ビサボロールとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 防腐
ビサボロール
[化粧品成分表示名称]
・ビサボロール

[医薬部外品表示名称]
・ビサボロール

ここで解説するのはα-ビサボロールです。

キク科植物カモミール(学名:Matricaria recutita 英名:German chamomile)に多量に含まれる、化学構造的に不斉炭素原子(∗1)を2個もつイソプレンユニット(C5ユニット)が3個結合したテルペノイド化合物(∗2)であり、セスキテルペン(∗3)に分類されるローズ様の花香調香気を有した分子量222.37の単環式セスキテルペンアルコール(∗4)です(文献2:2020)

∗1 1分子中の炭素原子(C)に互いに異なる4個の原子または原子団が結合しているとき、この炭素原子を不斉炭素原子といいます。

∗2 二重結合をもち炭素数5個(C5)を分子構造とするイソプレンを分子構造単位(イソプレンユニット)とし、イソプレンが直鎖状に複数個(C5×n個)連結した後に環化や酸化など種々の修飾を経て生成する化合物のことです(文献3:2017)。多くのテルペノイドは疎水性であり、ビサボロールもまた疎水性です。イソプレン単体(C5)の場合はイソプレンまたはテルペンと呼ばれますが、イソプレンが2個以上連なった場合(C5×2個以上)は複数形としてテルペノイド(イソプレノイド)と呼ばれます。

∗3 イソプレン(C5)ユニットが3個連結した炭素数15個(C5×3)のテルペノイド化合物です(文献4:2017)。

∗4 セスキテルペン構造に官能基としてヒドロキシ基(水酸基:-OH)が結合した化合物の総称です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ボディ&スキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品、シャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、頭皮ケア製品、シート&マスク製品、クレンジング製品、ボディソープ製品など様々な製品に汎用されています。

抗炎症作用

抗炎症作用に関しては、ビサボロールは様々な試験により医薬品外用剤として抗炎症作用・炎症治癒作用が認められており(文献5:1979;文献6:1984)、化粧品においても定められた配合制限範囲内において穏やかな抗炎症作用を有していると考えられます。

このような背景から、肌荒れを防ぎ、皮膚の健常性を保つ目的でスキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品、シャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、頭皮ケア製品、シート&マスク製品、クレンジング製品、ボディソープ製品など様々な製品に汎用されています。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の抗菌・防腐作用に関しては、ビサボロールは黄色ブドウ球菌や枯草菌などのグラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌に中程度の抗菌活性を有していることが立証されており(文献7:1991;文献8:2007)、製品自体の変質を防ぐ目的で様々な製品に使用されています(文献9:2012)

ビサボロールは医薬品成分であり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 1.2000
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 1.2000
粘膜に使用されることがある化粧品 0.7905

ビサボロールは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 1.0
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.30
薬用口唇類 0.30
薬用歯みがき類 0.30
浴用剤 0.30

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の1995-1996年および2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ビサボロールの配合製品数と配合量の比較調査

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ビサボロールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ビサボロールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.1%ビサボロールを含む製品を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された(Ivey Laboratories,1992)
  • [ヒト試験] 1-20人の被検者に5%ビサボロールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された(DeGroot,1994)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して非刺激と報告されていることから、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.1%ビサボロールを含む製品を対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も感作反応を示さなかった(Ivey Laboratories,1992)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作なしと報告されていることから、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1999)によると、

  • [動物試験] 5匹のモルモットに3%および15%ビサボロールを含むエタノールを塗布し、塗布後65cmの距離で240-540nmのUVライトを15分間5日連続で照射した。9日間の無処置期間を経てさらに2日間連続してこのプロトコルを繰り返した。次に12日間の無処置期間の後肢を剃毛し市販の石けん溶液をすべてのモルモットの右足に適用し、3%および15%ビサボロールを含む石鹸溶液を左足に適用した後照射する手順を3日間繰り返した。これらの結果、ビサボロールで処理したモルモットに光感作の誘発は認められなかった(BASF,1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作なしと報告されていることから、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ビサボロールは抗炎症成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1999)「Final Report on the Safety Assessment of Bisabolol」International Journal of Toxicology(18)(3_Suppl),33-40.
  2. “Pubchem”(2020)「Bisabolol」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Bisabolol> 2020年4月27日アクセス.
  3. 池田 剛(2017)「テルペノイド」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,120-124.
  4. 池田 剛(2017)「セスキテルペン」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,127-131.
  5. I. Szelenyi, et al(1979)「Pharmakologische Untersuchungen von Kamillen–Inhaltsstoffen – Ⅲ. Tierexperimentelle Untersuchungen über die ulkusprotektive Wirkung der Kamille」Planta Medica(35)(3)218-227.
  6. A. Tubaro, et al(1984)「Evaluation of Antiinflammatory Activity of a Chamomile Extract after Topical Application」Planta Medica(50)(4),359.
  7. B. kedzia, et al(1991)「Antimicrobial activity of chamomile oil and its components」Herba Polonica(37),29-38.
  8. 霜川 忠正(2007)「カミツレエキス」化粧品有効成分ハンドブック,263-265.
  9. 鈴木 一成(2012)「ビサボロール」化粧品成分用語事典2012,412.

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