ユキノシタエキスとは…成分効果と毒性を解説

抗アレルギー 色素沈着抑制
ユキノシタエキス
[化粧品成分表示名称]
・ユキノシタエキス

[医薬部外品表示名称]
・ユキノシタエキス

ユキノシタ科植物ユキノシタ(学名:Saxifraga stolonifera = Saxifraga Sarmentosa 英名:Strawberry Geranium)の全草からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ユキノシタ(雪の下)は中国および日本を原産とし、日本においては四国や長野県などの山地の湿った岩土などに野生し、また観賞用として庭先などに広く栽培されています(文献1:2011;文献2:2013)

ユキノシタエキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド フラボノール サキシフラギン、ケルシトリン、ケルセチン
フラボノイド アントシアニン
その他 アルブチン
フェニルプロパノイド クロロゲン酸

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献2:2013;文献3:1995)

ユキノシタの化粧品以外の主な用途としては、日本および中国では解熱、解毒、消炎効果が知られており、古くから民間療法において原因不明の発熱や湿疹、蕁麻疹に服用したり、ざ瘡や腫れ物に生葉の汁を塗布または煎液を湿布するといった方法で利用されてきたことが知られています(文献1:2011;文献2:2013)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地、日焼け止め製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、ボディソープ製品など様々な製品に汎用されています。

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗1)(文献4:2010;文献5:1968;文献6:1999)

∗1 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献6:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献6:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献6:1999;文献7:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、アレルゲンの曝露からⅠ型炎症までのプロセスにおけるいずれかのポイントにアプローチすることが、アレルギー性炎症の抑制において重要であると考えられています。

1998年にノエビアによって報告されたユキノシタエキスのヒスタミンおよび皮膚に対する影響検証によると、

ラット由来好塩基球白血病細胞液に各植物抽出物を加えて培養し、ヒスタミンの遊離阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

植物エキスのヒスタミン遊離抑制作用

ユキノシタエキス(50%BG抽出)は、60%以上のヒスタミン遊離抑制作用を示した。

次に、アトピー性皮膚炎を有する女性患者19人(17-30歳)の顔に0.5%サンショウ果皮エキス配合W/O型(油中水型)軟膏を、また比較対照としてサンショウ果皮エキス未配合の軟膏をそれぞれ1日2回(朝夕)2週間にわたって塗布し、2週間後に評価したところ、以下の表のように、

試料 症例数 顕著 有効 やや有効 無効 悪化
ユキノシタエキス配合軟膏 19 3 7 9 2 0
軟膏のみ(比較対照) 15 0 1 3 7 4

0.5%ユキノシタエキス配合軟膏の塗布は、アトピー性皮膚炎の症状改善に有効であることがわかった。

このような試験結果が明らかにされており(文献8:1998)、ユキノシタエキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献9:2002;文献10:2016;文献11:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献9:2002;文献11:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献9:2002;文献11:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献9:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献9:2002)

このような背景から、紫外線の曝露からメラニン排出までのプロセスにおけるいずれかのポイントでメラニンにアプローチすることが、色素沈着の抑制において重要であると考えられています。

1999年に一丸ファルコスによって報告されたユキノシタエキスのメラニンおよび皮膚に対する影響検証によると、

培養B16メラノーマ細胞を含む培地に、固形分0.5%濃度の各植物抽出液を添加しメラニン量を算出し比較したところ、以下のグラフのように、

各植物抽出液(固形分濃度0.5%)のメラニン生成抑制作用

0.5%ユキノシタエキスは、メラニン色素の生成を抑制することが確認された。

次に、シミ、そばかす、色黒で悩む10人の被検者(30-50歳)に5%ユキノシタエキス配合乳液を1日2回(朝夕)3ヶ月間にわたって塗布してもらった。

3ヶ月後にシミ・ソバカスおよび皮膚明度の改善効果を「有効:シミ・ソバカスの軽減や皮膚明度が向上した」「やや有効:シミ・ソバカスがやや軽減し、皮膚明度がやや向上した」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように

試料 被検者数 有効 やや有効 無効
ユキノシタエキス配合乳液 10 1 4 5
乳液のみ(比較対照) 10 0 0 10

5%ユキノシタエキス配合乳液塗布群は、未配合乳液塗布群と比較して色素沈着の抑制および皮膚明度の向上が確認された。

さらに、同様の試験において5%ユキノシタエキスと、他の植物エキスを5%濃度で併用した乳液を塗布した場合のシミ・ソバカスおよび皮膚明度の改善効果を評価したところ、以下の表のように、

乳液に配合された試料 被検者数 有効 やや有効 無効
ユキノシタ ボタン 10 5 5 0
ウーロン茶 2 8 0
クズ 3 7 0
カワラヨモギ 2 7 1
クララ 3 6 1
ダイズ 2 8 0
ホップ 1 9 0
アセチルチロシン 2 6 2
乳液のみ(比較対照) 0 0 10

5%ユキノシタエキスに各植物エキスまたはアセチルチロシンを併用した乳液塗布群は、ユキノシタのみを配合した乳液塗布群と比較して高い色素沈着の抑制および皮膚明度の向上効果が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献12:1999)、ユキノシタエキスにメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

ただし、ヒト試験においては5%濃度で実施しており、実際の製品への配合は一般的に1%以下であることから、かなり穏やかな効果傾向であると考えられます。

また、ユキノシタエキスと他の植物エキスを併用することで相乗効果が得られることが明らかにされているため、ユキノシタエキスと試験で併用されていたいずれかの植物エキスが併用されている場合は相乗的な色素沈着抑制効果目的で配合されている可能性が考えられます。

複合植物エキスとしてのユキノシタエキス

ユキノシタエキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、ユキノシタエキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックスPSP
構成成分 BGユキノシタエキスボタンエキスクズ根エキス
特徴 相乗的にメラニン合成を阻害する3種類の色素沈着抑制系植物抽出液
原料名 Dermawhite WF
構成成分 酒石酸EDTA-2Na硫酸Na、ピロ亜硫酸Na、グリセリンBGユキノシタエキス、パパイア果実エキス、グアバ果実エキス
特徴 相乗的にメラニン合成を阻害する3種類の色素沈着抑制系植物抽出液
原料名 Biowhite
構成成分 ユキノシタエキス、ブドウ果実エキス、BG、ヤマグワ根皮エキス、オウゴン根エキスEDTA-2Na
特徴 相乗的にチロシナーゼ活性を阻害する4種類の色素沈着抑制系植物抽出液

スポンサーリンク

ユキノシタエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ユキノシタエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献12:1999)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部に0.5%ユキノシタエキス水溶液を適用し、適用24,48および72時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの動物も紅斑や浮腫などの皮膚一次刺激を示さなかった
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した皮膚に0.5%ユキノシタエキス水溶液を1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの動物も皮膚刺激を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ユキノシタエキスは抗アレルギー成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗アレルギー成分 美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 鈴木 洋(2011)「虎耳草(こじそう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,155.
  2. 御影 雅幸(2013)「ユキノシタ」伝統医薬学・生薬学,184.
  3. 青柳 康夫, 他(1995)「ユキノシタの抗酸化成分について」日本食品科学工学会誌(42)(12),1027-1030.
  4. 厚生労働省(2010)「アレルギー総論」リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト5-14.
  5. R.R.A. Coombs, et al(1968)「Classification of Allergic Reactions Responsible for Clinical Hypersensitivity and Disease」Clinical Aspects of Immunology Second Edition,575-596.
  6. 西部 幸修, 他(1999)「植物抽出物の抗アレルギー作用」Fragrance Journal臨時増刊(16),109-115.
  7. 椛島 健治(2009)「皮膚のスーパー免疫」美容皮膚科学 改定2版,46-51.
  8. 株式会社ノエビア(1998)「抗アレルギー剤及びこれを含有する抗アレルギー性化粧料並びに食品」特開平10-36276.
  9. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  10. 日光ケミカルズ(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  11. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  12. 一丸ファルコス株式会社(1999)「メラニン生成抑制剤及び皮膚外用剤」特開平11-228339.

スポンサーリンク

TOPへ