セイヨウニワトコ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症
セイヨウニワトコ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・セイヨウニワトコ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・セイヨウニワトコエキス

レンプクソウ科植物セイヨウニワトコ(学名:Sambucus nigra 英名:elder)の花からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

セイヨウニワトコ(西洋ニワトコ)は、ヨーロッパを原産とし、古代ローマでは果実(エルダーベリー)の汁を髪染めの染料に、また中世ヨーロッパでは根を腫れを抑える薬に、葉を捻挫や打撲を治す軟膏に、花を煎じた浸出液を咳や風邪を治す飲み薬として用いてきたことから「万能の薬箱」とよばれ薬用植物として親しまれてきた歴史があり、現在ではヨーロッパ、北アフリカ、アジアまで広く分布しています(文献1:2014;文献2:2005)

セイヨウニワトコ花エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フェニルプロパノイド クロロゲン酸
フラボノイド フラボノール ルチン、ケルシトリン、ケンペロール

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献3:2011;文献4:2016)

セイヨウニワトコの花の化粧品以外の主な用途としては、メディカルハーブ分野において発汗、利尿作用に優れていることから風邪やインフルエンザの初期症状に浸出液(エルダーフラワーティー)としてリンデン(学名:Tilia × europaea)と組み合わせて用いられています(文献1:2014;文献4:2016)

また、飲料分野においてはエルダーの花を漬け込むことで花から天然のイースト成分が溶け出し、それが発泡することで微炭酸飲料ができることから、砂糖水にレモン汁を加えてエルダーの花を漬け込んだ「エルダーフラワープレッセ(微炭酸飲料)」に用いられています(文献2:2005)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、シート&マスク製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、洗顔料、クレンジング製品、メイクアップ化粧品、カラートリートメント製品などに使用されています。

TNF-α産生抑制による抗炎症作用

TNF-α産生抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UVB)曝露による炎症反応のメカニズムについて解説します。

以下の紫外線(UVB)曝露による炎症のメカニズム図(一部省略)をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線曝露による炎症反応メカニズム

最初に皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると、転写因子(∗1)の一種であるNF-κB(nuclear factor-kappa B)が過剰に発現することが知られており、このNF-κBの過剰な発現によって、炎症反応に深く関与している炎症性サイトカイン(∗2)であるIL-1α(interleukin-1α:インターロイキン-1α)やTNF-α(tumor necrosis factor-α)が産生・放出されます(文献5:2005;文献6:1994)

∗1 転写因子とは、細胞内のDNAに特異的に結合するタンパク質の一群のことです。

∗2 サイトカインとは、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称であり、標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。炎症性サイトカインとは、サイトカインの中で主に生体内に炎症反応を引き起こすサイトカインのことをいいます。

これらの炎症性サイトカインは、種々のサイトカインを産生させ、さらに真皮の血管内皮細胞に存在する細胞接着因子を誘導し、血中に存在する炎症細胞(白血球)を血管内皮細胞に強固に接着することにより炎症細胞の血管透過性を高め、炎症反応を増強することが知られています(文献6:1994;文献7:1995;文献8:2010)

また、これらの炎症性サイトカインはさらにNF-κBの発現を誘導するため、炎症反応の悪循環が生じ、炎症反応は増幅していくことも明らかにされています(文献5:2005)

このような背景から、炎症性サイトカインの過剰な産生を抑制することは、過剰な炎症の抑制において重要であると考えられます。

2009年にカナダのルーカスマイヤーコスメティックスによって報告されたセイヨウニワトコ花エキスのTNF-αおよびヒト皮膚への影響検証によると、

in vitro試験において表皮角化細胞(ケラチノサイト)に炎症誘引物質であるPMA(phorbol-12-myristate-13-acetate)を添加した後に各濃度のセイヨウニワトコ花エキス水溶液を添加し、24時間後に炎症性サイトカインであるTNF-αの産生量を比較したところ、以下のグラフのように、

セイヨウニワトコ花エキスのTNF-α産生抑制作用

セイヨウニワトコ花エキスは、濃度依存的にTNF-αの産生を抑制することが確認された。

次に、乾燥肌および敏感肌で悩んでいる57人の被検者に2%セイヨウニワトコ花エキス配合クリームを1日2回1ヶ月にわたって顔面に塗布してもらった。

1ヶ月後に「刺激耐性」「鎮静感」「赤みの減少」「皮膚過敏性の改善」について効果を実感した項目を選択してもらったところ、以下の表のように、

試料 項目に対する効果実感人数
刺激耐性 鎮静感 赤みの減少 過敏性改善
セイヨウニワトコ花エキス配合クリーム 42 40 35 38

2%セイヨウニワトコ花エキス配合クリームの塗布は、皮膚の刺激や赤みを抑え、耐性の向上を示すことが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献9:2009)、セイヨウニワトコ花エキスにTNF-α産生抑制による抗炎症作用が認められています。

複合植物エキスとしてのセイヨウニワトコ花エキス

セイヨウニワトコ花エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、セイヨウニワトコ花エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックスBX51
構成成分 BGアルニカ花エキスキュウリ果実エキスセイヨウキズタ葉/茎エキスゼニアオイ花エキス、パリエタリアエキス、セイヨウニワトコ花エキス
特徴 角層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用およびSOD様活性による抗酸化作用にアプローチし皮膚の健常性を保持する目的で設計された6種の複合植物抽出液

セイヨウニワトコ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

セイヨウニワトコ花エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献10:2003)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部に乾燥固形分濃度0.5%セイヨウニワトコ花エキス水溶液0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後にDraize法の判定基準に基づいて一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に乾燥固形分濃度0.5%セイヨウニワトコ花エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日にDraize法の判定基準に基づいて皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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セイヨウニワトコ花エキスは抗炎症成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分

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参考文献:

  1. レベッカ ジョンソン, 他(2014)「エルダーフラワー」メディカルハーブ事典,71-73.
  2. 北野 佐久子(2005)「エルダー」基本 ハーブの事典,15-19.
  3. 鈴木 洋(2011)「エルダー」カラー版健康食品・サプリメントの事典,25-26.
  4. 林 真一郎(2016)「エルダーフラワー」メディカルハーブの事典 改定新版,30-31.
  5. K. Tanaka, et al(2005)「Prevention of the Ultraviolet B-Mediated Skin Photoaging by a Nuclear Factor κB Inhibitor, Parthenolide」Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics(315)(2),624-630.
  6. 島田 眞路(1994)「表皮の免疫担当細胞について」日本臨床免疫学会会誌(17)(6),664-666.
  7. 西 達也(1995)「白血球はどのようにして炎症部位に集まるのか」化学と生物(33)(2),83-90.
  8. 門野 岳史(2010)「皮膚の炎症における細胞接着分子の役割」日本臨床免疫学会会誌(33)(5),242-248.
  9. Lucasmeyer Cosmetics(2009)「NIBI」技術資料.
  10. 一丸ファルコス株式会社(2003)「化粧料組成物」特開2003-104835.

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