セイヨウノコギリソウエキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 抗酸化成分 抗老化成分
セイヨウノコギリソウエキス
[化粧品成分表示名称]
・セイヨウノコギリソウエキス

[医薬部外品表示名称]
・セイヨウノコギリソウエキス

キク科植物セイヨウノコギリソウ(学名:Achillea millefolium 英名:Yarrow)の全草(花、葉、茎)からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)ペンチレングリコールまたはこれらの混合で抽出して得られるエキスです。

セイヨウノコギリソウエキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • アルカロイド
  • セスキテルペン
  • 精油:アズレン、α-ピネン、リモネン、カンファー

などで構成されています(文献3:2006;文献4:2018)

セイヨウノコギリソウの学名であるアキレア(Achilea)は、ギリシャ神話で、戦いで受けた傷をこのハーブで癒やしたとされるアキレスに由来しており、北米の先住民のチェロキー族はセイヨウノコギリソウの浸剤や煎剤を風邪や胃腸の症状に用いた歴史が残されています(文献5:2011)

薬理作用としては、ドイツのコミッションEモノグラフでは鎮痙、利胆、収れん、抗菌作用が認められており、またイギリスのハーブ薬局方では発汗、消炎、止血、通経作用が認められており、外用では消炎作用と抗菌作用を活かして治りにくい傷や皮膚の炎症への局所的な使用が認められています(文献5:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、ヘアケア製品、マスクなどに使用されます(文献3:2006;文献7:2002)

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とエラスチンおよびエラスターゼについて解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献8:2002)

エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素であり、通常はエラスチンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとエラスターゼが活性化し、エラスチンの分解が促進されることでエラスチンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。

このような背景から、皮膚のハリ・弾力を維持するエラスチンの変性を防止をするためにエラスターゼの活性を抑制することは重要であると考えられます。

2002年に一丸ファルコスによって公開された技術情報によると、

エラスターゼ活性阻害作用がある有用な植物の開発をテーマとし、探索したところ、ウコン、セイヨウノコギリソウ、ゼニアオイタイム、ヤーコン、ローズヒップにエラスターゼの活性抑制効果を見出した。

invitro試験において膵臓由来エラスターゼおよび合成基質N-succinyl-ala-ala-ala-p-nitroanildeを用いて各植物抽出物を0.01%濃度で添加し、また比較対照としてグリチルリチン酸ジカリウムを用いて評価したところ、以下のグラフのように、

各植物抽出物のエラスターゼ活性阻害作用

0.01%セイヨウノコギリソウ抽出物は、エラスターゼ活性を抑制することが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2002)、セイヨウノコギリソウエキスにエラスターゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

セイヨウノコギリソウエキスの配合製品数と配合量の調査結果(2016年)

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セイヨウノコギリソウエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

セイヨウノコギリソウエキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、皮膚刺激性および眼刺激性はほとんどなく、皮膚感作性(アレルギー性)および光毒性の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの「Final Report on the Safety Assessment of Yarrow (Achillea Millefolium) Extract」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に2%セイヨウノコギリソウエキス0.5%を含むシャンプー製剤を単一閉塞パッチ適用したところ、一次刺激スコアは最大8のうち0.25であり、対照製剤との間に有意な刺激性の差は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991a)
  • [ヒト試験] 2%セイヨウノコギリソウエキス0.1%を含むフェイスクリーム製剤の累積刺激性試験においてpH4.45の2つの製剤を閉塞パッチ適用したところ、一次刺激スコアは0.39および0.24であり、どちらも許容範囲内の刺激性を示した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991b)
  • [ヒト試験] 16人の被検者に1%セイヨウノコギリソウエキスを含むワセリンを国際標準皮膚炎研究グループ(ICDRG)の方法に従って24時間適用し、試験部位を20分後および1,48および96時間後に皮膚反応を評価したところ、16人のうち4人に対して陽性反応を示した。花粉そのものでは15人のうち1人に陽性反応が観察された(Wrangsjo Ros and Wahlberg,1990)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に2%セイヨウノコギリソウエキス0.1%を含むフェイスクリーム0.1gを予備試験として48時間閉塞パッチ適用したところ、刺激性ではなかった。次いで各被検者の上部外側腕に前処理として0.1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に試験物質0.1gを48~72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に刺激性を評価した。刺激が観察されなかった場合、同様にラウリル硫酸ナトリウムで前処理した後に試験物質を適用するという手順を合計5回繰り返した。次いで10日間の休息期間の後に反対の腕に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去1および24時間後に皮膚反応を評価したところ、2%セイヨウノコギリソウエキス0.1%を含む製剤は皮膚感作剤ではなかった(Ivy Laboratories,1991)
  • [ヒト試験] 3,851人の患者の背中に5年間にわたって1%セイヨウノコギリソウエキスおよび他のキク科植物から成る混合物を国際標準皮膚炎研究グループ(ICDRG)の方法に従って24時間適用し、皮膚反応を評価した。陽性反応が観察された場合、個々の抽出物を1週間後に試験した。118人の患者がこの試験物質に陽性反応を示し、これらのうち33人は職業的にこの過敏症を罹患していることが判明した。個々の抽出物を用いて試験した85人のうち45人の被検者がセイヨウノコギリソウエキスに陽性反応を示した(Hausen,1996)

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Achillea millefolium as Used in Cosmetics」(文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] アトピー性皮膚炎を有した9人の患者に1%セイヨウノコギリソウエキスを含むワセリンをFinn Chamberパッチ適用し、2日目および3日目に試験部位を観察したところ、いずれの患者にも陽性反応はみられなかった(ovanovic M, Poljacki M, Duran V, Vujanovic L, Sente R, Stojanovic S,2004)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に0.00045%セイヨウノコギリソウエキスを含む保湿剤を誘導期間およびチャレンジ期間において閉塞パッチ適用した(HRIPT)ところ、誘導期間において9人の被検者にほとんど知覚できないまたは時折軽度~中等の紅斑または乾燥が認められたが、臨床的に有意な反応ではないと考えられ、0.00045%セイヨウノコギリソウエキスを含む保湿剤は刺激剤でも感作剤でもないと結論付けられた(RTCS Inc,2006)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に0.001133%セイヨウノコギリソウエキスを含むボディスプラッシュ製品を適用したところ、刺激性および感作性を示さなかった(Clinical Research Laboratories Inc,2009)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性はなしまたは許容範囲内であり、また皮膚感作性もほとんどなしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、キク科植物にアレルギーを有している場合は販売メーカーにキク科植物アレルギー原因物質の除去の有無を問い合わせて確認してください。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの「Safety Assessment of Achillea millefolium as Used in Cosmetics」(文献2:2016)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に0.00045%セイヨウノコギリソウエキスの混合物含む製品を処理したところ、眼刺激性の可能性を有していないことが判明した(Institute for In Vitro Sciences Inc.,2006)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの「Final Report on the Safety Assessment of Yarrow (Achillea Millefolium) Extract」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 被検者の上腕に1%セイヨウノコギリソウエキスを含むエタノールを湿らせ、エタノールを蒸発させた後にその部位を覆い、1.5時間後に単色光(366m/z)を5分間照射したところ、セイヨウノコギリソウエキスに光毒性反応は生じなかった(Van Dijk and Berrens,1964)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されているため、光毒性はほとんどないと考えられます。

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セイヨウノコギリソウエキスは抗炎症成分、抗酸化成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 抗酸化成分 抗老化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Yarrow (Achillea Millefolium) Extract」International Journal of Toxicology(20)(2),79-84.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Achillea millefolium as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(35)(3),5S-15S.
  3. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,374.
  4. ジャパンハーブソサエティー(2018)「ヤロー」ハーブのすべてがわかる事典,201.
  5. 林真一郎(2016)「ヤロー」メディカルハーブの事典 改定新版,178-179.
  6. AHPA(米国ハーブ製品協会), Zoe Gardner, Michael McGuffin, et al.(2016)「Achillea millefolium L.」メディカルハーブ安全性ガイドブック 第2版,1-3.
  7. 一丸ファルコス株式会社(2002)「エラスターゼ活性阻害剤及び化粧料組成物」特開2002-205950.
  8. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

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