セイヨウニワトコ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 収れん成分 抗シワ成分 育毛 抗白髪成分
セイヨウニワトコ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・セイヨウニワトコ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・セイヨウニワトコエキス

レンプクソウ科植物セイヨウニワトコ(学名:ambucus nigra 英名:elder)の花からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

セイヨウニワトコ花エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • フラボノイド類:ルチン、クエルシトリン
  • タンニン
  • 有機酸類:クロロゲン酸
  • 糖類
  • 精油

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2016)

セイヨウニワトコ(エルダー)は、魔女信仰ともゆかりが深く、魔除けとして軒下など家の近くに植える習慣があり、木を切るのは縁起が悪いとされ、古い家にはエルダーの大木がよく見られます(文献3:2018)

セイヨウニワトコの花は、ヨーロッパ伝統医学とアメリカ先住民の伝統医学のいずれにも用いられてきた歴史をもち、数多くの神話や伝説に登場することで知られています。

欧米では「インフルエンザの特効薬」と呼ばれ、ペパーミント(Mentha piperita)やリンデン(Tilia europaea)とブレンドして用いられます(文献2:2016)

またフラボノイドハーブの代表であり、発汗、利尿作用にすぐれていますが、これらのメカニズムは完全に解明されているわけではなく、発汗作用はフラボノイドとクロロゲン酸などのフェノール酸が、また利尿作用はフラボノイドと豊富に含まれるカリウムが関与しているものと考えられています(文献2:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、肌荒れ用化粧品などのスキンケア化粧品をはじめ、ボディケア製品、洗顔料、洗浄製品、ヘアケア製品、シート&マスク製品など幅広く様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献4:1998;文献5:2009;文献6:2017;文献8:2005)

IL-6およびTNF-α産生抑制による抗炎症作用

IL-6およびTNF-α産生抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として皮膚の炎症の仕組みを解説しておきますが、以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

炎症の仕組み

紫外線を浴びた皮膚はまず最初に活性酸素が発生し、活性酸素の働きによって様々な遺伝子の発現を誘導するタンパク質(転写因子)であるNF-κB(エヌエフカッパビー)が活性化します。

NF-κBが活性化すると、炎症性サイトカインの産生が誘導され、また活性化した炎症性サイトカインは炎症性物質をつくるホスホリパーゼA2という酵素を活性化し、活性化したホスホリパーゼA2は炎症性物質の産生を促進させて炎症を発生させます。

簡易的にはこれが炎症プロセスになりますが、ニワトコ花エキスにはIL-6(インターロイキン-6)およびTNF-αの産生抑制作用が知られており、これらはどちらも炎症性サイトカインの一種です。

これらの産生を抑制することで炎症性物質などの産生を抑制し、結果的に炎症を抑制するという作用になります。

2009年にセイヨウニワトコ花エキスの開発元のひとつであるカナダのUnipex InnovationsのIL-6およびTNF-αの産生抑制作用検証によると、

表皮ケラチノサイトに炎症誘因物質であるPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)を添加し、さらにセイヨウニワトコ花エキスを0.01%~0.5%濃度で添加し、24時間後の炎症サイトカイン産生量を比較したところ、以下のグラフのように、

セイヨウニワトコ花エキスのIL-6産生抑制作用

セイヨウニワトコ花エキスのTNF-α産生抑制作用

セイヨウニワトコ花エキスはIL-6およびTNF-αの産生を濃度依存的に有意に抑制し、とくにTNF-αの産生を強力に抑制することが認められた。

このような試験結果が明らかにされており(文献5:2009)、セイヨウニワトコ花エキスには濃度依存的に炎症性サイトカインの一種であるIL-6およびTNF-αの濃度依存的な産生抑制作用があると考えられます。

好中球由来エラスターゼ活性阻害による抗シワ作用

好中球由来エラスターゼ活性阻害による抗シワ作用に関しては、まず前提知識として紫外線によってシワが生じる仕組みを解説しますが、以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

真皮の潤い成分一覧

皮膚の真皮層は、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンが網の目状に細胞外マトリックスを形成しており、皮膚のハリ・弾力に深く関与しています。

実際に網の目の役割をしているのはコラーゲンで、コラーゲンの網目の交差点を安定・強化しているのがエラスチンですが、紫外線を浴びるとそれぞれの分解酵素が活性化し、コラーゲン量とエラスチン量がともに減少することが明らかになっており、コラーゲン量およびエラスチン量が減少していくと、皮膚のハリ・弾力が次第に失われ、徐々にシワ・たるみが生じます。

セイヨウニワトコ花エキスには、紫外線によって活性化してエラスチンを分解する酵素のひとつである好中球由来エラスターゼの活性を阻害する作用が明らかになっており、1998年にノエビアによって報告された植物抽出物の細胞外マトリックス分解酵素に対する阻害作用検証によると、

好中球由来エラスターゼを添加した0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.5)50μLに33種類の植物エキスをそれぞれ添加し、37℃で酵素反応を行い、吸光度の低下率をもって活性阻害率を算出した。

調査の結果、以下のグラフのように、

セイヨウニワトコ抽出物の好中球由来エラスターゼ活性阻害作用

セイヨウニワトコ抽出物12.5~100mg/mLに濃度依存的に好中球由来エラスターゼの活性を阻害したため、セイヨウニワトコ抽出物は好中球由来エラスターゼの酵素活性に対して強い活性阻害作用を示すことが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献4:1998)、セイヨウニワトコ花エキスには濃度依存的に好中球由来エラスターゼ活性阻害作用があると考えられます。

頭皮脂肪細胞の産生促進による育毛作用

頭皮脂肪細胞の産生促進による育毛作用に関しては、前提知識として頭皮脂肪と育毛の関係について解説しておきます。

毛周期(以下図参照)に応じて頭皮の暑さが変化すること、またAGA(男性型脱毛症)を発症している人の頭皮は薄いという報告がある(文献7:1972)ことから、頭皮の厚さと毛量には相関関係があり、毛量の多い人は頭皮が厚く、毛量の少ない人は頭皮が薄いという傾向があることが明らかになっています。

毛周期(ヘアサイクル)

頭皮脂肪細胞の産生を促進し、頭皮下の脂肪組織の厚みが増すことで頭皮自体が厚くなり、毛周期における成長期の毛包が深く、大きく成長できるようになり、健康な髪が成長しやすい頭皮環境が形成されると考えられています。

2017年にアンファーによって報告されたクロレラエキスとセイヨウニワトコ花エキスの併用による頭皮細胞の産生促進検証によると、

脂肪組織の増大は、脂肪細胞自体の肥大以外に、未分化な細胞の増殖および分化による脂肪細胞数の増加があると考えられる。

そこで未分化な3T3-L1細胞(マウス前駆脂肪細胞)に様々なエキスを添加し、3T3-L1細胞の産生量を確認したところ、以下のグラフのように、

クロレラエキスの3T3-L1細胞(マウス前駆脂肪細胞)分化作用

セイヨウニワトコエキスの3T3-L1細胞増殖作用

セイヨウニワトコエキスに有意な脂肪細胞増殖作用が、クロレラエキスに細胞の分化を促進する作用が示されました。

さらに2つのエキスを併用することで、以下の顕微鏡画像のように、

セイヨウニワトコエキス、クロレラエキス連用による油滴形成効果

未分化細胞から脂肪滴が形成されることも観察され、セイヨウニワトコエキス、クロレラエキスは未分化細胞から脂肪細胞への産生を促進し、皮膚の厚みを増加させる効果が示唆される。

このような試験結果が明らかにされており(文献6:2017)、セイヨウニワトコ花エキスにはクロレラエキスと併用することで頭皮脂肪細胞産生促進作用があることが示唆されています。

メラニン産生促進による抗白髪作用

メラニン産生促進による抗白髪作用に関しては、まず前提知識として毛髪における黒髪(黒色色素)のメカニズムとチロシナーゼについて解説します。

以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

毛髪の構造

毛髪の黒化は、色素細胞であるメラノサイトの活性によって行われていますが、白髪はメラノサイトがメラニンの産生を停止することで起こります(文献9:2002)

メラノサイト内でのメラニン黒化は、皮膚と同様以下のように、

チロシンがメラニンに変化するメカニズム

メラノサイト内に存在するアミノ酸の一種であるチロシンとチロシナーゼという酵素が結合することでドーパ → ドーパキノンと変化していくことで生合成されるため、これらのプロセスのいずれかまたは複数の作用を促進することで人為的に白髪の発生を抑制することが可能であると考えられています。

2005年に花王によって公開された技術情報によると、

白髪の発生の防止、改善効果に優れ、かつ安全性にも優れた白髪防止剤の検討を行ったところ、スギナスイカズラヒキオコシ、ブドウ、ヘチマ、セイヨウニワトコ、ナギイカダおよびタイソウの抽出物にその作用を見出した。

in vitro試験においてマウス色素細胞を培養した培地に各植物抽出物1%と所定濃度のメラニン前駆物質を加え、2日間の培養後にっメラニン前駆物質の細胞内取り込み量を無添加を100として測定したところ、以下の表のように、

試料 メラニン前駆物質取り込み量
無添加 100
スギナ 221
スイカズラ 141
ヘチマ 177
ヒキオコシ 144
ブドウ 133
セイヨウニワトコ 152
ナギイカダ 126
タイソウ 136

セイヨウニワトコ抽出物は、メラニン前駆物質の取り込み量増加がみられたため、メラニン生成を増大させることがわかった。

配合量は一般的に0.0001%~10%の範囲内が好ましく、とくに0.001%~5%の範囲内が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2005)、セイヨウニワトコ花エキスにメラニン産生促進による抗白髪作用が認められています。

複合植物エキスとしてのセイヨウニワトコ花エキス

ファルコレックスBX51という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 角質水分量増加
  2. 経表皮水分損失抑制
  3. 抗酸化(SOD様)

とされており、それぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって角質層の水分保持および活性酸素抑制するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスBX51であると推測することができます。

スカルプボリューマーという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

  • セイヨウニワトコ花エキス
  • クロレラエキス

効果および配合目的は、

  1. 頭皮脂肪細胞増殖作用
  2. 細胞分化促進作用

とされており、それぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって頭皮の厚みを増加させ、成長期の毛包をさらに深く、大きく成長させるといった健康な髪が成長しやすい環境を形成するもので、アンファーのヘアケア製品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はスカルプボリューマーであると推測することができます(文献6:2017)

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セイヨウニワトコ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

セイヨウニワトコ花エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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セイヨウニワトコ花エキスは抗炎症成分、収れん成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症 収れん成分 抗老化成分

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文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,374.
  2. 林真一郎(2016)「エルダーフラワー」メディカルハーブの事典 改定新版,30-31.
  3. ジャパンハーブソサエティー(2018)「エルダー」ハーブのすべてがわかる事典,39.
  4. 大林 恵, 他(1998)「植物抽出物の細胞外マトリックス分解酵素に対する阻害作用」日本化粧品技術者会誌(32)(3),272-279.
  5. Unipex Innovations(2009)「NIBI」技術資料.
  6. “アンファー株式会社”(2017)「脂肪細胞の産生を促進させる効果を発見」, <https://www.angfa.jp/_cms/wp-content/uploads/2017/04/62d34400a6e77d1fa93a87ced4847a2e.pdf> 2018年8月4日アクセス.
  7. Hori H, et al(1972)「The thickness of human scalp: normal and bald.」J Invest Dermato(58)(6),396-399.
  8. 花王株式会社(2005)「白髪防止剤」特開2005-068159.
  9. 朝田 康夫(2002)「毛の形態に関する疾患は」美容皮膚科学事典,383-384.

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