ビワ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗アレルギー 抗酸化 抗老化 色素沈着抑制
ビワ葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・ビワ葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・ビワ葉エキス

バラ科植物ビワ(学名:Eriobotrya japonica 英名:Loquat)の葉からエタノールBGで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ビワ(枇杷)は、中国を原産とし日本には9世紀(801-900年)前後に渡来したと推定されており、江戸時代の幕末(1853-1869年)に清国から大果種が長崎に伝えられたことをきっかけに日本各地に普及しています(文献2:2011)

ビワ葉エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
テルペノイド セスキテルペン ネロリドール
トリテルペン ウルソール酸、オレアノール酸
青酸配糖体 アミグダリン
有機酸 クエン酸 など

これらの成分で構成されていることが報告されており(文献2:2011;文献3:2011;文献4:2013)、薬理作用としては抗炎症作用や抗菌作用が知られています。

ビワの葉(枇杷葉)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において止咳・止嘔の効能があることから鎮咳去痰、食中毒、下痢などに用いられ、また民間療法分野においては湿疹やあせもを治療する浴用剤として、また神経痛、関節痛などの改善を目的に炙ったビワの葉を患部や全身に当てたりビワの葉を置いた上から温灸する枇杷葉療法(枇杷灸)に古くから用いられてきたとされています(文献2:2011;文献3:2011;文献5:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、頭皮ケア製品、アウトバストリートメント製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディ石鹸、ボディケア製品、まつ毛美容液など様々な製品に汎用されています。

ヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗1)(文献6:2010;文献7:1968;文献8:1999)

∗1 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献8:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献8:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献8:1999;文献9:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、アレルゲンの曝露からⅠ型炎症までのプロセスにおけるいずれかのポイントにアプローチすることは、アレルギー性炎症の抑制において重要であると考えられています。

1996年に一丸ファルコスによって報告されたビワ葉エキスのヒスタミンに対する影響検証によると、

in vitro試験において各植物エキスのヒスタミン遊離抑制効果を検討するために、ラット肥満細胞浮遊液(3mL)に各植物抽出物(0.5mL)とヒスタミン放出促進剤(脱顆粒促進剤)であるコンパウンド48/80を加えて培養し、反応液からヒスタミンを抽出・精製し、ヒスタミン遊離抑制率を算出したところ、以下のグラフのように、

各植物抽出物のヒスタミン遊離抑制作用

ビワ葉エキスは、50%以上のヒスタミン遊離抑制作用を示した。

また、これら植物エキスいずれの組み合わせにおいてもヒスタミン遊離抑制の相乗効果が認められた。

このような試験結果が明らかにされており(文献1:1996)、ビワ葉エキスにヒスタミン遊離抑制作用が認められています。

次に、1998年に大阪府立公衆衛生研究所と富山医科薬科大学薬学部の共同研究によって報告されたビワ葉エキスのヒアルロニダーゼに対する影響検証によると、

in vitro試験においてヒアルロニダーゼ溶液0.05mLに酵素活性化剤0.1mLと66種類の生薬の水抽出エキスをそれぞれ0.1mL添加し、処理後に気質溶液0.25mLを加え、反応させたのちにヒアルロニダーゼ阻害率を算出した。

また、生薬特有の成分が阻害作用を示したのか生薬中のタンニンが阻害作用を示したのかを検討するために、生薬のタンニン含有量およびタンニン除去後のヒアルロニダーゼ阻害率も合わせて算出したところ、以下の表のように、

水抽出エキス タンニン量(%) ヒアルロニダーゼ阻害率(%)
タンニン含有 タンニン除去
ヨモギ葉エキス 1.25 39 -1
ゲンノショウコ花/葉/茎エキス 2.00 27 15
ゴシュユ果実エキス 0.55 46 39
クチナシ果実エキス 0.05 78 87
シソ葉エキス 1.30 33 25
ドクダミエキス 0.60 63 49
チョウジエキス 2.15 78 35
セイヨウハッカ葉エキス 1.55 48 21
ビワ葉エキス 1.80 44 32
ハトムギ種子エキス 0 50 49

20%以上のヒアルロニダーゼ阻害率を示したのはこれら10種類であり、ビワ葉エキスは44%のヒアルロニダーゼ活性阻害作用を示した。

ビワ葉エキスのタンニン含有時の阻害率は44%、タンニン除去時の阻害率は32%であり、ビワ葉エキスにおいてはタンニン以外の阻害作用をもつ成分の存在が示唆された。

このような試験結果が明らかにされており(文献11:1998)、ビワ葉エキスにヒアルロニダーゼ活性阻害作用が認められています。

さらに、1998年にノエビアによって報告されたビワ葉エキスのヒスタミンおよびアトピー性皮膚炎症状に対する影響検証によると、

ラット由来好塩基球白血病細胞液に各植物抽出物を加えて培養し、ヒスタミンの遊離阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

植物エキスのヒスタミン遊離抑制作用

ビワ葉エキス(50%エタノール抽出)は、90%以上のヒスタミン遊離抑制作用を示した。

次に、アトピー性皮膚炎を有する女性患者18人(17-30歳)の顔に0.5%ビワ葉エキス配合W/O型(油中水型)軟膏を、また比較対照としてビワ葉エキス未配合の軟膏をそれぞれ1日2回(朝夕)2週間にわたって塗布し、2週間後に評価したところ、以下の表のように、

試料 症例数 顕著 有効 やや有効 無効 悪化
ビワ葉エキス配合軟膏 18 4 10 4 0 0
軟膏のみ(比較対照) 15 0 1 3 7 4

0.5%ビワ葉エキス配合軟膏の塗布は、アトピー性皮膚炎の症状改善に有効であることがわかった。

このような試験結果が明らかにされており(文献12:1998)、ビワ葉エキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。

in vitroにおいてヒスタミン遊離抑制作用およびヒアルロニダーゼ活性阻害作用が認められていること、またアトピー性皮膚炎患者の多くに改善傾向がみられたことから、ビワ葉エキスはヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用を有していると考えられます。

SOD様活性による抗酸化作用

SOD様活性による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として皮膚における活性酸素種、活性酸素種の酸化還元反応およびSODの役割について解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O₂)が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり(文献13:2002;文献14:2019)、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O₂)が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(HO)を経て、最終的に水(H₂O)になるというものです(文献15:2019)

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます(文献15:2019)

一方で、紫外線の曝露など(∗2)によりスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を含む活性酸素種の過剰な産生が知られており(文献16:1998)、過剰に産生されたスーパーオキシドはスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によってはヒドロキシルラジカル(HO)まで変化することが知られています。

∗2 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

発生したヒドロキシルラジカル(HO)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します(文献15:2019;文献17:1996;文献18:2013)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後にスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)の活性を増強することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2006年に一丸ファルコスによって報告されたビワ葉エキスの肌荒れへの影響検証によると、

in vitro試験において100%SOD阻害率を測定できるSOD Assay Kit-WSTを用いてビワ葉エキスの活性酸素消去率(SOD活性率)を評価したところ、以下のグラフのように、

ビワ葉エキスのSOD様活性

ビワ葉エキスには活性酸素消去作用(SOD様作用)が観察された。

このことから、ビワ葉エキスは活性酸素消去剤として有用であると考えられた。

次に、乾燥肌やツヤ・ハリのない肌で悩む10人の被検者(25-50歳)の顔面に5%ビワ葉エキスを含む乳液を1日2回(朝晩)洗顔後に3ヶ月にわたって塗布してもらい、対照としてビワ葉エキス未配合乳液を同様に用いた。

評価方法として「有効:肌のツヤ・ハリが増し、乾燥肌・肌荒れが改善された」「やや有効:肌のツヤ・ハリがやや増し、乾燥肌・肌荒れがやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の基準で3ヶ月後に評価したところ、以下の表のように、

試料 皮膚感触に対する評価(人数)
有効 やや有効 無効
ビワ葉エキス配合乳液 5 3 2
乳液のみ(対照) 0 2 8

5%ビワ葉エキス配合乳液の塗布は、未配合乳液と比較して乾燥肌を改善し、肌にツヤ・ハリを付与することが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献19:2006)、ビワ葉エキスにSOD様活性による抗酸化作用が認められています。

コラゲナーゼ活性阻害による抗老化作用

コラゲナーゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造、役割および真皮に存在するタンパク質分解酵素であるコラゲナーゼについて解説します。

真皮については、以下の真皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

真皮の構造

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス)に二分されますが、主成分である間質成分は大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞はその間に散在しています(文献20:2002;文献21:2018)

間質成分の大部分を占めるコラーゲンは、膠質状の太い繊維であり、その繊維内に水分を保持しながら皮膚の張りを支えています(文献20:2002)

このコラーゲンは、Ⅰ型コラーゲン(80-85%)とⅢ型コラーゲン(10-15%)が一定の割合で会合(∗3)することによって構成されており(文献22:1987)、Ⅰ型コラーゲンは皮膚や骨に最も豊富に存在し、強靭性や弾力をもたせたり、組織の構造を支える働きが、Ⅲ型コラーゲンは細い繊維からなり、しなやかさや柔軟性をもたらす働きがあります(文献23:2013)

∗3 会合とは、同種の分子またはイオンが比較的弱い力で数個結合し、一つの分子またはイオンのようにふるまうことをいいます。

エラスチン(elastin)を主な構成成分とする弾性繊維は、皮膚の弾力性をつくりだす繊維であり、コラーゲンとコラーゲンの間に絡み合うように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持しています(文献20:2002)

基質は、主に糖タンパク質(glycoprotein)プロテオグリカン(proteoglycan)およびグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)で構成されたゲル状物質であり、これらの分子が水分を保持し、コラーゲンやエラスチンと結合して繊維を安定化させることにより、皮膚は柔軟性を獲得しています(文献20:2002;文献21:2018)

プロテオグリカンは、軸タンパクにグリコサミノグリカンが多数結合した分子量10万-100万以上の巨大な分子であり、グリコサミノグリカンは酸性ムコ多糖類であるヒアルロン酸コンドロイチン硫酸を主成分とし、ヒアルロン酸は水分保持に関与し、コンドロイチン硫酸は繊維の支持や他の基質の保持に働いています(文献21:2018)

細胞成分として線維芽細胞(fibroblast)は、真皮に分散しており、コラーゲン繊維や弾性繊維、ムコ多糖を産生する細胞であることから、必要に応じて線維芽細胞が活発に働きこれらの物質が順調につくられていることが、皮膚の張りや弾力を維持する上で重要です(文献20:2002)

真皮の働きを要約すると、

  • コラーゲン繊維が水分を保持しながら皮膚の張りを支持
  • エラスチンを主とした弾性繊維がコラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持
  • 基質(ゲル状物質)が水分を保持し、コラーゲン繊維と弾性繊維を安定化

それぞれがこのように働くことで、皮膚は張りや柔軟性・弾性を獲得しています。

一方で、紫外線を浴びる時間や頻度に比例して、間質成分であるコラーゲン、エラスチン、ムコ多糖類への影響が大きくなり、シワの形成促進、色素沈着の増加など老化現象が徐々に進行することが知られています(文献24:2002)

コラーゲンにおいては、UVA曝露によりコラーゲン合成能の減少(文献25:1993)やコラーゲンを特異的に分解する酵素であるコラゲナーゼの産生が促進されることが報告されており(文献26:1993)、このような長期紫外線暴露後の細胞外マトリックス成分の産生・分解系バランスの崩れが光老化の原因であると考えられています(文献27:1998)

このような背景から、紫外線曝露によって線維芽細胞から産生されるコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼの活性を阻害することは、紫外線曝露による光老化の抑制に重要であると考えられます。

2003年に一丸ファルコスによって報告されたビワ葉エキスのコラゲナーゼおよびヒト皮膚への影響検証によると、

in vitro試験において、合成基質0.5mg/mLにコラゲナーゼ0.1mg/mLおよび固形分濃度0.5%に調製した各植物抽出液を添加し、反応および処理後にコラゲナーゼ阻害率を算出したところ、以下の表のように、

試料 コラゲナーゼ活性阻害率(%)
ビワ葉エキス 53.7

ビワ葉エキスはコラゲナーゼ活性を有意に阻害する作用を有することが確認された。

次に、60人の女性被検者(25-50歳)を30人1グループとし、1つのグループには5%ビワ葉エキス配合乳液を1日2回(朝晩)3ヶ月にわたって顔面に塗布してもらい、残りの1つのグループには対照としてビワ葉エキス未配合乳液を同様に塗布してもらった。

3ヶ月後に「有効:肌のハリ・ツヤが増し、シワ・タルミが目立たなくなった」「やや有効:肌のハリ・ツヤがやや増し、シワ・タルミがやや目立たなくなった」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 肌のハリ・ツヤ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
ビワ葉エキス配合乳液 5 22 3
乳液のみ(対照) 0 3 27
試料 肌のシワ・タルミ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
ビワ葉エキス配合乳液 4 24 2
乳液のみ(対照) 0 2 28

ビワ葉エキス配合乳液は、有意に肌にハリ・ツヤを与え、また肌のシワ・タルミを目立たなくすることが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献28:2003)、ビワ葉エキスにコラゲナーゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

ただし、ヒト使用試験においては2003年時点では有効なシワの評価方法が確立されていなかった中での効果確認であるため、その点は留意する必要があります。

POMC発現抑制による色素沈着抑制作用

POMC発現抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびPOMCについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献29:2002;文献30:2016;文献31:2019)

このメラノサイト活性化因子のひとつとしてα-MSH(α-melanocyte-stimulating hormone:メラノサイト刺激ホルモン)が知られており、α-MSHはメラノサイト増殖作用およびチロシナーゼ合成促進作用が認められていますが(文献30:2016)、α-MSHは紫外線の曝露により角化細胞で発現が増加するポリペプチド前駆体であるPOMC(Pro-opiomelanocortin:プロオピオメラノコルチン)から産生されることが明らかにされています(文献32:1994)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献29:2002;文献31:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献29:2002;文献31:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献29:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献29:2002)

このような背景から、POMCの発現を抑制してα-MSHの産生を阻害することでメラニンの生合成を阻害することは、色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

2014年に一丸ファルコスによって報告されたビワ葉エキスのPOMCおよびヒト皮膚色素沈着に対する影響検証によると、

in vitro試験においてヒト正常表皮細胞を播種した培養液に0.5%ビワ葉エキス抽出液(50%BG抽出)を添加し、また比較試料としてドクダミエキスを添加した24時間後に紫外線(6.0mJ)を照射し、POMC遺伝子の発現量を測定後POMC発現抑制率を算出したところ、以下のグラフのように、

ビワ葉エキスのPOMC発現抑制作用

0.5%ビワ葉エキスは、POMCの発現を抑制することを確認した。

次に、シミ・ソバカスで悩む40人の女性被検者(30-60歳)のうち20人に5%ビワ葉エキス配合乳液を、残りの20人に未配合乳液を1日2回(朝夕)3ヶ月にわたって顔面に塗布してもらった。

3ヶ月後にシミ・ソバカスの改善効果を「有効:シミ・ソバカスが軽減した」「やや有効:シミ・ソバカスがやや軽減した」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 有効 やや有効 無効
ビワ葉エキス配合乳液 20 3 15 2
乳液のみ(対照) 20 0 4 16

5%ビワ葉エキス配合乳液塗布群は、未配合乳液塗布群と比較してシミまたはソバカスの改善効果が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献33:2014)、ビワ葉エキスにPOMC発現抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

ビワ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ビワ葉エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献1:1996)によると、

  • [動物試験] 5匹のモルモットの除毛した皮膚に固形分濃度0.01%-2.0%ビワ葉エキスを24時間貼付し、紅斑および浮腫を指標として一次刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも皮膚反応を示さず、この試験物質は陰性であった
  • [動物試験] 5匹のモルモットの除毛した皮膚に固形分濃度1%ビワ葉エキスを1日1回週5回、4週間にわたって塗布し、各週の最終日の翌日に紅斑および浮腫を指標として累積刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも1-4週にわたって皮膚刺激反応を示さず、この試験物質は陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚一次刺激および累積刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ビワ葉エキスは抗アレルギー成分、抗酸化成分、抗老化成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗アレルギー成分 抗酸化成分 抗老化成分 美白成分

∗∗∗

参考文献:

  1. 一丸ファルコス株式会社(1996)「皮膚外用剤および浴用剤」特開平08-073314.
  2. 鈴木 洋(2011)「琵琶葉(びわよう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,410.
  3. 竹田 忠紘, 他(2011)「ビワヨウ」天然医薬資源学 第5版,229-230.
  4. 御影 雅幸(2013)「ビワヨウ」伝統医薬学・生薬学,182.
  5. 根本 幸夫(2016)「枇杷葉(ビワヨウ)」漢方294処方生薬解説 その基礎から運用まで,230.
  6. 厚生労働省(2010)「アレルギー総論」リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト5-14.
  7. R.R.A. Coombs, et al(1968)「Classification of Allergic Reactions Responsible for Clinical Hypersensitivity and Disease」Clinical Aspects of Immunology Second Edition,575-596.
  8. 西部 幸修, 他(1999)「植物抽出物の抗アレルギー作用」Fragrance Journal臨時増刊(16),109-115.
  9. 椛島 健治(2009)「皮膚のスーパー免疫」美容皮膚科学 改定2版,46-51.
  10. 小砂 憲一(1994)「シソの抗アレルギー成分について」日本化粧品技術者会誌(27)(4),604-607.
  11. 沢辺 善之, 他(1998)「生薬の皮膚関連酵素に対する阻害作用」YAKUGAKU ZASSHI(118)(9),423-429.
  12. 株式会社ノエビア(1998)「抗アレルギー剤及びこれを含有する抗アレルギー性化粧料並びに食品」特開平10-36276.
  13. 朝田 康夫(2002)「活性酸素とは何か」美容皮膚科学事典,153-154.
  14. 河野 雅弘, 他(2019)「活性酸素種とは」抗酸化の科学,XⅢ-XⅣ.
  15. 小澤 俊彦(2019)「活性酸素種および活性窒素種の発生系」抗酸化の科学,123-138.
  16. 荒金 久美(1998)「光と皮膚」ファルマシア(34)(1),30-33.
  17. 花田 勝美(1996)「活性酸素・フリーラジカルは皮膚でどのようにつくられるか」皮膚の老化と活性酸素・フリーラジカル,15-35.
  18. 小林 枝里, 他(2013)「表皮の酸化ストレスとその防御機構」Fragrance Journal(41)(2),16-21.
  19. 一丸ファルコス株式会社(2006)「活性酸素消去剤」特開2006-117612.
  20. 朝田 康夫(2002)「真皮のしくみと働き」美容皮膚科学事典,28-33.
  21. 清水 宏(2018)「真皮」あたらしい皮膚科学 第3版,13-20.
  22. D.R. Keene, et al(1987)「Type Ⅲ collagen can be present on banded collagen fibrils regardless of fibril diameter」Journal of Cell Biology(105)(5),2393–2402.
  23. 村上 祐子, 他(2013)「加齢にともなうⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の減少メカニズム」日本化粧品技術者会誌(47)(4),278-284.
  24. 朝田 康夫(2002)「急性と慢性の皮膚障害とは」美容皮膚科学事典,195.
  25. H. Tanaka, et al(1993)「The effect of reactive oxygen species on the biosynthesis of collagen and glycosaminoglycans in cultured human dermal fibroblasts」Archives of Dermatological Research(285)(6),352–355.
  26. G. Herrmann, et al(1993)「UVA irradiation stimulates the synthesis of various matrix‐metalloproteinases (MMPs) in cultured human fibroblasts」Experimental Dermatology(2)(2),92-97.
  27. 大林 恵, 他(1998)「植物抽出物の細胞外マトリックス分解酵素に対する阻害作用」日本化粧品技術者会誌(32)(3),272-279.
  28. 一丸ファルコス株式会社(2003)「コラゲナーゼ活性阻害剤」特開2003-183122.
  29. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  30. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  31. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  32. X. Bertagna(1994)「Proopiomelanocortin-derived peptides」Endocrinology & Metabolism Clinics of North America(23)(3),467-485.
  33. 一丸ファルコス株式会社(2014)「プロオピオメラノコルチン発現抑制剤」特開2014-114241.

TOPへ