トコフェリルリン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 バリア機能 保湿成分
トコフェリルリン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・トコフェリルリン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウム

[慣用名]
・VEP、TPNa

2004年に日本メナード化粧品により医薬部外品承認された成分で、もともと油性であるビタミンE(トコフェロール)を水溶性であるリン酸でエステル化することで安定性と親水性を付与してナトリウム塩とした最初の両親媒性(∗1)ビタミンE誘導体です。

∗1 両親媒性とは水にも油にも溶ける性質のことです。

トコフェロールは、水に溶けにくく、水中で不安定なため分解しやすく、化粧水や美容液に高濃度で配合することが難しいという欠点も持ち合わせていましたが、この欠点を解消したのがトコフェリルリン酸Naであり、この成分は皮膚適用時に皮内のフォスファターゼ酵素の作用によりトコフェロールに代謝されて、トコフェロールの効果を示します。

皮膚に対するトコフェロールの主な作用は活性酸素除去に代表される抗酸化作用であり、トコフェリルリン酸Naの本質的な作用もトコフェロールによる活性酸素除去作用となります。

ただし、活性酸素除去作用を基本としていますが、トコフェロールよりも皮膚に浸透し高い効果が得られるため、紫外線による急性皮膚障害である過酸化脂質の増大や水分保持機能低下による肌荒れ、紅斑などを抑制・防止する効果が期待できます(文献2:2006)

紫外線による肌荒れは、紫外線がバリア機能を低下させ、さらに以下の肌図にある表皮顆粒層の細胞とタイトジャンクション(∗1)の発現を低下させることで起こりますが、トコフェリルリン酸Naはタイトジャンクションの発現を正常レベルまで回復させる作用が明らかになっています(文献2:2006)

∗1 タイトジャンクションは顆粒細胞どうしをくっつけて顆粒層から上層への水分蒸散を防ぐ役割をしています。

肌図 - タイトジャンクションの解説

タイトジャンクションの回復は、そのままバリア機能の回復につながるため、トコフェリルリン酸Naにはバリア機能向上効果が認められており、バリア機能の向上はそのまま肌荒れ防止作用につながっています(文献2:2006)

また、メナード化粧品株式会社総合研究所の以下のヒト使用試験によると、

ニキビの症状を有する被検者またはニキビができやすい被検者合計10人に2%トコフェリルリン酸Na配合化粧水を用いたハーフフェイス試験において、各被検者の顔半分にトコフェリルリン酸Na配合化粧水を適用し、残りの顔半分にコントロール化粧水(トコフェリルリン酸Naを配合していない化粧水)を適用し、1日2回1ヶ月にわたって使用してもらい、評価はアクネ菌数および炎症性ニキビの個数で行った。

その結果、トコフェリルリン酸Na配合化粧水の4週間にわたる使用によって、以下のグラフのようにアクネ菌数は有意に減少した。

トコフェリルリン酸Na配合化粧水によるアクネ菌数の影響

また、炎症ニキビの個数に対してはトコフェリルリン酸Na配合化粧水の4週間にわたる使用によって、以下の表のように、改善が認められた。

トコフェリルリン酸Na配合化粧水による炎症性ニキビの個数への影響

これらの結果によりトコフェリルリン酸Na配合化粧水はニキビの予防および改善に対して有効と考えられた。

トコフェリルリン酸Naはアクネ菌の中でも思春期ニキビの原因といわれているJCM6425に対して高い抗菌性を示すことが明らかとなっており、ニキビの予防および改善に対して有効だと考えられます(文献3:2007)

化粧品に配合される場合は、肌荒れを防ぐ化粧品、ニキビ用化粧品、エイジングケア化粧品、血色をよくしてクスミを改善する化粧品など広範囲に使用されますが、化粧水、美容液、ジェルなど水溶性の基剤が多いです。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

トコフェリルリン酸Naの配合製品数と配合量の調査(2013年)

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トコフェリルリン酸Naの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

トコフェリルリン酸Naの現時点での安全性は、皮膚一次刺激性はほとんどありませんが、連続使用で軽度の刺激性が起こる可能性があり、眼刺激性は最小限の刺激性が起こる可能性がありますが、アレルギー(皮膚感作)の報告はなく、光毒性および光感作性の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

なお、トコフェリルリン酸Naの製品への配合量は非公開のため、安全性試験でも濃度は非公開となっており、伏せ字として●で記載しています。

皮膚刺激性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2004)によると、

  • [ヒト試験] 40人の被検者を対象とした閉塞パッチ試験において、トコフェリルリン酸Na●%溶液および申請製品の未希釈物は陽性反応は認められず、ヒト皮膚刺激性は弱いと判断された
  • [動物試験] ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験においてトコフェリルリン酸Na●%および●%濃度溶液を24時間閉塞パッチ適用したときの皮膚一次刺激スコアはいずれも0で無刺激性と評価され、皮膚一次刺激性は認められなかった
  • [動物試験] ウサギを用いた連続皮膚刺激性試験においてトコフェリルリン酸Na●%溶液を2週間にわたって1日1回、週5回解放適用したところ●%濃度では0~1.0(無刺激~軽度の刺激)、●%では0.7~1.3(無刺激)、1.0~1.3(軽度の刺激)で、軽度の刺激性と判定され、連続皮膚刺激性は軽度であると判断された

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、共通して5%未満の濃度において皮膚刺激および皮膚感作なしと結論づけられているため、5%未満の濃度において皮膚刺激性や皮膚感作(アレルギー)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2004)によると、

  • [動物試験] 眼刺激性試験(無洗眼)において、トコフェリルリン酸Na●%および●%溶液の眼刺激スコアは●%で3.3、●%で5.7でいずれも最小の刺激性と判定され、最小限の眼刺激性と判断された

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、最小限の眼刺激性と報告されているため、眼刺激性は最小限の刺激性であると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2004)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた皮膚感作性試験(Adjuvant and Parch法 一次感作:●%24時間閉塞、二次感作●%48時間閉塞、惹起●%24時間閉塞)について、試験物質投与群2例で24時間後にごく軽度の紅斑が認められたが48時間後に消失し、平均評価点および陽性率は溶媒対照と有意差がないことから、皮膚感作性ではないと判断された

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、皮膚感作(アレルギー)の報告はなく、また2004年以降の使用実績においても重大な皮膚感作の報告はないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

医薬品医療機器総合機構の審議結果報告書(文献1:2004)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた光毒性試験においてトコフェリルリン酸Na●%溶液の光毒性は認められてなかった
  • [動物試験] モルモットを用いた光感作性試験(Adjuvant-Strip法 感作:●%塗布、惹起●%塗布)について、トコフェリルリン酸Na●%溶液に光感作性は認められなかった

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、光毒性および光感作性の報告はないため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
トコフェリルリン酸Na 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、トコフェリルリン酸Naは毒性なし(∗3)となっており、安全性に問題ないと考えられます。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

トコフェリルリン酸Naは抗炎症成分、保湿成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 医薬品医療機器総合機構(2004)「審査報告書 メナード 薬用オキシコントローラー」, <https://cosmetic-ingredients.org/ref/2004_sodium-tocopheryl-phosphate.pdf> 2018年3月18日アクセス.
  2. 大森 敬之,中間 満雄(2006)「dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムの肌荒れ防止メカニズム」Fragrance Journal(34)(10),p30-34.
  3. 赤座 誠文(2007)「DL-α-トコフェリルリン酸ナトリウムはアクネの主要菌を制御する」Fragrance Journal(35)(5),p25-29.

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