ベニバナ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 紫外線防御成分 着色剤 美白成分 抗老化成分 抗菌成分
ベニバナ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・ベニバナ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・ベニバナエキス(1)

キク科植物ベニバナ(学名:Carthamus tinctorius 英名:Safflower)の花からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)で抽出して得られるエキスです。

ベニバナ花エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 紅色色素:カルタミン
  • 黄色色素:サフロールイエロー
  • フラボノイド類:カルタミジン、ネオカルタミン

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2011)

ベニバナはエジプト原産といわれており、古代より薬用や染料などにする重要な植物で、南ヨーロッパ、エジプト、中近東、インド、中国などで広く栽培され、日本には奈良時代に渡来し、染料用、油料用、切花用などに各地で栽培されています。

学名で種名でもあるtinctoriusは「染色用の」という意味で、日本では平安時代よりアカネに代わり、染料や口紅の原料に用いられていました。

江戸時代に山形藩が栽培を奨励して一大産業に育て上げ、山形産のベニバナは女性たちに欠かせない化粧品として京や大阪で飛ぶように売れ、今日でも化粧品の色づけとして使用されています(文献3:2018)

ベニバナには紅色色素のカルタミンと黄色色素のサフロールイエローが一緒に含まれており、現在でも食品の着色料や口紅などの原料に使用されています(文献2:2011)

またフラボノイドのカルタミジン、ネオカルタミンなども含まれ、煎液には血圧降下作用や免疫賦活作用、抗炎症作用などが知られています(文献2:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、メイクアップ製品、口紅およびリップ製品、ヘアカラー製品、シート&マスク製品などに使用されます(文献1:2006;文献4:2016;文献6:2018;文献7:2007;文献8:2000)

プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用

プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識としてプロスタグランジンE₂について解説します。

以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

紫外線による炎症の仕組み

紫外線を浴びた皮膚はまず最初に活性酸素が発生し、活性酸素の働きによって炎症性サイトカインの産生が誘導され、炎症性物質の産生が促進され、炎症へとつながります。

プロスタグランジンE₂とは、アラキドン酸を基質にCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)を律速酵素として産生される炎症性物質のひとつで、血管を拡張させ、皮膚の発赤や熱感を引き起こすことが知られています。

2016年にオッペン化粧品によって報告されたベニバナ抽出物のプロスタグランジンE₂産生抑制の検証によると、

ヒト皮膚線維芽細胞を用いたin vitro試験においてベニバナ乾燥粉末400μg/mLおよび800μg/mLのプロスタグランジンE₂産生抑制率を測定したところ、以下の表のように、

濃度 プロスタグランジンE₂産生抑制率(%)
400μg/mL 94.3
800μg/mL 95.1

ベニバナ乾燥粉末は、優れたプロスタグランジンE₂産生抑制率を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2018)、ベニバナ花エキスにプロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用が認められています。

天然紅色色素または天然黄色色素による着色剤

天然紅色色素または天然黄色色素として口紅、リップスティックまたはヘアカラー剤などに配合されます。

PAR2活性化阻害による色素沈着抑制作用

PAR2活性化阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムとPAR2について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をてみもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユウメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

合成されたメラニンは、以下の図のように、

メラニン輸送の仕組み

メラノソームという細胞小器官に貯蔵され、デンドライトというメラノサイトの触手を通り、表皮ケラチノサイトへ輸送されます。

メラニンが輸送された表皮ケラチノサイトには、以下の図のように、

表皮ケラチノサイト内のメラニン

メラニンを取り込んでため込む性質があり、このメラニンのため込みに関わる因子としてPAR2(Protease-Activated Receptor-2)が報告されています。

色素沈着のない肌では表皮細胞へのメラニンのため込みはわずかですが、色素沈着部位ではPAR2の量が増え、過剰なメラニンがため込まれるため、シミとして見えることが知られています。

このような背景から色素沈着の改善には、メラニン産生を低下させるだけでなく、メラニンの過剰なため込みの抑制も重要になります。

2016年にポーラ化成工業によって報告された表皮細胞内のPAR2量減少の検証によると、

表皮細胞内のPAR2量を減少させる阻害を探索するために、in vitro試験において0.5%ベニバナ抽出物を添加した場合のPAR2量を測定したところ、以下のグラフのように、

ベニバナ抽出物によるPAR2量の減少

無添加に比べて、ベニバナ抽出物を添加した場合はPAR2発現を抑制することが確認された。

効果が期待できる濃度範囲は0.0001%~1%、より好ましくは0.001%~0.1%、さらに好ましくは0.005%~0.05%であり、これは濃すぎても効果が頭打ちになり、少なすぎると有効濃度とならないためである。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2016;文献5:2017)、ベニバナ花エキスにPAR2活性化阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とエラスターゼを解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献9:2002)

エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素であり、通常はエラスチンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとエラスターゼが活性化し、エラスチンの分解が促進されることでエラスチンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。

2000年にノエビアによって公開された技術情報によると、

in vitro試験においてエタノール抽出したワレモコウ根イタドリ根メリッサ葉ローズマリー葉、ベニバナ花、ショウガ根茎それぞれ100μg/mLのエラスターゼ活性阻害率を測定したところ、以下の表のように、

試料 エラスターゼ阻害率(%)
ワレモコウ根 68.7
イタドリ根 20.2
メリッサ葉 23.4
ローズマリー葉 20.3
ベニバナ花 20.2
ショウガ根茎 22.1

ベニバナ花エキスは100μg/mLで20%以上の有意なエラスターゼ阻害率を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2000)、ベニバナ花エキスにエラスターゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

黄色ブドウ球菌、緑濃菌、大腸菌、カンジダおよび黒コウジカビ発育抑制による抗菌作用

黄色ブドウ球菌、緑濃菌、大腸菌、カンジダおよび黒コウジカビ発育抑制による抗菌作用に関しては、2007年にサティス製薬によって、

ベニバナ抽出物、イザヨイバラ抽出物および溶媒(BG、イソペンチルジオールまたはエタノールのうち一種)の混合物によって微生物に対して抗菌性が相乗効果により飛躍的に向上し、かつ広い範囲の微生物(黄色ブドウ球菌、緑濃菌、大腸菌、カンジダおよび黒コウジカビ)に対して抗菌性を有することを見出した。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2007)、ベニバナ花エキス単体ではほとんど抗菌作用はみられませんが、化粧品などにこれらの混合物が配合されている場合は、抗菌剤(防腐剤)として配合されている可能性が考えられます。

複合植物エキスとしてのベニバナ花エキス

ファルコレックスMSTCという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 紫外線防御
  2. メラニン生成抑制(チロシナーゼ阻害)

とされており、それぞれ美白ポイントの違う植物エキスの相乗効果によってメラニン産生抑制およびくすみや色素沈着を多角的に予防するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスMSTCであると推測することができます。

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ベニバナ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ベニバナ花エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ベニバナ花エキス 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ベニバナ花エキスは毒性なし(∗1)となっており、安全性に問題ない成分であると考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ベニバナ花エキスは抗炎症成分、着色剤、美白成分、抗老化成分、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 紫外線防御成分 着色剤 美白成分 抗老化成分 抗菌成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,383.
  2. 鈴木 洋(2011)「紅花(こうか)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,134-135.
  3. ジャパンハーブソサエティー(2018)「サフラワー」ハーブのすべてがわかる事典,91.
  4. “ポーラ化成工業株式会社”(2016)「メラニンのため込みを防ぐ素材ベニバナエキスを発見」, <http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20160209.pdf> 2018年11月14日アクセス.
  5. ポーラ化成工業株式会社(2017)「メラニン取込み阻害剤」特開2017-100960.
  6. オッペン化粧品株式会社(2018)「プロスタグランジンE₂産生抑制剤」特開2018-065763.
  7. 株式会社サティス製薬(2007)「抗菌組成物」特開2007-145784.
  8. 株式会社 ノエビア(2000)「エラスターゼ阻害剤、及びこれを含有して成る老化防止用皮膚外用剤」特開2000-319189.
  9. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

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