フユボダイジュ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗アレルギー
フユボダイジュ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・フユボダイジュ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・シナノキエキス

シナノキ科植物フユボダイジュ(学名:Tilia cordata 英名:Small-leaved Lime)の花からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

フユボダイジュ(冬菩提樹)はヨーロッパからコーカサス山脈に分布し、ヨーロッパや北米においては街路樹として広く植栽されています(文献1:2000)

フユボダイジュ花エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド フラボノール ルチン、ケルシトリン、イソケルシトリン など
カテキン(∗1) エピカテキン、プロシアニジン など
フェノール酸 プロトカテク酸
フェニルプロパノイド クロロゲン酸

∗1 カテキン類は性質的にはタンニンでもあり、以前は性質を元にした分類としてタンニンという名称が用いられることが多かったのですが、近年は化学構造で分類した名称を優先することが多く、タンニンという名称が用いられる機会は減少しています。ただし、食品化学分野においては現在も便宜上タンニンという名称が用いられています。カテキン類は縮合型タンニンに分類されます。

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献2:2013;文献3:2018;文献4:2020;文献5:2016)

フユボダイジュの花の化粧品以外の主な用途としては、ハーブ療法分野において18世紀頃から鎮静、発汗、初期の風邪症状の緩和を目的でハーブティー(リンデンフラワーティー)として飲用されています(文献5:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、シャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ヘアケア製品、クレンジング製品、洗顔料、洗顔石鹸など様々な製品に汎用されています。

ヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗2)(文献6:2010;文献7:1968;文献8:1999)

∗2 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献8:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献8:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献8:1999;文献9:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、ヒスタミンの遊離を抑制することはアレルギー性炎症の抑制において重要であると考えられます。

1998年にノエビアによって報告されたフユボダイジュ花エキスのヒスタミンおよびヒト皮膚における影響検証によると、

各植物抽出物のヒスタミン遊離抑制効果をラット由来好塩基球白血病細胞から遊離されるヒスタミンを指標とする抗アレルギー作用試験法を用いて評価したところ、以下の表のように、

抽出植物 抽出部位 溶媒 ヒスタミン遊離抑制率(%)
ハトムギ 種子 精製水 60.3
ドクダミ 地上部 50重量%BG水溶液 75.3
フユボダイジュ 50重量%BG水溶液 82.3

フユボダイジュ花エキスは、80%以上のヒスタミン遊離抑制効果を示したことからヒスタミンの遊離抑制作用が認められた。

次に、アトピー性皮膚炎を有する女性患者35人(17-30歳)のうち20人の顔に0.5%フユボダイジュ花エキス配合W/O型(油中水型)軟膏を、また比較対照として15人の顔にフユボダイジュ花エキス未配合の軟膏をそれぞれ1日2回(朝夕)2週間にわたって塗布し、2週間後に評価したところ、以下の表のように、

試料 症例数 顕著 有効 やや有効 無効 悪化
フユボダイジュ花エキス配合軟膏 20 4 8 8 0 0
軟膏のみ(比較対照) 15 0 1 3 7 4

0.5%フユボダイジュ花エキス配合軟膏の塗布は、アトピー性皮膚炎の症状改善に有効であることがわかった。

また、塗布期間中にフユボダイジュ花エキス配合軟膏の塗布において症状が悪化した患者はいなかった。

このような試験結果が明らかにされており(文献10:1998)、フユボダイジュ花エキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。

次に、1997年に一丸ファルコスによって報告されたフユボダイジュ花エキスのヒスタミン、ヒアルロニダーゼおよびヒト皮膚における影響検証によると、

in vitro試験においてラット由来肥満細胞浮遊液1.2mLに各濃度のフユボダイジュ花エキス水溶液0.2mLまたは対照としてグリチルリチン酸ジカリウム水溶液、ヒスタミン放出促進剤であるcompound48/80溶液を最終濃度1μg/mLとなるように加え、培養後に上澄から遊離したヒスタミンを抽出・精製し吸光度を測定しヒスタミン遊離抑制率を算出したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) ヒスタミン遊離抑制率(%)
フユボダイジュ花エキス水溶液 0.01 24.0
0.10 58.1
0.50 69.0
グリチルリチン酸ジカリウム水溶液 0.01
0.10
0.50 7.1

フユボダイジュ花エキスは、グリチルリチン酸ジカリウムと比較して非常に優れたヒスタミン遊離抑制作用を示した。

次に、in vitro試験において0.5%フユボダイジュ花エキス水溶液または陽性対照としてグリチルリチン酸ジカリウム水溶液それぞれ0.1mLに、0.4mg/mL濃度のヒアルロニダーゼ溶液0.05mLを加え、その後にヒスタミン放出促進剤であるcompound48/80溶液を最終濃度0.1mg/mLとなるように加え、20分の放置後にさらに0.4mg/mL濃度のヒアルロン酸溶液0.25mLを加えて処理した後に吸光度を測定しヒアルロニダーゼ活性阻害率を算出したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)
フユボダイジュ花エキス水溶液 0.5 43.2
グリチルリチン酸ジカリウム水溶液 0.5 95.7

フユボダイジュ花エキスは、ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用を有していることが知られているグリチルリチン酸ジカリウムには及ばないものの、優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認された。

次に、湿疹やアトピー性皮膚炎で悩む20人(20-30歳)のうち10人に2%フユボダイジュ花エキス配合クリームを1日2回(朝晩)1ヶ月にわたって顔面に塗布してもらい、別の10人には対照としてフユボダイジュ花エキス未配合クリームを同様に塗布してもらった。

1ヶ月後に「有効:湿疹などの症状にともなう赤みやかゆみ、肌荒れが改善された」「やや有効:湿疹などの症状にともなう赤みやかゆみ、肌荒れがやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 症例数 有効 やや有効 無効
フユボダイジュ花エキス配合クリーム 10 8 2 0
クリームのみ(比較対照) 10 0 1 9

フユボダイジュ花エキス配合クリームは、皮膚の炎症などの改善効果が確認された。

さらに、ヘアトニックや浴用剤の使用試験においても同様の傾向が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献11:1997)、フユボダイジュ花エキスにヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用が認められています。

複合植物エキスとしてのフユボダイジュ花エキス

フユボダイジュ花エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、フユボダイジュ花エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックス BX44
構成成分 BGローマカミツレ花エキストウキンセンカ花エキスヤグルマギク花エキスカミツレ花エキスセイヨウオトギリソウ花/葉/茎エキスフユボダイジュ花エキス
特徴 角質層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用、ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用、活性酸素消去による抗酸化作用など多角的に荒れ肌にアプローチする6種の植物抽出液
原料名 フィトデセンシタイザー ABBA
構成成分 BGボタンエキスアルテア根エキスフユボダイジュ花エキスアルニカ花エキス
特徴 多角的に抗炎症・抗アレルギーにアプローチする4種類の植物抽出混合液
原料名 フィトブレンド TIPS
構成成分 デキストリンボタンエキスフユボダイジュ花エキス、コンフリー葉エキス
特徴 多角的に抗炎症・抗アレルギーにアプローチする3種類の植物抽出混合液
原料名 ファルコレックス HGL
構成成分 エタノールBGボタンエキスヒキオコシ葉/茎エキスフユボダイジュ花エキス
特徴 ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用と育毛作用が確認されており、フケやかゆみの抑制と育毛を意図して設計された3種の植物抽出液

フユボダイジュ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

フユボダイジュ花エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性データ(文献11:1997)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部皮膚に乾燥固形分20%フユボダイジュ花エキス0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後に一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギにおいても紅斑および浮腫などの皮膚刺激を認めず、陰性と判定された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部皮膚に乾燥固形分20%フユボダイジュ花エキス0.5mLを1日1回週5回2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に一次刺激性の評価基準に基づいて紅斑および浮腫を指標として評価したところ、いずれのモルモットにおいても紅斑および浮腫などの皮膚刺激を認めず、陰性と判定された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

フユボダイジュ花エキスは抗アレルギー成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗アレルギー成分

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参考文献:

  1. 丹田 誠之助, 他(2000)「迎賓館庭園の記念樹に発生した2種のうどんこ病菌」日本菌学会会報(41)(1),33-36.
  2. G. Negri, et al(2013)「Flavonol glycosides found in hydroethanolic extracts from Tilia cordata, a species utilized as anxiolytics」Revista Brasileira de Plantas Medicinais(15)(2),217-224.
  3. M.E.Czerwińska, et al(2018)「The influence of procyanidins isolated from small-leaved lime flowers (Tilia cordata Mill.) on human neutrophils」Fitoterapia(127),115-122.
  4. Maria Ziaja, et al(2020)「UHPLC-DAD-MS/MS analysis of extracts from linden flowers (Tiliae flos): Differences in the chemical composition between five Tilia species growing in Europe」Industrial Crops and Products(154),1-16.
  5. S. Kamiloglu, et al(2016)「Health Perspectives on Herbal Tea Infusions」Recent Progress in Medicinal Plants Volume 43 : Phytotherapeutics Ⅱ,353-368.
  6. 厚生労働省(2010)「アレルギー総論」リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト5-14.
  7. R.R.A. Coombs, et al(1968)「Classification of Allergic Reactions Responsible for Clinical Hypersensitivity and Disease」Clinical Aspects of Immunology Second Edition,575-596.
  8. 西部 幸修, 他(1999)「植物抽出物の抗アレルギー作用」Fragrance Journal臨時増刊(16),109-115.
  9. 椛島 健治(2009)「皮膚のスーパー免疫」美容皮膚科学 改定2版,46-51.
  10. 株式会社ノエビア(1998)「抗アレルギー剤及びこれを含有する抗アレルギー性化粧料並びに食品」特開平10-36276.
  11. 一丸ファルコス株式会社(1997)「オトギリソウ、ボダイジュ抽出物含有抗アレルギー剤、皮膚外用剤及び浴用剤」特開平09-157176.

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