ソメイヨシノ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗アレルギー
ソメイヨシノ葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・ソメイヨシノ葉エキス

[医薬部外品表示名称]
・サクラ葉抽出液

バラ科植物サクラの栽培品種であるソメイヨシノ(学名:Cerasus yedoensis = Prunus Yedoensis)の葉からエタノールBGで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ソメイヨシノ(染井吉野)は、日本固有種であるオオシマザクラとエドヒガンの雑種とする交配で生まれた日本産の栽培品種のサクラであり、現代においては観賞用サクラの代表種として日本各地に普及しています(文献2:2014;文献3:2017)

ソメイヨシノ葉エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド イソフラボノイド プルネチン、プルネトリン
フラボノール イソケルシトリン
フェニルプロパノイド クロロゲン酸、メリロートシド、クマリン配糖体(∗1)

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献4:2006;文献5:1968;文献6:2011)

∗1 クマリン配糖体は「o-coumaric acid β-D-glucoside」であり、フェニルプロパノイドであるメリロートシドと同一構造であることから(文献5:1968)、フェニルプロパノイドに分類しています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、頭皮ケア製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

また、サクラをコンセプトにした製品にも配合されています。

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用

ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗2)(文献7:2010;文献8:1968;文献9:1999)

∗2 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献9:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献9:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献9:1999;文献10:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、アレルゲンの曝露からⅠ型炎症までのプロセスにおけるいずれかのポイントにアプローチすることは、アレルギー性炎症の抑制において重要であると考えられています。

1996年に一丸ファルコスによって報告されたソメイヨシノ葉エキスのヒスタミンに対する影響検証によると、

in vitro試験においてラット由来肥満細胞浮遊液3mLに固形分濃度0.1%ソメイヨシノ葉水溶液、また陽性対照として0.1%濃度に調製した桜皮水溶液とグリチルリチン酸ジカリウム水溶液それぞれ0.5mLを添加し、ヒスタミン放出促進剤であるcompound48/80溶液を加えて処理した後に、遊離したヒスタミン量を測定しヒスタミン遊離抑制率を算出したところ、以下のグラフのように、

抽出植物 ヒスタミン遊離抑制率(%)
ソメイヨシノ葉抽出液 98.2
桜皮抽出液 40.5
グリチルリチン酸ジカリウム水溶液 12.5

サクラ葉エキスは、98.2%のヒスタミン遊離抑制作用を示した。

次に、湿疹またはアトピー性皮膚炎を有する被検者10人(20-30歳)の顔に5%(固形分1.5%)ソメイヨシノ葉30%エタノール抽出液配合乳液を、また比較対照としてソメイヨシノ葉抽出液未配合乳液をそれぞれ1日2回(朝夕)2ヶ月にわたって塗布し、2ヶ月後に「有効:湿疹など炎症に伴う赤みやかゆみが改善された」「やや有効:湿疹など炎症に伴う赤みやかゆみがやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 症例数 有効 やや有効 無効
ソメイヨシノ葉エキス配合乳液 10 3 6 1
乳液のみ(比較対照) 0 2 8

5%ソメイヨシノ葉エキス配合乳液の塗布は、湿疹やアトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに対して良好な効果が確認された。

同様に、頭皮や髪の生え際に湿疹またはアトピー性皮膚炎を有する被検者10人(20-30歳)の洗髪後頭皮に5%(固形分1.8%)ソメイヨシノ葉エキス配合ヘアトニックを、また比較対照としてソメイヨシノ葉エキス未配合ヘアトニックを2ヶ月にわたって塗布し、2ヶ月後に「有効:湿疹など炎症に伴う赤みやかゆみが改善された」「やや有効:湿疹など炎症に伴う赤みやかゆみがやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 症例数 有効 やや有効 無効
ソメイヨシノ葉エキス配合ヘアトニック 10 2 6 2
ヘアトニックのみ(比較対照) 0 1 9

5%ソメイヨシノ葉エキス配合ヘアトニックの頭皮への塗布は、頭皮の湿疹やアトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに対して良好な効果が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献1:1996)、ソメイヨシノ葉エキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。

ソメイヨシノ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ソメイヨシノ葉エキスの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献1:1996)によると、

  • [動物試験] 5匹のモルモットの除毛した皮膚に固形分濃度0.01%-2.0%ソメイヨシノ葉エキスを24時間貼付し、紅斑および浮腫を指標として一次刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも皮膚反応を示さず、この試験物質は陰性であった
  • [動物試験] 5匹のモルモットの除毛した皮膚に固形分濃度1%ソメイヨシノ葉エキス水溶液を1日1回週5回、4週間にわたって塗布し、各週の最終日の翌日に紅斑および浮腫を指標として累積刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも1-4週にわたって皮膚刺激反応を示さず、この試験物質は陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚一次刺激および累積刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ソメイヨシノ葉エキスは抗アレルギー成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗アレルギー成分

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参考文献:

  1. 一丸ファルコス株式会社(1996)「皮膚外用剤及び浴用剤」特開平8-245409.
  2. 池谷 祐幸(2014)「桜の観賞と栽培の歴史 -野生種から栽培品種への道-」森林科学(70),3-7.
  3. 森林総合研究所(2017)「‘染井吉野’など、サクラ種間雑種の親種の組み合わせによる正しい学名を確立」, <http://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2017/20170118/index.html> 2018年11月20日アクセス.
  4. 一丸ファルコス株式会社(2006)「SAKURA Extract B」技術資料.
  5. 高石 清和(1968)「サクラの葉のクマリン成分の研究」YAKUGAKU ZASSHI(88)(11),1467-1471.
  6. 井之上 浩一, 他(2011)「オンラインHPLC/DPPHラジカル消去活性試験法及び高速向流クロマトグラフィーによるサクラ葉中の抗酸化物質の単離」日本食品化学学会誌(18)(2),71-76.
  7. 厚生労働省(2010)「アレルギー総論」リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト5-14.
  8. R.R.A. Coombs, et al(1968)「Classification of Allergic Reactions Responsible for Clinical Hypersensitivity and Disease」Clinical Aspects of Immunology Second Edition,575-596.
  9. 西部 幸修, 他(1999)「植物抽出物の抗アレルギー作用」Fragrance Journal臨時増刊(16),109-115.
  10. 椛島 健治(2009)「皮膚のスーパー免疫」美容皮膚科学 改定2版,46-51.

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