モモ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分
モモ葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・モモ葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・モモ葉エキス

バラ科植物モモ(学名:Amygdalus persica = Prunus persica 英名:Peach)の葉からエタノールBGで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

モモは中国(四川省、山東省、雲南省などを原産とし、日本においては弥生時代の遺跡からモモの種子が発見された記録や、平安時代に花の観賞用として栽培、果樹としては江戸時代から用いられるなど古くから伝えられています(文献1:2011)

モモ葉エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド フラボノール アストラガリン、ルチン
フェニルプロパノイド クロロゲン酸
糖類 ラムノース、グルコース、ガラクトース

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献2:2011;文献3:2019)

モモの葉の化粧品以外の主な用途としては、日本では古くから民間療法において刻んだ桃の葉を風呂に入れ、夏場のあせもや湿疹、かぶれ、荒れ性などに応用する桃薬湯が用いられてきたことが知られています(文献2:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、シャンプー製品、トリートメント製品、頭皮ケア製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用

プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UVB)曝露による炎症反応のメカニズムとプロスタグランジンE₂について解説します。

以下の紫外線(UVB)曝露による炎症のメカニズム図(一部省略)をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線曝露による炎症反応メカニズム

最初に皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると、転写因子(∗1)の一種であるNF-κB(nuclear factor-kappa B)が過剰に発現することが知られており、このNF-κBの過剰な発現によって、炎症反応に深く関与している炎症性サイトカイン(∗2)であるIL-1α(interleukin-1α:インターロイキン-1α)やTNF-α(tumor necrosis factor-α)が産生・放出されます(文献4:2005;文献5:1994)

∗1 転写因子とは、細胞内のDNAに特異的に結合するタンパク質の一群のことです。

∗2 サイトカインとは、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称であり、標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。炎症性サイトカインとは、サイトカインの中で主に生体内に炎症反応を引き起こすサイトカインのことをいいます。

これらの炎症性サイトカインは、種々のサイトカインを産生させ、さらに真皮の血管内皮細胞に存在する細胞接着因子を誘導し、血中に存在する炎症細胞(白血球)を血管内皮細胞に強固に接着することにより炎症細胞の血管透過性を高め、炎症反応を増強することが知られています(文献5:1994;文献6:1995;文献7:2010)

また、これらの炎症性サイトカインはさらにNF-κBの発現を誘導するため、炎症反応の悪循環が生じ、炎症反応は増幅していくことも明らかにされています(文献4:2005)

同時に、皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると表皮細胞においてプロスタグランジン産生酵素であるCOX-2(cyclooxygenase-2:シクロオキシゲナーゼ-2)の増加によりプロスタグランジンE₂(Prostaglandin E₂:PGE₂)が過剰に産生されることが知られており、プロスタグランジンE₂は真皮の血管拡張に関与することや紅斑を生成することが知られています(文献8:2000;文献9:2013)

このような背景から、プロスタグランジンE₂の産生を抑制することは、紅斑の抑制や過剰な炎症の抑制において重要であると考えられます。

1992年に花王によって報告されたモモ葉エキスのプロスタグランジンE₂および炎症を有する皮膚に対する影響検証によると、

in vitro試験において培養Balb/3T3系細胞にUVランプにて紫外線を30秒間照射した後に、0.01%-1.00%濃度範囲のモモ葉エキスを添加したところ、以下のグラフのように、

モモ葉エキスのプロスタグランジンE₂生成抑制作用

モモ葉エキスは、濃度依存的に抑制作用を示し、1%濃度において有意なプロスタグランジンE₂抑制作用を示した。

次にモルモットの剃毛した背部4ヶ所にUVランプにて紫外線を9分間照射し、照射後にモモ葉エキス水溶液に30分間浸漬した場合と塗布した場合の紫外線照射3および24時間後に紫外線照射部位の紅斑スコアおよび紅斑抑制率を比較したところ、以下の表のように、

モモ葉エキス 適用系 適用濃度
(葉g/ℓ)
紅斑スコア(3時間後) 紅斑スコア(24時間後)
平均スコア 抑制率(%) 平均スコア 抑制率(%)
30%エタノール 浸漬 1.0 10 2.95 6.3 1.50 44.4
30%エタノール 塗布 59.0 5 3.10 1.6 1.70 37.0
対照 浸漬 10 3.15 2.70

モモ葉エキス30%エタノールエキス(葉59g/ℓ相当濃度)を塗布した場合、照射24時間後の抑制率は37.0%で紅斑抑制効果がみられ、これに対して葉1g/ℓ相当濃度にて浸漬適用した場合の抑制率は44.4%で、塗布系と比べて浸漬系に強い抑制効果が認められた。

さらに、健常皮膚を有する男性被検者(20-31歳)の背部左右にそれぞれ1.5MED相当量の紫外線を照射し、一方に38℃のモモ葉エキス配合炭酸ガス浴剤水溶液を、他方に同温度の水道水を注入した容器をあてがい、30分間部分浸漬した。

紫外線照射3および24時間後に紫外線照射部位の紅斑を色差の変化で評価したところ、以下のグラフのように、

試料 照射量
(MED)
人数 紅斑スコア(3時間後) 紅斑スコア(24時間後)
平均スコア 抑制率(%) 平均スコア 抑制率(%)
モモ葉エキス配合浴剤 1.5 10 1.66 13.5 2.53 13.4
水道水(対照) 1.5 10 1.92 2.92

水道水適用群と比較してモモ葉エキス配合浴剤適用群は、照射3時間後で13.5%抑制、照射24時間後においても13.4%抑制し、浴剤の適用により明確な紅斑抑制作用が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献10:1992)、モモ葉エキスにプロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用が認められています。

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モモ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

モモ葉エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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モモ葉エキスは抗炎症成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分

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文献一覧:

  1. 鈴木 洋(2011)「桃仁(とうにん)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,342.
  2. 鈴木 洋(2011)「桃葉(とうよう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,343-344.
  3. T.V. Upyr, et al(2019)「Study of Biologically Active Compounds in Prunus persica Leaves Extract」Research Journal of Pharmacy and Technology(12)(7),3273-3276.
  4. K. Tanaka, et al(2005)「Prevention of the Ultraviolet B-Mediated Skin Photoaging by a Nuclear Factor κB Inhibitor, Parthenolide」Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics(315)(2),624-630.
  5. 島田 眞路(1994)「表皮の免疫担当細胞について」日本臨床免疫学会会誌(17)(6),664-666.
  6. 西 達也(1995)「白血球はどのようにして炎症部位に集まるのか」化学と生物(33)(2),83-90.
  7. 門野 岳史(2010)「皮膚の炎症における細胞接着分子の役割」日本臨床免疫学会会誌(33)(5),242-248.
  8. 近藤 靖児(2000)「UVA, UVBによる炎症のメディエーター」炎症(20)(1),45-50.
  9. 正木 仁(2013)「太陽光線に対する皮膚生理反応について」日本化粧品技術者会誌(47)(3),197-201.
  10. 森 忍, 他(1992)「モモの葉抽出物の抗炎症作用及び入浴剤への応用」日本化粧品技術者会誌(26)(3),177-182.

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