ハイビスカス花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗アレルギー 紫外線吸収
ハイビスカス花エキス
[化粧品成分表示名称]
・ハイビスカス花エキス

アオイ科植物ローゼル(学名:Hibiscus sabdariffa 英名:Roselle)の花からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ローゼル(Roselle)は、南アジア(インドからマレーシア)またはアフリカ北西部を原産とし、16世紀にアメリカ大陸に伝わり南北アメリカに適応したことをきっかけに17世紀にはカリブ諸島や中南米で栽培されはじめ、現在ではエジプト、スーダン、中国など世界各地の熱帯で栽培されています(文献1:2014;文献2:2018;文献3:2016)

ハイビスカス花エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
その他 粘液質
有機酸 クエン酸リンゴ酸、ハイビスカス酸
ビタミン アスコルビン酸
フラボノイド ハイビスシン など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献2:2018;文献3:2016)

ローゼルの花の化粧品以外の主な用途としては、飲料分野において体内のエネルギー代謝や新陳代謝を高め爽やかな酸味を有し鮮やかなルビー色を呈することからハーブティー(ハイビスカスティー)として世界各地で愛飲されています(文献1:2014;文献3:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、日焼け止め製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、ボディ石鹸、入浴剤など様々な製品に使用されています。

ヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗1)(文献4:2010;文献5:1968;文献6:1999)

∗1 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献6:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献6:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献6:1999;文献7:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、アレルゲンの曝露からⅠ型炎症までのプロセスにおけるいずれかのポイントにアプローチすることは、アレルギー性炎症の抑制において重要であると考えられています。

1997年に一丸ファルコスによって報告されたハイビスカス花エキスのヒスタミン、ヒアルロニダーゼおよび肌荒れに対する影響検証によると、

in vitro試験においてラット由来肥満細胞浮遊液1.2mLに固形分濃度0.0002%,0.001%および0.01%となるように調整したハイビスカス花エキス(30%エタノール抽出)水溶液0.2mLまたは比較としてグリチルリチン酸ジカリウム水溶液、ヒスタミン放出促進剤であるcompound48/80溶液を最終濃度1μg/mLとなるように加え、培養後に上澄から遊離したヒスタミンを抽出・精製し吸光度を測定しヒスタミン遊離抑制率を算出したところ、以下の表のように、

ハイビスカス花エキスのヒスタミン遊離抑制作用

ハイビスカス花エキスは、グリチルリチン酸ジカリウムと比較して非常に優れたヒスタミン遊離抑制作用を示した。

次に、in vitro試験において固形分濃度0.5%ハイビスカス花エキス水溶液または陽性対照として同濃度のグリチルリチン酸ジカリウム水溶液それぞれ0.1mLに、0.4mg/mL濃度のヒアルロニダーゼ溶液0.05mLを加え、その後にヒスタミン放出促進剤であるcompound48/80溶液を最終濃度0.1mg/mLとなるように加え、20分の放置後にさらに0.4mg/mL濃度のヒアルロン酸溶液0.25mLを加えて処理した後に吸光度を測定しヒアルロニダーゼ活性阻害率を算出したところ、以下の表のように、

ハイビスカス花エキスのヒアルロニダーゼ活性阻害作用

ハイビスカス花エキスは、抗アレルギー剤としてひろく知られているグリチルリチン酸ジカリウムと同程度のヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認された。

次に、頭皮や髪の生え際に湿疹、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患がみられる20人の被検者(20-30歳)のうち10人に5%ハイビスカス花エキス(30%エタノール抽出)配合ヘアトニックを、別の10人に対照としてハイビスカス花エキス未配合ヘアトニックを毎日洗髪後の頭皮に1ヶ月にわたって塗布してもらった。

また、乾燥ぎみの肌や湿疹、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患で悩む40人(0-45歳)の被検者のうち20人に固形分濃度10%ハイビスカス花エキス(30%エタノール抽出)配合浴用剤を、別の20人に対照としてハイビスカス花エキス未配合浴用剤をそれぞれ溶解させた浴場に1日1回1ヶ月にわたって入浴してもらった。

それぞれ1ヶ月後に「有効:湿疹などの炎症に伴う赤みやかゆみ、肌荒れが改善された」「やや有効:湿疹などの炎症に伴う赤みやかゆみ、肌荒れがやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 有効 やや有効 無効
ハイビスカス花エキス配合ヘアトニック 10 3 6 1
ヘアトニックのみ(対照) 10 0 2 8
ハイビスカス花エキス配合浴用剤 20 13 7 0
浴用剤のみ(対照) 20 1 9 10

ハイビスカス花エキス配合製剤の適用により、湿疹、アトピー性皮膚炎、肌荒れなどの皮膚・頭皮疾患に対して改善効果が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献8:1997)、ハイビスカス花エキスにヒスタミン遊離抑制およびヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用が認められています。

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗2)

∗2 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています(文献9:2002;文献10:2002;文献11:1997)

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため(文献12:2016)、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

1999年にカネボウによって報告されたハイビスカス花エキスの紫外線吸収波長領域データによると、以下の表のように、

ハイビスカス花エキスの紫外線吸収波長

285nmに吸収極大をもつことが明らかにされており(文献13:1999)、ハイビスカス花エキス(50%エタノール抽出)にUVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用が認められています。

ただし、一般的には他の紫外線吸収剤を補助する目的で他の紫外線吸収剤と併用して日焼け止め製品などに使用されます(文献13:1999)

ハイビスカス花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ハイビスカス花エキスの現時点での安全性は、

  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献8:1997)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの除毛した背部に乾燥固形分濃度20%ハイビスカス花エキス水溶液を塗布し、塗布24,48および72時間後に一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 5匹のモルモットの除毛した側腹部に乾燥固形分濃度20%ハイビスカス花エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、4週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも4週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ハイビスカス花エキスは抗アレルギー成分、紫外線防御成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗アレルギー成分 紫外線防御成分

∗∗∗

参考文献:

  1. レベッカ ジョンソン, 他(2014)「ハイビスカス」メディカルハーブ事典,127-129.
  2. ジャパンハーブソサエティー(2018)「ローゼル」ハーブのすべてがわかる事典,217.
  3. 林 真一郎(2016)「ハイビスカス」メディカルハーブの事典 改定新版,112-113.
  4. 厚生労働省(2010)「アレルギー総論」リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト5-14.
  5. R.R.A. Coombs, et al(1968)「Classification of Allergic Reactions Responsible for Clinical Hypersensitivity and Disease」Clinical Aspects of Immunology Second Edition,575-596.
  6. 西部 幸修, 他(1999)「植物抽出物の抗アレルギー作用」Fragrance Journal臨時増刊(16),109-115.
  7. 椛島 健治(2009)「皮膚のスーパー免疫」美容皮膚科学 改定2版,46-51.
  8. 一丸ファルコス株式会社(1997)「皮膚外用剤及び浴用剤」特開平09-087188.
  9. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  10. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  11. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13.
  12. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」, <http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_sitedata/graph01.html> 2021年4月5日アクセス.
  13. カネボウ株式会社(1999)「紫外線防御化粧料」特開平11-349469.

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