セイヨウトチノキ種子エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 収れん成分 血行促進成分 紫外線吸収 抗糖化 抗くぼみ
セイヨウトチノキ種子エキス
[化粧品成分表示名称]
・セイヨウトチノキ種子エキス

[医薬部外品表示名称]
・マロニエエキス

ムクロジ科植物セイヨウトチノキ(学名:Aesculus hippocastanum 英名:Horse chestnut)の種子からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)グリセリンまたはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

セイヨウトチノキ種子エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • トリテルペン系サポニン:エスシン
  • カテキン型タンニン

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2016;文献3:1981)

セイヨウトチノキは、バルカン半島原産で欧州各地に広く分布し、日本でも街路樹としてよく知られ、広く栽培されています。

伝統的な植物療法では、収れん性のある樹皮を下痢や痔疾に、葉のハーブティーは咳やリウマチに用いられましたが、今日の植物療法では種子に多く含まれるトリテルペン系サポニンであるエスシンの製剤を静脈の薬として用います(文献2:2016)

エスシンは、血管の抵抗性を増大し、毛細血管の透過性を抑制することによって血管内か低分子タンパクや電解質、水分が間質に浸出するのを防ぎ、浮腫やアレルギー反応を防止します(文献2:2016)

したがってエスシンは、血行不全、慢性静脈不全、静脈瘤、痔疾、夜間の足の痙攣や足のだるさや打撲、捻挫などの外傷に用いられます(文献2:2016)

またフリーラジカルを発生させる紫外線の吸収作用や糖負荷後の血糖値の上昇抑制、エタノールの吸収阻害などの報告もあります(文献2:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、肌を引き締める収れん化粧品・肌荒れ用化粧品・エイジングケア化粧品などのスキンケア化粧品をはじめ、ボディケア製品、日焼け止め製品、洗顔料、洗浄製品、ヘアケア製品など幅広く様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献3:1981;文献4:2018)

また、血行促進による目元、まつ毛の生え際、唇の活性化目的でまつ毛美容液、口紅、リップグロスなどにも配合されます。

MYH2産生促進による抗くぼみ作用

MYH2産生促進による抗くぼみ作用に関しては、まず前提知識として目のくぼみの構造とMYH2について解説します。

以下の表情筋の構造図および目のくぼみの構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

表情筋の解説

目のくぼみの構造図

目のまわりは表情筋のひとつである眼輪筋で構成されており、眼輪筋が目のまわりの皮膚を支持することで目のまわりのハリ感を維持しています。

ただし、加齢によって眼輪筋の90%を構成する主要たんぱく質(速筋)である

  • MYH1(myosin heavy chain 1:ミオシンヘビーチェーン1)
  • MYH2(myosin heavy chain 2:ミオシンヘビーチェーン2)
  • MYH4(myosin heavy chain 4:ミオシンヘビーチェーン4)

これら(とくにMYH2)が減少することで眼輪筋が減少して薄くなり、その結果皮膚が変性・変形してハリ感が失われ、落ちくぼんでくると報告されています(文献4:2018)

そういった背景から眼輪筋における速筋の産生を強化することは眼瞼皮膚表面において重要だと考えられます。

2018年にポーラ化成工業によって公開された技術情報によると、

眼瞼皮膚表面印象を改善するために研究を行った結果、表情筋である眼輪筋(目のまわりの筋肉)の衰えが、眼瞼皮膚表面の印象を変化させる原因であることを見出した。

さらに眼輪筋の約9割を占める速筋を増強すると、眼輪筋が強化されて、眼瞼皮膚の凹凸も緩和し、かつぶよぶよとした印象が減ずることを見出した。

そして、速筋増強成分が眼瞼皮膚表面印象改善の有効成分となり得ると考え、成分を探索したところ、マドンナリリー根エキスとマロニエエキスの併用またはシャクヤク根エキスにその効果を見出した。

in vitro試験においてヒト培養骨格筋細胞を用いた培地に各植物抽出物(1μL/ウェル)を添加し、無添加のMYH2発現量を「1」としたとこの相対MYH2発現量を測定したところ、以下の表のように、

試料 MYH2
無添加 1
マルメロ+マドンナリリー 2.17
マルメロ 0.88
マドンナリリー 1.15
シャクヤク 2.06

マルメロ抽出物は単体ではmYH2発現量の減少がみられたが、マドンナリリー根抽出物との併用によって優れたMYH2発現量増加がみられた。

配合量は0.0002~0.05mg/日が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2018)、マロニエエキス単体にはMYH2産生促進による抗くぼみ作用が認められていませんが、マドンナリリー根エキスとマロニエエキスを併用した複合成分(CFエキス)に優れたMYH2産生促進による抗くぼみ作用が認められています。

複合植物エキスとしてのセイヨウトチノキ種子エキス

ファルコレックスBX43という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 抗酸化(SOD様)
  2. 抗酸化(過酸化脂質生成抑制)

とされており、活性酸素抑制および過剰な皮脂抑制などそれぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって多角的に酸化を防止するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスBX43であると推測することができます。

エムエスエキストラクト<マンスールS>という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 収れん作用

とされており、植物エキスの相乗効果によって皮膚を多角的に引き締めるため、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はエムエスエキストラクト<マンスールS>であると推測することができます。

CFエキスという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 目のまわりの抗くぼみ作用

とされており、植物エキスの相乗効果によって加齢によって薄くなる眼輪筋の厚みを取り戻し、目のまわりのくぼみを改善するため、ポーラ化成および関連会社の化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はCFエキスであると推測することができます(文献4:2018)

スポンサーリンク

セイヨウトチノキ種子エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

セイヨウトチノキ種子エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

セイヨウトチノキ種子エキスは抗炎症成分、収れん成分、抗老化成分、血行促進成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症 収れん成分 抗老化成分 血行促進成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,383.
  2. 林真一郎(2016)「ホースチェストナッツ」メディカルハーブの事典 改定新版,152-153.
  3. 高木 敬次郎(1981)「抗炎症薬と有害反応」炎症(1)(2),173-174.
  4. ポーラ化成株式会社(2018)「眼瞼皮膚表面印象改善剤及びそのスクリーニング方法」特開2018-184349.

スポンサーリンク

TOPへ