるアポクリン汗腺分泌抑制作用の検証を行うため、健常な16人の左右のわきに殺菌剤のみ配合の外用剤と殺菌剤および植物エキスを配合した外用剤を1回塗布し、2.5時間ガーゼを用いて汗を回収した。

ガーゼからにおい成分を抽出し、わきのにおいの元である脂肪酸を分析したところ、植物エキスを配合した外用剤では、臭気がとくに強くわきがの原因となる酪酸(チーズのような臭気)およびイソ吉草酸(すっぱい臭気)の生成を抑制する効果を確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2006;文献6:2001)、ローマカミツレエキスにアルカリホスファターゼ抑制による腋消臭作用が認められています。

複合植物エキスとしてのローマカミツレ花エキス

ファルコレックスBX32という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 抗菌(フケ菌)
  2. 抗酸化(過酸化脂質生成抑制)

とされており、植物エキスの相乗効果によって頭皮を多角的に健やかにするもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスBX32であると推測することができます。

ファルコレックスBX44という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 角質水分量増加
  2. 経表皮水分損失抑制
  3. 抗炎症(ヒスタミン遊離抑制)
  4. 抗酸化(SOD様)
  5. 抗酸化(過酸化脂質生成抑制)
  6. メディエーター抑制(ヒスタミン遊離抑制)

とされており、肌の潤い促進、乾燥によるかゆみ抑制、過剰な皮脂抑制などそれぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって肌荒れやざ瘡を多角的に予防するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスBX44であると推測することができます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

ローマカミツレ花エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2013年)

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ローマカミツレ花エキスの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ローマカミツレ花エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、皮膚刺激性はほとんどなく、眼刺激性は非常にわずかな眼刺激性が起こる可能性があるものの、皮膚感作性(アレルギー性)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

ローマカミツレには、キク科アレルギー原因物質であるセスキテルペンラクトン類が含まれており、化粧品原料としてローマカミツレ花エキスの中にはアレルギー原因物質を除去していることも少なくありませんが、キク科アレルギーの場合は販売メーカーに問い合わせて安全性を確認することを推奨します。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Anthemis nobilis-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 104人の患者(18~70歳)の背部肩甲骨間に0.03%ローマカミツレ花エキスを含むスキンケアローション0.2mLを誘導期間において週3回合計9回にわたって24時間パッチ適用し、各パッチ除去24時間後(週末は48時間後)に皮膚反応を評価した。次いで2週間の無処置期間の後に未処置部位に24時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去48および72時間後に反応を評価したところ、試験期間において臨床的に有意な皮膚反応は観察されず、0.03%ローマカミツレ花エキスを含むスキンケアローションは皮膚刺激または皮膚感作を誘発する可能性を示さないと結論付けられた(Clinical Research laboratories Inc,2013)
  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷または擦過した皮膚に5%~9.9%ローマカミツレ花エキス、プロピレングリコールおよび水の混合物20%希釈水0.5mLを24時間パッチ適用し、パッチ除去30分後および48時間後に皮膚反応を評価したところ、この混合物の20%希釈水は非刺激剤に分類された(Hazleton France,2013a)

メディカルハーブ安全性ガイドブック(文献4:2016)によると、

  • [ヒト試験] 290人の湿疹を有する患者に5%ローマンカモミール製剤をパッチテストしたところ、1人の患者が陽性反応を誘発した(meneghini et al.,1971)

– キク科植物アレルギーを有している場合 –

  • [ヒト試験] 他のキク科植物にアレルギーを有する25人の被検者にローマンカモミールのパッチテストを実施したところ、2人の被検者でアレルギー反応が示された(Hausen,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、健常な皮膚および擦過した皮膚で皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただしキク科アレルギーを有している場合、ローマカミツレにはキク科アレルギーの原因物質であるセスキテルペンラクトン類が含まれているため(文献4:2016)高い確率で皮膚感作反応が起こると考えられます。

化粧品原料としてのローマカミツレ花エキスの中にはアレルギーの原因物質であるセスキテルペンラクトン類を除去したものもあるので、気になる場合は販売メーカーに問い合わせて確認してください。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Anthemis nobilis-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に5%~9.9%ローマカミツレ花エキス、プロピレングリコールおよび水の混合物20%希釈水0.1mLを点眼し、点眼1時間後および1,2,4および7日後に眼刺激性を評価したところ、この混合物の20%希釈水は非常にわずかな眼刺激剤に分類された(Hazleton France,2013b)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非常にわずかな眼刺激性があると報告されているため、眼刺激性は非常にわずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ローマカミツレ花エキス 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ローマカミツレ花エキスは毒性なし(∗1)となっており、安全性に問題はないと考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ローマカミツレ花エキスは抗炎症成分、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 抗菌成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2017)「Safety Assessment of Anthemis nobilis-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」,<http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1091581817705620> 2018年6月23日アクセス.
  2. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,387.
  3. ジャパンハーブソサエティー(2018)「ローマンカモミール」ハーブのすべてがわかる事典,55.
  4. AHPA(米国ハーブ製品協会), Zoe Gardner, Michael McGuffin, et al.(2016)「Chamaemelum nobile (L.) All.」メディカルハーブ安全性ガイドブック 第2版,169-170.
  5. “クラシエホールディングス株式会社”(2006)「わきがを抑制する新たなメカニズムを発見 植物エキスでアポクリン汗腺の活動を抑え、わきのにおいを根本改善」, <http://www.kracie.co.jp/release/pdf/060601wakiga.pdf> 2018年9月10日アクセス.
  6. 与茂田 敏(2001)「腋臭防止剤 」特開2001-288063.
  7. 朝田 康夫(2002)「アポクリン汗腺(体臭となって匂う汗)とは」美容皮膚科学事典,61-63.

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